アンジュ・ヴィエルジュ-もしもの世界の物語-   作:Kuroya

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第10話 新入生交流バトル 黒×白

雄二との戦いより損傷が激しいのか、バトルエリアの修繕に時間がかかっていた。

ソフィーナは隣に並んで試合を観戦していた誠也と話している。

「ねぇ、セーヤ。あなたから見て、さっきの試合どう思う?」

「そうだね……。巧がリンクを成功させてなければ、もっと早く決着をつけていただろうな」

「それって、わざと決着をつけるのを遅らせてたって言うの?」

誠也は小さく頷く。それを見てソフィーナは満足気な表情を浮かべていた。

「うん。合格点ね。その予想は間違ってない。更に言えば、白のαドライバーの子は相手がリンクするのを待っていたのよ。相手を消耗させるためとか、リンクの仕方を見極めるためとか理由は色々あるけど、早く決着をつけた方がいいのは確かね」

ソフィーナには淳の行動が相手を分析するためのものに見えたのだ。

誠也はソフィーナの意見を参考に次のバトルの戦略を構築していく。

構築した戦略はチームで会議をしてクオリティを高めていくのが誠也のやり方だったが、会議をする前にエリアの修繕が終わる。

「今話したのが今回の作戦だ。ぶっつけ本番だが頼んだよ」

「セーヤも、肝心なところでミスったら許さないわね」

「ソフィーナが許さなくても私がこの胸で慰めてあげるわ」

リゼリッタはソフィーナに見せびらかすように誠也の腕に抱きつく。

「ちょっと! 失敗しても許すわよ! だから離れなさいって!」

「ふふ、嫉妬しちゃって可愛い」

「あ、あの、私も頑張ります!」

アビーは魔法の杖を掲げてやる気をアピールする。

盛り上がるメンバーでただ一人フランボワーズはじっと押し黙っていた。

「よし、先生がゴーサインを出した。行こう、ラストバトルだ」

 

「遂に最後のバトルね。あー、そうね。早く始めましょうか。両チームとも準備はいい?」

代表であるαドライバーの二人が頷く。

安堂先生はそれを確認すると投影パネルを操作して、自動修復システムと保護フィールド発生装置のシステムを起動する。数秒差で展開される保護フィールド。

空中にはカウントダウンが表示され、カウントを減らしていく。

『αフィールド展開!』

誠也と淳の声が重なり、それぞれのプログレスを保護するフィールドが発生する。

そして、ついに交流戦ラストバトルが開始された。

 

「フランボワーズ、お願い」

「うぅ~、こんな真面目なの、私好きじゃないのに! 後でいっぱいいたずらしてやる!」

フランボワーズは開始前に誠也から伝えられた作戦通り、空に舞い上がる。

飛んだ彼女に瞬時に反応してラウラが銃口を向ける。

引き金を引くより先に雷光が迸り、ラウラを直撃した。

「痺針の瞬雷フランボワーズの力、思い知ったか! あのアルドラは何度か耐えたけどアンドロイドには効果抜群ってやつなんだろ! ほらほら、どんどん行くぞ!」

「っ!? し、システム誤作動、再構築まで、時間が」

雷撃をまともに浴びたことで演算システムに支障が出たラウラは巧に時間がかかることを伝えようとするが、巧はそれを遮った。

「大人しくしていろ。セニア、やるぞ」

「はい。ブルーミング・バトルシステム起動。攻撃ドローン展開」

セニアが戦闘準備を進めている中、ケイティは淳に近づく。

「マスター、ゴ命令ヲ」

「そうだな。セニアに雷撃が行きそうになったら身を挺してでも庇うんだ。いいな?」

「ハイ。了解シマシタ」

ケイティはセニアの前に出るとパワーシフトに移行し、ハンマーを盾にして防御態勢に入る。

「ふん、そんなの無駄なんだからさ、さっさと倒れちゃいなよ!」

フランボワーズはケイティに集中的に雷撃を浴びせ始める。

その派手な閃光に紛れて、チカルが敵陣に殴り込みに行っていた。

「ざーんねん、あなたの飛び込んだ先は毒花のドームよ」

「なんでありますか!? なんだかクラクラしてきたでありま……」

「いい夢を見るのね。ってアンドロイドは夢を見るのかしらね」

リゼリッタの作り出した毒花のドーム。そこは電気信号を乱す毒をまき散らすように開発された、リゼリッタ特製の花が作り出す半球の檻。アンドロイド以外が浴びても多少影響が出るため、ドームの周りはソフィーナが風を操って外に漏れないようにしていた。

「どうやら作戦成功のようだな」

雷撃で身動きの取れない敵陣を眺めながら誠也は満足げに呟いた。

「ええ、でもこれ以上待って動きがないなら決着をつけるべきね」

「あ、あの、私の出番はなさそうですか?」

アビーが不安げに問いかける。

しかし二人は首を振ってそれを否定した。

「きっと、仕掛けてくる。アビーは準備よろしくね」

「はい!」

「来るわよ。セーヤ、あれの準備」

誠也はソフィーナとの繋がりに意識を集中する。

初めてリンクをした時から朧げにある感覚。それがαドライバーとプログレスだけが感じ取れる特殊な脳波だと知っている。その感覚の先にいるソフィーナに意識の手を伸ばす。

そして二人は“リンク“する。

それと同時に上空で何かが爆発し、誠也の体に強い痛みが走る。

黒煙と共に墜落したフランボワーズは衝撃で気を失ったようだ。

誠也が痛みを耐えながら視線を敵陣に向けると、様子の変わったセニアがこちらに照準を合わせた。

「アビー、今だ! 思いっきり放て!」

『ソフィーナちゃん、お願い』

アビーは杖を掲げて準備をしていた魔法を発動する。

それと同時にソフィーナも魔法を瞬時に展開、発動していた。

「私だって役に立ちたいの! 煌めく小彗星(スターダストレイン)!」

「魔の力と古き理をもって全てを焼き払え! 咲き乱れる爆炎(ファイアーボール)!」

アビーの魔法で上空に小彗星が召喚され、雨のように無差別にフィールドへ降り注ぐ。

それをソフィーナの魔法がカバーして相手のいる範囲にのみ降るよう調整したのだ。

 

