魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~ 作:れお3
テスタロッサとの戦闘を終えた俺は、木にもたれかかっていた。……体中、ボロボロなのだ。特に手でガードしていたため両腕がやばい。血がどくどく出てくる。バリアジャケットを着ていた時に、怪我をしたため、服は無傷ではあるが。
「とりあえず、あいつらに連絡しとかないと……」
そう言いつつ、俺は今日一緒に遊んでいるメンバーに「帰る」ということを伝えるため、力が入らない手で携帯に電話をかける。
『もしもし、カズか。どうした?』
『悪い天満…みんなに、ちょっと怪我したんで帰るって伝えといてくれないか?』
『怪我って大丈夫なのか?お前』
『ああ、あまり心配するな』
『OK、じゃあ、伝えとくわ』
『頼む』
そう言い残し、俺は電話を切る。今電話したのは俺の友達、天満 凌(あまみ りょう)性格は優しいんだが……体を鍛えるのが大好きな奴だ。まあ、当然そういうことは天満は……悪い言い方なんだが、バカだ。そりゃあ、凄まじい程に。電話した理由は電話帳を開くと、真っ先にあったからだ。名字があ段だから、当たり前か……。
「……さてどうするかな。これから……」
正直、言うと家に帰る体力は残っていない。ここはかなり奥だから誰も来ることはないだろうが、ずっとここに居るわけにはいけないし、病院にも行けない。こんな姿見られたら、絶対に事情を聞かれる。それは面倒なので御免だ。
「能力使って移動……って無理か」
まだ、家に帰るくらいの搾りかすみたいな程の魔力は残っているが、今は真っ昼間だ。一般人にこの能力を見せるわけにはいけない。
「とりあえず、行けるところまで行ってみるか……リゼット、家までの最短ルートの道案内、頼む」
『分かりました。マスター』
そして、俺は悲鳴を上げる体を無理やり動かし、家へと歩き始めた。
◇◆◇
こんな血まみれの姿、一般人に見せるわけにはいかないので今俺は人気の少ない裏路地を通っている。
ったく、格下の相手に殺傷設定のファランクスシフトぶっ放しやがって、殺す気か! ……なにか、一人で抱えてそうな目をしていたので、前世の癖でつい熱くなって、勝負を挑んじまったが、今思うと、やっぱしなきゃ良かった……
どのくらい歩いただろうか……そんなのもわからないほど俺は、意識が朦朧としていた。
『マスターここを左です』
「……」
『マスター? …マスター!?』
「…聞こえてるよ…」
『…ちょっと休みますか?』
「ああ…そうする…」
俺は、そう言いつつ、裏路地の壁を背にもたれかかる。もたれかかった瞬間、俺は眠るように意識を失った…
◇◆◇
「…くん…」
「……」
「ちばなくん…」
「…ぅ…」
「橘くん!」
「うあっ!…痛っ!って、お前は…!」
俺が目覚めた瞬間、真っ先に目に入ったのは少女の顔だった。しかも、その少女は……
「やあ、一年ぶりだな……八神。一回しか会ってないのによく覚えてたな」
「やあ、じゃあらへん! どうしたんや! その傷」
「…………それは言えない」
「なんか怪しいなぁー。ま、言えない事情があるんやろうからええわ。とりあえず立てる?」
「ああ…なんとか」
さっき休憩(気絶)したから、多少は体力が回復した…と思う。しかし、ここで八神に会うとは…幸なのか不幸なのかどっちなんだろうな。
◇◆◇
八神に連れられ、俺は八神の家で手当てを受けていた。…ん? 何でって?「家も近いし、手当てもしたるから、家に来ん? YESかYESで答えてや」と言われたからだ。
「それって、来いってことじゃん…」
「ん?なんかゆったか?」
「なんでもない…」
まあ、別に家に帰るよりもこっちのほうが楽だし、手当ても自分一人では限界があったから、別にいいんだけども……
「…………」
「どうや?はやてちゃんが一生懸命手当てしてやった感想は?」
「…やり直せ…」
「…なんやて?…」
「やり直せって言ってるんだよ! 何で、何回やってもこんな風になるんだよ!?」
「ええー、文句多いなー。別にええやん。可愛いし」
「よくねーよっ!」
どうやら、俺の傷はひどいようで、八神に包帯を巻かれるのだが、こいつ、何回やっても俺をミイラ男のように包帯をぐるぐる巻きにするのだ。…動きづらいし、暑いしでデメリットしかない。
「っもう、しゃあないなー。…………ほら、これでええやろ?」
「おおー。てか普通にできるんなら、最初からやってくれよ」
「それじゃ、おもろないやん…主に私が」
「俺はちっとも面白くねーよ……」
なんでこんなにこいつは人で遊ぶのが好きなんだ…? 何ですか、関西人の性ってやつですか?
