魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~ 作:れお3
あの後、職員室に行くと教師達にとことん怒られた。誰かが俺がコンビニに寄った事をチクったらしい。……誰だよ! チクった奴は! おかげで昼飯が食えなかったじゃねーか!!
「やあ、どうだった?」
「……佑樹か」
「うん」
教室に戻り席に座ると勇気に……やべっ…漢字間違えた。とりあえず声をかけてきた。
「さあな、一応成功したって言えばそうだな。後は高町次第だ」
「そう……」
俺たちが会話をしていると俺の机にビニール袋が飛んできた。………こ、これは…! 今は食べられない俺の昼飯! 今食べ始めると中途半端にしか食えない。だから今見ると怒りしかわかない。
「ほらよ、お前の昼飯」
天満がこちらに近づいてくる。……こいつよくもぬけぬけと。元をたどると昼飯にありつけなかった原因はお前にあるんだぞ。
俺は耐え兼ねて天満に殴りかか……ろうとするが踏みとどまる。”腹が減っては戦はできぬ”この言葉の深さを知った瞬間だった。
「腹減った……」
「ふっ……」
「ムカつくけど何も出来ない……」
俺が天満に毒づいていると、5時限目を告げるチャイムが鳴り響いた。天満も佑樹も席に戻っていく。俺は腹の空腹を抑えるためにうつ伏せになる。
うつむく直前、視界に映ったのは高町とバニングスたちが楽しく喋りながら教室に入って来るところだった。
◇◆◇
学校が終わり家に帰った俺は食えなかったパンを食べはやての家に行く準備をしていた。
「忘れ物は無いな…」
持っていくものを入れた袋を確認しながら呟く。じゃがいも、人参、玉ねぎ、豚肉、カレーのルー。よし全部ある。今日はカレー対決だ。米はあっちで用意してくれるだろう。
『マスター、私と焼き菓子を忘れていますよ』
「あっ! 悪いなリゼット」
『いえいえ』
「じゃあ、行くか」
リゼットを首にかけ、焼き菓子を新たに袋に入れ、俺は家を出た。
◇◆◇
「―――――さあ、覚悟してもらおか」
「ストップ! 何でこんなことになってるのか頭の整理をさせてくれ!」
ただいま、はやて家。目の前には、ハリセンを持ったはやてがいる。そしてハリセンは俺を待ち構えるように、はやての手に当たるたびにバシバシと音をたてている。
俺は全神経を記憶の引き出しに集中させる。思い出せ……家を出た後は普通にはやての家に着いたはずだ。そこでインターホンを押して、中に入った。ここまではいつもと変わらなかった。ここからだ。そのあとはやてと会ったのだが、はやては俺を見た瞬間、顔をうつむかせ、こう言ってきたんだ。「そこに座れ」と――――うん、わけがわからない。
「なあ、何でそんなに怒ってるんだよ?」
俺がこの言葉を発するとはやての頭に血管が浮かび上がる。
「二日間も、レディとの約束をすっ飛ばしといてよう吐けるな、そのセリフ」
「あっ……」
思い出した。旅館に行くことを伝えてなかったんだ。なるほど、コイツの言ってることはそういう事か。
「待ってくれよ、旅行に行ってたんだから仕方がないだろ」
「じゃあそう伝えてくれれば良かったやん」
「……連絡手段がないだろ。俺はお前の携帯番号やアドレスは知らないし、歩いて伝えようにも急に言われたから、伝えるのは無理だ。……お前の家に来るのに小一時間はかかるんだぞ」
「むぅ~」
良し、丸め込めそうだぞ! このまま行けばあのハリセンの餌食にならなくて良さそうだ。
「悪かったって。……おまえにおみあげもあるんだ」
俺はおもむろに焼き菓子が入った箱をはやてに見せる。……が、この行為は無駄だった。
「でも……このやりようのない怒りはどうして発散させよか……そうや! 一発だけ打たせてくれんか? このハリセンの威力も確かめたいし」
「いや、断る」
「じゃあいくで」
「…………俺の話聞いてた!?」
何で、俺の周りには話を無視する奴ばっかりいるんだよォォォォォォ! いい加減にしてくれ! 本当に!!
