「ありがとう、キャスター。お陰で助かった」
「いや、気にすんな。俺の方も予想してたよりも時間をくっちまったしな」
ガラリと、セイバーが崩れた地面から立ち上がる。しかし今度こそ決定打が入ったようで、その身は徐々に粒子となっていった。
「見事、貴様たちの勝ちだな。護る力の方が優ったか。穢れを知らぬあの者らしいのかもしれんな」
「セイバー・・・」
「そのような顔をするな。聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだ。そう、グランドオーダーは」
セイバーの発したその言葉にオルガマリーはひどく驚いた。何故その名をこのサーヴァントが知っているのか。
「いずれ分かるだろう。そこのマスターよ」
「なんだ、セイバー?」
「そう身構えるな。最後に一言言い残してやろうと思ってな」
「遺言、いや辞世の句って奴か?坊主、聞いてやったらどうだ?」
「あぁ。構わないけど」
「ふむ、では1つだけ。誇るがいい、貴様の力は本物だ。本当に、本当に、」
「強くなりましたね、シロウ」
「っ!?セイバー!」
先程までのような威圧は消え、彼女は笑顔を見せたのだ。今までの冷たさを含む笑みではなく、優しい笑顔を。そっと伸ばされたセイバーの手に士郎は触れた。暖かい何かが自分の中に流れてくるのを感じる。同時に、手の中の感触もどんどん薄くなる。視界がぼやける。彼女の顔をちゃんと見たいのに、滲む視界ではままならない。
「シロウ」
「セイバー!セイバー、俺、俺は!」
「わかってます。ですからシロウ、」
「あぁ。わかってる。心配しなくてもいい。もう、大丈夫だから」
「ご武運を」
そう言って彼女は消えていった。身体の中に流れる暖かいものは、それでもなお残っている。物思いに耽る士郎をキャスターが現実に引き戻した。
「坊主。アーチャーの野郎から伝言だ」
「伝言?」
「お前の思いはもはや本物、だとよ」
「あいつ・・・やっぱりそうか」
「まぁ、ちゃんと伝えたぜ。といってももう俺もここまでみてぇだけどな。無事に聖杯戦争を終わらせることができたらしい」
見ると、キャスターの身体も少しずつ粒子状になっていた。
「坊主、お前と組むのも悪かなかったぜ。お前みたいなマスターだったから、この戦争にもやりがいを感じた。それから、こいつは返しとくぞ」
投影品の槍をキャスターから受け取った士郎はそれをしまった。差し出されたキャスターの手をしっかりと士郎は握った。
「また呼ぶことがあれば、今度はそいつに相応しいランサークラスで呼んでくれよな」
「あぁ。そうするよ」
「じゃあ、またな」
軽く手を挙げて、キャスターは消滅した。今度こそ、この戦争はちゃんと終わったようだ。
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「いろいろと言いたいことがあるけど、まずはお疲れ様、マシュ。衛宮も。良くやったわ」
「ありがとうございます」
「それで、マシュ?あなたの英霊か宝具の真名がわかったの?」
「いえ、その。ただ無我夢中で」
「そう。想いの力だけで発動させたのね。けど、名前が無いと不便よね。そうね、
「ロード・カルデアス・・・ありがとうございます、所長」
嬉しそうな顔でマシュは盾を撫でた。宝具は英霊の持つ最強の武器。それを使えなかったことを負い目に感じていたマシュだったが、今回限定的とはいえ発動できたのだ。それも、あのアーサー王の宝具さえも防ぎきったのだ。
「良かったな、マシュ」
「はい、先輩が隣にいてくれたおかげです」
「俺は何もしてないさ。マシュの想いが形になった結果だ」
手を伸ばして優しくマシュの頭を撫でる士郎。少しくすぐったいけど心地いいその感触にふわりとした笑顔を浮かべるマシュ。微笑ましいその光景に、
『もしもし士郎くん、所長?あぁようやく通った。さっきまで激しい魔力の渦のせいで全然繋がらなくって・・・ってあれ?』
・・・邪魔が入るのはもはやお約束だろう。突然の声に驚いたマシュが慌てて士郎から離れてしまう。苦笑する士郎と少し残念そうな顔のマシュ。自分から離れてしまったからお願いしにくそうにしているマシュを見て、士郎は、また今度労ってあげるときにしてあげよう、なんてことを考えていた。
『えぇと、なんだか邪魔しちゃったかな?』
「いいわよ、ロマニ。そろそろ話を進めようと思っていたところだから。それで、衛宮。あなたの使う魔術について、詳しく聞かせてもらえないかしら?」
「俺は昔からある特定の魔術のみに長けていたんだ。一つは解析、特に剣に関してなら、宝具レベルのものの解析もできる」
『ちょっと待ってくれ!宝具の解析ってどういうことだい?』
「俺は見ただけでその剣の構造や材質、特性や用途、その剣の経てきた歴史などを情報として読み取ることができるんだ。それは宝具も例外じゃない」
オルガマリーとDr.ロマンの空いた口が塞がらなかった。解析魔術は魔術の中でも割と初歩中の初歩だ。しかしそれをどれほど極めたとしても宝具の解析ができるものなど聞いたこともなかった。
「続けるけど、もう一つだけ俺に使える魔術がある。魔力を用いて物質を形作る。さっきまでの槍や剣もそれだ」
『魔力で物質を?まさか、それって、投影魔術?』
「ありえないわ!投影魔術で作り出されるものは中身のないガラクタだけよ。それだってこの世界にとどまる時間は短い。けどあなたの剣はこの世にとどまるだけじゃなく、あのセイバーの剣とも渡り合える強度があった。いくら強化の魔術をかけても、投影品の剣が持つはずもないわ」
そもそも投影魔術は本来儀式などに用いられる触媒などの代用品を一時的に用意するためにしか使われないのだ。その強度はもろく、とても戦闘で使えるものではない。
「俺の解析が他と違うように、投影も特殊なんだ。俺の投影品は俺が消すか、壊されるかのどちらかでない限りは、半永久的にこの世に存在し続ける。そして相応の魔力があれば宝具さえも投影が可能になる」
今度こそ二人の口が本当に塞がらなかった。故に反応したのは彼ら2人以外の人物だった。
「ほぉ、奇妙な魔術だとは思ったが、まさか投影魔術だったとは。今回最大の予想外はやはり君か、衛宮士郎。君は本当に想像外で、私の寛容の許容外だ」
最初にセイバーが立っていた場所、そこには新しい影が立っていた。きっちりとした服装にシルクハット。その顔には笑顔が浮かんでいた。
「あんたは、確か、レフ・ライノール」
セイバーとのこのやり取りにも今はもちろんあります
お楽しみに