マリーとリリィが近くの町で仕入れてきた情報によると、リヨンは既に滅んでしまったらしい。ただ、そこには剣を背負った騎士がいて、しばらくの間その町を守っていたらしい。彼は複数のサーヴァントの襲撃を受け、現在行方不明となっている。
「そうか、ありがとうリリィ、マリーさん」
「はい」
「どういたしまして。それで、シェロくんはどう思うかしら?」
「まず間違いなく、その騎士がマルタさんの言ってた竜殺しなんだろうな。行方不明ってのが気になるけど」
「ですが、おそらくまだ消えてはいないのでしょう。そうであればマルタ様もそこに行くことを勧めないと思いますし」
「そうですね。やはり行って探すしかないかと」
「まぁ当然だね。そもそもリヨンが滅ぼされたなら、僕たちがいかなければそこにいる魔物はどうすることもできないだろうし」
「そうだな。とりあえず急ごう。先にあの黒いジャンヌに見つかるわけにもいかないからな。それに、もしいなかったらいなかったで、その町を開放できれば、この国の人のためにもなる」
「まぁっ!この国のために本当に頑張ってくれるのね。シェロくんは本当にいい人ね。ご褒美をあげちゃうわ」
そう言ってマリーは士郎の頬にベーゼをした。わかりやすく言うと、キスをした。それはもうあっさりと。士郎が反応する間も無く。
「えっ?」
「なっ」
「な、マリー!?」
「やれやれ」
サーヴァントたちの反応は様々だった。ポカンとするリリィ、驚愕するマシュ、赤面し声を上げるジャンヌに呆れ気味のアマデウス。一方士郎は僅かに目を開いただけだった。
「すまないね、シロウ。それはマリーの悪い癖のようなものだ。あまり気にしないでくれたまえ」
「えっ?みんなはしないの、ベーゼ?ハートがグーッときたら、ついしちゃうものでしょう?ね、ジャンヌ?」
「し、しません!そんなことしません!そういうのはもっとこう、ちゃんと好き合ってる相手とか、」
「まぁ、では今好きな人はいるのかしら?とっても気になるわ。もちろん、マシュやリリィのこともね」
「えっ」
「好きな人、ですか?」
何やら話が逸れ始めている。やれやれと首を振ったアマデウスは、その光景を笑みを浮かべて眺める士郎に少し疑問を抱いた。
「随分と冷静だね。もっと驚くかと思ったけど」
「あぁ、あれは挨拶みたいなものだろ?旅してる時にも何度かあったし」
「何度か?」
「いろんな場所巡って、いろんな人の力になりたくて。そうしたら国によっては何人かにされたことがあったってだけだよ。挨拶とはいえ、少し恥ずかしくはあったけど」
「……なるほど。聖女マルタの言いたかったことがわかった気がするよ。確かに直さないといけないみたいだ」
「何がだよ」
「さぁ、なんだろうね」
さてあまりよくわかっていないらしいリリィやマシュはともかく、そろそろジャンヌが相当困り始めていたため、アマデウスがマリーを止め、少しペースを上げた彼らはリヨンの町を目指した。
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移動し続けた彼らはリヨンに、正確にはリヨンだった町に、辿り着いた。話に聞いた通り、その町は滅ぼされてしまったようだ。しかし、竜殺しがここにいるかもしれない。彼らはその滅んだ町を捜索し始めた。途中生ける屍や竜牙兵などに遭遇したが、その都度撃破しながら進んだ。
「いませんね」
「どこかへ移動してしまったのでしょうか」
『た、大変だ、みんな!』
突然慌てた声が響く。ロマニが恐ろしく慌てた様子で通信を繋いだのだ。ただ事ではないその慌てように、士郎たちは周囲を警戒し始める。
「どうしたんだ、ドクター?」
『君たちの方へ、サーヴァントを超える超大型の生命反応が向かっている!さらにサーヴァントが3騎同行している。すぐにそこから撤退するんだ!』
「恐らく、もう一人の私でしょうね」
「ですが、もしここに竜殺しがいるとすれば、撤退するわけにはいきません。そんなことをしたら、やられてしまうかも」
「ドクター、サーヴァントの反応は他にはありませんか?」
『待ってくれ。今サーチを、よし!その先の城から僅かな反応がある』
その言葉を聞いて撤退の二文字は選択肢から消えた。ここにそのサーヴァントを置いて行ったら、恐らくこの先に勝ち目はない。つまりその竜殺しを助け出すことが最優先しなければならなくなった。
「先輩、指示を」
「マシュ、リリィ。2人は俺と城へ向かって竜殺しを探してくれ。マリーさん、アマデウス。2人にはジャンヌとともに、俺たちが先に戻らなかった場合には、やってくる敵の迎撃を頼みたい。やってもらえるか?」
「ええ、それがシェロくんの頼みならやってみせるわ。サーヴァントとして、マスターの期待には答えなくちゃ。アマデウス、一緒に戦ってくれる?」
「僕は君に付き合うだけさ。まぁヤバくなったら1人で逃げるかもしれないけどね」
「ふふっ、アマデウスらしいわね。というわけで、よろしくお願いするわね、ジャンヌ」
「ありがとうございます、マリー。シロウ、ここは任せてください。必ず竜殺しを」
「あぁ」
頷きあい、士郎とジャンヌはそれぞれ反対の方向へ駆け出した。この戦いに勝つために、ここで出来る最善を尽くすために。
士郎が頼り甲斐ありすぎて、ありすぎて
なるだけイケメンにしようとすればするほど、頼り甲斐ありそうに描こうとすればするほど、士郎さん強ぇ〜になってしまう
まぁ、そんな士郎さん大好きですけどね
全ルート内でUBWが一番好きな理由が、最も真っ当な形で彼が進化したと思うからというね