東方短編集   作:旭日提督

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あらすじ:
アリス・マーガトロイドは霧雨魔理沙のことが好きだ。しかし、そんなアリスの中に、人間である魔理沙を食らおうとする妖怪の本性が鎌首をもたげる。
そんな中、アリスが取った行動は・・・




自分の頭の中にあった妄想を形にしてみました。後悔はしてない。

マリアリは攻めのイケメン魔理沙に受けの乙女アリスという印象が強いのですが、乙女魔理沙に強気アリスというのも良いと思います(言うほど乙女描写があるかは疑問ですが)
多分夢幻航路の世界線ですが、ストーリーには特に影響はありません。

百合です。アリスが微さでずむです。その点お気をつけ下さい。


貴女のことが大好きで

 魔法の森―――常人ならば化け茸の胞子で忽ち体調を崩してしまうようなこの森の上空に、箒に跨がり飛行する少女の姿があった。

 

 白黒の衣装に黒い三角帽子と典型的な魔女の姿をした少女――霧雨魔理沙は、森の中にぽつんと建つ青い屋根の白い洋館をその目に捉えると、滑らかな動作で箒を操り、慣れた手付きでその洋館の玄関口に着地した。

 

「おーいアリスうー、来てやったぜー」

 

 彼女は玄関口で洋館の住人に呼び掛けると、程なくして扉が開いた。

 

「・・・あら、また来たの、魔理沙。私は貴方みたいに暇じゃないのよ」

 

「良いじゃないか、私とアリスの仲だろ。それじゃ、上がらせて貰うぜ」

 

 金髪碧眼の洋館の住人―――アリス・マーガトロイドはそんな魔理沙を呆れたような口調で出迎えたが、魔理沙はそれを意に介さずにずけずけと屋内に歩を進める。

 

「はぁ、貴女ったら・・・・せめて上履きぐらいは履きなさいよ。土足で上がってキノコの菌糸なんか持ち込まれたら迷惑だわ」

 

「いちいち言われなくても分かってるぜ。心配すんな」

 

 魔理沙はアリスの忠告を聞き流して、手持ちの上靴に履き替える。

 

 いつもこんな調子で魔理沙はアリスの家に上がり込むのだが、幾ら言っても聞かないことが分かっているアリスはこれ以上ものを言うこともしなかった。彼女は魔理沙の後ろ姿を、呆れながらもどこか暖かみのある視線で眺めると、扉を閉め自らも屋内へと戻る。

 

 

 偽りの月の異変が過ぎた後、魔理沙は何時の間にかこの洋館に入り浸るようになっていた。勝手に来ては勝手に帰っていく魔理沙を当初は適当にあしらっていたアリスだが、彼女もいつしか魔理沙との遣り取りを楽しむようになっていた。内容は魔法の研究から世間話まで様々で、時にはあの夜のように共に異変解決に赴いたこともある。

 

 そんなアリスだが、最近になると悩みの種が出来ていた。

 

 ―――いつも魔理沙に、主導権を握られている。

 

 訪れて帰っていくのも、話を始めるタイミングも全て魔理沙が握っている。それだけなら別に構わないアリスだが、最近になると突然魔理沙がもたれ掛かってきたり、魔理沙の瞳に覗き込まれると動悸を覚えてしまう自分に困惑していた。

 

 ―――この感情の正体には、大体察しがついているのだけれど・・・

 

 魔理沙の仕草に動悸を覚えてしまう自分、その感情が何なのか朧気に理解していたアリスだが、同時に別の感情も込み上げてきた。

 

 魔理沙が無警戒に自分に接するのはそれだけ自分のことを信頼しているのだとアリスは分かっていたが、それがなんだか無性に気に食わない自分がいると感じていた彼女であった。そしてそれは、前者の感情が大きくなればなるほど、後者もまた大きくなっていった。

 

 ―――今夜は荒れる。魔理沙は泊まっていくだろう。仕掛けるなら、そこだ。

 

 いつもは都会派魔法使いとして振る舞ってきた自分だが、今夜ばかりは"妖怪"として振る舞ってやろう。そう決意したアリスだった。

 

 魔理沙の見ない所で、アリスの口角がつり上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、アリス・マーガトロイドは魔理沙が好きだ。

 もうこれは、自分でも隠しようがない。いつから好きだったのかは分からないけど、気が付けば彼女の言葉、仕草に心を奪われていた自分がいた。

 それと同時に妖怪としての本性が鎌首をもたげて、あれを自分のものにしてしまえと囁いている。

 

