魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~ 作:れお3
「あ~、だるいーー」
『文句、言ってないで走ってください』
「と言われてもなぁー……あー、眠たい!」
『愚痴ばかり言っても、終わりませんよ』
そう、今話していた通り、俺は今、絶賛ランニング中である。どうしてこうなったかというと、話は数十分前に遡る……
◇◆◇
『…てください』
「………………」
『…きてください』
「………ぅっ……」
『起きてください!』
「わっ! ……何だ…リゼットか…脅かすなよ…」
『マスターが何度呼んでも、起きないから悪いんです!』
「起きないって……今、何時だと思ってるんだ……」
寝ぼけ眼をさすりながら、時間を確認する。うん、やっぱりどう見ても、短い針が5の数字の方向に向いている。つまり5時ということだ。
『昨日、言ったじゃないですか。マスターは魔力が少ないんだから、体だけでも強くするために、早朝トレーニングをします、って』
「聞いていないんだが……」
『聞こえてなかっただけだと思います』
「マジか……」
『じゃあ、準備してください』
「はいはい」
リゼットに言われるがままに、スポーツウェアに着替え、俺は家を出発した。で、今に至るのである。全くリゼットの訓練意欲には、ほとほと呆れる。
「そういえば」
『何ですか?』
「俺、まだここら辺の事、よく知らないんだが…」
そう、俺はここに転生して、まだ間もないから、右も左もわからないのだ。
『大丈夫です。ここの地図は私の中にインプットされてますから』
「この道は…」
『どうしました? マスター?』
「……なんでもない」
『……?…』
俺が走っているこの道。雑木林に囲まれたでこぼこの道。――――――そう、すべてはここから始まるんだ……なのはとユーノが出会う場所だ。
◇◆◇
早朝トレーニングを終え、シャワーを浴び終えた時には既に7時を過ぎていた。
朝ごはんを食べ、私立聖祥大学付属小学校の制服を着て、学校に行く。
『マスター、私はどうすれば……』
「ちゃんと連れてくよ。リゼットに道を聞かないと迷うからな。」
『はい!』
そして俺はリゼットを制服のポケットに突っ込み、家を出た。
◇◆◇
学校に来た俺は職員室にいた。転校生だから色々しなくちゃいけないらしい。
正直、またあの神様がポカしてないか心配だったがそれは杞憂に終わった。
「今日から転校してくる、橘和也くんですね。私は……」
良かった。どうやらあの神様、上手くやってくれたみたいだな。まぁ、これくらいは普通出来て当然なんだろうけど。
「じゃあ、早速、あなたのクラスに行ってみましょうか」
ん?どうやら考えている間に話が進んでいたようだ。
《リゼット、何がどうなって、こうなったんだ?》
魔法を知らない人たちを前に普通にリゼットに話しかけることはできないので念話でリゼットに話しかける。念話は勘でやったら出来た。
《マスター、聞いていなかったんですね》
《考え事をしていたんだよ》
《そうなんですか。…大丈夫ですよ、別に気にしなくても》
《そうか…それならいいんだが》
「……痛てっ!」
「ん?」
念話しながら話していると、知らない奴とぶつかった。ぶつかられた本人は俺に怒っているのか、まじまじと俺の顔を覗き込んでくる。
俺もその時、顔を見る。俺の身長はおよそ120cmはある。だが、俺が見上げなければ見えない所からこいつは140cmはある。髪の毛から、他の毛や目の色まで全て黒だった。顔のパーツは整っており、男の俺から見ても圧倒的なイケメンだ。ただ、常に人を見下しているような口の形は気に入らないが。
「前には気をつけろ。俺にボコられたくなかったらな」
顔を近くまで近づけてメンチを切ってくる。小学生にしては良いメンチだ。
「ああ、悪かった」
「こら、黒鐘君。転校生に喧嘩を売らないように」
「は~い」
先生が言い聞かせると黒鐘という少年はどっかに行ってしまった。
「ごめんね。あの子黒鐘終君っていってね。優しい子なんだけど……」
「いいですよ。気にしてません」
「……それでは行きましょうか」
◇◆◇
「紹介します。本日からここの一員になる橘和也くんです……自己紹介を」
「えっ……た、橘和也です。これからよろしくお願いします」
「「「よろしくおねがいしますーー!」」」
教室に入った後、自己紹介をすると小さい子供の特権、大声でみんな返事してくれた。どうやら、元気のあるクラスのようだ。
「じゃあ、橘君も入ってきたことなので、席替えをしましょう」
「「「「やったー!」」」」
「はいはい、静かに。では、くじ引きで決めましょうか」
そう言い、先生はそそくさと席替え用のくじを作り始める。それにしても、まだ原作が始まっていないから、他の転生者を探し出せないな。……いや、リゼットに聞けばわかるか?
