マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者 作:ジャム入りあんパン
無人の荒野をロンド・ベルの艦隊は突き進む。BETAは地上に出てこない。おそらく、ハイヴの中で待ち構えていると想定した。
彩峰は当初の予定通りに、ハイヴ地表構造物が見えてきた所で指示を出す。
『これよりハイメガ粒子砲を発射する!戦術機部隊は射線を開けろ!』
天馬を先導するように飛んでいた、先遣部隊が射線を開く。
『司令!エネルギー充填完了!いつでもいけます!』
『よし、発射のタイミングを合わせろ!!ハイメガ粒子砲!発射!!』
天馬級から放たれた2本の光の鉄槌は、今までよりも圧倒な威容を誇る地表構造物に激突。凄まじい閃光と爆音、そして衝撃が叩きつけられる。
先頭を飛んでいたアムロのガンダムMk-Ⅱもあまりの衝撃に煽られて、機体を揺さぶられる。
もうもうと立ち込める砂埃の中、進軍を止めてその結果を待つ。
戦場の音が一時全て止まる。そして、その煙が腫れた先には地表構造物は影も形も残っていなかった。
『よし!行けるぞ!BETAはまだ対応していない!少なくとも、まだ間に合うはずだ!!』
『よぉーし。後はワシ等に任せておけ!』
『お任せします、紅蓮閣下。みんな、必ず生きて帰るのだぞ』
『『了解!』』
飛び立っていく彼らを見送りながら、彩峰は再び気を入れ直す。
『さあ、此処から先は引くことは出来んぞ!総員!命をかけろ!ここを生き延びれば、世界の平和にまた一つ近づく!!』
彩峰の視界の先には新たな土煙が見えていた。中に潜んでいたBETAが姿を見せたのだろう。
『戦術機部隊!第二陣!出撃!目に映るBETAはすべて蹴散らせ!!』
彩峰の号令に合わせて、艦砲射撃とともに戦術機部隊が突撃していく。これはまだ前哨戦である。だが確実に、世界の平和へと近づく一歩なのだと、誰もが意識していた。
ハイヴ内の戦闘は激戦となっていた。
地上へと飛び出したBETAと、進路上にいないBETAはすべて無視したが、それでもマシュハドハイヴを超える数に苦戦を強いられていた。
『ちぃっ!こうも数が多いとは!』
『言うな、榮二。分かっていたことだろう』
巌谷と篁の二人は息の合ったコンビネーションで、次々とBETAを排除していく。
それに引けをとらないのが士郎のEz-8だ。元々がアムロのガンダムであるこの機体は、熱核エンジン搭載機だ。そのため出力は量産型ガンダムを圧倒的に上回っていた。
『よし、正面が開いた!紅蓮閣下!』
『うむ!突撃!正面のBETAのみを排除せよ!』
『よーし!鉄也さん!』
『ああ、甲児くん!』
『『ダブルバーニングファイヤー!!』』
超高熱の熱線は進路上のBETAを、チリひとつ残さず焼き尽くしていく。そうして再び開いた進路上をパワーに任せて押し進むという、この部隊でなければ不可能と言ってもいい方法を取っていた。
もっとも、その方法を以てしても侵攻は遅々として進まなかった。
『分かってはいたが、数が多いな!』
『リョウ!ライガーに変われ!スピードで轢き潰す!』
『分かった!オープン・ゲット!!』
『チェンジ・ライガー!スイッチ・オン!!』
ライガーにチェンジすると同時に、猛烈な勢いで駆け出すゲッターライガー。ハイヴ内の壁を次から次へと蹴り飛ばしながら、触れたBETAを消し飛ばしていく。
『マッハスペシャル!!』
ゲッターライガーが通り抜けた先にはBETAの残骸だけが散乱していた。
『急げ!まだ中層部にすぎないぞ!』
こうして時折大きな攻撃で穴を開けながら更に先に進んでいくという戦法は、彼らでなければなし得ないのだろう。
どれほど進んだのか、距離の感覚も時間の感覚もわからなくなった頃、一際広い場所へと降り立ったアムロたちは、そこで一息ついて弾薬とエネルギーの補充を行った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息を突きながら、アムロは携帯食品を流し込む。拓哉のおかげで格段に味の良くなったそれを、抵抗なく飲み下す。以前ならばあまりにもひどい味が気になってできなかっただろう。
使った弾薬の補充を済ませたアムロは、シートに背中を預けてひとまずの休憩を取る。ここに来るまでにかなりの数を撃退してきた。過去最高のスコアを達成していることだろう。もれなく全員エースの称号が与えられるほどに。