 そして結局、妖怪である私は妖怪としての本性に従うことにした。

 もうこれで、振り回されてばかりの関係は終わりだ。

 

 ―――今度は私が振り回す番よ、魔理沙・・・

 

 私は内心でほくそ笑む。

 

 

 魔理沙はそんな悪魔にも気付かずに、何時ものようにソファーで寛いでいた。

 

 

 

 取り敢えず私も何時ものように紅茶を用意して、魔理沙をもてなす準備をした。

 

「魔理沙、紅茶を淹れてきたわよ」

 

「おっ、サンキュー。いただくぜ」

 

 魔理沙は紅茶を取って一服すると、綺麗な瞳で「ありがとな。美味しかったぜ、アリス」と言ってくれる。元々自分で楽しむために覚えたものだけれど、人に誉められるのは悪い気がしない。それが魔理沙なら尚更だ。

 

「そういえばアリス、研究の方はどうなんだ?」

 

 唐突に、魔理沙が話題を振ってくる。

 

「そうねぇ、あまり上手くは行ってないかな。式の構成で手間取ってしまってね」

 

「へぇ、お前が式の構成でか。なら、後で私が見てやろうか?」

 

「無駄よ、貴女とは原理が違うもの。それに、どうせまたアイディアを盗もうとか考えていたでしょ」

 

「ちっ、つれない奴だぜ。先人から多くを学ぼうとするのは誉められる姿勢だと思わないか?」

 

「確かにそれは正しい姿勢だけど、貴女の場合は見境が無さすぎ。少しは弁えなさい、泥棒さん」

 

 魔理沙は時々、こうやって私の魔法を盗もうとする。パチュリーみたいに物を持っていかれないだけマシだけど、いくら大好きな魔理沙とはいっても私にだって見せられないものは見せられないのだ。

 

「泥棒だなんて人聞きの悪い。私はただ先人の技術を参考にさせて貰ってるだけだぜ。」

 

「それを世間一般では技を盗むっていうのよ。盗むのだから、泥棒さんには違いないわ」

 

「き、詭弁だぜ」

 

「そこは能弁と言って欲しいわね」

 

 だけど魔理沙も無理に盗もうとはしないみたいで、こうして抵抗してみせると案外簡単に引き下がってくれる。向こうも一線を越えようとは思っていないみたい。

 まぁ、こうやって魔理沙と話すのも中々楽しいのだけれど。

 

「それで、貴女の方はどうなのかしら?」

 

「私か?いやぁ~、実は私も上手くいってなくてな、必要なキノコを探しても全然出てこないんだ。いくら良い魔法を思い付いたって、材料がなけりゃどうにもできないぜ」

 

 どうやら魔理沙の方も上手くいってないらしい。だから私の魔法を盗もうとしたのかもしれない。キノコは年によって当たり外れが大きいとは聞いてるし、その辺りは自然が相手なので仕方ない面もあるだろう。だから私は、供給が不安定なキノコには頼らないのだ。

 

「あ、だけどな、副産物って感じなんだが新しいマツタケのシロを見つけたんだ。いっぱい生えてたもんだから一本霊夢のところに持っていってやったら、あいつったらすごい勢いで飛びついてきたんだぜ」

 

「マツタケねぇ、私はあまり好きじゃないかな。あの匂いとか」

 

「哀れな奴だぜ。マツタケの匂いの良さが分からないなんて」

 

 魔理沙達はマツタケが良い匂いと言うのだけれど、私にはいまいち分からない。どうも、この点に関してだけは私達は分かり合えないらしい。文化の違いというものだ。

 

 

 そんな感じで世間話や研究の話なんかをしているうちに、外はすっかり暗くなっていた。時刻は夕方だろうが、雨雲が空を覆っているのでこの時間帯にしては何時もより暗い。

 それに雨も降りだして、あっという間に土砂降りになってしまった。

 

「ありゃりゃ・・・・これじゃあ帰るのは難しいな」

 

「何なら、今日は泊まっていきなさい」

 

「おっ、悪いなアリス。じゃあ今日も世話になるぜ」

 

 魔理沙は笑顔で礼を告げる。その笑顔が、私には少し眩しい。自分のモノにしたくなる。

 

「ええ。迷惑が掛からない範囲で寛いでいきなさい」

 

