正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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仕事の前に一話載せたかった〜

まぁ、はい。あの二人の登場ですね


ヴェルサイユの花

「あぁ、なんてこと。こんなことがあり得るだなんて。ねぇ誰か私の頬をつねって頂戴。やばいの。おかし過ぎて、どうにかなってしまいそうなの」

 

空から士郎たちを見下ろしながら、彼女は笑う。微笑みではなく、皮肉げで、楽しげな笑みを浮かべる。

 

「ねぇ、ご覧なさいよジル、ってそうだったわ。ジルは連れてきてなかったわね。まぁいいでしょう」

 

「あなたは、一体誰なのですか?」

 

少し震える声でジャンヌが問いかける。その瞳はしっかりと黒い少女に固定されている。一方士郎は、その少女の周りにいる4つの影を確認していた。槍のようなものを持った男、十字架を持つ女性、剣を構えた少女らしき騎士、そして仮面を被った女性だ。一騎一騎が間違いなくサーヴァント、そして彼女たちを乗せてきた竜。状況は明らかに良くない。

 

「それはこちらの質問ですが、まぁ答えて差し上げましょうか。私はジャンヌ・ダルク、蘇った救国の聖女です」

「何故この町を襲ったのですか?」

「何故?簡単ですよ。フランスというこの国を、滅ぼすために決まってるでしょう」

 

こともなさげに彼女はそう言った。まるでそれが当たり前のことだと言わんばかりに。

 

「まぁ、あなたには理解できはしないでしょう。憎しみや怒りも、喜びも何もかも見ないで来て、人間として成長してこなかった、聖処女には、ね。あなたには存在する意味さえありません。バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン、バーサーク・セイバー、始末なさい」

 

長髪の男と仮面の女性が降りてくる。そのすぐ後に騎士も降りてきた。3人の目はジャンヌを捉えていた。

 

「王様、私はあの子の血が欲しいですわ。私より美しいものの血、どれほど私を美しくしてくれるのかしら」

「よかろう。では魂と器はいただく。貴様はどうだ、セイバーよ」

「そんなことには興味ない。僕は、サーヴァントとして与えられた仕事をこなすだけだ」

 

「マシュ、リリィ、構えろ!やるしかない」

「はい」

「ジャンヌ、行くぞ!」

「っ、ぁ、はい!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

バーサーク・アサシンの杖から放たれる魔力の塊をマシュは盾で防いだ。その隙にリリィが斬りかかるも、バーサーク・セイバーがその剣で攻撃を受け止める。

 

「聖女の血もいいけど、あなたたちのもいいわね。特に盾の子。まだ何色にも染まっていない透明なものみたい。その血は私をさらに美しくしてくれるわ」

「悪趣味だな。味方じゃなければ僕が斬っていただろうな」

 

「くっ、やはりサーヴァントとの戦いは厳しいですね」

「それでも、頑張るしかありません。シロウのためにも」

「はい」

 

同じ二人ずつとはいえ、彼女たちはまだまだ未熟。その上、狂化の呪いを付与されているセイバーとアサシンは、ステータスが上がっているのだ。遠距離からの魔力攻撃と剣による物理攻撃を使い分け、マシュたちを攻め立てていた。

 

一方ジャンヌはバーサーク・ランサーと戦っている。振るわれた槍を受け止めたジャンヌは、そのパワーにより後退させられた。

 

「くぅっ」

「さすがに救国の聖女、そう簡単には仕留められぬか、ぬっ!?」

 

とっさに手に持つ槍を振るうバーサーク・ランサー。槍と刃がぶつかり合い、火花が散る。

 

「ほぉ。マスターが自ら戦うか。マスターは基本後方支援だけかと思ったのだが」

「まぁな。何事にも例外はつきもの、ってことだよ!」

 

二刀を操り、士郎はバーサーク・ランサーへと攻撃を仕掛ける。その手数の多さに、先ほどまで笑顔だった相手の表情が変わる。焦りと驚きが現れたバーサーク・ランサーへと士郎の蹴りが決まる。

 

「ぐぅっ」

「ジャンヌはあっちを頼む。こいつは俺が相手をする」

「ですが、」

「大丈夫だ。なんとかする」

「っ、ご武運を」

 

そう言ってジャンヌはマシュたちの方へ加勢しに行った。再び向き合う士郎とバーサーク・ランサー。

 

「よもやマスターの身でここまでできるものがいるとはな。決めたぞ、貴様の血、必ず手に入れよう。さて、どんな味がすることやら」

「生憎だが、鉄の味しかしないと思うぞ。なにせ、俺の場合、血潮は鉄で心は硝子だから、なぁっ!」

 

走り出した士郎とバーサーク・ランサーは激しい攻防を繰り広げる。勢いを乗せて両手の剣を振り下ろす士郎。その一撃は槍によって防がれたが、相手の体を踏み台として宙へ攻撃を回避する。剣をバーサーク・ランサーの足元へ落とし、士郎は弓へと持ちかえる。そのまま無銘の剣を多く打ち出す。その攻撃もバーサーク・ランサーの槍によって全て撃ち落とされたが、士郎は笑みを浮かべた。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

