正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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中々もう一人のジャンヌと出会えない

うーん、最近忙しくなってきたからなぁ


未完の彼女

「と、いうわけで、私たちはこのフランスに来ました」

「なるほど。状況は概ね理解しました」

「それで、ジャンヌさんはこの後どうするつもりなんだ?」

「決まっています。オルレアンを奪還し、もう一人のジャンヌを倒します。例え、一人でも、私が本当にもう一人いるのなら、それは私が止めるべきでしょう」

「それについてなんだが、俺たちにも協力させてくれないか?」

 

驚いた表情のジャンヌ。マシュとリリィは士郎がそう言いだすのをわかっていたのか、笑顔で頷いた。

 

「それはとても嬉しい提案なのですが、いいのですか?」

「もう一人のジャンヌはワイバーンを操ってる。それもあんな数をだ。そんなこと、普通の魔術でできるはずがない。つまり、」

「聖杯が関わってる可能性が高い、ということですね、先輩」

「そう考えるべきだろうな。この時代の魔術でも、竜種の召喚は不可能に近い。でも、聖杯の力があれば話は別だ。つまり、俺たちの目的は一致してると思う。だから一緒に戦わせてほしい」

 

そう言いながら士郎は手を差し出した。驚いた表情のジャンヌだったが、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべ士郎の手を握った。

 

「ありがとうございます。こちらこそ、お願いします」

「よろしくジャンヌさん」

「ジャンヌでいいですよ。この戦いの間は、あなたは私のマスターですから」

「マスターはやめてくれ。士郎でいいよ」

「ではシロウ、改めてお願いしますね」

 

その後、作戦を練るべく、サークルの設置のためにジャンヌを加えた四人は移動した。途中で魔物やワイバーンを倒しながら、彼らは霊脈の場所へと移動し、サークルの設置を完了した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

サーヴァントである他の三人はともかく、人間である士郎は体が疲れを訴える。定期的な休息が必要なため、一旦彼らはサークルを設置した所をベースとして休憩していた。

 

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

ぶつかり合う剣と剣。片方は干将・莫耶、もう片方は選定の剣、カリバーン。士郎とリリィによる模擬戦闘が行われていた。

 

「そこだ!」

 

士郎が剣を振るう。思わぬ一撃に構えた剣が弾かれる。体勢の崩れたリリィに向けて剣先が突きつけられる。

 

「そこまで!」

 

ジャンヌの声で剣を下ろししまう士郎。リリィも強張っていた体の力を抜く。ふぅ、と一息つくと士郎に笑顔を向けた。

 

「ありがとうございました、シロウ。私もまだまだみたいですね」

「いや、修行中でこれだけできるのはすごいと思うぞ。俺なんて師匠からは何度ボコボコにされたか」

「やはりシロウは剣の道も目指していたのですか?」

「いや、そんな大層なものじゃないさ。そもそも、俺の場合は才能はなかったしな。ただ、追いつきたかった人がいた。それだけだよ。それじゃあちょっとやりたいことがあるから、ここで終わろう」

「わかりました。またお手合わせ、お願いします!」

 

リリィが頭を下げるのを見てから士郎はその場から立ち去った。

 

「リリィさん。次は私の相手、お願いできますか?」

「はい、よろしくお願いしますね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一人、食事の準備をしながら、士郎は少し考え事をしていた。リリィは彼のよく知るセイバーの修行時代の頃の姿らしい。しかし、恐らくは別の世界から来たのだろう。少なくとも、かつて自分が見た彼女の過去に、あんなに少女らしく振舞っていた時期はなかった。つまりは、自分とアーチャーのように、同一の存在ではあるが同一の個体ではない、別の可能性。

 

「セイバーであってセイバーでない。いや、セイバーでないようでセイバーであるって感じかな。周りからしたら、俺とアーチャーもこうなんだよなぁ」

 

かつて自分とともに戦ってくれたあの誉れ高き騎士王。まだ修行中なこともあって、力、技、速さ、そのどれもが自分の知っているそれよりも劣っているのを、先ほど打ち合って実感した。けれども、まっすぐなその姿勢はマシュとも通じるところがあり、必死で技術を吸収しようとしているのがわかった。そのひたむきなところは素直に好感を持てた。

