魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~   作:れお3

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第8話 「過去」

『マスター、朝ですよー。訓練の時間ですよー』

「……毎度毎度、その起こし方やめろ」

『すみません』

「棒読みで言うな。お前、冷蔵庫の中に今日一日居ろよ」

 

 俺はすぐさま起き上がると、冷蔵庫を開け、リゼットを入れようとする。

 

『ちょっマスター!?』

「お前だったら大丈夫だろう」

『まぁ、そうですけど…じゃなくて!! やめてください! 昨日の戦闘で所々損傷してるんですよ!?」

「奇遇だな。俺もだ。じゃあ頑張れ」

『待ってください、マスター!』

「待たない」

『マスターーーーーーーーーーーーー!!』

 

 朝から楽しそうな事をしている二人だった。

 

 

 

                   

                     ◇◆◇

 

 

 

「よーし、じゃあ今から自由時間だ」

 

 体育系の肉体をした教師がそう高らか言うと、みんないろんな所へと散っていった。…まあ、今の時間は体育ですけど。

 リゼットとのコントを終えた俺は学校に来ていた。ちなみに今の時限はみんなもわかってると思うが体育だ。マット運動の。

 しかも、体育は隣のクラスの人と合同にやる。……つまり、言いたくは無いが黒鐘がいるのだ。

 

「見とけよ三人共、俺のカッコよさを」

「うるさいわね! どっかに行っててよ!!」

 

 黒鐘はバニングスと早速喧嘩を始めていた。…それにしてもまさか、あの黒鐘が魔導師だったとはな、100%あいつが転生者だな。ていうか色々と思い当たる節はあったハズなんだけどな…鈍感なのかも、俺。

 

『オオーッ!!』

『キャーッ!!』

 

 みんな前転とか、後転とか基本中な事をしている最中、黒鐘がハンドスプリングをしていた。みんな黒鐘に反応し「スゲー」とか「かっこいい」とか言っている。

 

「ふっ……」

「あ?」

 

 俺が離れた所で黒鐘を観察していると、あいつはこっちに顔を向けて笑って来た。明らかな挑戦状だった。俺も売られた喧嘩は買う主義なので、俺もマットに向かう。

 

「ハンドスプリングか……」

 

  前世の時は出来たけど、今はどうなんだろう。と不安も混ぜながら俺は助走を付け、手を伸ばしたままマットに突き、縦に一回転する。

 体重が小学生なので迫力に欠けるが、ドンッ!と綺麗な音を立てて一回転し着地する。

 

(出来た。ていうか前世の時よりも余裕があった。……リゼットの特訓のおかげかもな)

 

 俺は再び、黒鐘を見据える。見据えた時の奴の顔はこれくらい出来て当然だろうみたいな顔をしていた。クラスのみんなは、俺を見て目を点にしている。バニングスを除いて…あいつが驚いた所、見たことないな。いつか、驚かしてみたい。

 黒鐘は俺を鼻で笑った後、今度は体操選手がよくしている、ロンダートからのバク転をしてみせた。クラスの人たちから感嘆の産声が上がる。

 

「あれは前世の時にもできてたから、多分できるんだよな…良し、あれをやってみるか」

 

 なんだかいろんなことができそうな自分にワクワクし、黒鐘はどうでも良くなり、自分の実力を試したくなってきた。前世の時にできなかったトリッキング技”コークスクリュー”を試そうとする。……もうマット運動関係なくないか?

 

「まあ、良いか……!」

 

 右足を後ろに引いたあと、左足をさらに後ろに下げ、腕を回し、体に捻りを加える。そして勢いよくマットに手を突き、体を横に半回転させる。

 

(ここまではいつもどおり……!)

 

 このあと、一気に後ろに飛んで、2回転するのだが、前世は一回転しか出来なかった。だが今は違う。いけるかもしれない。

 半回転したあとに片足のバネで2回転! これまたドンッ!と音をたてる。

 

(出来た……!)

 

 ヤバイ、超嬉しいぞこれは。前世では何度挑戦して地面とキスしたことか。

 俺はその後、黒鐘やクラスのみんなを忘れて、前世の時にやっていた技をひたすらしていた。前宙、側宙、バタフライツイストetc.etc…

 自分の世界に入り込んでいると、不意にうめき声が聞こえ、現実に引き戻される。

 

「ぐぅッ…!」

 

 うめき声を上げている方を見ると、うずくまっている黒鐘が居た。足首を抑えて呻いている。……何があったんだ?