 私は自身に渦巻く欲望を覆い隠して、普段と変わらない態度で魔理沙に答える。その裏で、私は人形達に命じて魔理沙を絡めとる罠を着実に張っていく。魔理沙はまだ、そんな私に気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリス~上がったぜ~」

 

 バスルームから魔理沙の声が聞こえてくる。どうやら魔理沙が入浴を終えたみたいだ。もう夕食はとっくに済ませているので、あとは寝るだけ・・・

 

 魔理沙の声を受けて、私は着替えを持ってバスルームに向かった。

 

「いい湯加減だったぜ、アリス」

 

「それはどうも。あと魔理沙、今日は冷えるから早めに着替えておきなさい・・・っ」

 

 風呂から上がった魔理沙は、ほんのりと頬を上気させて、バスタオルを体に巻いていた。すれ違い様に魔理沙の洗いたての髪の匂いがふわりと漂ってきて、思わずくらっとしてしまう。魔理沙を抱き締めてしまいたい気持ちに駆られるが、まだその時ではない。

 

「ああ、気遣いどうも・・・って、どうしたアリス?」

 

「いや、何でもないわ」

 

 どうやら、少し顔に出てしまったらしい。

 私は魔理沙にばれないようにいつもの足取りを心掛けてバスルームに入った。

 

「?、まぁいいか」

 

 魔理沙はそんなアリスの様子を一瞬不審に思ったが、特に気にせず寝間着に着替えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔理沙、寝るときはいつもの部屋を使いなさい」

 

「おう、分かったぜ」

 

 時刻は深夜、もう就寝の時間だ。風呂から上がった後は適当な話なんかをして時間を潰し、魔理沙にはいつも泊まっていくときに貸していた部屋を今日も貸した。ただ、今日の寝室は一味違うけど。

 

「それじゃあお休み、アリス」

 

「ええ」

 

 魔理沙は手を振って、寝室に向かっていく。

 

 時刻は深夜、妖怪の時間だ。

 

 ..................

 

 ............

 

 .........

 

 .....

 

 魔理沙は寝室で横になり、今日一日のことを考えていた。

 

 ―――アリスの奴、今日はちょっと可笑しかったな・・・なんか、いつもより顔を赤くしたりとか・・・やっぱりそうなのかな・・・

 

 魔理沙にとって、アリスは気の合う親友だ。相手がどう思っているかは分からないが、少なくとも魔理沙はそう思っていた。

 

 ―――でも、いつもとは違うアリスも中々いいもんだ。あれはあれで可愛げがあって魅力的だ。

 

 ただ、霊夢とは違う意味で、親友以上の感情が芽生えている。魔理沙はそれを何となく分かっていたが、この先どうするべきか、彼女は悩んでいた。

 

 ―――うん、やっぱり、今のままの方が・・・いや、やっぱ私から行くべきか?

 

 しばらく魔理沙は自問自答を繰り返したが、それもじきに外の雨音に掻き消されていく。

 思考が朧気になって、眠気が差してきたそのときだった。

 

 シュルッと、何か糸のようなものが魔理沙の腕に伸びてきた。

 

「な、何だぁっ・・・」

 

 咄嗟に身を起こそうとした魔理沙だが、それよりも早く糸のようなものが魔理沙の手足に巻き付いて、身体をベッドに固定される。

 

「っぐっ・・・・あれは、人形?」

 

 糸の先を見ると、複数の人形が見えた。それが糸を操作しているのだろうと思った魔理沙だが、その理由が理解できない。

 

「な、何するんだ?」

 

 魔理沙が抵抗できない間に人形達は魔理沙の手足をベッドに結びつけて、入口の方へ向かっていく。

 

 キィ、と、ドアが音を立てて開いた。

 

「ア、アリス!これ、お前の人形だろ?何とかしてくれない、か・・・・?」

 

 開いたドアから、寝間着姿のアリスが寝室に足を踏み入れた。

 魔理沙は人形の主であろうアリスに糸を解すよう頼もうとしたが、アリスの表情を見て言葉を詰まらせた。

 

 一瞬雷の光に照らされたアリスの顔は、何かを決意したかのような表情をしていた。

 

「魔理沙は私の種族、覚えてる?」

 

「お、おう・・・魔法使いだろ?」

 

 何故そんなことを訊くのか理解できない魔理沙だが、アリスの質問に、素直に答える。

 

「そう、私は魔法使い、妖怪で、貴女は人間・・・・。人間は妖怪を恐れると、あのスキマ妖怪も言っていたでしょ」

 

