魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~ 作:れお3
「ん……? ここは……」
目を開けると、辺りは白一色だった。前にも来た事がある場所。神じいさんがいるところだった。
「神じいさん、俺は……死んだのか?」
「さぁ、どうじゃかのぉ?」
俺の前で、じいさんは、顎から生えているひげをさすりながらそう返してきた。
「ごまかすなよ……。だってこんな所、死ぬか、あんたが、俺が眠っている間に呼ぶしか来られないからな」
俺はそう言い放つが、じいさんはニヤニヤしながら俺を見てくる。
「……なんだよ?」
「いや~、悪いのぉ。さっきまであんなに激昂してたのに、妙に落ち着いているから……スマンのぉ」
俺が不機嫌そうに言うと、じいさんは反省する気ゼロの返事を返してくる。正直、一発、鉄拳制裁をしたかったが今は戦いに負けたショックで、すぐにその気持ちは消え失せた。
「スマンが、お主の戦闘はわしも見させてもらった。正直に言う。あんな終わり方はこっちにとっても面白くない」
「……急にどうしたよ、じいさん」
「橘和也よ。お主はここで諦めていいのか?」
「どう言う意味だよ?」
「……」
じいさんは俺が聞き直すと、静かに黙り込んで俺をじっと見つめてくる。
「実力が足りなかったんだ。仕方がないさ」
幻術なんてチンケな物にかけられたことすら気がつかないくらい差があったんだ。
「わしが聞きたい答えはそういうものじゃない」
「だったらなんだって言うんだよ……!」
ややこしいのは抜きにして欲しい。そう思い、声に力が入り、少し怒りの感情を混ぜじいさんに向けてその声を発した。
「悔しくはないか? 勝ちたくはなかったか? 倒したくはなかったか? 救ってやりたくはなかったか? 家族というものを教えたくはなかったか? ……お主はここで諦めていいのか?」
じいさんは一つ一つ丁寧に言ってきた。優しく、強く、暖かく、正しく神のように。
「……そりゃあ、諦めたくなんかないさ……ッ!!」
じいさんの気にやられたのだろう。本音を吐き出してしまった。それと同時にさっきまでの気持ちも体の奥から湧き上がって来る。
「その声が聞きかったんじゃ」
じいさんは微笑みながら言ってきた。仏のような万円の笑みで。
そして俺の胸に掛けられているネックレス――リゼットのコアから光が漏れ出し、ある言葉を発した。
『ロック解除――システムチェック開始』
「これは……?」
随分と前に言われた事を思い出す。初めて能力を使った時、イメージトレーニングをした時に言われた事。――ロックが掛かっているシステムがある。
「本当は後ちょっと待って欲しかったんじゃが仕方があるまい。……覚えているかの? これは想いの力で強くなると」
じいさんの手から光が出ている。
「ぁ……ああ」
「さっきのお主の想いにはコレを起動するほどの力があると見受けられた。……受け取るがいい。運命を書き換える力を」
『チェック完了。すこしバグがあるが許容範囲内。”システムリライト”スタートアップ』
「さぁ、行ってくるがいい。お主はまだ死んではいない。わしが気絶した時にすぐ呼んだからのぉ。こっちでの時間はあの世界では一秒も経っとらん」
「待ってくれ、じいさん!」
俺は光で目が見えないながらもそこにいるであろうじいさんに向け、手を伸ばす。
「心配せんでもそのシステムの使い方は頭の中に送っておくから心配せんでもいいぞい。後最後……それを維持できる時間は今のお前さんじゃ5分がいいとこじゃろう。気を付けるんじゃ」
最後、その言葉を聞くと、一気に意識がどこかへ吸い込まれた。
◇◆◇
「死になさい」
目を開け、前を見ると、プレシアが今まさに俺に向かって殺傷設定の魔法を心臓へ打ち込むところだった。
『フォトンランサー』
「……ッ!!」
間一髪で、必死に体を回転させ、フォトンランサーの射線上から逃れる。さっきまで俺がいた場所の地面は穴があいており、さっきまでそこに居たら明らかに死んでいた事を物語っていた。
「あら、気がついていたの?」
「ああ、おあいにくさまでな。……残念だったな。もう少しで殺せそうだったのに」
「別に構わないわ。魔力が無いあなたなんて取るに足らない存在よ」
プレシアは本当に、残念そうな顔をしてなく、虫けらを見るような目でこちらを見ている。
「それは、どうかな……?」
「なんですって……?」
《マスター、見せてやりましょう。新たな力を》
