マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者 作:ジャム入りあんパン
1984年。世界が大きく動き始めた日である。
日本帝国から突如として、戦術機向けの新型武装とOSユニットが発表された。
それはレールガンとヒートサーベル。そして、学習型コンピューターである。
一体誰が?後方国家で技術的にも後進国であるはずの日本帝国。一体いつの間にこんな兵器を作り上げたのか。
コレについては拓哉も後に、よくも5年も、世界の諜報組織から隠し通せたものだと本気で感心していたぐらいだ。
逆を言えば、それほど期待されていなかったからこそ、いい加減な情報しか上がっていなかったのだろうと予測している。そして、それは大当たりだった。
まだF-4ファントムの改修機だけをようやく実戦配備したようなところである。そして、欧米諸国にとってはまだまだ敗戦国という認識がある。
今回の件でアメリカなどは面子を潰されたと思っている。レールガンなどはアメリカも研究していたものだ。だが、あっさりとその完成品を出された。詳細なレポートもつくというおまけ付きで。
そして特に許しがたいと思っているのが学習型コンピューターである。
アメリカでも最高峰と言ってもいい頭脳が、プログラマーたちが作り上げたOSの上をあっさりと行ったのだ。
とは言え、憤慨しているのはアメリカだけと言ってもいい。
EU諸国やアジア各国にとっては、性能さえ良ければ出処なぞどうでもいいのだ。
そして、ブラックボックス化など全くせずに売り出したそれは、馬鹿みたいに売れた。もちろん、馬鹿みたいに売れたのは最初だけだ。
しばらくすれば、EUでもアジアでもレールガンもヒートサーベルも簡単に量産される。
だがそれに対して日本は何も言わない。特許のみを取って、後はそのままコピーさせるに任せたのだ。
コレが拓哉の考えの一つ目。この頃にはすでにもう一つの新兵器が完成しているのだが、それはまた後で。とにかく、新機軸の武装が世界中に恐ろしい勢いで広まったのだ。
そして、ライセンス生産を容易に許したOS。学習型コンピューターだ。
即応性が大幅に上がり、今までとは違い動作のキャンセル、先行入力が可能となった一品。しかも、使えば使うほどに強力な武器となるOS。
学習型コンピューターをよく分かっていない人のために簡単に説明すると、ものとしては単純に使えば使うほど、使った人間の癖を学習して最適化するOSなのだ。そして、それは熟練の衛士が使うほどに、その癖を覚えていき、最適化していく。結果、未熟な衛士でも熟練衛士の癖を覚えたOSを使用することで、生存率が上がっていく。そういうものなのだ。
日本では新進気鋭の衛士、巌谷榮二、篁祐唯の二人が日々訓練し、OSを育てていっている。
さて、そうなると撃震改や瑞鶴はどうなったのかという疑問が出てくるだろう。当然ながら、世界各国から突き回された末に撃震改の情報を提供することになった。
そして、その有用性に誰もが驚いた。シミュレーターでしか戦ったことのないはずの日本でなぜこんな戦術機が生まれたのか。誰もが疑問に思った。
まずは頭部バルカン。これは足元に這い寄ってきた戦車級BETAを駆逐するのに大いに役立った。たとえとっさの状況であってでも頭部を下げるだけで、トリガー一つで排除できるのは非常に大きかった。
そして腕に搭載されたグレネード。両腕に2発ずつ、計4発のグレネードはたまった小型種の排除以外にも、大型BETAにも有効であることが分かった。
それらにレールガンとヒートサーベル、学習型コンピューターが加わることによって、恐ろしいまでの性能を叩き出したのだ。
当然ながら、開発者を出せと大騒ぎになった。
だが日本は拓哉の存在を徹底的に隠す・・・ようなことはせず、素直に10歳の少年が5歳の時に開発したのだとばらした。