はやてはもうハリセンを背中に引き、打つ体勢になっている。……もう、話しても無駄なようだな。
仕方ない……とつぶやきながら俺は白刃取りの体勢に入る。驚くなよ……! リゼットにしごかれて鍛えた反射神経と動体視力の凄さに……
「堪忍や☆」
そう言いつつハリセンを振り下ろすはやて。……ふん、所詮は病弱な少女が放つ振り。止まって見えるわ!
俺はハリセンを横から挟もうと手を動かすが、その手は空を切ることになった。……ハリセンが消えたのだ。消えた途端に俺の頭にものすごい衝撃が走る。
歪む世界。目の前が真っ暗になる。意識が遠のいていく感じがする……。それほどまでにそのハリセンの威力は凄かった。
(せめて、何が起こったのかだけは……!)
俺は閉じかけている
◇◆◇
「……んだよっ、それはぁぁぁぁぁあああああッ!!」
「きゃっ!」
目を開けると、知らない天井だった。……これを言うのは二度目だな。そして今どんな状況だ?
俺は全力で状況の把握に務める。……俺が寝ているのは知らないベットの上。そして知らない部屋だ。近くには倒れた車椅子。ん? 車椅子?
「カズヤ君~、いきなり起きんといてーな」
車椅子の近くには倒れているはやてがいた。何か顔が赤いけど……それよりも頭がズキズキする。
自分の頭を撫でると、布特有の肌触りがした。
「これは……包帯か?」
「そうやで……いきなり倒れるからびっくりしたで。……取り敢えず立たせてくれへん?」
「ああ」
俺はベットから抜け出し車椅子を立て、はやての膝と背中に手を入れ抱え上げる。……要はお姫様抱っこだ。
「ちょっ……! 恥ずかしいって」
「我慢しろ。他には思いつかなかったんだから……俺も一応は恥ずかしいんだよ」
車椅子に乗せ終わると、俺とはやての間に気まずい雰囲気が流れる。
「ところで…何がどうなってこうなったんだ?」
あたりを見回しながら、はやてに訊く。
「ああ、それは――――――」
◇◆◇
「あっ…」
わたしの前で倒れる彼―――カズヤ君。倒れた原因はわたしが持っているハリセンが原因やろう。……まさか、ここまで威力があるとは思わへんかった。
このハリセン―超スーパーウルトラデリシャスハリセン。略して超SUDハリセン。(自分で名づけたんやないで)いつの日か、オーダーメイドで業者に頼んだものや。一方にジェット噴射を使って威力を倍増させてみたんや。で先日届いたんやけど、試す相手がおらへんかったから、カズヤ君に試したらご覧の有様や。
「これは、封印せなあかんな……ってまずはカズヤ君や」
カズヤ君を無理やり引っ張ってわたしのベットルームに連れて行く。……さて、どうやってベットにあげよか?
