アンジュ・ヴィエルジュ-もしもの世界の物語-   作:Kuroya

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第27話 パーティーとカメラマン

猫を届けてクエストのクリア承認を飼い主にしてもらった後、雄二は名残惜しそうにするセニアの手を引いて再びショッピングモールに戻ってきた。

行くときの倍以上かかったが、ちょうど美海たちの買い出しも終わった頃だった。

ショッピングモール近くの駅でモノレールに乗り、雄二たちは住宅街まで戻ってくる。

因みにこのモノレール、学園の手前まで繋がっていたりする。

だが、雄二は毎回坂を歩いて登校している。

セニアも通常モードに戻って一緒にモノレールに揺られていた。

「ここが、雄二さんの家……」

「普通の二階建てで悪かったな。ほら、美海も中に入れ」

「はーい! お邪魔しまーす、って沙織ちゃんは何してるの? 上がらないの?」

「き、緊張して体がっ。美海ちゃん、助けてぇ」

「雄二の家だし緊張することないよ~。早くしなきゃお昼過ぎちゃうよ?」

「そ、そうですよね。あの、お邪魔……します」

「ようこそ、我が家へ。あれ? セニアは?」

とりあえず二人をリビングに案内したが、先に入ったはずのセニアの姿が見当たらない。

「おーい、セニア~」

セニアを探して居間や二階に行ってみるがどこにもいない。それもそのはず、セニアは地下へ続く階段の先にいたのだ。

「こんなところにいたのか。みんな待ってるからリビングに行くぞ」

「マスター、この先には何があるのですか?」

「わからない。そこはずっと鍵がしまったままだからな」

「そう、ですか……」

「……? とにかく戻るぞ」

リビングに行くと二人は買った食材や飾り付けのモールなどを取り出して準備をしていた。

「よーし、それじゃあ、手分けして準備しよっか! 私と沙織ちゃんはお料理担当で──」

意気揚々と鞄からエプロンを取り出して装備し始める美海に雄二は待ったをかけた。

「ちょっと待て。お前が料理担当って大丈夫なのか? トイレとお友達になるような事態は勘弁だぞ」

「むぅ、それってどういうこと。私だって料理できるんだからね?」

「どうなんだ、沙織」

「大丈夫ですよ。私が隣についていますし、美海ちゃんもこの学園に来てから上達してますから」

「沙織がそう言うなら大丈夫だな」

「幼馴染みにその対応はどうかと思う!」

「クッキーを作るのですら危うかったお前が料理をすると言い出して心配にならないわけないだろ」

頬を膨らませて不機嫌そうな美海の頭を撫でて落ち着かせる。

でも今回は逆効果だった。

「頭撫でながら言われても、馬鹿にしてるようにしか聞こえないー! もう、雄二はセニアちゃんと一緒にお部屋の飾り付けしてて!」

「マスター、私も料理がしてみたいです」

「じゃあ、セニアちゃんはこっち。雄二は飾り付けお願いね」

「りょーかい。それっぽく飾り付けとく」

あれ? 飾り付け班って俺一人だけ?

 

「全員に飲み物は行き渡ったかな? じゃあ、かんぱーい!」

『乾杯!』

美海の音頭でそれぞれ乾杯をする。

テーブルにはケーキ、巻き寿司、唐揚げ、ミニハンバーグ、サンドイッチ、他にも色々な料理が並んでいる。

と言ってもこれら全てを美海たちが作ったわけではない。

「な、成瀬雄二! 私の持ってきた巻き寿司はどう? じ、自信作なんだけど」

「うん、うふぁい……美味いぞ」

「そ、そう。あふっ、この唐揚げも美味しいわね」

「あ、それは私たちが作ったんだよ~」

「うぐ、日向美海が!? ふん、まあまあな味ね!」

御影は巻き寿司を作ってきてくれていた。

流石純和風の家系、和食はお手のものだな。

「マスター、これには糖分と脂質が過剰に含まれています。でも……おいしいです」

「そのケーキはあの金髪の子が作ってきたんだってさ。ちゃんとお礼言っておくんだぞ?」

「わかりました。金髪さん、ありがとうございます」

「ちょっと、ユージ! あなたが変なことを言うからセニアさんが信じてるじゃない!」

「ぷふっ、そう怒るなよ、金髪さん」

「私はカトリーヌ・オベールですわ! ふざけてると投げつけますわよ」

「手袋をか?」

「ケーキを、ですわ!」

「まふたーはわたひがまほりまふ」

セニアは口をモゴモゴさせながら雄二を庇おうとする。

その光景に思わず雄二もカトリーヌも笑ってしまった。

「まふたー?」

「いや、セニアは可愛いなと思ってさ」

「んっ……、マスターにそうされるとなんだかふわふわしてきます」

「仲、良いのね」

「私とマスターですから」

ツバサの言葉にセニアは得意気に答えた。

「そっか。じゃあ、そろそろ帰るね」

「ツバサちゃーん、一緒にサンドイッチ食べようよ!」

「美海が呼んでるけど、帰るのか?」

ツバサはマフラーで口を隠しながら照れくさそうにもう少しだけと言って美海の方へ行った。

ツバサはサンドイッチを作ってくれたのだ。

彼女たちは美海が招待していた。

少なからず繋がりのあるメンバーがこうして集められたのだが、男が雄二一人しかいないため、殆ど女子会状態になっていた。

「ほら、委員長も隅っこで食べてないでもっとこっちに来いよ!」

「いや、私はこういうの苦手だし、ちょっ、押さないで。わかったそっちにいく、いくから!」

まぁ、何だかんだ楽しんでいるから気にしないでおこう。

 