「それが、どうしたんだよ・・・」

 

 アリスは一歩ずつ、静かに魔理沙に歩み寄る。

 

「でも魔理沙、貴女は普段私が妖怪だって、意識しているかしら」

 

「それは・・・でも、私とアリスは友達だろ?」

 

 魔理沙の枕元にまで歩を進めると、アリスはぐっと魔理沙に顔を近付けた。

 

「そう・・・・貴女は妖怪に気を許しすぎよ」

 

 

 

 

 

 

 は?という表情が、魔理沙の顔に浮かぶ。

 

「魔法使いは食事は必要ないから、人食い妖怪みたいに人間を襲う必要はないわ。だけれどね・・・」

 

 私は魔理沙に馬乗りになって、彼女の耳元で囁く。

 

 

「こんなに可愛い子がいたら、思わずお人形さんにしたくなっちゃうわ」

 

 

 ひいっ、と、小さく魔理沙が悲鳴を漏らす。

 今の私は、さぞ悪い笑顔を浮かべていることだろう。

 

「お、おい・・・冗談だろ?」

 

 魔理沙が涙目になって、縋り付くように尋ねてくる。

 

 そんな顔をされたら、もっと苛めたくなってしまう。

 私は人間に翻弄されるのがなんだか癪で、ここぞとばかりに魔理沙を翻弄しようとする。

 

「ふふっ、それはどうかしら?貴女は今、悪い魔女の掌の上なのよ」

 

 私はそこで、意地の悪い笑みを魔理沙に見せる。

 魔理沙の顔から、さぁーっと血の気が引いていくようだ。

 

「う、嘘だろ・・・」

 

「嘘よ」

 

 血の気の引いた魔理沙の問いに、今度はいつもの笑顔で私は答えた。

 

「へ?」

 

 予想外の言葉だったのか、状況を飲み込めない魔理沙が、そんな素っ頓狂な声を出した。

 

「うふふっ。こういうの、ドッキリって言うのかしら」

 

「こんな悪趣味なドッキリはないぜ・・・はぁっ、寿命が縮むかと思った」

 

 ドッキリだと知って魔理沙は安堵したようで、ほっと胸を撫で下ろす。

 だが、そこで安心なんかさせてあげない。

 

「でも、貴女なら本当に、お人形さんにしたいって思っちゃうかも」

 

 そこで私はもう一度意地悪な笑みを見せて、魔理沙に迫る。

 

「えっ、ちょっ・・・・待ってアリす、むぐっ・・・」

 

 私は魔理沙の唇に舌を這わせ、そのまま私の唇と重ねて彼女の口内を弄ぶ。

 

「んっ―――んぐっ・・・っはぁっ・・・・ぁ、アリス・・・?」

 

 私はゆっくりと唇を話して、優しく告げる。

 

「魔理沙―――私、貴女が大好きよ」

 

 それはもう、本当に自分のモノ(お人形さん)にしたいくらいに。

 

 ちょっと意地悪な告白になってしまったけれど、意地悪な私はこんな形でしか想いを伝えられない。

 

「アリス・・・私も、アリスのことが――――大好き」

 

 拘束が解かれた魔理沙の両腕が、私の背中に回されれる。

 あんな意地悪をした後なのに、魔理沙は大好きと言ってくれて、私は思わず抱きついてしまう。

 

「あ、アリス!?」

 

「魔理沙、今夜ばかりは私のお人形さんになりなさい」

 

 こうしていられるのも今のうちだけだから、私は強く、魔理沙を抱き締める。

 

「ああ――――良いぜ、アリス・・・」

 

 魔理沙もそれに応えて、私を抱き返してくれた。

 

 外の雷雨は、何時の間にか止んでいた。

 

 




二人は幸せなキスをして終了。何もやましいことはない。いいね?

~後日談~

魔理沙「ってなことがあってな・・・・あの時のアリスの小悪魔的な表情なんてもう、今思い出せば堪らないんだぜ」

霊夢「はいはい、あんたはいい加減その色ボケを直しなさい」

魔理沙「なんだよもう、人が折角恋バナしてやってるのに・・・・まぁ、お前も早苗と頑張れよ(宇宙で)」

霊夢「はぁ?何なのよもう・・・」(夢幻航路参照)



ちなみにですが、ここでの魔理沙はアリスにべた惚れになりました。アリスみたいな美人さんに意地悪な笑みで迫られたら、速攻で陥落してしまいますね(笑)
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