「しゃあないな」
カズヤ君をベットに立て掛け、わたしは車椅子から降りベットに乗る。そこから、カズヤ君の脇に手を入れ全力で引き上げる。
「………なんとかいけた……」
カズヤ君をベットに寝かせながらそう言う。……包帯取ってこよ。
包帯を持ってきて、寝ているカズヤ君の額に巻く。
「あっ……」
色々と作業しているとふとカズヤ君の唇に手が当たる。
「カズヤ君……」
自然に体が前かがみになり、わたしの唇と彼の唇との距離が狭くなっていく。――――”橘 和也”彼と出会ったのは、ほんの些細な出来事だった。時々起きる車椅子からの転倒。それで助けてくれた人の一人。ただ、それだけだった。次彼に会ったのは、裏路地。血まみれで、見たときとてもびっくりした。その日からだ。彼と会うと不思議な……
「……んだよっ、それはぁぁぁぁぁあああああッ!!」
◇◆◇
「―秘密や!」
「あのさー、ごまかされるとガチな方で困るんだけど……」
「それよりも急がんと時間が遅れてしまっとるで」
「うおっ! 本当だ! 流石に一日零飯は辛い!」
俺は時計を探し、見ると既に6:00を過ぎている。普通なら飯を食べている時間だ。
今日は珍しく二人で一緒にご飯を作った。
◇◆◇
「はぁ…はぁ…」
俺は今、急いで家に帰っている。今の時刻は確認していないから良くは分からないが、はやての家を出たのが6:50ぐらいだから、今は7:00ぐらいじゃないだろうか。
「くぅ……」
何故俺がこんなに急いでいるかというと、やるべきことがまったく終わってないのだ。洗濯やら明日の用意やら……生活リズムが崩れるのは良くないからな。
「ああ、もうまどろっこしいな! 近くに人はいないな…良し、リゼット、セットアップ」
『えっ? どうしてですか?』
「さっさと家に帰りたいからに決まってるだろ」
飯を食った直後に走ったので気分が悪くなったのも理由の一つだった。
「大丈夫、高く飛ぶから心配いらないって」
『……分かりました、でも高度は十分にとってくださいね』
「任せろ」
俺がそう話しているうちにバリアジャケットへの換装が終了する。
「…………」
人気のいない道に入り、風の操作に集中する。
(見られたらダメだから、一瞬で高度を上げないと……)
俺は地面に片膝を突き、足元に風を纏わせる。イメージするのは、風のジャンプ台。風が頬を撫で、汗だくの俺を涼ませる。
(もっとだ……もっと…!)
自分が創造、操作できる限界まで風を生み出す。そして地面に無駄な被害が出ないよう圧縮も同時に行う。
「……行くぞ」
『はい』
リゼットが答えた途端に風を爆発させるように開放した。瞬間移動とも言えるほどの速さで上空へと駆け上がり、天へと舞い上がる。
「うえぇ~、気持ち悪ぃ~」
『すごく速かったですね』
「………急がないとな」
余裕そうなリゼットに少し怒りを覚えつつ、家の座標を教えてもらい家に向かって飛ぶ。
「綺麗だな」
『ですね』
俺は下…海鳴市を見ながら洩らす。立ち並ぶビルからたくさんの光が外へと出ており、まるで星空…と言っても過言ではないほど綺麗な景色になっていた。
俺とリゼットが見惚れていると、あるところから中心にビルから電気が消え去り、辺りに雨雲が立ち篭め始め、終いには雷まで落ち始める。
「何だ? ……うあッ! ったく、危ないな」
『マスター! これに当たったらマスターといえど、無事じゃすみませんよ!』
「マジか……ふッ!」
雷が俺の真横をかすめると、リゼットがそう叫ぶ。だが、当たるなと言われても初期動作が分からない以上、予想しながら避けるのは無理だ。反射神経に頼るしかない。
しばらく時間が経つと、雷が突然消え去る。そして結界の中に入った時と同じ感覚に陥る。
「助かった…」
俺は自分のバリアジャケットを見る。幸い、直撃は無かったが、かするのはよくあったため至るところが黒く焦げている。
『そうでもないですよ、結界の中に入ったんですから』
「そうだな……取り敢えず降りてみるか」
結界の中に入ったのなら、この結界を張った奴には俺の位置がバレたはずだ。それならどこにいても同じだろうと思い、力を解除して重力に沿って落下する。
高度を下げると、だんだん状況が読めてきた。俺の視線の先には高町とスクライア、テスタロッサとあの使い魔がいる。距離は、俺の予想着地位置から数百m離れたところだ。
どうやら両方共、俺には気づいているのか、それとも眼中にはないのか、どちらかは分からないがこちらには誰ひとり意識を向けてはいないようだった。
「よし、今のうちにすぐに逃げ……」
『マスター!!』
「…わかってる!!」
リゼットに言われなくても分かる。魔力探知ができない俺でさえ、分かるほどのものすごい魔力が急速で接近しているのを感じる。
俺が感じた方向を向くと同時に
「ったく、ユーノの奴俺に指図しやがって…こんな雑魚の相手をしろってのか」
(お前は…!)
