ストライクウィッチーズ オストマルク戦記   作:mix_cat

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第四十八話 グラーツ攻防戦2

「淡路さん、今度の基地って、何と言うか、ずいぶん簡素な施設ですね。」

 玲子が遠慮がちにグラーツ基地の感想を呟くと、淡路上飛曹は言葉に衣着せずに酷評する。

「そうよね、粗末な施設よね。」

 グラーツ占領後突貫工事で整備された基地施設は、お世辞にも立派な施設とは言えない。シャーメッレーク基地も急造した簡素な施設だったが、それでも冬場の寒さに備える必要もあって、もう少ししっかりした建物が揃っていた。ただ、グラーツ基地の敷地は広々としていて、滑走路は幅が広くて長いから、シャーメッレーク基地より使いやすそうだ。

 

「玲子さんは、最前線勤務は初めてだよね。」

「はい。」

「これでもウィッチ隊は優遇されてるからましな方なんだよ。地上部隊は天幕だっていうから。まあ、ユニットを雨ざらしにするわけにはいかないから格納庫は必須で、兵舎はそのついでかもしれないけど。」

「そうなんですか?」

 玲子はずっと軍楽隊所属だったので、後方の恒久施設のある基地以外に勤務した経験がない。何だか、前線の人たちが粗末な施設で窮乏生活にさらされているのを尻目に、ぬくぬく過ごしてきたようで居心地が悪い。

「わたしもダキア奪還作戦で初めて欧州の前線に来たときは結構驚いたよ。だけど、千早さんや赤松さんは、最初に配属されたのが欧州分遣隊で、作戦に伴ってどんどん基地を移動したから、いつも掘立小屋みたいな兵舎だったって言ってるよ。」

 淡路上飛曹の説明で、改めて前線で戦っている人たちの苦労を知る。玲子はこうして前線の基地に勤務することで、これまでぬくぬく過ごしてきたことへの罪滅ぼしに少しはなるかと思う。

 

 そんなところへサイレンが鳴って、ネウロイの襲来を告げる。まだ施設整備が行き届いていないので、テント張りの指揮所の前に集合だ。マリボル基地にいたクロアチア隊、セルビア隊も合流したので、これまでで一番多くのウィッチが集結している。前に立つグラッサー中佐が、戦力が充実した部隊を満足そうに見回してから、口を開く。

「ネウロイが出現し、南下して来ている。直ちに出撃、これを撃滅する。」

 そこへ、任せておけばいいのに、芳佳が前へ出てきて指示を出す。

「迎撃には大村隊が出撃してください。チェコ隊も一緒に出て。」

「了解!」

 指名された隊員たちが声を揃えると、芳佳が命ずる。

「出撃!」

 大村隊の隊員と、チェコ隊の隊員が一斉に格納庫へ向けて走る。それを追うように芳佳も走る。

「あ、司令官・・・。」

 グラッサー中佐は、声をかけてはみたものの、強く引き止めるのはちょっとはばかられる。唯一芳佳に強く意見できる鈴内大佐は、生憎今ここにはいない。司令官が出撃するのはどうかと思うが、走り去る芳佳の背中を見送るばかりだ。

 

 グラーツの航空基地を飛び立つと、北へ10キロと、すぐに眼下にグラーツの市街地が見えてくる。グラーツは、エステルライヒ地域ではウィーンに次ぐ第2の都市だ。グラッサー中佐やシャル大尉の他、かつて第505統合戦闘航空団の司令を務めたグレーテ・ゴロプ大佐の出身地でもある。そのまま北上すれば山岳地帯がどこまでも続く。山岳地帯の要所要所に防御陣地が築かれて、地上型ネウロイの侵攻に備えると共に、山上には電探基地が設置され、飛行型ネウロイの襲来に備えている。この短期間でよくもこれだけ整備したものだ。作戦を重ねる中で、オストマルク軍の能力は確実に上昇して来ている。この分なら、ウィーン奪還作戦でも良い働きをしてくれることだろう。グラーツからウィーンへは北北東の方角になるので、針路を真北からやや東寄りに変えて、ネウロイが飛来する方角を目指す。ウィーンまでは直線で145キロと近いので、すぐにネウロイの集団が見えてきた。

