魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~ 作:れお3
「スターライト……ブレイカーー!!」
桃色の閃光がバインドで拘束されているテスタロッサを貫く。その閃光が通り過ぎると、テスタロッサは気を失ったようで、海に向かってまっ逆さまに落ちていく。
「おっと……!」
俺はすぐさま、風を操り、遠くにいるテスタロッサを風のクッションで受け止める。
その後高町が急いで、テスタロッサの下に行き、抱きかかえた。
「勝負ついたな……」
「だね」
ユーノも同じように言う。ちょいと今の戦闘の感想を一つ……。高町さん、えげつねーッス! 砲撃をテスタロッサに連続で二回も撃ち込むなんて、他の人にはできないことを平然とやってのける! そこに痺れるぅ! 憧れ……ねーよ。
俺がそうやって一人ノリツッコミをしていると、綺麗な日の出をしていた空が急に暗くなり始めた。
「フェイトちゃん!」
瞬間、テスタロッサに雷が落ちる。すると、テスタロッサの周りを旋回していたジュエルシードが雲の彼方へ消えていった。
「フェイト!!」
今まで静かに戦いの行方を見守っていたアルフが急いでテスタロッサの下に飛んでいった。
その後、予期せぬ事が起きたので、動揺しながらもテスタロッサをアースラで保護するため、艦に戻った。
◇◆◇
『私はあなたが……大嫌いだったのよ!!』
突如告げられた一言。それはフェイトちゃんが大好きだったお母さん――プレシア・テスタロッサから告げられた一言だった。
わたしたちが艦に戻った時には既に時の庭園に武装部隊が突入していた。そして武装部隊は最深部でとんでもない物を見つけた。
それはフェイトちゃんそっくりの子。名前はアリシアと言うらしい。事故で亡くなっているらしく、フェイトちゃんはアリシアの代わりに造られた
隣にいるフェイトちゃんが崩れ落ちる。私とユーノ君は慌てて近づいて様子を伺うが、橘君はボーっとしていて下を見てうつむいたまま動かない。……橘くんの手から何か落ちている。
(あれは……血?)
よく見れば体がわなわなと震えている。わたしも許せない気持ちでいっぱいだけど、橘くんは情深いからわたしよりも許せないんだろう。けどそれを言葉に出さないように堪えて、拳を握り締めているから手から血が……!
『私はアルハザードで全てを取り戻す!!』
途端に地面が揺れ始める。そしてモニターにはおびただしい数の物体が浮かび上がる。
「魔力反応多数! どれもAランク以上です!!」
エイミィさんが驚きの声で言葉を発する。
「取り敢えず、フェイトさんを救護室に!!」
リンディさんに言われ、私たちは救護室に向かう。その途中ですごい形相で走っているクロノ君と会った。
「僕は今からプレシアを捕獲しに行くが君たちも来るかい?」
「行きます!!」
私は即答する。
「僕も! アルフはフェイトについてて。……カズヤはどうする?」
「俺も行く……!」
橘くんは怒りを堪えるように言った。
「そう……」
「じゃあ行くぞ!!」
「「はい!!」」
「……」
◇◆◇
ワープしたところはおびただしい程の数の敵がいる時の庭園の入口だった。既にみんなセットアップしており、戦いに集中し始めていた。
「そこを……どけぇぇぇぇッ!!」
俺は我慢の限界に達して、咆哮しながら巨人たちに突っ込む。
「橘くん!!」
高町が俺を引き止める声が聞こえるが、そんなの知った事じゃない。俺はあのクソ野郎――プレシアを一発ぶん殴らないと気がすまない。
(最初から嫌いだったのに、仮面付けてテスタロッサを利用して……! そのくせ用済みになったら捨てる? ふざけんな……ざけんなよ……!)
目の前にいた機械仕掛けの巨人が斧を振りかざしてくる。
俺は足に風を纏わせ、爆発的なスピードで巨人の足に接近し、剣で両足を切り裂く。そのまま後ろも見ず、扉も切り裂き、庭園の中にはいる。
その後は、魔力量のことすら考えず、風を足で踏み、まさに風のように巨人の足の間を次元震でボロボロの床を縫って通っていく。
「ギィアアアアアアアアアアア!!」
途中、広間みたいな所で一際でかいのに遭遇する。他と同じように足をくぐり抜けようとするが反応速度が速いのか、俺が通るタイミングに合わせて、棍棒を振り下ろしてくる。
『マスター、間に合いません!!』
「ちィッ!!」
リゼットに言われ、後ろにバックステップをする。棍棒はさっき俺が居たところを潰し、床に穴を開ける。
「邪魔なんだよ!!」
すぐさま、体を捻りながら跳躍する。その回転力を剣に乗せて思い切り、横薙ぎに剣を大巨人のドテッ腹へと動かす。
――バシィィィィィン!!
