マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者 作:ジャム入りあんパン
さて、ガンダムMk-Ⅱの開発が遅れてきている今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。
別に作るのは難しくないのだが、余計な仕事が入ったためにここまでずれ込んでしまった。ちくしょー。ゲッターロボGはもうそろそろ出来上がるって聞いているから俺もちょっと焦ってるって言うのに、すっかり忘れていた余計な案件が俺を圧迫する。
榊総理から封書が届いていたのを覚えているだろうか。そう、俺は忘れていた。頭脳チートも意味ねえな!焔ちゃんに言われてようやく思い出して、慌てて開けたら予定日が今日だったよ!
すぐさま動きやすい軍装に着替えて、指定されているホテルへと向かう。
そのホテルは榊総理が懇意にしているホテルらしく、なんでも旋風寺コンツェルンが運営しているとか。
・・・・・・ん?何処かで聞いたような聞かないような・・・。
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
この世界におるんかい。嵐を呼ぶナイスガイ。
ということは、既にマイトガイン出来ていたりするか?それか、俺に作れとか言わんだろうな?流石にこれ以上の開発遅れは許容できんぞ。
まあいいや。とりあえずは、榊総理の要件だ。
おそらく、政治の派閥絡みだろう。忘れているようだけど、俺まだ14歳だからな。そういう生臭い要件に巻き込まないでほしいんだが。
案内された部屋には、既に榊総理が待っていた。
俺はさらに旋風寺コンツェルンの総帥でもいるかと思ったのだが。
マイトガインは関係ないのか、それともまだ出来ていないのか。いないのならば今は関係ないな。
「お待たせしました、総理」
「いや、時間通りだ。気にすることはない」
焔ちゃんに言われなければすっかり忘れたままだったのは黙っておこう。
総理に促されて席につく。さて、今回の会談は有意義だとありがたいのだが。
「それで、早速ですがご用件は?知っての通り、俺はただの科学者ですよ?」
「勿論知っているとも。だが、君に会ってみたいと思っていた。ずっと前からだ」
真剣な目で見てくる総理。どうやら、シャレではすまない内容のようだ。
俺、普通の科学者だよ?
どんな厄介事を突きつけられるのか、それを考えると表情が引きつるのを止められない。
「はっはっはっ。そんな顔はしないでくれたまえ。無理難題をふっかけるつもりはない。ただ、極東最高の頭脳と一度会って話をしてみたかっただけなのだよ」
「そうですか」
短く答える。どこまで当てにしたものやら。という表情がでているのは嫌でも分かる。榊総理も俺の警戒心に困ったような笑みを浮かべる。
まあ、そういうことにしておいて会話を楽しませてもらおうか。
目の前の少年は、極東最高の頭脳と言う割には、思っている以上に普通の少年だった。腹芸などはまるで期待できない。思っていることはすぐに顔に出る性格のようだ。
次期オルタネイティヴ計画の主任候補にも上がっている少女、香月夕呼を一方的な口撃でへこませたと言うからには、かなり直截な性格の持ち主なのだろう。
いや、間近で見ていた記者に扮した部下の報告では、かなり一方的に香月夕呼を打ち負かしたと言う。いや、打ち負かしたというよりは強引にへこませたと言うべきか。
できれば二人には手を取り合ってほしいと思っていた榊だったが、二人の相性は最悪に近かったらしい。
「やはり、香月くんとは相性が悪いかね?」
「俺は別に、やっこさんは嫌いじゃないですよ。ただ、相手をしている余裕が無いんです」
確かに、食事の手が早い。さっさと終わらせて帰りたいという気をまるで隠そうとしていない。
「何をそれほど急ぐのかね?聞けば、ロンド・ベルは連戦連勝なのだろう?」
「友のいる戦場に早く帰りたい。これ以上の焦りなんて他にないでしょう」
そして、目線だけをギロリと動かして続ける。
「友達のいない総理にはわかりませんかね?俺に出来るのは戦術機を作ること。ただそれだけですよ。新しい機体を待っているんです。この戦い、正直すぐには終わらない」
「私にとて友人の一人や二人は居るよ。それよりも、君は何が見えているのかね?」
「足を引っ張るクソ野郎」
彼の答えは簡潔だった。そしてまことに遺憾だが、彼の足を引っ張るクソ野郎の中に自分が入っていることに気づいた榊であった。
食事が終わると、拓哉はこれ以上いる意味は無いとばかりに去っていった。
対面に誰もいなくなった席で、榊は一人ため息をつく。