「っとまあ、手当ても終わったみたいだし、帰るわ」
「え?なにゆうてるんや。夕飯食べていきーな」
「え?…………あのさー、今更言うのは遅いんだろうけど、そう易々と男の子を家にあげんなよ。俺ら、まだ今日数えて二回しか会ってないんだぞ?なんで、そんなにフレンドリーなんだよ」
俺だって、男の子だ。女の子の家に上がり込んだら、そりゃ緊張だってする。しかも、それが原作組の美少女達なら尚更だ。
「ええやん、ええやん。………一人でご飯食べるのは寂しいんや」
「ん? 最後の方が聞き取れなかったんだが?」
「…なんでもあらへん! でどうするんや?」
八神に最後の方が聞こえないと言ったら、何故か頬を赤らめて、どうすると言われた。んー、家に帰っても冷蔵庫には何も無いしな。今日の帰りに行く予定だったのにこんなことになるなんて、微塵も思ってなかったからな。こんな姿でスーパーに行ってみろ。明らかに注目される。目立つのは苦手なので、そんなことには絶対に御免だ。て事は…
「あー、じゃあお言葉に甘えようかな」
「うん! じゃあ今から作るなっ!」
八神は思わず見惚れそうな笑顔でそう言うと、キッチンに向かっていった。……今の笑顔は反則だと思う。男であの笑顔を見たら、一発でおちると思う。
「って、何やってるんだよ…俺は……」
うわついた気持ちを切り替えるため、あたりを見渡す。大きいソファーにテーブルといった家具家電は一通りある。小学3年生一人が住むには少々大きいところだな。あれ? そもそも何で一人で住んでるんだっけ? 誰かが支援しているるため……誰かがの八神のためにこうされているのは、覚えているが、他がまったく思い出せない。前持っていた、原作の知識も時間の経過でもう主要キャラクターぐらいしか覚えていないからな。
「今は6時なのか……」
どうやら、俺は裏路地で数時間近く気絶していたらしい。もしかしたら八神以外にも人は通っていたのかもしれない。
「そういえば、何で八神はあそこにいたんだ?」
俺は、キッチンにいる八神に話しかける。普通はあんな道通らないはずだ。何か特別な理由でもあるんだろうか?
「え?別にたいした意味はあらへんよ。あっこから、家に帰ったほうが近道なだけや……できたで」
お、どうやら考えているうちに料理ができてしまったようだ。美味しそうな匂いが辺りにたちこもる。
「今回の夕食は肉じゃがや!腕によりをかけて作ったから、たくさん食べてってな」
俺の前に出される肉じゃが。他にも味噌汁にごはん、サラダなどもある。俺がついそれに手を伸ばしそうになると…
「っ痛! ああ、悪い。つい手が…」
「あかんでー。まず食べる前に言う事があるやろ」
「だな」
そして、俺たちは両手を合わせ……
「「いただきます!」」
そして俺はメインの肉じゃがを口に運ぶ
「これは…!うまいな…」
口の中に広がる肉じゃがの味。入っている物は人参や玉ねぎ、じゃがいも、肉といった定番の物だが、味が十分にそれらの食材にしみており、とてもうまい。俺も料理は得意な方だが、八神と比べると、天と地ほどの差がある。
「これ、すごく美味しいな」
「………………」
「八神、どうした?…少し寂しそうな顔してるけど…」
「ん?ああ……いや、もし私に家族がおったらこんな感じやったんかなって思ってな…」
「……家族か…」
俺にも前世には家族がいた。それはとても大好きだった母親や父親――二人はといきなり別れたため、最初は寂しさを感じなかったが、後々もう二度と会えないとわかると、すごく寂しさがこみ上げてきた。それがわかった日の夜はそりゃあ泣いた。一晩中泣きまくった。八神も同じ経験をしているんだろう。いや、もしかしたら俺以上なのかもしれない。
