アルトリアさん自重してください
既にクラスで言えば残すところキャスターだけですよ、サポート枠
まぁ、欲しいから回しちゃうんですけどね
プロローグと展開が明らかに違いますが、その辺りはご容赦ください
召喚の儀
遠い、どこかとても遠いところで、誰かの声がした気がする。楽しそうな笑い声が響く。
いやこれは嗤い声だ。
美しくも激しいその嗤い声は、楽しげでありながらも、何かがおかしかった。まるでひどい狂気や怒りに支配されているかのような。残酷で、残忍で、壊れている。それは、聞いていて痛ましかった。
「フォウ?キュー、フォウ」
目が覚めたら、顔の上に重みを感じた。このモフモフとした感触。間違いない。
「おはよう、フォウ。悪いんだけど、降りてくれないか?起き上がれない」
「キュウ?」
とりあえず退いてくれたので体を起こす。背伸びをして体を軽くほぐす。その間もフォウは律儀に床に座り士郎を待っていた。
「よし、行くか」
「フォウ!」
最初の特異点へ向かう前に少し準備をしたいことがあるとロマニとダヴィンチに言われた士郎とマシュは束の間の休息を与えられた。そして今日はレイシフト予定日当日だ。これからの戦いのことを考えながらも、士郎はついてくるフォウとともに日課のトレーニングをこなしていた。
腕立てや腹筋などの筋トレ、軽いジョギング、そして魔術。朝昼晩と彼はメニューをこなした。そして時間になると厨房に入る。
「おはよう衛宮君、今日も元気だね」
「あぁ。とはいえ少し緊張はするけどな。ちなみに言うけど今日は和食だ」
「おおっ、ありがとう!俺も和食は好きなんだよね〜」
食堂にくるカルデアの職員。数にして20名にも満たないが、ともに戦う仲間であることに変わりはない。そんな彼らが朝食で食べているのはやはりというか、士郎の手料理だった。ずっと料理し続けてきた彼は、和洋中なんでもござれ、たまにどこかの国の伝統料理まで作るほどになった。世界を旅したのはそういう面でも彼に影響を与えたらしい。
「おはようございます、先輩」
「おはよう、マシュ、ドクターも」
「おふぁよう」
少し賑わう食堂に彼のサーヴァントのマシュがロマニとともに訪れる。彼女も彼女で模擬戦闘訓練を積んできたのだ。士郎も自分の分の食事を用意し、3人で食べ始める。
「今日がレイシフト当日です。最初の特異点は15世紀のフランスです」
「確か、100年戦争の頃だったな。まさか戦争が続いているとかか?」
「むしろその程度で済めばいいけどね。7つの中では異常が小さいとはいえ、冬木とは比べものにもならない。心してかかって欲しい」
「あぁ」
「はい」
食事を終えた士郎はマシュたちとは別れ、マスター適性者たちが凍結されている部屋へと一人で向かった。
「先輩は何故マスター適性者の部屋へ?」
「あれ?マシュは知らないんだっけ?あの爆発に巻き込まれたマスターの一人、遠坂凛は彼の魔術の師匠なんだって」
「師匠、ですか?」
「士郎君をカルデアに連れてきたのも彼女だ。確か聖杯戦争で協力関係にあったらしいよ」
「そう、ですか」
何故だか少し羨ましいと思った。士郎がわざわざ会いに行くほどに、凛は彼にとって大切なのだろう。冬木で出会ったセイバーとの最後の会話も、とても親しい仲の者同士のようだった。自分も、そんな関係になれるのだろうか。なんてことを思ってしまう。
「どうして、こんな気持ちに・・・」
「マシュ、どうかした?」
「いえ、何でもありません。いつ頃先輩をお呼びしたらいいでしょうか?」
「そうだね、とりあえず後一時間ほどかな。管制室に連れてきてくれ」
「了解しました」
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マシュに呼び出された士郎は召喚サークルの前に立っていた。その側でマシュとロマニが固唾を飲んで見守っている。
「士郎君、準備はいいかい?」
「あぁ。いつでもいけるぞ」
「じゃあ早速、英霊召喚の儀式を始めようか。やり方は覚えてるよね?」
「あぁ」
「前にも言ったけど、触媒がないからどんなサーヴァントが来るかは予想できない。それでも君と相性のいいサーヴァントが呼ばれるはずだ。きっと力になってくれる。よし、始めてくれ」
「
手に握る聖晶石に魔力を少し流し込む。その石と士郎の魔力を触媒の代わりにサーヴァントを呼び出すのだ。少し色の変わったそれを、3つサークルの中へ放り込んだ。サークルから光が溢れ始める。
「これが、英霊の召喚なのですね。実際に見るのは初めてですが、凄い魔力の渦です!」
「大きな魔力を確認できた。来るぞ!」
光がまるで柱のように上がる。その光が薄まると先に1つの影が確認できた。
「あっ、あなたが私のマスターですか?」
士郎とマシュが顔を見合わせてから同時に声の主を見た。その声に聞き覚えがあったからだ。サークルから現れた影。その声、金色の髪、エメラルドのような瞳、そこにいたのは間違いなく、
「あの、私アルトリア・ペンドラゴンです!王になるための修行中の身ですが、あなたの剣として恥ずかしくない戦いをしてみせます!よろしくお願いしますね、マスター」
髪をリボンで後ろにまとめ、全体的に白百合をイメージさせるドレスに近い服装をし、純真な笑顔を向け、ぴょこんと頭を下げるセイバーがそこにいた。
「・・・」
「先輩?」
士郎の動きが完全に固まってしまっていた。不思議に思ったマシュやロマニが声をかけても反応がない。
「わ、私、何か間違えてしまったのでしょうか?」
「いえ、おそらくひどく驚いているだけかと。えっと、あなたはアーサー王で間違いないのですか?」
「あ、いえ、私は修行中なので、まだ王と呼ばれる身ではありませんよ。騎士としてもまだ未熟ですし」
あの時戦ったセイバーことアルトリアのような威圧感はなく、かといって最期の瞬間に見せた落ち着いた雰囲気でもなく、どこか少女らしい雰囲気の持ち主だったため、流石のマシュも戸惑った。
以前直接あったことのないロマニのみが驚きが小さかったため、今セイバーと会話している。
「はっ!俺は何を」
どうやら士郎が回復したようだ。マシュが早速士郎の様子を確認しに行く。
「先輩、大丈夫ですか?」
「マシュか、大丈夫だ。ちょっと幻を見ちゃっただけで、!?」
マシュの後にいつの間に来ていたのか、先ほどのセイバーが士郎の前に来ていた。
「あなたが私のマスターなのですね。私はアルトリアです。でも、まわりからリリィというあだ名をつけていただいてたので、マスターも良ければそう呼んでください」
「あ、あぁ。俺は士郎、衛宮士郎だ」
「シロウ、ですか?なんだかとってもいい響きですね」
少女らしい笑顔を見せるセイバーに、流石の士郎も戸惑ってしまった。
「よろしくお願いしますね、シロウ」
眩しいその笑顔を向けられた彼はなんとかよろしくと返した後一旦部屋の外へ出た。そこで漏れたのは久方振りに使う言葉。
「なんでさ!」
リリィを仲間に加えた士郎たち。人理修復のための第一歩、最初の特異点への旅はもうすぐ始まろうとしていた。
というわけでセイバーはセイバーでもリリィの登場です
あぁ、士郎の気苦労が増える増える
ちなみにさっきまで初めて生でラジオを聴いてました
やばい人生の楽しみが増えたぞ