 

 赤松大尉がネウロイ発見を告げる。

「ネウロイ発見、大型1機、小型約40機。」

「結構数があるね。電探で敵の数までわかるといいんだけどなぁ。」

 芳佳がそう言う通り、あらかじめ敵の数や大小が分かっていれば、それに合わせた編成で出撃することができる。しかし、今の電探では反射波の大きさから1機か、多数かが判別できる程度で、それ以上の情報を得るのは難しい。

「攻撃します。大村隊は左へ、チェコ隊は右へ展開。」

 千早大尉の指示で、各隊が攻撃態勢を取る。大村隊の赤松大尉と牧原上飛曹は遠距離からの狙撃の担当なので、距離を置いて対装甲ライフルを構える。芳佳は、さすがに一緒に突入はせず、赤松と牧原の後方で全体指揮だ。

 

 小型ネウロイが増速して向かって来ながら、一斉にビームを放つ。赤松と牧原が狙撃して、先頭のネウロイが砕け散る。千早以下の各ウィッチは、ネウロイのビームを回避しつつ突入し、たちまち激しい空戦が始まる。小型ネウロイの方が数は数倍いるが、歴戦のウィッチたちはネウロイのビームを巧みにかわしつつ、正確な射撃を送る。1機、また1機と、墜ちて行くのはネウロイばかりだ。まだ経験の浅い玲子とユルキュも、日ごろの訓練の成果を遺憾なく発揮して、十分な戦力になっている。

 

 しかし、残念ながら一方的に圧倒する展開とはならない。大型ネウロイが前進してくると、多数のビームを浴びせかけてくる。狙われたチェコ隊は苦戦の様相だ。大型ネウロイからのビームをシールドで防いでいると、小型ネウロイが背後に回り込んで攻撃してくる。何とかビームを防ぐので精一杯で、ネウロイを撃墜している余裕はもはやない。赤松と牧原が大型ネウロイを狙撃するが、その程度では大型ネウロイの攻撃を阻むことはできない。ここは大型ネウロイを叩かなければならないと、芳佳はツァウベルヴンダーヴァッフェを構える。

 

 そこでふと思い直すと、芳佳はユルキュを呼ぶ。

「ユルキュちゃん、ちょっとこっちに来て。」

 戦闘中に何事かと思うが、とにかくユルキュは戻ってくる。

「はい、何でしょうか?」

「ユルキュちゃん、ツァウベルで大型ネウロイを撃って。」

 そう言って芳佳はツァウベルヴンダーヴァッフェを差し出す。ユルキュは面食らうしかない。

「えっ? わたしがこれを撃つんですか? あの、一度も使ったことがないんですけれど・・・。」

 しかし芳佳はお構いなしだ。

「大丈夫だよ、ユルキュちゃんは震電を飛ばせるくらい魔法力が大きいんだから、問題なく使えるよ。」

 そう言ってにっこり笑う。無理な要求をする人だとユルキュは思うが、もちろん司令官の命令には従うしかない。それに、仲間が戦っている最中なのだ。逡巡している暇はない。ユルキュはツァウベルヴンダーヴァッフェを受け取ると、大型ネウロイに向けて構える。

 

「うん、構えたら両手に魔法力を集めて。・・・そうそう、魔法力をツァウベルに送り込んで・・・。」

 言われるままにユルキュは魔法力を送り込む。魔法力を帯びた銃身が、仄かに青白い光を放つ。

「そしたらしっかり狙って。直進性が良いから、直接狙っていいよ。目標は大きいから大丈夫だよ。」

 大丈夫と言われても、ユルキュはそんなに遠距離射撃の練習を積んでいないので、本当に命中させられるか、不安しかない。ただ、手への収まりが良いので、狙いを安定させやすいのが救いだ。照星がぴたりと大型ネウロイに合った。