だが、見えない何かに阻まれて、空で剣が停止する。
『バリアが張られているようです。高威力の技であれば突破できます』
「だったら、これで……エアロブレイクッ!!」
左手から風の砲撃を発射する。バリアにぶつかり一旦静止するがしばらくすると、バリアを突き破り、大巨人をも貫いた。
「……行くぞ!」
その後、しばらくリゼットにプレシアの位置を特定しながら進んでいると一際大きな扉にたどり着いた。
『この奥です……プレシア・テスタロッサがいます』
「……」
俺は無言で扉を無数に切り刻む。扉の欠片が落ちる中、奥には俺の目当ての人物が見えた。
「あなたね……。異様に早いスピードでこの時の庭園を駆け抜けていたのは」
「……」
プレシアがこっちに気づき話しかけてくる。だが俺は相手の話も聞かずに、プレシアに向け全速力で走り剣を前に構え、突きを放つ。
「あら」
俺の攻撃を難なく避けるプレシア。
「いいわ……正直暇を持て余していた頃なの。そんなチンケな魔力じゃ長くは持たないだろうし、少しだけ遊んであげる」
「俺はお前を許さない……! お前のあの話は本当にくだらなかったぜ。アリシアはもっと優しかった? アリシアはいう事を聞いてくれた? そのくせあなたは……っていったよな。当たり前だろ。この世に同じ人なんていないんだ。同じ記憶を持ってもそれは別の人間なんだよ」
「お黙りなさいッ!!」
プレシアはそう言いながら杖を出現させ、アリシア・テスタロッサが入っている容器に硬そうなバリアを展開する。俺も剣を構える。
大きな戦いになりそうなので一旦深呼吸をする。俺は、大魔道士が相手だというのにすごく落ち着いていた。ガラス張りの床なので、地面では激しい技を使えない事や、今までプレシアが使った魔法を思い返すなど、至極単純に落ち着いていた。負けられない戦いだからこそ冷静になってるのかもしれない。
俺はすぐに空中に舞い上がる。この行為は風しか扱えなくなりリスクは高くなるが、その分強力な技が撃てる。
プレシアも俺を追いながら空中へと舞い上がる。
「死になさい!」
『フォトンランサー・ファランクスシフト』
プレシアは普通は長い詠唱の元発動するファランクスシフトを無詠唱で放ってくる。だが俺も二度見た攻撃をくらう程バカではない。
「風よッ!!」
俺は左手に風を集束させる。時には避け、時にはその左手と、右手の剣で、何度も飛来してくるフォトンランサーを打ち落とす。
「あいつをあいつとして見ろよ! アリシアではなくフェイトとして! そうしたら何か変わるんじゃないのか!?」
――バシィィィィィィッ!!
フォトンランサーの弾幕を抜け、俺のクロスレンジにプレシアが入り込む。すぐさま剣を上から下に斬り下げるがプレシアの防御魔法によって阻まれた。
「ふっ……」
俺の攻撃が止まるのを知ると、プレシアの口角が醜く上がる。
不吉な予感が体を襲う。俺は、すぐさま360°全てに風のバリアを展開した。
『サンダーレイジ』
「ぐッ!」
頭上から雷が落ち、俺のバリアに直撃する。即席で作ったため、当然耐えられるわけも無いが、左手の風を雷に打ち付けて軌道をずらす事に成功する。
「……ッ!!」
「私はアリシアしか愛せないの。あの子なんかは愛せないわ」
『サンダースマッシャー』
だがプレシアもその間に何もしないわけはない。近距離からのサンダースマッシャーが俺の体を狙う。反応しきれず剣で受け止めるハメになる。
《マスター、ここは少し被弾しても攻撃に繋げるべきです》
念話でリゼットがアドバイスをしてくれる。そうしたいのは山々だが相手の威力がどんどん上がっていくのだ。正直、剣を放してしまそうなほどに。
「ウッ……! ごほっ! ごほっ!」
《今です!!》
急にプレシアの魔法が消滅する。リゼットはそのチャンスをここぞと言わんばかりに声を張り上げた。
「このわからず屋が!!」
俺はプレシアに突進する。もちろん防御魔法によって阻まれるが、俺はすかさずバリアを左手で掴んだ。拒絶反応で俺の手がジュウジュウと焼け始める。
「エアロブレイクッ!!」
ゼロ距離からのエアロブレイクをプレシアにぶつける。プレシアのバリアはいとも簡単に壊れ、俺はゼロ距離の反動で、プレシアは俺のエアロブレイクによって吹き飛ばされる。
俺もプレシアも途中で体制を立て直し、二人で視線を交差させる。
「この程度かしら?」
プレシアは口から血を流していながらも退屈そうな顔で言ってくる。どうやらあの血は俺が与えたダメージによって流れたものではないらしい。
(ゼロ距離からも効かないなんて……俺はコイツに勝てるのか?)
