マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者   作:ジャム入りあんパン

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30・マシュハドハイヴ攻略戦

 

 自室でのんびりと焔ちゃんの膝枕。

 考え過ぎで済んだら僥倖。だが嫌な予感だけは頭から離れない。だからこそ俺は、焔ちゃんのフニフニで柔らかくて暖かくていい匂いのする膝で、とりあえず嫌な考えは追い出す。

「どうかなさいましたか、拓哉様」

「ちょっと、ね」

 もうすぐアムロたちがハイヴに突入する。毎度ながらこの感覚は好きになれない。万が一にも帰って来ない可能性がある。それだけでこうも心がざわめくのは、きっと俺がハイヴに突入できないからだ。戦術機に乗れないだけで、こうも気をもむことになるのなら、俺は神様に戦術機の才能ももらっておくべきだった。いや、努力をするべきだったのかもしれない。自分は開発しか出来ないからと言い訳をして、ここまで来てしまったのだ。俺に出来るのは、ホワイトベースのブリッジで戦いの結果を待つだけだ。

 ゴロンと転がって焔ちゃんの膝に顔を埋める。焔ちゃんは数少ない、俺の弱い部分を見せている人だ。きっと、何を要求しても俺のすべてを受け入れてくれるだろう。だが、それをする訳にはいかない。少なくとも、このオリジナルハイヴにつながる全ての戦いが終わるまでは。

 焔ちゃんの暖かくやわらかい手が、そっと俺の頭を撫でる。幼いころに母上にしてもらったのとはまた違う感触に、俺は眠りの中に落ちていった。

 

 

「拓哉くんは寝たかね?」

 あれからしばらくして拓哉の部屋を訪れた彩峰は、膝枕をしたままの焔に静かな声で聞く。

「はい。少し、無理をしておられるようでしたから」

「いつも思うことだが、拓哉くんはアムロくんたちがハイヴに入ることにストレスを感じているようだったからね」

「万が一にも、アムロ様たちを失うことを、拓哉様は恐れています。それが、あのガーランドという機体に現れたのだと思います」

「趣味で作ったと言うにしては、戦闘力の高い機体だったからね。少し気になっていたのだよ」

 元々は彩峰のもとに、焔から相談に行ったのだ。最初はアンバールの時に。そして、ボパールで武蔵が負傷したと知った時は、むしろ静かすぎて一種異様であった。

 楽しそうに開発をすすめる拓哉に、二人は一時安堵したものだが、すぐにそれは気のせいだと知らされた。

 それがアメリカからの拓哉引き渡しの要求だった。話を聞いたときの拓哉の目を、焔は一生忘れないだろう。

 一瞬だけ冷たい目をしたのを、焔は見ていた。その後は一瞬だった。戦術機の開発でさえ慎重に慎重を重ねる拓哉が、食料生産にまで踏み切った。そして、瞬く間に生産プラントを作り上げた。

 そして、ガーランドが完成したあの日、焔は不安を覚えた。庭で嬉しそうに乗り回している姿を見た時、もしかしたらあのまま戦いに出るのではないかと。

「拓哉様は、戦う才能は持っておられませんから」

 それは、戦術機の素人である焔の眼にも明らかであった。

 運動神経が鈍いわけでもない。だが、戦うための才能は、一般的な戦術機の衛士よりも無いと言っていい。

「とにかく、いまはゆっくり休ませてあげなさい。後は、こちらでやっておくから」

「おまかせいたします」

 彩峰が部屋から去った後、焔はそっと拓哉の髪を撫でる。

「拓哉様、貴方はきっとなんでも出来てしまう人。だからこそ怖い。私の側からいなくならないでくださいませ。いつまでも私の拓哉様でいてくださいませ」

 その目は静かな狂気の色を帯びている。

「そのためなら私、なんでもやります。拓哉様の命を狙う愚か者共を、私が葬り去って差し上げます」

 その自覚のある狂気は、既に幾人もの暗殺者たちを始末していた。なぜなら、父からそれこそが自分の使命だと聞かされたから。

「日本のために、いえ、世界のために、いいえ」

 そっと頬を撫でるその手の動きは、年頃の少女とは思えぬほど艶を秘めていて、そしてその瞳は

「私のために、生きてくださいませ」

 深い闇を秘めていた。

 

 

 