だからこれは、勝手に口から出てしまった。同じ痛みを共用しているからこそ出てしまった。
「……なあ、これから毎日、夕食は八神の家で食べていいか?」
「…え?」
「ん? ああ、悪い。今のわすれ……」
「…ええよ」
「え?」
「ええよってゆうたんや。……いや、むしろ来て欲しいちゅー思いがわたしん中にある」
「えっ…あの、その…」
「これから、毎晩私の家に来てくれる?……橘、いや和也くん」
うっすらと涙を溜め、こちらにそう訪ねてくる八神。…………そんな目で迫られると答えは限られてくる。
「ああ。俺でよければ」
「うん! ……あっ、でも毎晩私の家の食材使わんでよな」
いつもの人をいじる時の表情に戻り、そう言ってくる八神
「そういう気はさらさらないよ。今度は俺の手料理を見せてやる」
「えー」
「舐めるな! 俺も一応料理は得意なんだ」
「ほう…じゃあ楽しみにしとるわ」
「任せとけッ!」
たわいも無い話を続けながら、俺たちは夕食を食べていく……
◇◆◇
俺は靴を履いて八神の玄関の前にいた。
「夕食と手当て、あんがとさん。助かった」
「そのお礼は10倍返しで返してな」
「うあ、ひっで!」
そして、俺ら二人は笑い合う。…っともうこんな時間か
「じゃ、俺時間だから帰るわ」
「うん、また明日。和也くん」
「ああ、またな。はやて」
そして、俺ははやての玄関を出て家へと歩き出した。
――なあ、はやて。もしかしたらお前と俺は似たもの同士なのかもしれない。母親と父親を失った者同士。だから、たった2回しか会っていないのに、あんなに親しく接しられたのかもしれないな……。
◇◆◇
俺は、はやてと別れてから家に帰って、ソファーに寝っ転がっていた。
「何で、あんなこと言っちまったのかな……」
『本当ですよ。 何であんなこと言ったんですか?さっきといい、テスタロッサさんの時といい、今日のマスターはなんかおかしいですよ。』
「うわっ!リゼット。どうして、今まで喋らなかったんだよ。急に声を出したからびっくりしたじゃないか」
『だって八神さんは魔法を知らないから、黙るしかなかったんじゃないですか』
「あっ、そういうこと……」
『…で、何でですか。マスターはあの人たちとあまり関わりたくはなかったんじゃないですか?』
「本当に、どうしてだろうな…俺にも良くわからない…ただな、ああいう風に一人で抱え込んでるやつを見てるとな……かわいそうに見えるんだよ」
『かわいそう……ですか?』
「ああ、一人で抱え込んでも何も良いことないのによ…それで苦しんでる奴見るとな……つい熱くなって、首を突っ込んでしまうんだ」
前世の時もいつもそうだった。…………いや、単にあいつの真似事をしているだけかもしれない。前世の頃、狂気の中にいた俺を救ってくれたあいつに――
『マスター?』
「さあ、この話は終わり!さっさと、風呂入って、寝るぞ。明日も学校なんだから」
『は、はい』
今さら、あの人の事を考えたって仕方がない。もう、あいつはこの世界は当然、前世にもいないのだから……
◇◆◇
風呂から上がった俺は、ベットで寝る準備に入っていた。…いやぁ、それにしても、怪我をしたあとの風呂って嫌だよね。傷口にこう…ズキッっとくるよね。…流石に両腕はビニール巻いて、濡れないようにしたけど。
「さあ、寝るか、リゼット」
『はい、明日も訓練があることですし』
「……マジで?」
『何言ってるんですか。当たり前ですよ』
「俺、今重傷を負ってるんだが…」
「次に襲われた時のためにも、もっと強くならないといけないんです!」
「わかった! わかったから、大声出すな! お前を枕の横に置いているから、耳元でうるさいんだよ!」
出たよ、久々。リゼット様の訓練魂。そう思いながら、俺は安らかな眠りに着いた……