もちろん、そんな戯言同然のことを信じるような国はどこにもない。無いのだが、事実なだけに日本も対応のしようがなく困り果ててしまった。
「つまり、俺に学会に出ろと?」
「うむ。そういうことなのだよ」
俺にその話を持ってきたのは、俺が開発衛士としてゲットした原作キャラ、巌谷榮二中尉だ。
「安心してくれたまえ。学会は日本国内で万全の警備の上で行われる」
「アメリカにドナドナされなきゃ別にいいですよ。しかしまあ、よく10歳児が作ったって話を信じましたね」
それが俺には不思議でならない。普通は信じない。
「もちろん、どこの国も信じてはいないよ。本物の開発者を出すための茶番だと思っているみたいだからね」
「俺が学習型コンピューターやレールガンの理論を説明できなかったら、本物の開発者が出てくる、と?」
無言で頷く巌谷中尉。
このクソ忙しいときに・・・。
まあ、言わんとしていることは分からんでもないんだが、仕方がない。俺の考えをちゃんと理解している人間は10人にも満たない。
「巌谷さん、拓哉は、これからどうなるのですか?」
心配そうに問いかける母上。そうそう、言い忘れていたけど母上は俺の秘書をやってくれている。
「ご心配はいりませんよ。学会に出るだけですので」
「そうそう。ついでに諜報員がいたら一網打尽にしようという考えがありありと見えるけど、大したことはないよ」
「・・・・・・気づくかい?」
「気づかないとでも?」
「本当に!拓哉に危険はありませんね!?」
子どもを囮にするとなったら流石に母上が黙っていないか、巌谷中尉に掴みかかる。
「だ、大丈夫です!万全の警備で望んでおります!我が国としても、拓哉くんの頭脳を失うようなことは断固として阻止する所存です!!」
巌谷中尉、パニック状態。そりゃ、俺に暴言を吐いた巌谷中尉より一回りガタイの大きい軍人を、軽々と投げ飛ばしたの見てるからな。
さて、学習型コンピューターとレールガンなんて既存のものだけじゃあつまらんな。新型動力源と、PS装甲もネタとして持っていくか。
まあ、今の動力源ではPS装甲は使いものにならないんだけどな。アッという間にPSダウンしてしまうし。そのための新型動力源・・・と、言いたいところだけどコレも実はちょっと足りない。それだけPS装甲のエネルギー消費は凄まじいのだ。だけど、電力で硬度を大幅に上げることの出来る新素材というのは、それなりに人目を引くはずだ。
他にも用意しているものはあるんだけど、それは表に出す訳にはいかない。邪魔はさせない。ただし、その為の撒き餌は必要だろう。PS装甲と新型動力源ぐらいなら安い。
「拓哉、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫でしょう。帝国だって俺を手放したくないだろうし、計画を止めるわけにも行かないだろうし」
計画というのは何も俺が紅蓮中将と雷電翁に動いてもらっている方じゃない。帝国肝いりの、純国産機の方だ。まあ、こっちはどうとでもなるしどうとでもする。
俺の計画がうまく行ったら同時に達成するたぐいの計画だからだ。その為にはこの学会は実に楽しみだ。
まず、俺には味方が少ない。今、紅蓮中将たちが動いて賛同者を増やしてくれてはいるが、それでも両手の指の数で足りてしまう程度だ。特に、学者肌の人物の助力がほしい。
自分で言うのもなんだが、俺は視野が狭い。一つの目的を決めるとそこにまっすぐ突き進んでしまう。その際に周囲を省みることが出来ない。これはもう前世の時からの癖だ。
だからこそ俺の側で抑えてくれる人物がほしい。母上では正直頼りない。父上は仕事がある。紅蓮中将や雷電翁にはそれぞれ立場があり、巌谷中尉と篁中尉は立場が弱い。焔ちゃんを頼るのは論外だ。
俺と同じ目線で、俺と同じ未来を見てくれる人がほしいのだ。
俺は窓の外を見る。俺という10歳の子どもが一人で歩けない。そんな生活はゴメンだ。自分の身の安全のために、俺は学会では自重しないからな。
自重してないですよね?