「撃て!」

 芳佳の号令と共に、かちっと引き鉄を引く。思ったより軽い衝撃を残して、魔法力の塊が、目にもとまらぬ速さで光の尾を残して飛んで行く。真直ぐに飛んで行った魔法力の塊は、見事に大型ネウロイを直撃する。ぱっと魔法力の光が大型ネウロイを包んだかと思うと、甲高い音を立てて大型ネウロイが一度に砕け散る。

「命中。大型ネウロイを破壊しました。」

 自分がやったことなのが信じられないように、ユルキュはちょっと自信なさ気に報告する。芳佳がぽんと頭に手を置いて、褒めてくれる。

「うん、上手、上手。予備もあるから、今度からユルキュちゃんもツァウベルを装備することにしよう。」

「はい。」

 何だか恥ずかしいような、でも嬉しい気持ちが湧いてくる。オストマン最初のウィッチとして、胸を張れるような働きができた気がする。まあ、司令官に言われた通りにやっただけだけれど。

 

 大型ネウロイを落としてしまえば、もうウィッチ隊の優勢は揺らがない。思う様に飛び回りながら、残った小型ネウロイを追い詰め、撃墜して行く。ところがそこへ、基地からの通信がインカムに響く。

「ネウロイ接近中。西寄りを南下してきます。プラハの巣から飛来した模様。」

 それに続いて、遠距離視に優れた赤松大尉がネウロイの確認を告げる。

「ネウロイ確認。大型が8機。2列縦隊で向かって来ます。」

 ひやりとしたものが芳佳の全身を震わせる。いずれ来るとは覚悟していたが、実際に来るとやはり緊張する。プラハの巣からは、これまで何度となく明らかに芳佳ただ一人を狙った攻撃を受けており、そのために繰り返し危うく命を落とすような目に遭って来た。人類に仇なすネウロイだが、それが自分ただ一人を抹殺することを目指して襲い掛かってくるというのは、戦慄すべき恐怖以外のなにものでもない。しかし、来てしまった以上、例え逃げてもどこまでも追いかけて来ることは実証済みだ。返り討ちにするしかない。

 

 芳佳は眦を決してユルキュに指示する。

「ユルキュちゃん、わたしが大型ネウロイのビームを引き付けるから、その間に撃破して。」

「えっ? わたしが攻撃するんですか。」

「うん、そうだよ。さっきみたいにツァウベルで片っ端から撃破して。」

「そ、そ、そ、そんなこと言っても、大型が8機もいるんですよ。わたし一人で撃破するなんて、出来っこありません。」

「そんなことないよ。さっきとおんなじだよ。ツァウベルで狙って撃つ。それを8回繰り返すだけだよ。簡単でしょ?」

 こともなげに言う芳佳に、ユルキュは返す言葉もない。確かに言う通りだが、そんなにうまく行くのだろうか。そもそも、大型ネウロイはウィッチといえども一人で対抗できる代物ではなく、それが8機も一度に出てくれば、相当強力な部隊をもってしても、容易に撃破できる敵ではない。ましてユルキュは、大型ネウロイを撃破したのは、今日が初めてなのだ。

「ええと、わたしがビームを引き付けて、宮藤さんが撃破するというのは・・・。」

「うん、無理だね。大型ネウロイのビームって強烈なんだよ。ユルキュちゃんはまだ慣れてないから、1機がビームを集中させただけでシールドごと吹っ飛ばされちゃうよ。」

 そんな強烈なビームの8倍を一人で受けて無事でいられるのか。ユルキュは恐怖に打ち震える。もっとも芳佳にしてみれば、どのみちプラハの巣から来た大型ネウロイは芳佳自身を狙っているのだから、ユルキュがビームを引き付けようとしたところで、関係なく芳佳にビームを集中させることを知っている。

 

