正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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せっかく新しいシナリオがもうすぐスタートするということなので、少しだけでも更新をば

今回のスポットは士郎とジャンヌです


心の迷い

「ワイバーン、先に兵士たちを片付けなさい」

 

ワイバーンの群れを率いて現れたカーミラ。その命令で逃げようとするフランス兵に襲いかかるワイバーンたち。しかしその牙が届く前に、降り注ぐ剣の雨によってことごとく撃ち落とされた。

 

「またあなた?しつこい男は嫌われますよ」

「どっちかというと、しつこいのはそっちだと思うけどな」

 

「やぁぁっ!」

 

近くのワイバーンを斬り伏せ、士郎の隣に立つジャンヌ。戦闘がそこそこ長引いたためか、少し疲弊しているようだ。しかも、それは身体面だけでなく、精神的にもだ。

 

「おい、あれって竜の魔女だろ?なんで竜どもと戦ってるんだ?」

「知るかよ。けどちょうどいい。このまま共倒れしてくれればいいさ」

 

遠巻きに眺めている兵士たちの心無い言葉が聞こえて来る。一瞬ジャンヌの顔が悲しげに伏せられたのをカーミラは見逃さなかった。

 

「随分な言われようではないですか、聖女様?どう、今の気持ちを聞かせてくださらない?誰にも理解されず、誰からも感謝されず、この戦いの元凶として責任を押し付けられた気分を?」

 

「っ、特に語ることなどありません」

 

「そうかしら?後悔してるのではなくて?自分が間違っていたのではないかと。全く、あなたも愚かね。そんな自分よりも他人が大事、みたいな生き方が理解されるはずもないでしょうに」

 

「それは、」

 

「あなたの人生は、偽りだらけのものだったのではなくて?」

 

ジャンヌの心を揺さぶるかのように、カーミラの言葉は彼女の頭で響く。自分は間違っていたのだろうか。自分の本心はなんなのだろうか。あの時、苦しむ人々を救いたいというその想いが、最終的に裏切られ、自分は死んだ。後悔なんてしてない、はずなのに。楽天的なはずの自分が、負の考えに押しつぶされそうになる。思わず膝をつくジャンヌ。自分に向けられる、守りたいと思った人たちの刺すような視線に、カーミラの見透かしたかのような言葉に、体より前に、心がかけそうになる。

 

「勝手なことを言うな」

 

そう言ったのは彼女の隣に立つ士郎だった。士郎はジャンヌを庇うかのように前に進み、カーミラを睨みつける。

 

「あら、何かしら?私は何も間違ったことを言ったつもりはないのですけど。あなただって理解できはしないでしょう?自分より他人が大切なんて考え方、どう考えてもおかしいんですもの。自分を救わず、誰もを救いたいだなんて、偽善者そのものね」

 

「確かにそうだな。自分より他人が大切、誰もを救いたい。裏切られ、殺されて、それでなお誰も恨まない。その考え方は、在り方は、人間として見たら、破綻しているかもしれない」

 

 

 

 

「けど、美しいと感じたんだ」

 

「なんですって?」

「シロウ?」

 

先ほどまでの士郎の相手を肯定する言葉に、伏せていた顔を上げる。目に入るのは彼のその背中だけ。表情までは伺えない。ただ、その背中が、とても大きく感じた。

 

「自分より他人が大切だなんて考え方は偽善だ。それはよくわかってる。でも。それでも、そう生きられたのなら、どれほどいいだろうと思う。たとえその人生が紛い物でも、誰もが幸福であってほしいという願いは、美しいもののはずだ」

 

言葉が響く。頭の中ではなく、心に。彼の言葉が、カーミラの言葉を打ち消していく。自分を押しつぶそうとしていた迷いが、彼の言葉で晴れて行く。何故だろう。どうして彼の言葉は、ここまで自分に届くのだろう。

 

「大丈夫だ、ジャンヌ。誰からも理解されないなんてことはない。例え周りがそう言ったとしても、俺がお前を肯定してやる。だから諦めるな。その想いは決して、例え偽善にまみれた願いだとしても、決して、間違いなんかじゃないんだから!」

 

その言葉にジャンヌはもう一度立ち上がった。彼は、本当に自分を理解してくれているように思った。まるで、今の自分と同じことを経験したかのような。そうだとしたら、あの黒いジャンヌが言っていたように、自分たちは本当によく似ているのかもしれない、そう思った。晴れ晴れとした、悩みのなくなった顔で、士郎の隣に並び立つ。

 

「ありがとう、シロウ」

「行けるか、ジャンヌ?」

「ええ。見ていてくださいね、シロウ」

 

士郎より前に進み出るジャンヌ。士郎もそれを見守るようで、手を出そうとしない。大きく息を吸って吐く。旗を握り直したジャンヌは、勢いよくカーミラへと向かっていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方、マシュたちの方でも戦いが激化していた。サンソンの振るう刃をマシュは盾を使い防ぎきってはいた。しかし、なかなか攻撃に転ずることができない。マリーの援護でなんとか反撃しているが、サンソンはそのほとんどを躱すことに成功している。

 

「ふっ」

「うっ、くっ」

「ちっ、なんだあのサーヴァントの守りは。固すぎる」

「大丈夫、マシュ?」

「はい、なんとか。ですが、このままではジリ貧です。何か決定打を与えられれば」

 

「いい加減に、っ!?」

 

自身目掛けて振り下ろされた刃を躱すサンソン。バーサーカーを倒したリリィが攻撃を仕掛けたのだった。

 

「リリィさん!」

「お待たせしました」

「アマデウス、そっちは終わったの?」

「なんとかね」

 

「ちっ、次から次へと」

 

舌打ちするサンソンの隣にカーミラが後退してきた。それを追うようにジャンヌと士郎がやってくる。

 

「引くわよ、サンソン。これ以上は分が悪いわ」

「あぁ。次こそ、必ず王妃の首を」

 

撤退して行く彼らの時間を稼ぐために、ワイバーンが一斉に襲いかかる。それを全て倒した時、彼らは既にいなくなっていた。

 




まぁ、実際この二人もですが、マリーも似ているところがあるような気がしなくもないんですよね。
この3人は実際すごく仲良くなりそうな気がする

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