正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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みなさんご存知、所長が・・・

なんてね、ちょっと変えちゃいました


アニムスフィアの思い

初めてマシュと出会ったあの時、マシュと士郎を作戦会議室へ呼びに来たのがレフ・ライノールだった。彼はカルデアの魔術師の一人で、カルデアの要でもある近未来観測レンズ「シバ」の開発者だ。

 

「どう、して?」

「レフ、あぁレフ!」

『レフ教授だって!?爆発の際に行方不明になったはずの彼が、何故そこに!?』

 

驚くマシュとDr.ロマンをよそに、オルガマリーはレフの元へ駆け寄った。その姿はもはや依存しているようにも見えた。ただ一人、士郎だけは気をぬくことができなかった。何か胸騒ぎがしたのだ。

 

「レフ!」

「やぁオルガ、大変だったね」

「えぇ、そうなの!予想外のことばかりで、でもあなたがいれば大丈夫よね?」

「あぁ、そうだとも。本当に、」

 

 

 

「予想外のことばかりで、頭にくる」

 

突然豹変するレフの雰囲気に流石のオルガマリーも止まる。細められた目こそ変わらないが、その口調は吐き捨てるかのようだった。

 

「ロマニ、君には管制室に来るように言ったはずだが。君もだ、オルガ。確実に死ぬように爆弾は君の足元に置いたというのに、生きてるとはなぁ」

 

オルガマリーの表情が凍りつく。そんな様子に目もくれず、レフの話は続く。

 

「いや、生きているのとは違うな。正確に言えば君はもう死んでいるのさ。肉体的にはね」

「レフ?な、何を言ってるの?」

「あの爆発で君の肉体は間違いなく死んだ。今ここにいる君は、無自覚のままに精神のみがレイシフトしたものだ。全く、生前あれほど渇望していたレイシフト適性が、まさか死後に与えられるとは。笑ってしまう」

 

そう言うレフの目は狂気に満ち、口元は歪んだ笑みを浮かべていた。今までのレフとは違う、別人のように歪んだ笑顔だった。

 

「私が、死んでるって、そんな、」

 

「哀れだ。実に哀れだ。だからせめて今、君が生涯を捧げたカルデアスがどうなってるのか、見せてあげよう」

 

セイバーの消滅した場所に光り輝く物質があったのに、ようやく士郎たちは気づいた。それは宙に浮かび上がり、レフの元へ向かった。その物質を手に取ったレフが指を鳴らすと、空間に穴が空き、真っ赤に燃えるカルデアスが現れた。

 

「何よ、それ?ただの虚像でしょ?そうよね、レフ!」

「いいや実物だよ。君のためにわざわざ時空をつなげてあげたんだ。聖杯があればたやすいことだからね。さぁ、アニムスフィアの末裔よ。お前たちの愚行の末路を知れ」

 

レフが手をかざすとオルガマリーの体が宙に浮かび、レフの元へゆっくりと飛んで行った。

 

「な、何をする気!?」

「最後に君の望みを叶えてあげようと思ってね。君の宝物に触れさせてあげようじゃないか」

「な、何を、あなたわかってるの!?カルデアスよ!?」

「そう。ブラックホールと何ら遜色ないものだ。いや、この場合は太陽かな?どちらにせよ、人間の体は間違いなく分子レベルに分解されるだろう」

 

ゆっくりとカルデアスに近づくオルガマリー。それを止める術を持たないマシュやロマニは固まってしまった。ただ、一人だけ動いた人がいた。

 

投影、開始(トレース・オン)!」

 

かつて彼の出会ったライダーが使用していた長い鎖の付いた剣を投影した彼は、その鎖をオルガマリーの体に巻きつけ、引き戻そうとしていた。

 

『士郎君!』

「先輩!」

 

「やれやれまた君か。本当にこう何度も邪魔をされると、さすがの私も本気で怒ることになるぞ」

 

「ぐっ、目の前で誰かが死にそうになってるのを、見捨てられるわけないだろ!」

「私も手伝います」

 

鎖を掴みともに引っ張る士郎とマシュ。その様子を心底つまらなさそうに眺めるレフ。オルガマリーは依存レベルで信頼していたレフに裏切られた衝撃から立ち直れていないようだ。

 

「どうしてこんなことばかりなの!?まだ、何もしていないのよ!誰にも、褒めてさえもらえなかったのに!」

「しっかりしろ、所長!」

「えっ?」

 

泣き叫ぶ彼女は、鋭く響いたその声に止まった。鎖を腕に絡ませ、固定させた士郎が、力の限り引っ張りながら声をあげた。

 

「このカルデアと、レイシフトのシステムがあったから、俺たちはここにいる。あのままだったら、間違いなく死んでいた!」

 

腕に食い込む鎖の痛みに堪えながらも、士郎はオルガマリーに語りかけ続けた。

 

「それに、この特異点に俺たちが来れたから、あのサーヴァントたちを倒して、聖杯戦争を終わらせることができた!あんたのして来たことは、何も間違っちゃいない!」

 

一筋の涙がオルガマリーの頬を伝った。それは先ほどまでの恐怖による涙ではなかった。静かに、オルガマリーは泣いた。それは絶望でも恐怖でもなく、もっと温かい気持ちだった。

 

 

「ぐぅっ、がぁっ」

「先輩ダメです!このままだと、先輩の腕が!」

 

一発の黒い弾丸が士郎の足元に被弾し、吹き飛ばした。その衝撃で鎖が腕から離れる。

 

「何が、っ!?」

 

士郎の視線の先にいたのはオルガマリーだった。右手をピストルのように構えた彼女の様子から見ても、士郎を攻撃したのは彼女に間違いない。

 

「何で!?」

「このままだと、あなたまで巻き込まれる。そうでなくとも、その腕がなくなる。それはダメよ。あなたは、今カルデアに必要な人間だから」

「けど!」

「私のカルデアでの目的は、人類史の消滅の阻止。そのために、これは必要なの」

「所長!」

「だから、あなたが証明しなさい。私たちのして来たことが間違ってなかったことを。私の目的を、あなたが叶えなさい。頼めるかしら、衛宮?」

「っ、あぁ。任せろ」

「そう。なら、安心ね」

 

彼女の体がカルデアスに触れたのはその直後だった。激しい痛みがあるだろうに、彼女は最後まで笑っていた。そして完全に姿がカルデアスの中へと消えていったのだ。




というわけでどこかで見たことがあるようなシーンでもありますね

アニメの所長見てたらいたたまれなくて、いたたまれなくて

まぁ実際は笑顔保ってられるわけなさそうですけどね

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