魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~   作:れお3

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第13話「虚数空間」

「フェイトに怒りを覚え始めたのは、フェイトを作って間もない頃よ……」

 

 プレシアはおもむろに話し始めた。

 

「最初はアリシアの代わりとして見ていたわ。フェイトが愛おしくてたまらなかった。けど……フェイトがアリシアとは違う事がわかると憎たらしく見えるようになったわ」

「アリシアの……アリシアの妹として見れば良かったじゃないか」

「そんなことは出来っこな……ごほっ!」

 

 プレシアは喋っている最中、手を口に当て咳ごみ口から血を吐いた。ドロドロとした赤い液体がプレシアの手から流れ落ちる。

 不意にその手が素早く動く。その手は俺の腹で止まった。

 

「何を……?」

 

 ニタリとプレシアが笑う。その顔を見た刹那、紫色の光によって俺の体は吹き飛ばされた。バリアジャケットも何も展開されてない状態での魔力波。さらにシステムリライトの副作用。その二つが相まった攻撃に吹き飛ばされ、床を何度もバウンドした後、突出した岩に激突した。

 

「……かはッ!!」

 

 気絶こそはしなかったものの、体がまったく動かない。少なくとも一つは体のどこかの骨がイったはずだ。呼吸がとてもしづらい。するたびにズキンと胸あたりに痛みが走る。

 

「でも今更遅いのよ! だから私たちは全てを取り戻すのよ。こんなはずじゃなかった世界を越えてアルハザードで!!」

 

 その時、壁が爆音と共に吹き飛び、中から人が出てきた。

 

「世界はいつだってこんなはずじゃない事ばっかりだよ!!」

 

 現れた人はクロノだった。見る限り負傷しており、ここまで来るのに苦戦していた事を物語っていた。

 

「母さんッ!!」

 

 そして今度はフェイトが現れた。プレシアはフェイトを見るととても驚いていた。

 そのままフェイトは前へと歩み出る。

 

「私はアリシア・テスタロッサじゃありません。あなたが作った人形なのかもしれません。だけど、私はあなたに生み出してもらって育ててもらったあなたの娘です」

 

 彼女はプレシアに向け手を伸ばしたあと、そう言った。力強い眼差し、迷いのないブレない瞳で。

 

「……ふっ……」

 

 場違いなのは分かっているが自然に笑みがこぼれてしまった。どうやら俺は無駄なことをしていたみたいだ。何も俺が関わらなくてもコイツは自分で答えを出せたんじゃないか。あいつもよく言っていた。大抵の人間はちょっと誰かが何かをしてあげるだけで自分で自分を救い出すと。あの時はよく理解出来なかったが、今はなんとなく分かる。

 

「……くだらないわ」

 

 だがプレシアの返事は残酷なものだった。伸ばした手は虚しくも空を斬る。

 

「崩壊が始まるぞ! 急げッ!!」

 

 クロノの声が崩壊しかけている庭園に響き渡る。

 途端に皆、動きを変えて撤収に入り始めた。

 

「ここにいたんですね……!」

 

 俺の前にフェイトが現れた。そのまま負傷して動けない俺に肩を貸してくる。

 

「いい……のか? プレシアを……助けなくて……」

「かあさ……あの人の邪魔をしてはいけないから……」

「良い……か。よく聞け……」

 

 ったく、決心したのにまた揺らぐんじゃねーよ……。

 

「確かに……プレシアはお前を……娘じゃないと決めた……」

「ッ……」

 

 俺が現実を伝えると、フェイトの表情に悲しみの色が出始める。

 

「けど!!」

 

 自分が出せる精一杯の声を出す。

 

「それが何だ!? 家族って物は母親が娘と認めないといけないのか!? 違うだろう!? もしそうならこの世に家族といえるものなんてほんの少しだけだ!! 家族って物は一方通行でもいいはずだ!!」

「うん……うん……ッ!!」

 

 フェイトの目から涙がこぼれ始める。

 

「だったらお前が『自分はプレシアの娘で家族』って思えばいいだけだろう……?」

「そう……だね……。さっき決めたばっかなのにもう忘れてたよ……」

 

 俺は無傷である左手で彼女の頬に流れている涙を拭き取る。

 

「ほら答えが出たならそんな悲しい表情はする必要なんて無いだろう? せっかく綺麗な顔立ちなのにそれじゃもったいないぜ」

「…………」

 

 俺がそう言ったらフェイトは頭を下げた。だがすぐに顔を上げた。そこには女神のように優しく微笑んでいる表情があった。

 

「ああ、いい笑顔だ……」

「……何を!?」

 

 俺はフェイトを押しのける。

 

「このまま俺を背負ったまま出ようとすると絶対に崩壊までに間に合わないだろうからな……。こうするしかないんだ」

 

 俺は後ろに重心を傾けながら倒れる。後ろには大きく口を開けて俺を待っている虚数空間が広がっている。

それを防ごうとフェイトは必死にこちらに手を伸ばすが、俺はその手を弾いた。

 

「最後に良いもん見せてくれてサンキュー」

 

 笑顔で返事をしたあと、後ろに少し飛ぶ。それだけで俺は虚数空間の中に入り込んだ。前にも高いところから落ちたことはあるが、この落ち方は他のとちょっと違うと思った。なんか上から見えない壁にどんどん押されているみたいな感じだ。

 体を翻し下を見る。

 下には色があるようでないような、形があるようでないような空間だ。

 俺はそれに吸い込まれるように落ちていった。

 

 

◇◆◇

 

 

「…………」

 

 みんな、無事あの時の庭園から脱出出来たのに押し黙って、浮かない表情をしている。多分、私の顔も確認することはできないけど、みんなと同じ顔していると思う。けど、無理もない。一人欠けたのだから。私の友達であり、私の相談にも乗ってくれた橘君がいない。

 

「ごめん、なのは……」

 

 フェイトちゃんが謝ってくる。橘君がいないと気づいたのは、時の庭園を脱出したあとだった。橘君をさがしているうちにフェイトちゃんが浮かない顔をしていたので、理由を訪ねたら、フェイトちゃんはこう言ってきた。

 

「あの子は……」

 

 フェイトちゃんは頭を下げ、浮かない顔が一層濃くなった。それだけで理解できた。そのあと、どういう経緯でそうなったかはクロノ君が必死に聞き出した。

 

「…………」

 

 フェイトちゃんに「大丈夫、フェイトちゃんのせいじゃないよ」と言いたいのに口からその言葉は出ない。それほど、今は自分のからだをコントロール出来なかった。小学生で友達を無くしたのだ。ショックはとてつもなく大きい。

 

「橘君……」

 

 鉄でグレーに染まった空を見上げながらその言葉だけが出てきた。両目から一筋の涙と共に。




長らくお待たせしてすいません。何せ受験勉強で執筆時間があまり取れないものですから……。
志望校に合格したら執筆のスピードを上げるつもりですので、もうしばらくお待ちください。
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