前回にもそんな感じのフラグがあったと思いますし
というわけで、新章スタート前にメンテの退屈しのぎにでも、どうぞ〜
『士郎君、その先の町からサーヴァントの反応だ。複数の生命反応もある』
「敵か?」
『いや、この反応からすると、まともなサーヴァントだと思うよ。探し求めていた聖人だといいんだけど』
「行きましょう、先輩」
「あぁ」
駆け足でたどり着いたその町は、滅んだ様子はなかった。それはつまり、ここには彼らの味方となってくれるかもしれないサーヴァントがいるということだ。
「さてと、後はどうやってここから探すかだけど、」
「マスター、考え事の邪魔をしてすまないが、今こちらに向かってくる彼がそうなのではないだろうか」
「そうね。間違いなく、サーヴァントですもの」
鎧を着た長い髪の男性が、剣をその手に近づいてきていた。その剣を解析してみる士郎。いかなる敵からも持ち主を守り抜く、完全無欠の無敵の剣。その逸話はあまりにも有名だ。間違いない、彼が探していたサーヴァントだ。
「そこの者たちよ。申し訳ないが止まってもらえるか?できないのであれば戦うまでだが」
「そのために俺たちは来たわけじゃない。そう警戒しないでくれ」
「むっ、サーヴァントではない。人間がサーヴァントと行動を共にしているということは、あなたはマスターですね」
「あぁ、衛宮士郎だ。あんたに頼みがあってここに来た。竜の魔女を倒すために、あんたの力が必要なんだ」
「では、話を聞きましょう」
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「なるほど、呪いですか」
「だから早くジャンヌと合流したい。ジークフリートの呪いを解くことができれば、ファヴニールを倒し、竜の魔女を打ち倒すことができるかもしれない」
「なるほど、確かにそうですね。ですが、もうしばらく待ってもらいたい。この町の人たちの避難が始まったところで、できれば皆を安全に届けたい」
「それなら私たちもお手伝いしましょう?ね、シェロ君」
「そうだな。マシュとジークフリートも手伝ってくれるか?」
「はい、先輩」
「戦闘行為以外なら支障もない。手伝おう」
手分けして町の人の避難を手伝う彼ら。人出が増えて、着実に避難のペースは上がった。しかし、もう後少しで終わるというところで、ロマニからの通信が入った。
『士郎君、まずいぞ!そこへ大きな反応が迫っている。恐らく、黒いジャンヌだ!早くそこから離れないと』
「だめだ、ここの人たちを見捨てることはできないだろ」
『でも危険だ!このままそこに残れば、間違いなく死んでしまうぞ!』
「けど!」
「はいはい、落ち着いて、ね?」
ピトリと士郎の口に指を当てるマリー。この状況で突然何を、という気持ちにもなったが、一周回って一旦冷静になる士郎とロマニ。
「シェロ君、ゲオルギウスさんを連れて退避しましょう。ジャンヌと合流すれば、なんとかなるもの」
「しかし、それではここを守る者が、」
「ええそうね。だから、あなたが宜しければだけど、私にその役目を譲ってくださらない?」
笑顔で言ったその言葉の意味を、士郎は正確に捉えていた。彼女、マリー・アントワネットは、この戦いに勝利する希望を守るために、自らを犠牲にしようとしているのだ。
「マリーさん、それはつまり、自分が犠牲になるという意味でしょうか」
同じく言葉の意味を理解したマシュが問いかける。その表情もそうであって欲しくないと言っているようなものだった。しかし彼女も士郎もわかっている。マリーの意思が、どうあるのかを。
「私はフランスの王妃。この国と民を守るのが私の使命です。そう、こうして呼ばれたのは、この時のためなのね」
「マリーさん」
「そんな顔しないで、マシュ。私は私のために戦いたいのよ。私が愛したこの国を、終わらせるわけにはいかないもの。それに、あなたたちの力になれるのなら、それってとても素晴らしいことじゃない?だから、ゲオルギウスさん。あなたにはあなたにしかできないことがある。私には私にしかできないことがあるの。それを果たさせてくれるかしら?」
「・・・あなたがそれで良いのであれば」
「感謝します。さぁ、シェロ君」
うつむき気味な士郎。その手はきつく握り締められている。確かに、それが最善。いや、それどころか、状況からしてもそれしかないだろう。この町の人を見捨てるという選択肢はない。マスターである自分が残ることはできない。マシュは他のサーヴァントと違って座に戻るのではなく、本当に死んでしまうだろう。ジークフリートとゲオルギウスは竜の魔女を倒すためには必要不可欠だ。消去法で、彼女が残るしかない。けれども、
「頭では理解できてる。けど、」
「いいのよ、これで。これでいいの。私、とっても楽しかったわ。また今度、もっと楽しいこと、一緒にしましょう」
「あぁ。絶対」
「約束よ」
「あぁ、約束だ」
「じゃあ約束の証に。少し屈んでもらえるかしら?座ってる時ならまだしも、立っていると届かないんですもの」
「わかったよ。これでいいか、っ!?」
流石の士郎も照れは少しあるが、しょうがないなぁ、という感じに思っていた。しかし今回は士郎の思考さえもを一瞬奪った。目の前には王妃の美しい顔、花のような香り、そして口を塞ぐ暖かい感触。少しして離れるマリー。その頬には少し赤みがさしている。込められたのは、感謝の念と、少しの愛情。心をそっと暖かくする程度の、優しい気持ちを。初めては7歳の時。次は14歳の時。そして、
「ありがとう、シェロ君。楽しみにしてるわ。ジャンヌと、アマデウスによろしくね」
そう言って彼女は満面の笑みを見せた。その笑顔は士郎たちを見送っていた最後の時まで、崩れることはなかった。
士郎たちが去った後、現れた二人のサーヴァントとマリーは対峙した。数匹の竜も連れてきている。
「やぁ、マリー。また君に会えてよかったよ。そうだ、君を処刑資格を持つのは、僕だけだからね」
「それにしても、あなたも愚かですね。
「そうかしら?私はそうは思わないわ。愛する民のために果てる。それはきっと私の運命。でも、それでいいのよ。私は、今でも彼らを愛しているのだもの」
「ちっ、あなたも聖女と同じタイプのようですね。いいでしょう、ここで消えてもらいましょう。恨むなら、あなたを置いて逃げたあのマスターを恨むことです」
握られた刃と突きつけられた爪。既に退路はなく、味方もいない。けれども王妃は彼にこの国を託した。彼の為にも、ここで彼女たちを迎え撃つ覚悟を決めていた。だから、恨むことなんて、
「やれやれ、全く持ってその通りだな。令呪を使えば、市民の避難が終わった後に彼女をここから離脱させることも可能だというのに。この先の戦闘のために温存したい気持ちもあるのか、あるいは完全に失念しているのか。全く、魔術使いとしてはそこそこ成長したようだが、マスターとしてはまだまだだな」
「あな、たは?」