アンジュ・ヴィエルジュ-もしもの世界の物語- 作:Kuroya
ふっふっふ……三話目からはあの子のちょっとした冒険の話ですよ?
フローリア キラキラ探しと女神さま
「わぁ~! 今日もみんな元気だね~」
人がいっぱいいる街から少し離れた草原の一角にある小さな花園。
ここに咲くお花たちは全員私のともだちなの!
「みんな、おはよ~。いっぱい咲いてもっともーっと、大きな花畑になろうね!」
まだ全然小さいから誰も知らない私の花畑。ここを知ってるのは私だけかも?
でも、いつかこの草原をお花で埋めるのが私の夢。
お花たちも誰かに見られて、キレイだね~、いい匂い~って褒められた方が嬉しいって言ってる。
どうしてお花の言ってることが分かるのかって?
だって私は花の妖精だから!
お花はともだちだもん。いつかともだちをいろんな人に知ってもらうんだ~♪
「あっ! なにあれ!? 光ってる~!」
えっと、なんの話だっけ?
あ、私ね、キレイな石を集めるのが趣味なの!
今見つけたキラキラ光る石はこれで……多分10個目かな。
「やったぁ! またキラキラ石だ~。10個記念だからアンバーに自慢しちゃおー!」
今日は朝から運がいい。こんなにキレイな石を見つけれるなんて!
もしかしたらもっとスゴい発見をしちゃうかも?
「んふふ、今日はいつもより遠くまで行ってみようかな。素敵な発見が待っている予感大だよ~!」
お花たちにバイバイをして最初はこの石をアンバーに自慢しに行く。
ずっと持ってたら腕が疲れちゃうもん。
これは一旦アンバーに預けて、後でおうちに持って帰ろう。
「アンバー、見て見て~! またキレイな石拾ったよ~♪」
「すぅ……すぅ……」
「あれ? アンバー?」
うーん、どうしよう。アンバーはまだ寝てるみたい。
仕方ない、自慢はアンバーが起きてからにしてお出かけしよう!
私は優しいから起こしてあげないよ?
アンバーは生意気なルビーの面倒とか他の妹の世話とかいつも大変だし、寝かしてあげないとね。
石はアンバーに持っててもらおうかな、ルビーにとられたら嫌だし。
「じゃあ、アンバー! 私お出かけしてくるからよろしくね~!」
「うぅ、……おも、い……」
さぁ、探検に出発ぅ~♪
アンバーのところからかなり飛んできたけど、森のなかは木しかなくてつまんない。
「あ、果物発見! ちっちゃくてかわいい~!」
何の果物かな? でもまだ子供っぽい。
大きくなるまでそっとしてあげないとね。
「がんばれー!」
果物の声は聞こえないけど、多分喜んでるはず。応援されるのは嬉しいもん♪
「ってキレイな石を探してるんだった。森のなかで見つけるのは難しいなぁ」
木の枝に座ってちょっと休憩。
ずっと飛んでると羽が疲れちゃうから。
足をぶらぶらしてると何処からか水の流れる音が聞こえてきた。
近くに川でもあるのかな?
気になるから音のする方へ飛んでいく。川の近くにはキレイな石がある気がするし!
木々の間を抜けると小さな川があった。
流れはあんまり速くないみたい。
川の近くにあった大きな石に座って水に触れてみる。
「あはははっ、冷たくてきもちー! んー、でも、キレイな石はないねー」
キレイな石はないけど、座っている大きな石はひんやりしていて寝転がると気持ちいい。優しい木漏れ日とそよ風が眠気を誘ってくる、みたい。
「ふぁ~、もうお昼寝の時間だし、ちょっと寝ようかなぁ」
きっとここでお昼寝をしたらぐっすり眠れる。
ベッドが固いのは不満だけど、少し羽休め……。
目を閉じて周りの音に耳を傾けてみると色んな音が聞こえてくる。
風に揺れる木の葉の音。すぐ近くを流れる川の音。空を飛ぶ天使が羽ばたく音。
色んな音があって、混じりあって、1つの音になる。
すごくリラックスできるから私は好き。
ウトウトと微睡んでいると風に乗ってお花の香りが流れてきた。
「なんだろう、花の匂いがする。一体どんなお花が咲いてるのかな~?」
眠りかけてた体を起こして香りが流れてくる方へふらふらと飛んでいく。
花の香りが強くなって、段々と花の声も聞こえてきた。
なんだか慌ててる? ううん、困ってる感じかも。
「ねぇー、みんなどうしたの? あっ!」
森を抜けた先は辺り一面お花で埋め尽くされていた。
ここは、ここには私が目指していた夢があったの!