現れたのは黒鐘だった。もう一回言う。黒鐘 終だ。いつも俺を目の敵にしているあの黒鐘。銀髪で左右で色が違う瞳を…って、あれ? あいつってオッドアイだったっけ? なんか、しっぽと獣耳みたいなのが腰と頭から生えてる。しっぽは俺が確認出来るだけで9本はある。
黒鐘は何か「和!!」みたいな感じのバリアジャケットを着ている。……えっとどっかのアニメで見たことがあるぞ。
すごい魔力が近づいてきたから、結構焦ったがそれが黒鐘とはな……何か安心した。
「さっさと死んでくれよ」
『スタン設定解除』
黒鐘はこちらにすごい装飾がついた日本刀を俺に向けてきた。…あの日本刀があいつのデバイスのコアみたいだな。
『エナジーパンカー』
(……は?)
黒鐘のデバイスが光ったと思うと、あいつの周囲に百は超える程の量のスフィアが出現する。
俺は唖然とした。黒い布で表情はバレてないだろうが恐らく間抜けな面をしていると思う。
「放て」
『ファイアー』
そのスフィアから一気に黒い魔力弾が発射される。どうやら、追尾弾ではないらしく一直線に俺へと飛んでくる。
俺は魔力弾を時には避け、時には受け止める。……くそ、一撃一撃の威力が高い! どれだけ一発に魔力込めてんだよ!
(風よ!)
前後左右では逃げ切れなくなり、タイミングを見計らって上空へと逃げる。これで上と下にも逃げられる。だが俺が上空へ飛んだ瞬間、黒鐘の顔が歓喜に歪む。
『エナジーパンカー・ドームシフト』
俺の周りを囲むように展開されるスフィア。黒鐘はこれをするためにさっきの魔力弾を囮にしたのか!?
「…ッ!」
俺はとっさに風のバリアを全方位に出現させる。魔力弾が俺のバリアとぶつかり火花を散らす。それが何度も行われるうちに俺のバリアにヒビが入り始める。
(しまった…)
俺は心の中で後悔する。これじゃ、反撃ができない……!
どんな能力にも弱点というものは存在する。この力にもそれはある。この力は、二つの属性を同時に扱えない。風を出現させているうちは火・水・土を一切使えない。つまり風を操って空を飛んでいる時には風しか操れない。この性質に気づいた時はさほど気にしなかったが、今は違う。
「ははっ!」
《このヤロー…! リゼット、あの技をやるが、俺は声を出したらあいつにバレるから代わりにお前がやってくれ》
《分かりました》
『スパイラルバースト』
バリアが消え去り、魔力弾がいくつか直撃する。がすぐさま技が発動する。
俺の四方から竜巻が出現しそこから不規則にかまいたちが発生し俺はその技でできた隙を突き、ドーム状に展開されていたスフィアから脱出する。そして一気に空を駆け、ビルの間と間に入る。
《リゼット、セットアップ解除! プラス魔力ロック!!》
《はい!》
俺はひたすら走った。ひたすら、その場から離れる為に。あいつは俺と同じで、魔力反応を頼りに敵を見つけている。つまり裏を返せば、魔力反応がなければあいつは俺を見つけることができない。危険な賭けだが、これしか方法がない。黒鐘と戦うには魔力差がありすぎる。
◇◆◇
「くそっ!! どこに行きやがった!!」
『申し訳ありません』
「ったく、しっかりしろよ!! 神楽!!」
俺はあいつを追っていると、急に魔力反応が消えさり、あいつを追えなくなってしまっていた。
苛立ちを俺のデバイス―――神楽にぶつける。
「まあ、いい。早くなのはの所に戻らないとな。そろそろ、俺が恋しくなってると思うしな」
俺は全速力でなのはの所へと飛んだ。