 しかし、ユルキュの恐怖など一顧だにしないように、芳佳は動く。

「じゃあユルキュちゃん、お願いだよ。慌てないで確実に狙ってね。」

 それだけ言うとさっと身を翻して、大型ネウロイの集団に向けて突っ込んで行く。ユルキュも覚悟を決めるしかない。大型ネウロイに向かって距離を詰めると、ツァウベルヴンダーヴァッフェを構えて、魔法力を送り込む。大型ネウロイは、装甲表面を赤く光らせると、芳佳に向けて一斉にビームを放つ。

「あっ!」

 芳佳が大量のビームに飲み込まれた。これでは一瞬で毛筋一つも残さずに焼き尽くされてしまったに違いない。初めて見る猛烈なビームにユルキュはそう感じるが、どっこい芳佳は生きている。

「うあぁぁぁ。」

 インカム越しに、芳佳のうめくような声が聞こえる。よく見れば巨大なシールドを展開して、ビームの奔流を受け止めているではないか。

 

「ユルキュちゃん、早く撃って!」

 芳佳の悲鳴のような通信が届く。ユルキュは慌てて引き鉄を引く。しかし、慌てて撃っては当たらない。魔法力の弾丸は空しく空を切って飛び去る。

「駄目だ、ちゃんと狙わないと。」

 ユルキュは精神を集中して、狙いを付ける。動揺が収まったわけではないが、自分が撃たれているわけではないのだ。

「落ち着いて、落ち着いて・・・。」

 そして引き鉄を引く。今度は命中、大型ネウロイの巨体が粉微塵に砕け散る。

「落ち着いて、集中して、でもできるだけ早く・・・。」

 そう呟いて自分を落ち着かせながら2機目を狙う。そしてこれも撃破。

「大丈夫、訓練通りにやれば外さない。」

 ユルキュはペイント弾の乱射を受けながら標的を撃った訓練を思い出す。あの時に比べれば、今は自分が撃たれていない分だけずっと楽だ。撃ち出した魔法力の弾丸が大型ネウロイを撃ち抜いて、3機目も撃破だ。

 

「次は4機目。」

 着実に撃墜を重ねて、ユルキュも少し落ち着いてきた。この分なら全部撃墜するのも不可能ではない。そう思ったユルキュだったが、そうは問屋が卸さない。大型ネウロイは大部分のビームを芳佳に浴びせかけつつも、それぞれ一部のビームをユルキュめがけて発射する。

「わっ!」

 突然のビームに、ユルキュは慌ててシールドで防ぐ。ほんの一部のビームを向けてきただけとはいえ、大型ネウロイの攻撃は凄まじい。シールドに次から次へとビームがぶち当たり、ユルキュは支えるだけで精一杯だ。最早攻撃を続けられないのはもちろん、一歩たりとも動けない。シールドにビームが当たるたび、全身をぶん殴られるような衝撃を受けて、とても長くは防ぎ続けられそうもない。この数倍に上るビームを浴びせかけられている芳佳は、どれほど苦しい状況かと思うが、悲しいかな今のユルキュは何一つできることはない。

 

 ユルキュの攻撃を封じた大型ネウロイは、ゆっくりと1列縦隊に隊形を変えながら、芳佳を囲むように弧を描き始める。

「まずい、後ろに回られたら避けられない。」

 以前より増加した魔法力と、強力なストライカーユニットによる魔法力の増幅があっても、このビーム攻撃を防ぎ続けるのは余りにも苦しい。シールドで受け止めているだけで、魔法力がどんどん削られて行くのを感じる。シールド越しの強大な圧力に、全身が挽き潰されそうな感じがする。この上背後に回ってビームを浴びせかけられたら、かわすことも防ぐこともできずに、一瞬で全身が蒸発してしまうに違いない。逃げ道は・・・、下しかない。強烈なビームを受け止めながら回避運動をするのは無理だから、支える力を一瞬抜くのと同時に、シールドに角度を付けてビームの圧力で急降下するのだ。芳佳はストライカーのパワーを一瞬絞って、シールドを傾ける。

 