「やれやれ、これは嫌われたかな?」
「あの少年が些か失礼すぎるだけかと」
いつの間にか彼の背後にいたのは、現将軍が遣わせた護衛だ。その男は不愉快さを微塵も隠そうとせずに、拓哉が立ち去った方を見る。
「・・・わたしにはその解釈は出来ません」
「彼の会話はいつも友が中心だった。アムロ・レイくんと言ったか」
「米国人の子供ですよ。それが、そんなに大事だというのですか?」
「大事なのだろう。彼にとって国籍はどうでもいいのだ。一緒に戦えるか否か。それだけが彼の判断基準なのだよ。だから彼は最前線国家を優先する。作った戦術機も兵器も、前線で戦っているものたちに分け隔てなく開放する」
「しかし、それが我らに向けられたら!」
「その時こそ、彼は本気で牙を剥くだろう。彼が兵器を作る時に何を優先していると思うかね?コストだ。広めた国で更に量産できるか。そして、更に技術開発を出来るか。彼にとって国益は二の次なのだよ。いや、国益を考えたからこそ、前線国家を優先しているのか」
榊はそう言ってワインを煽る。そう、国益のことなど最初に自分が考えなければいけないことだ。だが、彼はそれ以上の視点で物を考えていた。
「何が日本の国益となるのか。その究極は日本までBETAを寄せ付けないことだ。君は、日本単独で全てのBETAと戦えると思うかね?」
「そ、それは・・・」
「そう、無理だ。不可能だ。津波のごとく押し寄せる圧倒的な戦力を、彼は現地で、肌で感じとったのだろう。だからこそ、世界に戦術機をばらまいた。重要なのは金銭ではない。日本が優位に立つことでもない。人類が勝つことなのだと」
先程まで拓哉が座っていた席に目を移す。拓哉は会食の間、あまり榊の方を見なかった。ただ目を向けた時は、『邪魔をするな』と言わんばかりの目で睨まれた。
「彼の見識は政治家のそれだよ。いや、現地で感じ取るよりも前から、彼はその頭脳で予見していたのだろう。だからこそ、あれだけ兵器を世界にばらまいた。そして、今度は戦術機を。その正当性を作るために帝国の三武神を味方につけた」
その間に自分は何が出来たのか。せいぜいが総理大臣になったぐらいだ。
それで彼の役に立てたか?貴重な時間を浪費して足を引っ張ってしまっただけだ。
「やれやれ。これでは他の議員どもを笑えんな」
残っていたワインを飲み干すと素早く席を立ち上がる。
「さて、少しは彼が動きやすくなるために、うるさい輩を黙らせるとするか」
そうでなければ、まさに老害というしかないのだ。まだ幼い娘の未来の為にも、彼らの力にならなければならない。
決意も新たに榊是近は前に進んだ。
「終わったー!!」
俺はそう叫ぶと人目をはばからず思いっきり歓声をあげた。
いや、叫んでいるのは俺だけではない。他の技術者たちもようやく終わった仕事に歓声を上げる。
そりゃそうだ。何度となく中断されて、その度に俺が席を外して、ようやくここに第四世代機が完成したのだから。
ガンダムMk-Ⅱ。日本、いや、世界初の第四世代機。その最大の特徴はムーバブルフレームによる完全な内骨格機構だろう。これによって、より柔軟な挙動を可能とし、そして、頑強さを手に入れた。
頑強さの部分でピンと来ないだろうが、今までの機体は装甲で機体を支えていた。その為装甲に致命的なダメージを受けると機体そのもののが行動不能になることがあった。これは外骨格機構の機体特有の弱点だった。だが、内骨格にすることで少々装甲がやられようが挙動に影響は出ないという利点が生まれる。
反面、内骨格構造には致命的な弱点が存在する。それは機体が重くなるということだ。だがそこは新型のPS装甲を装備することで解消した。そう、ようやくPS装甲を実用化出来たのだ。正確にはVPS装甲というべき代物になったのだが、そこは頭脳チートの見せ所だ。
流石に今回ばかりは俺も苦労した。俺の頭脳チートは元々あるものを再現するのは簡単だが、余計な新しい機能をつけるのには本人の創意工夫、想像力が問われる。俺が今回作ったPS装甲は従来の装甲よりも軽く、また異常に頑強であることが特徴だ。反面、コストも異様にかかったが、そこはそれ。一点もののつもりだからな。後の量産するタイプの機体は、チタン合金セラミック複合材を使うつもりだ。
その為、俺の目の前にあるガンダムMk-Ⅱは灰色のままだ。さて、
「これより起動実験を開始する。電源を入れろ」
『了解!』
技術廠の開発衛士の声と同時に、鮮やかなカラーリングへと変わる。エゥーゴ仕様のガンダムMk-Ⅱのカラーリングだ。
「続けて、性能試験を行う。機体を演習場に出せ」
ゆっくりとガンダムMk-Ⅱが歩みを進める。が、なんだ?ふらついていないか?
