とある少女、2人の物語。お互いに病気がある2人。
そのうちの1人の少女が少しずつ病気を通して成長していく。
どんなふうに成長していくのか。
生きること。健康なこと。
病気があること。病気とはなんなのか。


1 / 1
抱えるわたしと闘う君

 それは突然だった────。

 それは9月の秋頃のこと。

 

 ある日、わたしは知った。

 これから君がある事実と向き合い闘っていくということを……。それがどれだけ辛くて苦しいものかわたしは知っていたからだろうか、複雑な心境だった。

 

 わたしに何が出来るのだろうか。

 君はどこまで乗り越えてゆけるのだろうか。

 

 

 

  ▷▶︎▷抱えるわたしと闘う君

 

 

 わたしはずっと抱えていた。もう、闘おうという気すらなかった。そんな時に闘い始めた君は、がむしゃらにただもがいているようにしかわたしには見えなかった。それでも君は必死に向き合っていたんだと思う。

 

 わたしが抱えるもの、それは 病 だった。

 わたしにはいくつかの病気があった。どれも慢性的なもので治療には長い時間がかかるものばかりだった。

 

 そして…………

 

 君が闘うもの、それも 病 だった。

 君はある日から精神疾患を患った。少しずつ焦らず治療をしていくしかないのだろう。

 

 病気を抱えるわたしと病気と闘う君。

 

 病気を抱えているわたしとは対照的に、君は目の前から病気に向き合って闘おうとしていた。そんな姿を見ていると時々胸が苦しくなった。自分自身が惨めに思えた。わたしはただ抱えるという言葉に置き換えているだけで病気から逃げているのではないか。この考えがいつも頭から離れなかった。けれど、わたしがこうしているうちにも君は闘っていた。君を見ていると本当に色々な感情が湧き出てくる。その中でも、わたしは思った。わたしが闘う君を支えていかないといけないんだと……強く感じた。使命感というものだったのかもしれない。わたしは抱えて、闘う君を支えた。けれど症状に苦しむ君を見ていると何も出来ない自分が悔しかった。それでも、変わってやることはできない。辛くても君自身が乗り越えるしかないことだった。

 

 病気とは……なんなのか。

 

 そんなことを考える日もあった。けれど、そんなことは考えても答えなんてものは見つからなかった。病気とどう向き合えばいいのかと思い悩む時期もあった。一度は病と闘ったわたしだったけれど、ある時から抱えようと考え方を変えた。その時、わたしのなかで詰まって苦しめていたものがストンっと落ちた気がした。無理して闘う必要なんてない。ただ、向き合って病気を抱えて生きていけばいいんだ。向き合って抱えることも決して簡単なことではないけれどわたしにはそんな向き合い方が一番なのだと気がついた。そして、わたしはその分精一杯の思いで君を支えようと見守ろうと心に決めたのだった。

 

 生きること。

 健康なこと。

 

 健康に生きてゆけるに越したことはないと思うが、病気を抱えてるというのも人生の一つの経験だと改めて気付かされた。そう。君に。

 君が全力で闘ってくれたから、わたしは抱えることの決断が出来て、人を支えるということを学んだ。きっと、病気を通してわたしと君の心はひとつになったんじゃないかと思う。

 

 突然起きた、病というもの。

 

 それは時に人を苦しめるけれど、時に人を成長させるものだとわたしは気がつくことができた。

 

 そして、感謝したい。

 君にありがとうを言いたい。

 

 暖かい風が吹き始め、桜が咲く頃。

 わたしと君は別々の道へと進んだ。わたしは抱えながら、君は闘いながら……。

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。