《ああ、ギャフンと言わせてやる》
リゼットの励ましに、俺は相槌を打つ。プレシアは俺の言葉が気になったようで、怪訝な表情を浮かべていた。
「システムリライト――」
記憶の中にはすでにこの力の知識があった。神じいさんが入れてくれたのだろう。その記憶を辿り、発動キーを発する。
「リ:コード。ブレイカー」
『承認。リライト――
刹那、リゼットから赤色の光が放たれる。その光は球体状になり、俺を包んだ。
◇◆◇
『
その声を聞いたとき、少し後悔をしていた。
「あの力は使い方を間違えると、自分を死に追いやるからのぉ……」
一人、白い空間で自分のヒゲをさすりながら呟く。
「じゃがのぉ……。あの時あんなあっさり死なれたら困っとったし……」
それは本当だ。せっかく転生してやったのにこんなに早く死んでもらったら後味が悪すぎる。
「もうちょっと、あのシステムはチェックしたかったのじゃがのぉ」
使用者に絶大な力を授けるあの力――転生者に会った時用の切り札。まだ先だろうと思っていたらこのザマだ。絶大な力なら、その逆、絶大な障害にもなり得る。だから入念にやっていたのだが、まさかこんな事になろうとは。
「おっ、どうやら成功のようじゃ」
戦闘を映しているモニターを見て、安堵の息がそっと漏れた。
◇◆◇
光の球体の中はすごいことになっていた。辺りにはホログラムの数字が飛び交い、それがリゼットのコアを出たり入ったりしている。
時間が経つと、まず変化があったのはバリアジャケットだった。白いロングコートも黒いインナーシャツもズボンも全てが光と同じような赤――いや紅色に変わる。防具類は黒に変わり、位置も形も変化する。
次に変化したのは体だった。なんというか、その力が溢れてくるって感じだ。魔力のような感じもするしそうじゃない感じもする。
『マスター、完了です。……行きましょうか』
「ああ」
目の前の光を力みなぎる右腕で握り締めた剣で切り裂く。瞬間、数メートル先にいるプレシアと目が合う。
「影剣……」
プレシアから視線を外し、剣を前にかざす。すると剣の影から波紋が立ち始め、最終的には影のように真っ黒な剣が俺の眼前に浮かび上がった。
それを左手で掴み、持ち上げる。左手には漆黒の剣。右手には純白の剣を持ち、腕を伸ばし、リラックスした状態になる。
「二刀流ね。楽しめそう」
俺は右手の剣を静かに持ち上げ、プレシアに向ける。
「さぁ、第二ラウンドといこうか」
「いいわ。来なさい……」
プレシアは不気味に笑いながら、デバイスを変形させる。
「じゃあ行くぞ……!」
体を傾け地面を軽く蹴る。だがそれだけでプレシアの懐に入るには十分過ぎる程のスピードと跳躍をみせた。
そのまま、驚いていていて動けないプレシアの腹に右手の剣を横薙ぎにお見舞いする。一瞬、バリアによって動きを止めれたが、左の剣も右の剣と同じ部位に薙ぐことによりいとも容易く打ち破り、プレシアに向け、二刀の刃が迫る。
だが、プレシアも大魔道士。瞬時に杖をその軌道上に入れてきた。しかしあまり意味は無く、野球ボールをバットで打つみたいにそのまま俺の剣で吹き飛ばされ、壁に激突した。
「どうしたよ? そんなもんか?」
「……あまり私を舐めないことね……!」
「……へぇ」
プレシアは俺の挑発がカンに触ったらしく、壁から這い出て空中へと舞い上がった。そこからフォトンランサーの一斉掃射が行われる。
「……裂衝牙!!」
静かに左に体を捻り、剣を目一杯後ろに回す。そこから全力で体ごと剣を、右に振り抜く。プレシアのフォトンスフィアに向けて空を斬る。刹那、そこから衝撃波が生まれ、プレシアのフォトンスフィアはいとも容易く崩壊した。
実はこの技、魔力を使用しない。ブレイカーフォームの時の一つ一つの剣の重量は30Kgを軽く超えている。故にそこから、放たれる斬撃は旋風を伴う。それを一点に飛ばすことにより衝撃波として出せるのだ。
「あなた、一体何者?」
「ただのしがない少年さ」
「嘘はつかないことね。ただの少年がここまで戦えるわけがないわ」
「そうですか……!」
話を打ち切り、プレシアへ跳躍する。時間があまり無いんだ。もうすでに二分経っている。
「はぁぁぁぁ!!」
プレシアに接近し、両手の剣を一気に振り下ろそうとする。途中、何個も魔力弾が飛来してきたが、全て剣で叩き落としていた。
『エクスディフェンダー』
プレシアは防御陣を展開してきた。俺も構わず、振り下ろす。
――バリィィィィィ!!