不気味な静けさに、背筋を冷たいものが流れる。この場所は異常だ。今までとは違い敵の気配がまるで無い。ここには一体何があるのだろうか。見回してみるがモニターはそれを映し出さない。
『どうした、リョウ』
突如として聞こえた隼人の声に、ゲッタードラゴンの方に目を向ける。
モニターの片隅に、リョウの姿を映し出す。
『隼人、ゲッター線の数値が異様に上がっていないか?』
『ああ。それは俺も気づいている。本来ならあり得ない』
『どういう事なんだ?』
『ゲッターロボは、宇宙から流れてくるゲッター線を集めて動かしている。地中に近づけばゲッター線の数値は下がってくるはずだ。だが、ここでは異様に高い数値を示している』
『計器が故障しているということはないのか?』
『そっちは正常さ。さっきから俺も隼人も何度もチェックしている。だが、こいつは・・・』
『分からないのか?』
『ああ。それに・・・俺にはゲッターが何かを警戒しているような気がする』
リョウがつぶやいた一言に、アムロはピクリと反応する。
「リョウ、ゲッターは、何かを言っているか?」
『おいおい、アムロ。ゲッターは機械だぜ。喋ったりなんて・・・』
『いる。敵がいると』
ゲッタードラゴンの視線は自分たちがこれから向かう先に向けられていた。
『そりゃあ、敵はいるだろうよ・・・』
『違うんだ。生きとし生ける全ての敵がいる。そう言っているんだ』
『リョウ、何を言っている?』
『倒せ、敵を倒せ。進化を止める敵を倒せ』
『リョウ!!』
機械的につぶやき続けるリョウに、隼人の怒声が突き刺さる。
我に返ったのか、リョウは自分の顔に手を当てている。
『俺は、一体、何を・・・』
『こりゃあ、拓哉が目を覚ましたら最初の仕事は、リョウとゲッターロボの検査だな』
『・・・・・・ゲッター・・・お前は、俺に何を・・・』
『難しい話は後じゃ。ゲッターロボは問題なく動くのじゃな?』
『はい。ゲッター線の数値が高い以外は何の異常もありません』
『ならばよい。全ては生き残ってからじゃ。婿殿には、ワシの方からも頼んでやるわい』
その話はここで終わった。だがこれが後に大きな影響をもたらすとは、神ならぬ彼らは気づくことはなかった。
再び進撃を開始した一同は、BETAの姿が見えないことに一種の異様さを感じ取っていた。
『まさか、BETAはもう打ち止めか?』
『どうだかな。アンバールの時みたいに、最下層部で待ち構えているかもしれないぞ』
メインシャフトを突き進んでいく彼らを阻むものは何も無い。
静かな時間だけが過ぎていく。
いっそ敵が出てきたほうがさっきの妙な出来事を考えなくても済む。ゲッターと竜馬に起きた異変は、アムロの中で微かに不信感となって芽生えていた。アムロの中の何かが竜馬とゲッターロボを異様に警戒しているのだ。
すぐに頭を振ってその考えを追い出す。竜馬は友人で、ゲッターロボはBETAのように訳の分からない存在ではない。
やがて、何事もなく最下層へと降り立ったアムロたち。
BETAが待ち受けていると警戒していた最下層部も、実に静かなものだった。
『ふむ・・・。ここまで何も無いとはな』
『どうする。後続部隊を待つか?』
『そうじゃの。その方がいいかもしれん』
『いいや、悪いが、どうもそうは行かないみたいだぜ』
『なに?』
隼人の言うことの答えはすぐに知れた。装甲越しにも分かるほど、ゲッタードラゴンが唸りをあげているのだ。
まるで、この先にいる何かを威嚇するかのようで、それは本来命を持たないはずのゲッターロボが生きているかのように錯覚する、一種異様な光景であった。
『ゲッターが言っている。この先に、すべての生命体の敵がいると』
『この先にいるって・・・いつもの反応炉じゃないのかよ』
『オリジナルハイヴだ。何があってもおかしくはない』
『さしずめ、BETA星人みたいなのがいるってか?』
『可能性はあるだろうな。拓哉くんはここがBETAの総司令部のようなものだと仮定していたからね』
誰からともなく沈黙が降りる。
そして、紅蓮の下した決断は。
『進むとしよう。どの道、進まねばならんのだ。それが少し早まっただけよ』
『そうじゃな。ただし、慎重にな』
ゆっくりと、周囲を警戒しながら歩みを進める。
ゲッタードラゴンはやはり猛烈な唸り声をあげているが、それでもまだ竜馬の制御を離れていない。