 俺が考え込んでいると、体育の先生が黒鐘を診て、保健室へ連れて行った。

 

「なぁ、何があったんだ?」

 

 バニングスに近寄り、声をかける。

 

「どうもこうも、ただあいつが自爆しただけ。調子に乗った罰よ」

 

 バニングスの声に頷いている高町と月村。

 

「なんかあたし達の方を向いて、「あいつより俺の方が凄いんだ。見とけよ」とか言ってきて、あのザマってわけ」

 

 バニングスが両手を広げ、やれやれといった仕草をする。……あいつって俺のことか?

 

「多分そうでしょうね」

「え? 何お前、俺の心が読めんの?」

「そんなわけないじゃない。ただの勘よ」

 

 だとしたら恐ろしい。勘で人の思考が読めるとか何者なんだよ。

 

「それよりもいい気味よ。これで少しはあなたのトコに行かなくてもあいつから逃げられるわ」

「ふぇ? どうして?」

 

 高町が首をかしげながら、バニングスに訊く。

 

「あれ、確実に骨折してたから」

 

 だからお前なんで分かるんだよ。

 

 

 

 

                     ◇◆◇

 

 

 

 あの後、先生が戻ってきて、各自着替えてチャイムが鳴るまで教室で席について、静かにするようにと言われた。なので俺も着替えて席に座り、窓からの外の景色を眺めている。

 

「ねぇねぇ……」

「ん? ……!」

 

 後ろから声をかけられたのでその声の方を向くと、高町の顔が近くにあった。あの~、めちゃくちゃ近いんですが……。

 

「…………」

「…………」

 

 離れろよっ! 何で離れないんだよ!! 俺は後ろに窓があるから下がれないんだよ!!……いや、あのマジで離れてください。お願いします。俺の心臓が破裂しそうなんで。

 

「あの、近いんだけど……」

「あっ……ごごごごごごめんね!!」

「いや……なんていうか俺もごめん」

 

 二人の間に気まずい雰囲気が流れる。今ものすごく顔が熱いから俺の顔は多分真っ赤だろう。それは向こうも同じだが。

 

「あんた達、何してんのよ?」

 

 が、バニングスと月村の介入によって雰囲気は一気に流される。

 

「なんでもないさ。な?」

「う、うん」

 

 バニングスの言葉のおかげで冷静さを取り戻し、いつもどおりに振舞う。

 

「で、改めてどうしたんだ? 高町」

「あ、あのね、マット運動の時凄かったね。わたしには絶対にできそうにない技ばっかりだった。……どこで、覚えたの?」

「それは、あたしも気になるわ。どうやって知ったのよ? あの動きは初めてじゃなさそうだったし」

「そうだね」

「えっと…答えなきゃダメか?」

「「うん」」

「ええ」

 

 三人に詰め寄られて、俺は戸惑った。言えないに決まってる。正直に伝えたとしたら、多分こうなるだろう。

 

「ああ、俺って前世の記憶があるんだ!」

「「「…………………」」」

 

 無言で自分の席に戻っていく三人。そして俺は本当に一人ぼっちになった―――完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやいや待て待て! 安易に想像できる時点でもうダメだって!!

 くそっ! 高町だけなら丸め込めそうだったのに! この二人…特にバニングスには嘘が通じなさそうだしな…。唸れ俺の脳よ! この状況を回避できる知恵を我に授けたまえ!!

 

「………いやさ、あの技はある人に教えてもらったんだ」

「「「ある人?」」」

「ああ」

 

 俺は若干うつむきながら話し始める。嘘は言ってない。前世で起きたとは言わなければ大丈夫だろう。

 

「いろんな事を教えてくれたな……さっきの技もその時に教えてもらったんだ」

「へえ~、どうやって知り合ったの?」

 

 月村が訊いてくる。

 

「出会いはそんなに大したもんじゃなかったさ。公園で会った。ただな…その時の俺は荒れててさ、周りの奴に八つ当たりばっかりしてて、いろんな奴に嫌われてたんだよ。そんな一人ぼっちの俺をその人は助けてくれたんだよ。今の俺がいるのはその人のおかげってわけ」

「「「……………」」」

 

 俺の話に二人共黙り込む。ちょっとこいつらにはキツかったかな?