『エクシード・リンク』

攻撃の音に紛れ込ませるように、淳は小さく呟いた。

リンクとはプログレスとαドライバーの脳波を共鳴させるものだ。そう理解していた淳はセニアの演算補助システムである髪飾りにコードを繋ぎ、読み取った自らの脳波データを送り込むことでリンクを成功させていた。

「リンクシステム、オールグリーン。目標補足……全機、展開! 全砲門フルバースト!」

リンク時の効果が影響して、七基に増えた攻撃ドローンは各二門になり、その全ての銃口が誠也を貫かんと向けられている。

エネルギーが充填され、放たれた計14本の光線は小彗星の攻撃に阻まれながらも突き進んで行く。

淳は勝利を確信した。この攻撃は確実に当たる。リンクしたプログレスの力は格段にアップするのは実証済みだ。そう思っていた淳だったが、その予想は外れることになる。

「残念ね。私だって空を飛べるのよ?」

「やばいよ、ソフィーナちゃん。なんだか、大いなる意志が苦しそうなんだけど……」

「気合でどうにかしなさい。これで終わりよ」

アビーは大いなる意思に乗って下を見下ろしている。後ろには誠也も一緒だ。

“大いなる意志“とは普段ソフィーナのリボン部分にくっついている謎生物のことだ。

研究者のソフィーナですらよくわかっていないそれは、大いなる意志というだけに感情があるようで、苦悶の表情を浮かべながら必死に宙に浮いている。

誠也たちがいた場所を光線が突き抜けて、その先にあったバトルエリアの外壁に直撃して激しく火花を散らして霧散する。

セニアはエネルギーの急激な消耗で一時的に動けなくなっていた。

そして、降ってきた第二陣の魔法により、白チームは敗北した。

 

「皆、お疲れさま。お昼を少し過ぎちゃったけどこれで新入生交流バトルは終了よ。紹介が遅れたわね、今回勝ち抜けた黒チームのαドライバーである彼が教室で言ってたもう一人よ。名前は十河誠也君。それにしても、先生驚かされちゃったわ。まさか全員がリンクを発動できるなんて。ここにいない三チームのメンバーもよく頑張ってたわね。今回選ばれなかったプログレスも自分を見直すいい機会になったんじゃないかしら。それじゃあ、お疲れ様でした。解散!」

淳のチームも保健室に運び込まれて残っているチームは黒だけだ。

誠也はまばらになったコロシアムの床に座り込む。

その横ではアビーも同じようにしていた。

「はぁ、流石に連戦はきついなー。みんなお疲れさま。おかげで何とか勝てたよ」

「全く、それぐらいでだらしないわよ。ほら、座ってないで帰るわよ」

「私もお家でゆっくり休みたい気分です……」

座っていたアビーはゆっくり立ち上がると、とぼとぼ出入り口の方へ歩いていく。

「それじゃあ、私はフランボワーズを連れて行くから、さよなら~」

リゼリッタは気絶したままのフランボワーズに肩を貸して運ぼうとしていた。

「あ、僕も手伝うよ、おおおおおおお!?」

手を貸そうとフランボワーズの肩に触れると誠也の体を電流が襲った。

「あっはは、引っかかってやんの~! あー、スッキリした。それじゃあね~」

「く、くそぉ、からだ、しびれる」

「ふふ、大成功ね。じゃあ、またね、ソフィーナ。それとセーヤも」

リゼリッタは飛び立ったフランボワーズを追いかけるように、空へ飛んでいった。

「ほんと、最後の最後できまらないわね。セーヤって」

床でピクピクしている誠也を指でつつきながら、ソフィーナは呆れていた。

 

その日の夕方ごろ、といっても既に日も沈み切ろうかとしている時間帯に誠也は一人で教務課のある校舎にいた。学生寮でくつろいでいたのだが、ふと端末を貰ってないことに気がついてこうして受け取りに来たのだ。

「ありがとうございます。安堂先生」

「いいのよ。渡し損ねてた私にも原因はあるわ。でも、次から遅刻はしないようにね?」

「はい。気を付けます。それじゃあ、失礼します」

「お疲れさま~」

無事に端末を受け取り、職員室を出た誠也は事務窓口の横にある掲示板の前を通り過ぎようとして足を止めた。そこに張り出されていたのはよく知る二人の名前とその傍に居たプログレスの名前だ。

「チームα(アルファ)か。多分雄二がつけたんだろうな。単純で分かりやすい。それでいて意味を込めた名前。仮の名前って意味もあったりして」

誠也は思わず笑っていた。

この学園で退屈をする暇なんてないのだろう。

雄二や日向、それにまだ見ぬプログレスの女の子たち。手強く、才能のあるαドライバーたち。

今日まではあくまでチュートリアルだ。これから本格的に学園生活が始まっていく。

ウキウキしながら空腹を満たすために誠也は学生寮の食堂に向かった。




第10話は誠也視点です。
ごめんなさい、まだまだ視点が切り替わります。
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