一方、アムロも異様な気配を感じ取っていた。それは当初、異常な気配を発するゲッタードラゴンを警戒してのものと思われていたが、ここに至ってそれは勘違いであると気がついた。アムロのニュータイプ的な勘も、この先にいる何かを警戒しているのだ。
「いる・・・」
『アムロ、お主も何かを感じたのか?』
「はい。この奥に、強烈な気配を感じます」
だが、それは悪意のようなどす黒いものではない。もっと機械的な気配だった。だからこそ、アムロはそれを警戒していた。
やがて、彼らの前にそれは見えた。広大な空間の中央に屹立するそれは、今までのハイヴにあった反応炉とは一線を画していた。巨大さも然ることながら、その全身から伸ばされている触手は、既に臨戦態勢をとっていた。
『うげぇ、何だよあれは・・・』
『なんというおぞましい・・・』
誰もがその威容に慄く中、触手が凄まじい勢いで伸びてくる。
『ッ!やる気満々ってわけかよ!』
「来るぞ!!」
アンバールの時の倍の数になる触手が、一斉に叩きつけられる。それは、ガンダムMk-Ⅱとゲッタードラゴンに殆どが集中していた。
「狙いは」
『俺達か!』
必死になって回避を続ける2機を援護するように、紅蓮たちの攻撃が触手を迎撃する。それは触手を焼き切り、消し飛ばし、攻撃は止んだかのように見えた。だが、それはすぐさま触手が再生するという離れ業を見せつけられる事となる。
『本体を叩くしか無いというわけか!』
そして再び伸ばされる触手。今度は紅蓮たちも脅威と感じたのか、更に倍する触手に増やして絡め取らんと迫る。
『ちぃっ!埒が明かん!』
『くっそー!このままじゃあやられちまうぜ!』
触れられれば防御力も関係なし。この事実がアムロたちを追い詰める。
必死に回避をしつつ触手を切り裂き、そしてまた触手が再生するという悪循環に陥る中、突如として触手が薙ぎ払われた。
『苦戦しておられるようですな』
『月詠か!』
『それだけではありませんよ』
斯衛軍、666戦術機中隊を始めとした後続部隊が追いついたのだ。中にはテオドールのガンダムと、アントンのマインドシーカー改の姿が見える。
突然の乱入者に、反応炉も攻撃の手を止めて、こちらの様子を見ているようだ。正確に言えば、その事実に気づいているのはアムロだけなのだが、
アムロは油断なく反応炉を睨みつける。
と、その時だった。
反応炉の上に何かが姿を現す。軟体生物のようなものが生え、そこから更に触手が伸びている。
「あれが、反応炉の本体か・・・!」
アムロがそうつぶやくと同時に、反応炉が青い光を放ちだす。
『総員!警戒せよ!』
『な、何だよ、これは!』
周囲を包むあまりにも眩い光に目が眩む。それはいっそ幻想的と言ってもいいものであり、とてもあのおぞましい反応炉が放っているとは思えない光だったのだ。
そんな中、アムロは自分の心を鷲掴みにされる不愉快さを感じ取っていた。
「くっ、僕の中を覗く、お前は誰だ!!」
『これは、リーディング!?いいえ、もっと高度な、まさか、プロジェクション!?』
『分かるのか、ソフィア』
『は、はい。あの反応炉は、私と同じ・・・何かしらの方法でこちらにコンタクトを取ろうとしています。でも、こんな、強い力は・・・!』
ソフィアが慄くほど強大な力に、だがアムロは真っ向から立ち向かった。
「僕の中に、入ってくるな!!」
アムロの咆吼と共に、ガンダムMk-Ⅱから赤い光が放たれる。それは反応炉の青い光をかき消すように、強烈な光を放っていた。
赤い光と青い光がせめぎあう中、それは突如としてアムロの脳裏に響いた。
―観察対象よりの干渉を確認。
「観察対象だと?僕のことを言っているのか!?」
『おい、アムロ、どうしたんだ?』
「みんなには聞こえていないのか?」
『わ、私は聞こえます。何か、頭の中に声が・・・!』
『俺には何も聞こえないぞ』
『ワシもじゃ。どうやら、アムロとそこの娘にのみ聞こえておるようじゃな』
共通点というより、二人は限りなく近くて遠い存在だということだろうか。ESP能力者とニュータイプ。この二人は確実に反応炉の声を聞き取っていた。
―不可解。現地重大災害多数よりの干渉を確認。
「災害・・・だって?僕たちは人間だぞ!」
『そうです!私達の星から、地球から出て行って下さい!』
―人間。人間とはなにか?
