あぁ、懐かしい。マシュの姿も邪ンヌの立ち絵も懐かしい
召喚時のバタバタが落ち着いたのを見て、士郎は改めてリリィに協力を仰いだ。当然のように彼女は断ることはせず、彼らはそのまますぐにレイシフトで最初の特異点へ飛んだ。
目を開くと、広がるのは一面の草原だった。どうやら無事に到着したらしい。爽やかな風が吹き付ける。久しぶりのその感じに、士郎は笑みを浮かべた。ポスンと頭に衝撃を感じる。この感触、どうやらまたフォウが付いて来てしまったようだ。と、真上を見上げたところで、士郎は異常に気づいた。
「先輩?どうかしたんですか?」
「マシュ、空を見ろ」
「空、ですか?えっ!」
「これは、一体なんですか!?」
『おっ、ちゃんと回線が繋がった。三人とも、無事かい?って、何で三人して空を見上げてるの?』
「ドクター、映像を送ります。あれは何でしょうか?」
『?あれって一体、ってこれは!光の輪、いやなんらかの魔術式か?こんな大きなものがあるなんて、間違いなく人理焼却に関わってるはずだ。これは僕たちの方で解析する。三人は霊脈を探してくれ』
「サークルを設置するのですね?」
『そうだ。そこでならこちらからの物資の補給もできる』
「わかった。行こう、マシュ、リリィ」
「はい、先輩」
遠くに砦らしきものが見えたため、三人はまずそこへ向かい、正確な位置を把握することにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
砦にたどり着いた三人が見たのは、外壁だけなんとか形を保っている砦だったものと、たくさんの負傷兵だった。
「これは、一体何があったのですか?」
「どういうことでしょう、先輩。この時期のフランスなら休戦中のはずです」
「とにかく助けよう。話は後で聞かせて貰えばいいさ」
「了解です。言葉は通じるでしょうか」
「大丈夫。俺は世界を巡ったからな。ちゃんとフランス語も使えるさ」
結果としてフランス語を使わなくても意思疎通は可能だったためマシュはホッとした。近くにいる兵から順に、士郎は治療魔術をかける。最初は警戒していた兵士たちも、士郎たちに敵意がないことを知ると気を緩めた。
「これで目立つ外傷は全てだな。内部の傷までは俺の腕じゃ完全には治せないから、後で診てもらったほうがいい。ごめんな」
「いや、ありがとう。見ず知らずの我々を助けてくれるとは。あんたたちは?」
「旅のものです。何があったのか聞いてもいいですか?シャルル王は休戦条約を結ばなかったのですか?」
「知らないのか?王は焼き殺されたのさ。魔女の炎にね」
「魔女?」
突然飛び出た単語に首をかしげた。マシュとリリィもピンと来ていないようだ。確かに宗教的な面から見て、異端者を魔女として処刑するという時代ではあるが、王を殺した魔女なんて存在はいなかったはずだ。
「その魔女っていうのは、一体何者なんだ?」
「ジャンヌ・ダルクだ。あの方は蘇ったんだ。竜の魔女として」
「ジャンヌ・ダルクが!?」
あまりにも有名なその名前に士郎が驚愕の声を上げる。フランスを救ったとされる聖女、わずか2年ほどの活躍でその名を世界中に知られることとなった人だ。魔女の汚名を着せられ殺されたが、今では名誉も挽回され、英霊の中でも最高峰の中にはいるだろう。そのジャンヌ・ダルクが魔女として復活したということは信じがたい。
「イングランド兵は既に撤退したが、俺たちはどうすればいい?」
途方にくれる兵に、三人は掛ける言葉が思いつかなかった。
「先輩、これもやはり人類史の焼却に関わってるのでしょうか?」
「多分そうだと思う。聖杯の願いで蘇ったのか?」
「でも、それなら何故かつて自分が救おうとした国を滅ぼそうとしてるのでしょう」
「来た!また敵が来たぞ!」
見張りの兵が声を上げる。砦の壁上へ移動した士郎とマシュが見たのは、竜牙兵がこちらに向かって来ているところだった。
「あれはっ」
「明らかに魔術で作り出されてます。先輩」
「あぁ。マシュ、リリィ頼む。俺はここから援護する」
「了解です。戦闘に入ります」
「お任せください」
壁上から飛び降りたマシュたちは、砦の門の前へ降り立った。唯一の出入り口を守ることで、敵を外に食い止めることに専念する。
一方士郎はその手に弓を持ち構えた。あのアーチャーが使うものと全く同じ、黒い弓。名もなき剣をいくつか投影する。それを弓につがえた彼は次々に竜牙兵へと矢を浴びせる。矢一つにつき一体のみであれば間に合わない。だが彼が射たのは彼の作りし投影品。無銘であれど、神秘を内包する。故にそれで終わることはなく、
「
一斉に大爆発を起こし周りの兵を巻き込む。取りこぼした兵はマシュが倒し、数分で戦いは終わった。
今回は大したことしてないな
士郎に弓を持たせてみたかっただけの話でした〜