 

「セイバー、お前もこんな気持ちだったのかな」

 

かつて自分の剣の師であった彼女。そして今は自分が彼女の別の可能性に剣を教えている。そのことがなんだかおかしくて、少し笑ってしまう士郎だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

士郎の用意した手料理にジャンヌとリリィは顔を綻ばせた。美味しそうに食べるその姿に、どこぞの懐かしい思い出に浸ったのは内緒だ。しかもジャンヌの食べる量も同じなのではないかと思ってしまう。少なくともリリィには負けていない。

 

「ご馳走様でした、シロウは料理がお得意なんですね」

「まぁ小さい頃から作る機会があったからな。必然的に身についた」

「先輩がお上手なのは知っていましたが、それにしてもお二人はよく食べますね」

「修行の旅では、その、あまり美味しい料理がなくて、それで、その」

「しかし、サーヴァントにとって食事とは嗜好品でしかない筈なのに、なんだか元気が出てきた気がします」

「それは良かった」

 

腹も膨れた士郎たちは一旦野宿するための準備を始めた。といっても基本的に眠りが必要なのは士郎だけではあるが。危険に備えてマシュとジャンヌ、リリィは士郎の側にとどまった。

 

「彼は面白い人ですね。こちらをまるで人間のように扱っています」

「先輩は以前にも聖杯戦争を経験したらしいのですが、おそらくその時からそうなのでしょう」

「聖杯戦争を経験していたのですか?ということは勝者だったのでしょうか?」

「そこまで詳しくは聞いてません。ですが、先輩はその時の自分を未熟者と言っていました」

「未熟者?」

「わたしも全部知ってるわけではないのですが、」

 

マシュは士郎から聞いた話を二人へ伝えた。彼が魔術師としては三流であるということ。聖杯戦争に巻き込まれ、セイバーのマスターとなったこと。そしてその中で経験した戦いについて。ただ、そのセイバーがリリィの未来の可能性であることについては話さなかった。士郎に止められていたからだ。

 

『リリィにはリリィの未来がある。それを作るのはリリィだ。変に未来の情報を与えて選択肢を減らしてしまうより、彼女自身で選びとっていったほうがいい』

 

そう彼が言っていたからだ。

 

「その戦いに生き残った後に今の強さを手に入れたと言っていました。当時の自分はよく生き延びたなとも」

「すごい戦いを経験してたのですね、シロウは」

 

正直、ジャンヌは驚くどころではなかった。修行中の身と本人が認めているとはいえ、セイバーのサーヴァントと互角以上に剣で渡り合える人間など、普通に考えたらありえないのだ。それでも彼はそれを成し遂げた。一体どれほど努力を重ねたのだろうか。どれほどの戦いを経験したのだろうか。なんのためにそこまで。

 

「私は先輩のお役に立ちたいです。先輩のことを、守れるようになりたい」

「私もです。シロウとともに戦います。そうこの剣に誓いましたから」

 

笑い合うマシュとリリィ。二人の共通点としてあげられることは英霊として完成してはいないということだ。それはつまり、戦うことになったらどうしても他のサーヴァントに遅れをとることが多いということ。しかし、士郎はそんなことは気にしない。二人を信頼し、ともに戦う仲間として接している。

 

ジャンヌは士郎のいる方をちらりと見た。彼から協力の申し出があった時は嬉しくて、ありがたくその提案を受けた。しかし、自分はサーヴァントとしてのランクが落ちてしまっている。自分が彼らの足を引っ張ってしまうのではないかと、そう思っていた。でも、それも彼にとっては大したことではないのだろう。

 

「不思議な人なのですね」

 

その呟きは誰にも聞かれなかった。




というわけで、今いる三人のサーヴァント、全員が何らかの形でサーヴァントとして完成していない、という共通点?があるように感じたので差し込みました〜

バレンタインイベント、スッゲェ大変だなぁ
まぁ、現実にはもらえる気がしないんですけどね笑

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