今度のバリアは強固なようで、二つの剣でも破れなかった。そしてバリアは魔力を一点に集中し始め……。
『ヴァリアントスフィア』
極太の魔力弾が放たれた。いくらこの状態でもゼロ距離からの攻撃は対処できない。
俺はその魔力弾と共に吹き飛ばされる。
「弾けなさい……!!」
威力が弱まり始めた所をプレシアは追い打ちをかけるように魔力弾を爆発させた。その爆風でさらに吹き飛ばされる。
「ッ!!」
壁に激突する直前、体をひるがえし、壁に対し垂直に着地する。反撃するため、すぐに跳躍しプレシアに向かって飛ぶ。
『サンダースマッシャー』
だが、プレシアはすでに次の手を打っていた。俺に黄色い閃光が迫ってくる。
「裂衝牙・十文字!!」
さっきは一刀で放った衝撃波を二刀で十字に放つ。閃光と衝撃波がぶつかった瞬間、大爆発が起こった。
その爆発にプレシアも俺も巻き込まれ、地面に落下した。
「「はぁはぁ」」
二人共、息絶え絶えしながら視線を交差させる。
「あまり調子に乗らないことね!!」
プレシアを中心に薄い光の膜が広がっていく。これは見たことがあった。突入した局員を全員戦闘不能に陥れたエリア全体魔法……!
《マスター!!》
《分かってる!!》
「……システムリライト」
前にも言ったが、どんな物にだって弱点は存在する。これもそれは存在する。だが、弱点を補う事は出来る。
静かに唱える。だが急がないと、さすがの俺もヤバイので少し早口になってしまう。
「リ:コード。……ウィザード!!」
『承認。リライト――
「死になさい!!」
プレシアの叫びと共に逃げ場のない落雷が降り注ぐ。光の雨が降った後は辺りは煙で何も見えなくなった。
「これで……」
「ストームレイド」
立ち上る煙を切り裂くように現れた風がプレシアを直撃する。
「あなた……!!」
プレシアは吹き飛ばされた後、土まみれの顔で心底殺意を剥き出しにして俺を睨んでくる。
《マスター、なんとか間に合いましたね》
《ああ》
ウィザード。もう一つのリライト。簡単に言うとブレイカーが接近特化型ならこれは能力特化型。バリアジャケットがさっきの赤とは変わりにロングコートは無くなり、袖が無い青いジャケットとこれまた青いインナーシャツ。黒い長ズボンが出現し、その上に茶色のローブが重なり、魔導師的な雰囲気を醸し出している。
防具系は左手に集中していて他には一切付いていない。そして一番の特徴は……剣が変形して出来た銃。刀身が半分に折れ、柄も斜めに折れ、銃の形をしている。
「さぁ、立てよ。時間がないのはお互い様だろ」
「図に……乗るな!!」
遂にプレシアは激怒し、全ての魔力を杖に集めだした。あれはおそらく、ごく単純の魔力砲だろう。
俺もそれに習い、プレシアに銃を向ける。
《リゼット。この状態はいつもの技の上位互換技を使えるんだろ?》
《はい》
《よし。じゃあアトミックショットの上位互換、行くぞ》
全ての力を銃の先端に集め始める。この技は高町と同じく辺りの魔力を収束して放つ。いつもはその作業に時間がかかり発射が遅れるのだが、今は違う。この銃は収束のアシストをしてくれるのだ。
「これで終わりよ……」
プレシアは杖の先端をこちらに向けた。その先端には凄まじい程の魔力が集まっていた。