 しかし、思ったようにコントロールするにはビームの打撃力は強すぎた。芳佳は地上に向かって弾丸のように落下する。ストライカーユニットを下に向けてフルパワーで回すが、一度ついた勢いは容易に止められない。見る見る地上が迫ってくる。

「止まれ!」

 芳佳はありったけの力を振り絞る。急速に落下したせいでビームが外れて上からの圧力が軽くなると、さすがプファイルのパワーは強力で、急激に制動がかかる。どうやら地上に激突するのは避けられた。大型ネウロイは芳佳を取り囲むように円を描く隊形をとったが、高度差がついたのでビームは正面で受け止められるようになっている。しかし、思い切り高度が下がったので、もう次の回避行動をとる余地は残されていない。

 

 小型ネウロイとの格闘戦を繰り広げていた千早大尉は、芳佳が大型ネウロイの集団にたった一人で向かって行くのに気付いて仰天した。いくら芳佳でも、たった一人であの集団に立ち向かうのは無茶だ。かつて、千早大尉はプラハの巣から飛来した大型ネウロイの攻撃から芳佳を守るために盾になったことがあったが、あの時のシールド越しでも全身が焼き尽くされるような強烈なビームは忘れられない。意識が戻った時に、自分が生きていたのが信じられなかったほどだ。

「大村隊は宮藤さんの支援に向かいます。チェコ隊、残っている小型ネウロイは任せます。」

「えーっ! そんな勝手な・・・。」

 

 チェコ隊の誰かの苦情を聞き流して、千早大尉は大型ネウロイの集団に向かう。大型ネウロイのビームが芳佳に集中するのが見える。その隙にユルキュが攻撃している。このまま撃破できるか、と期待したが、ユルキュにもビームが飛んで、攻撃は潰える。それどころか、このままではユルキュも危ない。

「ビームをこっちに引き付けます。思い切り攻撃して。」

「了解。」

 千早大尉以下、大村隊のメンバーは遮二無二突っ込んで大型ネウロイに銃撃を浴びせかける。ぱっ、ぱっと装甲が弾け飛ぶが、大型ネウロイも直ちに反撃のビームを放って来る。

「うわっ。」

 至近距離でビームを浴びた玲子が、シールドで防いではいるものの、シールドごと突き飛ばされて態勢を崩している。経験の浅い玲子には接近し過ぎだったかと思うが、今は危急存亡の時だ。千早大尉は一段と深く肉薄して銃撃を浴びせる。ビームが集中して防ぐのが苦しいが、ビームを引き付けたので玲子は逃げられただろう。

 

 突然、目の前の大型ネウロイが崩壊する。振り仰げば、肉薄する千早大尉たちにビームが引き付けられ、ビームから解放されたユルキュがツァウベルヴンダーヴァッフェを撃ち込んでいる。頭の上をかすめるように魔法力の弾丸が飛んで行き、大型ネウロイの装甲を突き破って炸裂する。これまでの鬱憤を晴らすように素早く連射するユルキュの攻撃に、大型ネウロイは対処する暇もなく次々爆散して行く。

「これで最後!」

 叫びながら放った魔法弾が8機目の大型ネウロイを捉え、見事撃滅に成功した。

 

 ようやく猛烈なビームの圧力から解放されて、芳佳はふうっと大きく息をつく。

「結構綱渡りだったけど、何とかなったな。」

 そんな感想とは裏腹に、芳佳は何だか空が大きく晴れ渡るような爽快な気持ちに包まれる。これまで何度も殺されかけたプラハの巣のネウロイだったが、今のやり方を洗練すれば、これからは確実に撃滅することができる。もう、いつまた襲撃されるか、いつまた殺されそうになるかとの恐怖に慄く必要などないのだ。何度死にはぐれの目に遭っても決して挫けることのなかった芳佳といえども、やはり死の恐怖は重苦しくのしかかり続けていたのだ。その恐怖から今解放されて、芳佳は晴れ晴れとした限りない解放感に酔いしれていた。


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