「どうした!機体をまっすぐ歩かせることも出来んのか!」
『は、博士!機体の反応が敏感すぎです!これでは、まともに歩くことも・・・うわっ!』
ゴツンッという音がして、工廠の柱に激突する。おいおい、PS装甲だからってむやみにぶつけてくれるなよ。
よたよたしながら歩くガンダムMk-Ⅱを見ながら、俺は一抹の不安を覚えた。
それからしばらくして、一通りの実験した結果分かった。
不安的中。アムロ基準で作っていたため、バイオセンサーやらマグネットコーティングやらのおかげで、機体の反応が敏感になりすぎているのだ。テストをした開発衛士が言うには、まともに扱えるのは極一部のエースだけだと。
巌谷大尉か篁大尉を連れて帰るべきだったな。まあそれでも、さすがは技術廠の開発衛士だ。使っていく内にだんだんと挙動の不自然さはなくなってきて、試験を終える頃には完璧な挙動を見に付けていた。それでも彼が言うには、自分ではこの機体の100%を引き出すことが出来ないという回答だった。
出来れば、サイコフレームの搭載まで持って行きたかったのだが、いかんせんガンダム世界でもオーパーツだ。こっちの世界で作ることが出来るようになるまではまだ暫く掛かるだろう。
そしてもう一つ表面化している問題は、やはりSEED世界と同じく、PS装甲を量産型機に装備するのは無理だということだ。コストだ。コストが掛かりすぎる。とてもではないが、小隊規模を維持するだけでも破産しそうな装甲を、今の日本では量産することは出来ない。
もしガンダムMk-Ⅱを少数量産するならやっぱりチタン合金セラミック複合材を使うしかないだろう。
PS装甲の防御力は美味しいのだがなー。
悪い時に悪いことは重なる。俺がいない間に、ボパールハイヴの攻略作戦が始まってしまった。
それを俺は天龍型水陸両用艦・龍田のブリッジで聞きながらイライラしていた。龍田の格納庫にはスコープドッグとソルテッカマンの部隊。そして、ガンダムMk-Ⅱ、ゲッターロボG、マジンガーZの強化パーツが積まれている。
出来れば作戦開始前に届けたかった。だが、思いもよらぬところで足を引っ張られた。国会への参考人招致だ。俺が世界中にジムをばらまかせているのは利敵行為だなんだと騒ぎ出して、足止めを食らったのだ。
榊総理は必死にそれを食い止めようとしてくれたのだが、今は与党も野党もややこしいことになっている。野党の中には米国派の議員が多く、与党は与党で俺が影響力を持つのが気に入らないという連中が多かった。
お前らマジでふざけんなよ。今はそんな事をほざいている場合か。これからボパールハイヴへと突入するのは日本の衛士なのだぞ。これからハイヴへ突入する衛士のために、新しい機体を持っていきたいと言うのに。
俺が怒りを、焦りを表すほどにどちらも喜ぶ。この国に味方はいないのか。
結果、事態を知った雷電様と五摂家、皇太子殿下が間に入ることで俺はすぐに開放され、出来たばかりの龍田に乗ってボパールハイヴ攻略戦の戦地へと急いだ。そのさなかに、作戦が始まってしまったことを知ったのだ。
彩峰司令も頑張って引き伸ばしてくれたのだろう。だが、国連の圧力は凄まじく、大東亜連合軍と共闘という形で、ボパールハイヴ攻略戦が始まってしまったのだ。
俺はこの時のことを生涯忘れない。
人類の、いや、俺の最大の敵は人類だということを思い知らされた。自重なんてしては絶対にいけないのだと知らされた事件だからだ。
自分自身の政治力の無さを、俺は、一生後悔することになった。