 ハイヴ攻略戦は、今回初挑戦となる第666中隊を始めとするドイツ人にとっては、息をつかせぬ激戦だった。

 勿論、彼らとて事前に予習をしてあった。アンバールデータとボパールデータがそうだ。ガンダムは神野志虞摩に返還したテオドールだが、それでもなんとか攻略できていた。

 だが、実際のハイヴ攻略戦はあまりにも違った。一瞬でも間違えれば死が待ち受ける。

 そして、難易度はアンバールやボパールの遥か上を行っていた。

「これが、日本人の見てきた戦場か!!」

 テオドールは交戦規定に従って、進路上に邪魔しに現れるBETAのみを排除していた。だがそれでも無数に迫りくるBETAにストレスを感じ取っていた。

『しっかりしろ、テオドール!貴様はガンダムを託されているのだぞ』

「量産型ですがね」

 そう、士郎がガンダムに乗り換えたことで量産型ガンダムが1機余っていたのだ。

 シグマガンダムほどの無茶な性能ではないが、それでも明らかに一線を画した性能を誇るそれに、テオドールは振り回されそうになっていた。

「ガンダムは、化物か・・・!」

 その彼の視線の先では、一機のガンダムが近寄るBETAを尽く切り伏せ、撃ち抜いていた。

 アムロ・レイという、カティアやリィズよりも年下の少年が乗っているそれの動きは、一種異様であるとさえいえた。

 まるで未来が予測できているかのように動きは、他の戦術機と比べても一線を画していた。

「俺だってガンダムに乗っているんだぞ」

『それこそ、衛士の腕の差じゃないかしら』

「うっ・・・!」

『妬む前に腕を磨け。それがガンダムを預けられたものの宿命だ』

 彼らの中で、ガンダムは特別なものだ。あの革命の中でそれは光だった。圧倒的な力と輝きは、彼らの胸に宿ったそれは、決して忘れることが出来ないものだろう。

 そして今、その伝説は一人の少年の手によって体現されていた。

 いや、語るべきはガンダムだけではない。まずはあの黒鉄の機体、マジンガーZ。レーザーの直撃を受けても平然として、突撃級の突撃を真っ向から受け止めてダメージを受けない頑強なボディに、それらをねじ伏せる圧倒的なパワーは、まさに魔神と言ったところだ。

 そして変幻自在のゲッターロボGは今回ハイヴ攻略戦に参加した者たちを驚愕の中に叩き落とした。3機の小型戦闘機に分離し、その組み合わさり方次第で3つの形態に変わり、更にそれらが圧倒的なパワーを有する。強力なビームを放つドラゴン。目に見えぬ速度で走るライガー。大火力とパワーを持ったポセイドン。ハイヴだけではない、あらゆる戦況に適応するだろう。

「ガンダムだけじゃない。それがロンド・ベルが最強と呼ばれる所以だ」

 世界最強の部隊。初めて聞いた時は眉唾だったがあれだけの激戦をくぐり抜けてきたのなら、なるほど納得だ。

「俺だってガンダムに乗っているんだ!負けていられるか!」

 瞬間、機体の出力が上がったような気がした。慌てて計器類を見直すテオドールだが、そこには何の異常もない。

「ガンダム、俺を認めてくれるのか?」

 ガンダムが応えたような気がしたのだ。小さく口元が緩んだ気がした。

 最初は成り行きで、次は振り回されて。覚悟さえ決めればガンダムはどこまでも応えてくれる。

「お前、本当に普通の戦術機じゃないのかもな!」

 放ったビームは、要塞級の中央を寸分違わず撃ち抜いていた。

 

 

『拓哉に無茶させた機体だからな。絶対に勝って帰るぞ!』

 甲児の声とともに放たれたアイアンカッターは、要撃級の腕を切り飛ばし、更に放たれたもう一撃で胴体に大穴を開けて絶命させた。

『ああ!もうあんな思いはさせない!そのためにみんなで帰るんだ!』

 ゲッタードラゴンの両手に持ったトマホークは近寄るBETAを快刀乱麻の勢いで切り裂いていく。

『みんな、生きるぞ!!』

Ez-8に増設された火器から放たれた弾幕は、小型種を瞬く間にミンチに変えていく。

「そうだ。戦えない拓哉の代わりに僕達はここにいる!だから!」

 レーザー対艦刀で要塞級を真っ二つにする。

 ここに至り、アムロたちは技量を更に向上させていた。本人たちにその自覚はないだろうが、彩峰から聞かされた、拓哉が倒れた(嘘)という情報は彼らの心を激しく揺さぶり、同時に戦意を高揚させた。

 ガンダムMk-Ⅱは仄かに赤い光を放っていた。そのことに気づくものはまだ誰もいなかった。

 

 