「すごい、すごーい! こんなにいっぱいのお花、それも妖精の花が集まってる花畑なんて見たことないよ~! きれ~い♪」
妖精の花っていうのはとても不思議でスゴい花で、どれだけ探しても同じ花はないって言われてるんだよ。名前の由来は私たち妖精も同じ役目の妖精はいないからなんだって。
妖精の花が咲いた場所では妖精が生まれるっておとぎ話もあるんだよ~、全部アンバーから聞いた話なんだけどね。
でも、キレイなものはそれだけじゃなかった。花畑の真ん中で人が横になってたの。
まるで眠れる森の少女って言うのかな。花畑だから、眠れる花畑の少女かも。
「ねぇねぇ、大丈夫?」
「…………ぅ」
「よかったぁ、息はしてるみたい」
長くて赤い髪。赤い服。金色の耳飾り。頭の羽飾り。
「すぅ……すぅ……」
気持ち良さそうに眠るその姿は花に埋もれる女神さまみたい。
私はその姿に、女神のように神秘的で、とってもキレイなこの女の子に──、一目惚れをした。
「ん、んぅ……ここは、どこ……?」
その子は起き上がるとキョロキョロしていた。
「あ、起きたんだね! あのねあのね、私はフローリアって言うの! 花の妖精なんだよ♪」
「花の、妖精さん?」
「うん! あ、でも、呼ぶときはフローリアでいいよ? あなたのお名前は?」
「私は……」
「……?」
名前を聞いたら考え込んでしまった。もしかして名前を教えちゃいけないとか!?
どうしよう!? あなたのお名前は、って聞いちゃったよ!
「私は……アウロラ」
「アウロラ?」
「ええ。多分、それが私の名前だと思うわ」
「……? アウロラっていい名前だね! どこから来たの? この花畑ってアウロラが作ったの? スゴいよね~。私もね、こーんな大きな花畑を作ろうとしてるの!」
「フローリアは凄いのね。とても立派な夢だと思うわ。それとさっきの質問だけど……ごめんなさい。私、どうやってここに来たのかも、どうしてここにいるのかも分からないの。自分の名前しか覚えていなくて」
そっか、だから名前を聞いたときに考え込んでたのか~。聞いたらダメなのかと焦っちゃった。
「それって、きおくしょーしつ?」
「それを言うなら、記憶喪失だと思うわ」
「そう、きおくそーしつ! それって大変なんでしょ? 大丈夫?」
「んー、そうね~。体に不調はないようだし、少し頭がボーッとするくらい……」
「そっか~。じゃあじゃあ、私と遊ぼうよ~。 時間はいーっぱいあるし、アウロラとなら何処にだって行けちゃいそう♪」
「ふふっ。私を何処へ連れていくのかしら?」
「えっとねぇ、私の作った花畑に連れていってあげる!」
これが私とアウロラの出会い。
偶然通りかからなかったら、私が探検に出てなかったら、アウロラとは会えなかったと思う。
だからこの出会いは奇跡なんだ♪
アウロラとのんびり街へ向かってたけど、森のなかに入ったら道がわかんなくなって余計に時間がかかった。
そのせいでアンバーに怒られるし、ルビーには馬鹿にされた。
でも、アウロラのことは歓迎してるみたい。私が大好きなアウロラだもん、当然だよね。
アウロラはね、たまにふらふら~って何処かに行って迷子になるの。その度に私が見つけるんだよ。
どうして見つけられるかって?
「アウロラっていい匂いだよね。お花の匂いがする!」
「いつもフローリアの手伝いをしていたからかしら。ふふっ、フローリアもとてもいい匂いがするわよ?」
「ほんとっ? えへへ、でしょ~♪」
お花のことなら誰にも負けないもん。
たとえ別の世界にいたってアウロラのことなら見つけられる気がする。
あ、別の世界といえば、アウロラが青の世界に行こうとしてたの。
すぐ迷子になって、迷ってることに気づかないぐらいなのに。
一人で行かせるのは心配……。
だからね、私もついていくことにしたの!
その日の翌朝、アウロラと一緒に広場の門をくぐった。
ブルーミングバトルでアウロラのいつもと違う姿が見れたとき、すごく強くてカッコよくて、もっと大好きになった。
まだアウロラはなにも思い出せてないみたいだけど、どこか遠いところを見ているような目をする時がある。
多分、何か思い出しそうなんだと思う。
記憶が無いってどんな感じなのか分からないけど、きっとスゴく寂しいことだよね。
だって、ともだちのことも家族のことも全部覚えてなかったら一人ぼっちと変わらないもん。最近アウロラは思い出そうと目が覚めた時のように花畑で横になってる。
アウロラのお陰で一人でやるよりも早く夢が実現したから、今度は私がアウロラを手伝う番だよね!
「アウロラ~。見て見て、キレイな石みつけた~♪」
……キレイな石は私の宝物だから自慢したくなっちゃうのは仕方ないよね?
というわけで、フローリアがメインの『キラキラ探しと女神さま』をお送りしました!
分かりにくかったかもしれませんが、この話は彼女たちが出会って、学園に来て交流戦をする前までの話です。
第2章で雄二たちが見た花畑をフローリアが育て始めたころを書いてみました。
楽しんでいただけたなら幸いです。