 

「そのごめん」

「えっと、わたしも何も知らずに訊いてごめん」

「あたしも」

「謝んなって。結局は過去の話なんだから」

 

 高町、月村、バニングスが申し訳なさそうな顔で謝ってくる。そう、所詮は過去の話だ。そんな風に言いながらもあの人―――他人行儀は人に話すときでいいか。…あいつに近づきたくて真似事をしているんだけどな。

 

「…最後に聞かせてくれる? その人は今どうしてるの?」

 

 黙っている中、バニングスが口を開き、訊いてきた。

 

「ああ、その人か」

「ええ」

「その人なら――――――死んだよ」

 

 その言葉を言った瞬間チャイムが鳴り響き、二人には聞こえなかったが、バニングスだけは聞き取れたようで、バニングスの驚いた顔が目に映った。

 

 

◇◆◇

 

 時間が飛んでただいま放課後。

 

「来いよ! 天満!!」

「行くぞぉおおおおおお!」

 

 俺は今、公園で天満や佑樹と一緒にサッカーをプレイングナウ。……まあ、ただのボールの取り合いだけど。

 

「遅いな」

「ちぃ!」

 

 突っ込んできた天満をフェイントを使って騙し、避ける。

 

「天満ぃ! 突っ込んできただけじゃ意味ないぜ!」

 

 

 天満はいつも動きが単調だ。だからフェイント一つ混ぜるだけでこうなる。……不意を突かれて来た時は絶対に取られるが。あいつのタックル威力高いんだよな…当たるとめっさ痛い。

 

「次は僕だよ!」

「有機家!」

「漢字が違う!! なんど間違えれば気が済むの!」

 

 佑樹が叫びつつ俺に突進してきた。ふっ…バカの一つ覚えもいいとこだ! フェイントで躱してやる!

 

「ふっ…おわっ!」

 

 フェイントで騙し抜かしたと思ったら、佑樹は器用に後ろから足を伸ばしボールを俺から抜き取った。

 

「油断はいけないよ、カズヤ」

「ふん…」

「あっ!」

 

 俺はすぐさま佑樹に追いつきボールを奪う。佑樹は取るのはうまいが、ドリブルはてんでダメだからな…。大口を叩くのはそれが上手くなってからにしろよ。

 

「死ねぇーーー!」

 

 瞬間、天満が縁起でもないことを言いながらスライディングしてきた。

 声に圧倒され思わずボールから離れてしまい、天満がそのボールを蹴り飛ばした。

 木々の間に入るボール。

 

「あ~あ。……僕が取ってくるよ」

 

 天満が取りに行くはずなのに、何故か佑樹が取ると言い、佑樹は公園の整備されていない木々の中に入って行く。

 そして、しばらくすると…

 

「あったあった!……? 何だ、これ?」」

「ようやく見つ………!」

 

 大きな声を上げた佑樹に反応して俺は振り返った。それと同時に視界に入った物に驚く。…どうして、ここにあれがあるんだ…!

 

《マスター!!》

 

 今の今までサッカーの邪魔だったのでベンチに置いていたネックレス――もといリゼットが念話で大声を上げた。

 

「佑樹! 今すぐその青い石を捨てろッ!!

「えっ?」

 

 佑樹が手にしていたのはジュエルシード。しかも発動しかかってる。このままだと佑樹がジュエルシードの発動の媒体になりかねない。

 

「うわッ!」

「佑樹!!」

 

 急に光り輝き出すジュエルシード。

 俺は確信する。―――――ジュエルシードが覚醒しやがった…!

 その事に気づいた俺は天満を放って、すぐさま佑樹に駆け寄り、手を伸ばすが、ジュエルシードが発動した余波で吹き飛ばされる。さらにジュエルシードと佑樹が共鳴し、本格的なエネルギーの波動が生まれさらに吹き飛ばされ、木に激突した。

 俺の意識はそこでブラックアウトした。

 

 

◇◆◇

 

 

 俺は吹き飛ばされた痛みに耐えつつも目を開ける。

 そこに映っていた物は気を失い倒れている天満と得体のしれない()()だった。そう何かだ。人間の形をしているが、人とは思えない雰囲気を感じる。

 

「がっ…!」

 

 いきなり視界が真っ黒になり、体が浮遊している感覚に陥る。

 

(何が…起きた…? 一体…何…をされ…た?)