 それからは一気呵成だった。

 アムロたちに遅れてなるものかとテオドールが彼らに加わり、前線はハイヴ攻略のタイムアタックをしているのかというような、異常な速度で攻略が進められていった。

 場所はメインホール。多少の脱落者は出たものの死者は0という異様な戦果で、たどり着いていた。脱落したものも、他の機体に分乗させて貰う形で、この戦いに参加していた。

『全機、補給は済ませたな。これより反応炉に戦いを挑む。が、まともに相手をする必要はない。反応炉が視界に映り次第、最大火力で叩き伏せろ』

『反応炉が攻撃を仕掛けてきたのは一度きりだと聞いていますが?』

『ベルンハルト大尉、新塚博士からの金言だ。常に最悪を想定しろ。現実は斜め上を行く』

『新塚博士が・・・』

『そして、事実そうなった。私たちはボパールで大事な仲間を一人、失った』

『死んでません、武蔵は死んでませんよ!』

『重度の失明だ。衛士としては死んだのと同じだ』

 その重度の失明をした衛士が平然と動き回っているのだが、そこは言わぬが花であろう。

『ゲッタードラゴンとマジンガーZによる一斉砲撃に合わせて、一気に畳み込むぞ』

『それが一番わかり易いぜ!』

『二度と過ちは犯さない!』

 甲児と竜馬はやる気満々だ。共に機体のエネルギーを最大開放するためのチェックをしている。

『よし、アムロくん、士郎くん。行けるな?』

「は、はい!」

『こちらは大丈夫です』

 若干上ずったアムロの声としっかりとした士郎の声が聞こえる。しかし、今はかまっている余裕はない。

 カウントダウンが始まる。篁機、巌谷機が同時にメインホールの扉を撃ち抜き、一気に突入。そしてマジンガーZとゲッタードラゴンの最大火力による一斉射撃で、反応炉を完膚なきまでに破壊する。余裕があれば他の大火力を持っている戦術機も砲撃に加わる。

 作戦と言うには、かなり乱暴な作戦だ。だが、これで決着が付けばそれで良し。そうでなければ更に母艦級との激戦が待ち構えている。

 ロンド・ベルの面々はボパールの時のことを知っている以上、誰も気を抜いているものがいないのだ。

『よし、作戦開始!!』

 篁のその声と同時に、篁の機体と巌谷の機体は門級BETAを一撃で吹き飛ばし進路を確保する。

 先頭を突っ走るのはマジンガーZとゲッタードラゴン。いつでも最大火力を叩きつけるつもりで突き進んだ先には、無数のBETAとそれに守られた反応炉があった。だが、やることは変わらない、

『行くぞ!ブレストファイヤー!!!』

『ゲッタァァァビィィィム!!!』

反応炉を守るかのように立ちふさがるBETAたち。だがそれを物ともせずに二つのエネルギーは反応炉に叩きつけられる。

更にBETAがマジンガーZとゲッタードラゴンに接近するが、それはアムロのガンダムMk-Ⅱに阻まれる。

「させるか!」

 ここが最後だからこそ遠慮はいらないとばかりに、フルオープンした武装が一気にBETAの群れを薙ぎ払っていく。

 士郎も遅れてはいない。レールガンの代わりに持ち込んだ180mmキャノンが大型種を重点的に正面から吹き飛ばしていく。

『銃身が焼き付くまで撃ち続けてやる!!』

 そして更に、少年たちに戦果のすべてを奪われてなるものかとロンド・ベルの面々が飛び込んでいき、少し遅れて666戦術機中隊とフッケバイン大隊が、殿をする形で大東亜連合軍が入ってくる。

『これがロンド・ベルの戦場かよ』

統制が取れていないようでいて、お互いがお互いを補い合うさまはいっそ理想的だといえた。

『ボサッとするな!我らもBETAの討滅に参加するぞ!』

『お、おう!』

『ここがどこであろうと我らのやることは一つ!シュヴァルツェスマーケンを食らわせてやれ!!』

『『了解!!』』

 それから程なくしてだった。反応炉は粉々に破壊されたのだった。

『も、もう破壊したの!?』

『気を緩めるな!BETAは倒せるだけ倒しつくせ!!』

 それは、巴武蔵に一生ものの傷を負わせてしまった指揮官の叫びだった。

 拓哉なら何か治す手段を持っているかもしれない。だが、だからと言って無かったことに出来ることではない。

 特にロンド・ベルの攻撃は苛烈を極めた。万が一にも撃ち漏らしがないように、徹底的に攻撃を仕掛けていた。

 

 やがて、動くものが全ていなくなった空間で、それでもロンド・ベルの機体は警戒を緩めることはなく、ピリピリとした緊張感を漂わせている。

 初めてのハイヴ攻略戦になる面々は、やり過ぎではないかと言うほどのロンド・ベルの警戒に、それでも何も言わずに従って警戒を続ける。

 彼らの警戒は武蔵の事件から来ることだ。ゲッターチームや甲児、アムロにとっては身近な人間の大きな負傷が。そして、他のロンド・ベルのメンバーにとっては、年若い少年の未来を奪うほどの負傷に責任を感じているのだ。

 やがて動くものが全ていなくなったことを確認した篁は、撤収の命令を出す。

『よし、マシュハドハイヴの攻略は完了した。だが、帰還するまでがハイヴ攻略だ。決して気を抜くなよ!』

『『了解!』』

 拓哉がこの場にいればツッコミを入れただろう一言は、誰もが真面目に受け取っていた。

 それは、否定しようのない現実として。

 

 

 かくしてここに、マシュハドハイヴの攻略がなった。

 だが、これはまだ前哨戦にすぎないことを誰もが知っていた。

 

 

 

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