自分の技で怪我をした左手が動く事を確認しながら考える。
《――マスター、あれを試してみましょう。それで決めれなかったら私たちの負けですが、このままではどのみち勝てません》
「……!」
俺の目に昨日の夜のある出来事の記憶が流れ出す。
◇◆◇
『マスター、お話しておきたい事があります』
それは俺が夕食を作っている最中の出来事だった。テーブルに置いておいたリゼットが不意に俺に大事な事があると言ってきたのだ。
「何だ? 急に改まって」
俺は調理を一旦止め、テーブルの近くの絨毯に座る。
『ついさっき、能力のシステムについてのバグが完全に取り除かれました。よって再度この能力について説明しておきます』
その後、リゼットが言っていく言葉は俺が知ってるものばかりだった。風・火・水・土が扱える。技名を言うと自動でその技のアシストが入るなどなど。
「おい、知ってることばかりじゃねーか。夕食作らないといけないんだから、もういいって」
『まだです。最後まで聞いてください』
「なんだよ……」
妙に真剣な声だったので踏みとどまる。
『そして、風・火・水・土にはそれぞれ最上位技があります。しかしそのどれもに詠唱が必要なのです』
「へぇ~、そんな物があったんだな。……ていうか! 決戦前日にそれ言うのはタイミング良すぎないか?」
『この能力にもこの世界の魔法と同じく詠唱で威力や技の強度を上げれるようです。それを最大限利用したのがこの詠唱技……。今から、その中で風の最上位技を教えます。まぁ、それでもアトミックショットの方が威力高いんですけど……』
「えっ……他のは?」
『マスターは風以外は操作がお粗末なので教えられません。一歩誤ると、相手よりも自分がダメージ食らうんですから」
「そうですか……」
お粗末と言われ、心底凹む俺。ポーズはorzの状態。
『言いますよ……ちゃんと覚えといてください――』
◇◆◇
「
一つ一つ丁寧に、焦らず、はっきりと唱える。エアロブレイクが効かなかった以上、アトミックショットか詠唱技かになるが、アトミックショットは時間がかかりすぎる。あいつがそれを待ってくれる事はありえない。
「
「見たこともない魔法陣ね……?」
俺の周りに魔法陣らしきものが何個も何個も出現する。
「
『ジャッジメントハリケーン!!』
リゼットが風の最上位技の名を言う。瞬間、プレシアを丸い形をした超高密度の風結界が包む。
「くッ……小賢しいマネを!!」
プレシアは魔法をぶつけ穴を作ろうとするが何度やっても風の結界は傷一つつかない。
「あいつだってアリシアには無い良いものがあったはずだ。しかも心底お前を好いていた。それをお前は無下にした! あいつの気持ちになったことはあるか? いくら虐げられてもお前に付いていった気持ちが理解できるか? できないだろうな。でも……たぶん、アリシアってやつは理解できるとおもうぜ。あいつならフェイトを家族って思うだろうからな」
俺は家族のことを思い出す。いつも俺がいるときは笑っていた母さん。何をしても俺の味方だった父さん。家には笑顔が絶えなかった。それが家族だ。本当の家族だ。
「あなたにアリシアの……私の何がわかるって言うのよ!」
俺は静かに剣を頭上に上げる。刹那、凄まじい量の風が剣に集まり出す。剣に集まる風は竜巻を形成し始めた。そのデカさは俺が今まで出した竜巻のどれよりもデカかった。
俺はその剣を風結界へと投げる。剣が結界の中に入り込む。剣がすんなり入ったのは、風結界は中は一切の干渉を受けないようになっているが、外の干渉はあっさり受け付けるからだ。
「救いようが本当にねーわお前。……ハジけろ!!」
手を結界へと突き出し、その手をゆっくりと握り締める。途端に、結界内の剣が凄まじい音と共に、風を解放して大爆発する。すごく頑丈なハズの風結界もひび割れだし、風が漏れる。最後に風結界自身が爆発を起こした。
その爆発の中、落ちていく人らしきシルエットの影が見えた。
「はぁ……はぁ……魔力切れだ……」
俺は、風が解除され静かに地面に落下した。受身を取ったので、かろうじて怪我は無かった。
「――なかなか面白かったわ」
「『!?』」
急に後ろから声が聞こえた。聞きたくなかった声だった。倒したはずだった。
「どうしてって思ってるわね……? 答えは簡単、最初から幻術魔法であなたを遊んでいたの。あの杖を出した時からね」
「なん……だと……?」
プレシアはゆっくりと倒れている俺に手を向ける。
『サンダーレイジ』
辺りが真っ白になり、意識が遠のいていく。必死に意識を保とうとするが、さらに二発目の雷が落とされ、俺は意識を失った。