「お前たちがどう呼んでいるのか分からない。生きている者、生命体のことを言う。お前は、お前こそ一体何なんだ!」
―生命体に非ず。
「それは、お前たちのことか?」
―創造主以外は生命体に非ず。炭素で構成されしものは、生命体に非ず。
「炭素生命体を・・・人間を、生物だと理解していないのか・・・」
『なあ、炭素生命体ってなんだ?』
『人間のことよ。炭素を中心となって作られている物質、そしてその生命体のことを言うの。この場合、彼らは炭素でできたものを人間だと、生命体だとは思っていないようね』
「僕達は今、意思を交わし合っているはずだ!だったら分かるだろう!僕達は生命体だ!そして、この星への侵略をやめるんだ!!」
―生命体に非ず。収集活動の停止はありえない。
『収集活動・・・まさか、地球の資源を取りに来ただけ?』
「僕達を生命体と理解できていないのなら、お前たちは何なんだ!」
―資源収集活動体。故に、生命体に非ず。
「資源収集活動体・・・それじゃあ、BETAは宇宙人ですらなく、AIで動いている戦術機・・・いや、重機のようなものだというのか」
『私達は、たかが重機にこの星を蹂躙されていたってこと!?』
―観察対象を捕獲する。
『アムロくん、避けてー!!』
「くっ!やめろ!僕たちは生命体だ!認めろよ!」
青い光と赤い光がせめぎあう中、反応炉は触手をアムロに向けて伸ばしてくる。アムロはそれを回避しながら、それでも反応炉に呼びかける。
「分かり合えるはずだろう!僕たちは!今、お前とお互いに意思を交わし合っているんだ!分かるんだよ!」
触手をレーザー対艦刀でなぎ払いながら、それでもアムロはなおも呼びかける。
ガンダムから放たれる光が更に強さを増す。それは青い光を押し返し、更に塗り替えようとする。
「拓哉は言っていた。ニュータイプは戦争なんてしなくてもいい人間だって!だったら、僕達も分かり合えるはずだろう!」
―観察対象よりの干渉が増大。これより捕獲活動へと移る。
すべての触手が全方位からガンダムMk-Ⅱに向かって迫りくる。それを阻止したのはゲッタードラゴンだった。両手に持ったトマホークで触手をなぎ払い、ガンダムMk-Ⅱを抱えてその場から離脱する。
『アムロ、無理をするな!』
「だけど!」
『変な意地を張るなって。相手は俺たちを生命体だと理解していないんだろ?だったら・・・』
『理解できるようになるまで、殴る!』
『フッ、聞かん坊にはちょうどいいかもな』
『俺達らしくていいじゃねえか!』
『俺もお上品な対話は苦手なんだ。これぐらいがちょうどいい』
『まずは相手の動きを止めよう。対話なら、それからでも出来るはずだ!』
ユラユラと蠢く触手。それはまるですべてを拒絶するようで、アムロの決意をあざ笑うかのように蠢くのだった。