 

 俺は痛みをこらえつつ体制を立て直す。

 

「ッ!!」

 

 俺が体制を立て直すと同時に何かはまた俺の前に移動してきて、また視界が真っ暗になる。

 

(見えない…!)

 

 そう見えないのだ。おそらく、攻撃されているのだろうが移動の予備動作から、攻撃の動作までもが一切見えない。目が良く、訓練で動体視力が高い俺でさえまったく視えない。

 

《リゼット…どこだ!》

 

 途切れとぎれの意識の中、リゼットに念話を送る。返事が帰ってくるのはすぐだった。

 

『マスターーー!!!』

 

 リゼットの機械には似つくわない可愛らしい声が俺の耳に届く。さすがインテリジェントデバイス。念話で送るよりも声出して場所を特定した方がわかりやすいもんな。

 リゼットの位置は俺の斜め奥のベンチのようだ。

 

(どうにかしてあそこまで行かないと……)

 

 そう考えていると運良くリゼットがいるベンチ付近に吹き飛ばされる。…今しかない。

 俺は軋む体にエネルギーを送り込み、ベンチに向かってダイブする。俺がリゼットを掴んだのと何かが俺の目の前に移動したのは同じタイミングだった。

 

「リゼットッ!!」

『はいっ!!』

 

 俺はセットアップしセットアップ時に出現する剣で何かの放ってきた攻撃を受け止める。…重たい。風のクッションを使って、手から来る衝撃は和らいでいるはずなのに、手に来た衝撃は凄まじかった。

 

(やっぱりな…)

 

 心の中で確認する。こいつは一直線的な攻撃しかしない。俺だってセットアップするまでフルリンチされていたワケじゃない。ちゃんと何かの動きを分析していたんだ。

 

(そうとなれば、こっちのもん……)

 

 俺はすぐさま土を操り、何かの動きを封じて、剣を体に突き立てようとした。が、顔に刺さる直前、その切っ先が止まる。何かの頭にくっついてるもの。それはジュエルシードだった。

 

「お前、もしかして佑樹なのか……?」

 

 何かの顔は佑樹の顔だった。その驚きで集中が途切れてしまい、何か―――佑樹にしていた枷が破壊され、攻撃される。

 

「んな!?」

 

 それを剣でガードしていたのにもかかわらず体を吹っ飛ばされる。だが俺もさっきとは違ってセットアップしている。

 俺は吹っ飛んでいる最中、上昇気流を下から吹かせ、空に逃げる。

 

(ここまで来れば攻撃できないはず……)

 

 いくらジュエルシードの恩恵があるとはいえ、空は飛べないだろう。そう考え、空に上がったのだ。

 

『マスター! どうしてあの時、攻撃を止めたんですか!!』

「……」

『マスター!!』

「俺も分からない…どうして剣を振るのを止めたのか俺でも分からない。でも、大切な友達に…数少ない大事な友達にいくらスタン設定している剣とはいえ向けたくないよ」

 

 それに能力はスタン設定とかできないし。

 

『でも……やらないとやられちゃいますよ! 明らかにあっちはこっちを殺す気です!!」

 

 そう、そこが問題なんだ。暴走しているのは知ってるが多少なりとも干渉できるはずなんだ。でもその気配がまったくない。まるで佑樹自身がそれを望んでいるような―――――

 

『マスター!!』

「…ッ!」

 

 考える事に集中しすぎて自分に飛来する物体への反応が著しく遅れる。だがリゼットの助けもあり危機一発で回避する。

 

「もしかして木を投げてきたのか!?」

『ええ、そのようですね』

「…考える時間は終了のようだ。行くぞ…リゼット」

『でもどうするんですか? まだ決心はついていないんでしょう?』

「それでも、俺は――――」

『…はぁ~、分かりました。取り敢えず時間稼ぎをしましょうか』

「…いつも悪いな」

『いえいえ、そのための私ですから』

「そうか…」

 

 俺はいいデバイスを持ったな…そんなことを心で思いつつ俺は佑樹に向かって前進し始めた。

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