「ああ。そろそろ幕引きと行こう」
俺もさらに力を送り込む。銃の先端にはプレシアの魔力にも劣らない程の赤い光が集まっていた。
《……マスター、発射可能です!!》
「消えなさい!!」
「アトミック……ブラスタァァァァァァァァッ!!」
一人からは紫の光が、一人からは赤色の光が放たれる。その二つは両者の間で激しい衝突音と共にぶつかりせめぎ合う。
だが、それも長くは続かなかった。片方の光がもう片方の光を侵食し始めたのだ。侵食され始めたのは――赤い光。
《ちっ……! 初めて撃つから安定しない……》
《そんな……ウィザード状態でも勝てないなんて……》
リゼットの言葉で、俺の中に一つの方法が浮かび上がる。
《サンキュー、リゼット。良いこと考えついた》
《えっ?》
そうだ。今はウィザード状態。ていうことは……!
「……ッッ!!」
両手で掴んでいた銃から無理やり左手を放す。放したとき、体制が大きく崩れたがなんとか耐える。
そして放した左手を大きく開く。
「エアロ……」
左手を前に向け……。
「ブレイクッ!!」
竜巻を放つ。その竜巻は俺のアトミックブラスターを膜のように包み、攻撃と共にアトミックブラスターの安定にもなった。
ウィザードフォームの時は能力の制限が解除され、二つまで、別々の物を操れる。さっきリゼットからウィザードという単語を聞いて思い出した。
その活躍により、プレシアの魔力砲を押し返し始める。
「何故? 何故私がこんな奴に……?」
「……プレシア。お前とは覚悟が違うんだよ。その差がこの勝負を分けたんだ!」
その言葉を言うと、俺は左手にも右手にも力を込めた。それと共鳴するように二つの技の威力も上昇していく。そして遂には魔力砲全てを飲み込み、プレシアも巻き込んだ。
「……」
戦いは終わった。それを物語るように辺りは静まり返っていた。さっきまでの戦闘はまるで過去の遠い話のようにさえ感じるほど静かだった。
その中、俺はプレシアを見つけ出しそっちに向けて歩き出す。
「何故? 何故?」
プレシアは壊れたようにひたすら呟いていた。
「うぐッ……!!」
『マスター!!』
歩いている途中、胸から何かがこみ上げてきた。耐え切れずこみ上げた物を咳と共に吐き出す。
出てきた物を確認する。そこにあったのは血だった。
しばらくして、急な脱力感が体を襲う。
「システムリライトの副作用か……」
初めて使ったから消耗が激しかったのだろう。事実、まだ5分経っていない。
『セットアップ強制解除』
リゼットが気を利かせて、セットアップを解除してくれるが気休め程度にしかならずその場で倒れうずくまる。
『マスター、大丈夫ですか!?』
「ああ、なんとか……」
リゼットにはそう返すが、正直な所今すぐにでも気を失ってしまいそうだ。だがまだ気絶するわけには行かない。
ものすごく重たい体を持ち上げ、プレシアの下へと辿り着く。
「よぉ、俺に負けた気分はどうだ?」
必死に痛みを堪え、プレシアに平静を見せつける。
「あなたなんかに負けるなんて何かの間違いだわ……」
プレシアは動けないようで、壁にもたれ掛かっているだけだった。
「いいや、事実だ。それよりも聞かせてもらおうか。どうしてフェイト・テスタロッサが嫌いなのかを」