寮の門限があるため昼から開催されたパーティーだが、結局は門限ギリギリまで騒いで皆で盛り上がっていた。

今は雄二一人で片付けをしてる最中だ。

「…………」

何気なくつけたテレビの音を聞きながら皿洗いをしているとニュースの声に思わず手が止まった。

手を拭いて雄二はリビングのソファーに腰を下ろす。

テレビではプログレスの失踪事件についてのニュースが流れていたのだ。

『──確認されている失踪者の数は現時点で30名を越えて──』

「気づいていないだけで30人もいたのか」

しかし、その後のニュースでは新しい情報は得られなかった。

何故あれだけ暴れているにも関わらず世間で騒がれていないのか分からない。

もしかして、局や報道陣の中にファントムのスパイが紛れ込んでる、とか……。

「まさか、な。くそっ、何か情報はないのかよ」

「くふふ、お困りのようですね」

「うぉっ!? お前、確か」

「うーむ、驚いても相変わらずの無表情。流石、鉄仮面と噂されているだけはありますね。私は遠山キャロル、よろしく」

緑髪と一眼レフが目立つ遠山キャロルと名乗る少女は雄二の座っているソファーの後ろから乗り出して隣に座った。

気配すら感じなかったなんて何者だよ、お前。

「それで、何かお困りのようですが」

「今この状況に困ってる。さっき全員帰ったはずなのに、というかお前は来てすらなかっただろうが」

「いえいえ、葵と一緒に来ましたよ? さっと入ってずっとソファーの下に潜んでました」

ふふんと鼻を鳴らす遠山だったが、くきゅ~とお腹も鳴っていた。

「あ、あの、何か食べ物を」

「はぁ、ちょっと待ってろ。さっきの残りを温め直すから。じっとしてろよ、いいな?」

雄二の言葉に答えるようにくきゅ~と再び鳴った遠山は無言で頷く。

しばらくしてレンジで温め直した料理を彼女の前に並べると勢いよく食べ始めた。

雄二は彼女の向かい側にクッションを持ってきてそこに座った。

「うまー! なんですかこれ、美味すぎです! 空腹は最高の調味料とよく言いますが事実でした! ソファーの下で待った甲斐がありました!」

「落ち着いて食べろ。喉に詰まるぞ」

「大丈──ゲホッ、ゴホッ……み、水を」

「ほれ、水。だから言っただろうが」

「んっ、んっ、んっ……ぷはー。美味しいから仕方がないです。謂わば自然の摂理というやつです」

「……まぁ、いいや。満腹になったからそろそろ帰れよ」

「ハッ! そうでした。成瀬雄二さん、何かお困りではないですか? 困ってない? いいえ、困っているはずです!」

テンション高いな、この子。御影はいつもこいつの相手をしてるのか。

……今度御影に会ったら労ってやろう。

「コホン、どうやらよくわかっていない様子ですね。ならば言い方を変えましょう」

「もうその話はいいから、帰った方が──」

「情報がほしくないですか?」

「……聞いてたのか」

「もちろんです。ソファーの下にいましたから。それに、私の耳にはあなた方のチームがファントム撲滅に乗り出していることも届いています」

「何者だよ、遠山」

「ふっ、ただのカメラマンです。あ、呼ぶときはキャロルでいいですよ。雄二さん」

「じゃあ、キャロル。その話、もっと詳しく聞かせてくれ」

「くふふ、もちろんです」

キャロルが何者なのか掴めないがこれだけはわかる。こいつは割と抜けているところがあると。

「おい、テーブルに足を乗せるな。パンツ見えてるぞ」

「きゃっ、そういうことは早く言ってください! 今のは高くつきますからね!」

「お子さまのパンツを見ても興奮しねえよ。それより話を――」

「なっ、私は同級生です高等部1年です! お子さまではありませんー!」

「わかった、わかったから。話が進まないだろうが!」

 

夜は更けていく。

『泉川正信が行方不明になった』

その情報を教えられた雄二は混乱した。

なんの関係があるのだと。

だが、キャロル自身その情報の意味を分かってはいなかった。

「やっぱ、お前帰れよ」

「嫌ですー! 今帰ったら葵に切られちゃいます! そもそも門限過ぎてるから入れません!」

なし崩し的に一晩泊まることになったキャロルは、翌朝登校したときに葵に問い詰められて追いまわされることになるなんて思ってもいなかったのだった。




これで第4部・青の世界は終わりです。
そして第2章 黒き夜の奇跡 全27話完結です!

ここまでは以前から書き溜めていたものを修正や追加をして投稿していました。
しかし、これ以降の章はストーリーこそ考えてはいるものの、書き出してはいません。
なので極端に更新スピードは落ちます。ご了承ください。

さて、次回は第3章『絶対進化の切り札たち』……の前に、
断章として第2.5章『純白の機械天使』をお送りします!
お楽しみに♪

※不定期更新です。
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