《おい、リゼット》
《なんですか? マスター》
《この学校で俺以外に魔力反応ってあるか?》
《ちょっと、待ってくださいね》
《……………いました。2人いるようです》
ビンゴ! 一人は確実に高町なのはだろう。つまり、もうひとりの方が転生者ってことになる。
《場所はわかるか?》
〈すいません。二人共、魔力がでかすぎて位置を把握できません》
二人共魔力垂れ流しかよ……。まぁ、他に魔導師がいるなんて普通は思わないからな。
《そうか、まぁ大丈夫だ。気にするな》
別に今分かっとかないといけないっていうわけじゃないしな。あまり気にする必用はないだろう。
「では前の列から順番に、くじを取りに来てください」
どうやら、ちょうどいい感じにクジ作りが終わったようだ。んじゃ、俺も引くか。
「橘くんの席は、あそこになりますね」
クジを引き、先生に見せるとそう言われた。うん窓際の席の一番後ろか。悪くないな。
席に座ると前にいた奴から声をかけられた。
「僕の名前は山田佑樹って言うんだ。これからよろしく」
「ん? ああ、これからよろしく」
いきなり声をかけられたから、少し焦ったがどうやら真面目そうなやつだ。髪は適度に伸びており、前髪は真ん中で分けている。メガネをかけすこし筋肉がついていない体つきをしている。文化系だと一目見てわかった。
◇◆◇
学校が終わり、俺は家に帰り途中だった。しかし、転校生の初日は大変だな。いきなり知らないところから授業が始まるんだから。まぁ、俺は別にもう分かるからいいんだけど。
そう考えつつ、歩道を歩いていると、ふと車椅子から転げ落ちている少女が目に止まった。
「おい、大丈夫か?」
俺はすぐさま走りより、少女を抱き起こしながら、声をかける。
「あっ、ありがとうございます」
若干なまりがある返事が返ってくる。
「それにしても、何があったんだ?」
「いや、そのちょっと段差につまづいてしまって……」
「……無理に標準語と敬語で喋らなくていい」
「あ、いいんですか?」
「ああ、年も俺と多分変わらないだろうし、喋りづらいだろ」
「おおきに、ほんま助かったわ」
「気にするな。困ってる人を助けるのは当たり前の事だからな」
「あんた、ええ人やな。名前はなんて言うん?」
「名前を名乗るには…」
「まず、自分からやな。そうやね、私の名前は”八神はやて”言います」
やっぱりか。どうりで似てるなと思った。
「そうか、俺の名前は”橘和也”だ」
「じゃあ、橘くんか、こういう事も何かの縁や。また会ったときは声かけてな」
「ああ」
「ほな、さよならや。橘くん」
そうして、車椅子の少女……八神はどこかにいってしまった。
「まさか原作前に会うとは思っていなかったな」
『そうですね』
俺は少なくとも後1年ちょっと経てば絶対に会うだろうけどな、と思いながらまた家に向かって帰り始めた。