瞬間、バーサーク・ランサーの足元に落ちていた夫婦剣が爆発した。全く予想外の攻撃だったが、仕留めきれなかったようだった。それでも相手が大きなダメージを受けたことは明らかで、バーサーク・ランサーは膝をつき、衣もボロボロだった。

 

「おのれ」

「あらあら、随分な様子ね王様。まさか手加減でもしているかしら?悪魔(ドラクル)とまで呼ばれてたのではなくて?」

 

バーサーク・ランサーの窮地だったのを見たのか、バーサーク・アサシンとバーサーク・セイバーがその横に並んだ。ジャンヌたちも対峙するように士郎の元へ並ぶ。

 

「ドラクル?ということは、あのランサーは」

「ルーマニア最大級の英霊、ヴラド三世だな。道理で血にこだわってると思った」

 

「勝手に我が真名を明かすとは、不愉快だな」

「そんな状態で凄まれてもね。けど、あのマスター、思ったよりもやるみたいじゃないか」

「男の血はいらないわね。私が殺して差し上げましょうか、ヴラド三世?」

「ぬかせ、カーミラ。我が身をこのようにしたものに、貴様が相手になるとでも?」

 

「やめなさい。戦うのが好きなものだとは思いましたが、相手を間違えないくらいは、狂化しててもできるでしょう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

静かな怒りを含むその声に、ヴラド三世もカーミラも動きを止める。黒いジャンヌは射抜くような視線で士郎を見ていた。

 

「あなた、何者ですか?兵士でもないただの人間の魔術師が、なぜサーヴァントと渡り合えるのですか?そして何より、あなたを見ていると何故か反吐が出そうなくらいの嫌悪感が湧いてくる。あなたはそこの出来損ないの聖女に、どこかよく似ている!」

「魔術師だって場合によっちゃあ武器を取って戦うさ。その中にサーヴァントと戦える奴がいてもおかしくないかもしれないだろ。それから、俺はあんたのして来たことを、許せないな」

 

ジャンヌの時よりもより興味を持っているような黒いジャンヌ。しばらく彼女と士郎はにらみ合った。

 

「ふん、まぁいいでしょう。ヴラド三世、あなたは反省なさい。血を求めるあまりに手加減をするなど、何を考えてるのですか。その結果が今のあなたの状態。身に染みましたか?さて、バーサーク・ライダー。あなたも参戦なさい。今ここで、聖女たちを仕留めます」

 

「先輩、このままでは、」

「シロウ、あなたたちは逃げてください。ここは私が食い止めます」

「駄目だ!ここは一点突破を狙うしかない」

「ですが!」

 

「さぁ、仕留めましょう。愚かな聖女とその仲間たちを。それが私の救国への大いなる一歩。っ!?」

 

「これは?」

 

気づけば、黒いジャンヌたちと士郎たちの間に、キラキラ輝くものが舞っていた。一つ一つが何かの形になっている。

 

「バラの、花びら?」

「硝子でできてるのか?」

 

「サーヴァントの仕業、ですね」

 

「ええ、そうよ。これがいわゆる正義の味方として名乗りをあげるということなのかしら?」

 

現れたのは赤いドレスに綺麗な髪を持つ一人の少女。戦場に立っている中で、その華やかさはある種異質だった。誰もが彼女に注目していた。

 

「あな、たは」

 

反応するバーサーク・セイバー。生前の知り合いなのか、大きく動揺している。

 

「彼女は?」

「ヴェルサイユの花とも呼ばれた、かの王妃。狂化しているはずの僕でも、その輝きを感じ取れる。あの人は、マリー・アントワネット」

 

「えぇ、えぇ。私は私の愛するこの国がただ滅ぼされるのを見ているわけにはいかないわ。だから、どんなに怖くても、どんなに強くても。竜の魔女さん、あなたの前に立つわ」

「邪魔をするつもりなら、あなたも殺してあげましょう。革命を止められなかった愚かな王妃様」

「ええ、いずれ戦うことになるわ。でも、それはまだ今じゃない。さぁ、アマデウス、機械みたいにやっちゃって!」

「任せたまえ。宝具、『死神のための葬送曲』(レクイエム・フォー・デス)

 

突然現れたもう一人のサーヴァントが曲を奏でる。その曲が重圧を作り出し、黒いジャンヌたちの動きが目に見えて鈍くなった。

 

「今の内だ、撤退するぞ!二人も一緒に来てくれ!」

「わかったよ」

「ええ、それではみなさん、オルヴォワール」




駆け足気味でしたかな?
まぁその辺りはご容赦ご容赦

ちなみに今のアカウントになって初めて当たった星4がマリーだったのはいい思い出

そして士郎のあのセリフ、ネタのつもりは一切ないです
ホントダヨー

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