やっと二人のジャンヌが出会う
翌日、早めの時間に起きた士郎に合わせて、四人は移動を開始した。まず近くの町で情報を集めることにしたのだ。
「今すぐにオルレアンに攻め込むのは難しいでしょう」
「そうだな。敵の戦力がわからないから、下手に動くわけにもいかないしな」
「地道に情報を集めることから始めましょう、先輩」
歩くことしばし、突然ロマニから通信が入った。
『みんな、ちょっと待ってくれ!君たちの今向かってる町から、サーヴァントの反応があった』
「サーヴァントの、ですか?」
「ドクター、今そいつはどこに?」
『ダメだ、すごい速さで町から離れて行ってしまったよ』
顔を見合わせる四人。もしも今のがもう一人のジャンヌだったのだとしたら、この先の町がどうなってしまったのだろうか。急いで走り出した彼らの目に入ってきたのは、燃え尽きた町だった。建物は崩れ、未だ燃え続ける炎。生きている人なんてとてもいなかった。
「なんてこと。町が、こんなことが」
「町の様子からしても、生存者はいなさそうです。シロウ?」
「先輩?」
黙り込んでしまった士郎の様子に、リリィとマシュが声をかける。なんでもないと笑顔を見せ、士郎は首を横に振った。
「ちょっと、考え事をしてた」
この場所を見ていると思い出す。あたりに広がる煙と死の匂い。生存者のいない崩れた町。それはどこか、彼の原点に似ていた。あの惨劇に。違うのはこれが何者かによる虐殺行為だということ、そして生存者は無く。
「これは、動く死体?」
「
「あれって」
ワイバーンの口からなにやら不快な音がする。硬い何かが砕ける音、ブチブチッと何かが切れる音、そして液体のようなものが滴る音。ワイバーンたちは喰らっていた。この町の人を、その死体を。
気づいたら士郎は強く拳を握りしめていた。殺された人たちの体を喰らい、操り、利用する。彼らに対して、それはあんまりな仕打ちだろう。しっかりと弔ってもらうことも、見送ってもらうこともされず、死してなお誰かの勝手な都合で使われる。そんなこと、許されるはずがない。
かつて目の前で、一人の少女が殺された。そして、その身体の一部は殺した男によって利用された。助けられなかった。死んでなお、利用されることとなってしまった。今、それをまた目の前で繰り返されている。
「
「
「
空中に突如として現れた無数の剣は、雨のようにワイバーンや
「ごめんな」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
突然士郎の見せた激しい攻撃に、ジャンヌたちはあっけにとられていた。剣を手に敵を斬る士郎の表情には強い怒りが現れていた。声を上げることも、勢いに任せて行動することもなかった。ただ、静かに燃える炎のような怒りだった。
「悪い。先走った」
「いえ。お疲れ様です、先輩」
「ありがとう、マシュ」
なんて声をかけて良いのかわからなかった。しばらく沈黙してしまう四人。そこへ、ロマニからの通信が入った。
『まずいぞ!先ほどのサーヴァントが反転した。君たちに気づいて引き返してるみたいだ。それも、数にして5騎もいる!』
「ってことは、もう一人のジャンヌ以外にもサーヴァントが?」
「シロウ、どうしましょう」
「戦力的に考えると、撤退したほうがいいかと思います。完全なサーヴァントが5騎もいては、今の私たちでは」
「ジャンヌはどう思う?」
「私は。私は、逃げません。真意を確かめたいのです。どれほど人を憎めばこんなことができるのか。それがわからない。だから、聞きたいのです」
ジャンヌの意思は強そうだった。マシュとリリィは少し不安げに顔を見合わせる。彼女一人置いて行くわけにもいかないし、かといって戦いになれば勝機はほぼない。彼女たちの不安を払うかのように士郎は二人の頭を撫でる。
「し、シロウ?」
「あの、先輩?」
「二人とも、俺も残ろうと思う。この被害をもたらした本人を、この目で確かめたい。でもこれは俺の我儘だ。二人に強制することまではできない。けど、一緒に戦ってくれるか」
「・・・当たり前です。私は、先輩のサーヴァントですから」
「騎士として、主人の言葉に反するわけにはいきませんからね。私も、ご一緒させていただきます」
『もうすぐ君たちのところに来る。いいね、戦うよりも、逃げることを第一にするんだよ!』
ロマニからの通信が切れる。それとともに上空に数体の竜が現れる。その背には5つの影。そのうち一人は黒い鎧に身を包み、竜の描かれた旗を持った少女。くすんだ金髪はまるで銀色、その瞳はあのセイバーと同じ金色。竜の魔女は彼らを見下ろし、笑った。
さてさて、今後の展開がどうすれば良いのか難しくなって来たぞ
やっぱりジャンヌと士郎の間に何か大きな縁を結んでおきたい
まぁつまりは二人の関係を掘り下げたいけど、どうしたらいいのやら