長かった、けどこの先の方が長い笑
新年度始まる前には終われそうですね
扉の向こうはの部屋は大広間なのだろうか、天井も高く、幅も広い。その部屋の中央、魔法陣のそばに、竜の魔女は立って居た。その傍らには、彼女が呼び出したらしきシャドウサーヴァントが数体佇んでいた。彼女と対峙するように、ジャンヌが前に出た。
「もう来ましたか。思っていたよりも早かったですね。さすがに真っ当なサーヴァントを呼び出す時間はありませんでしたが、この程度ならばいくらでも量産できます。さぁ、決着をつけましょう、愚かな聖女よ」
「その前に、一つだけ確認したいことがあります」
「何かしら?今更問うこともないでしょう?」
「いいえ。簡単な問いかけが一つ。貴方は、貴方の家族を覚えていますか?」
「・・・え?」
投げかけられたその問いに、竜の魔女の表情が固まった。その反応に対しマシュとリリィは困惑し、ジャンヌと士郎は何かに納得したようだった。
「私は確かに戦場にいました。その記憶は鮮明に残るでしょう。ですが私の人生では、ただの村娘としての期間の方が圧倒的に長いのです。その記憶を忘れられるはずもありません。だからこそ、貴方は怒り、恨み、怨んだのですから」
「私、は」
「覚えていないのですね」
「っ、それがどうした!私がジャンヌ・ダルクであることに変わりはない!」
「そうですね。確かにその通りです。ですが、これで覚悟が決まりました。シロウ、私はこれから怒りではなく、憐れみを持って竜の魔女と戦います」
「あぁ。マシュ、リリィ。俺たちはあのサーヴァントたちの相手をする。ジャンヌ、竜の魔女は頼んだぞ」
シャドウサーヴァントたちが戦闘態勢に入った。その先頭には激しい憎悪と怒りの表情の竜の魔女。その表情の中にわずかな恐怖があるのに、ジャンヌと士郎だけが気づいていた。武器を握り直すリリィ、旗を構えるジャンヌ。敵を見据える士郎の隣にマシュが並び立った。
「行きましょう、先輩」
「あぁ。行くぞ!」
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竜の魔女はジャンヌが1人で挑み、士郎たちはシャドウサーヴァントの相手をしていた。本来と比べて大幅に弱体化しているとはいえ、仮にもサーヴァント。その数の多さはなかなかに厄介だった。一体を切り裂き、次の相手へを繰り返しながら、士郎はジャンヌたちの戦いも見ていた。
「はぁっ!」
「ふっ!」
激突する白と黒の旗。二人のジャンヌのぶつかり合いは激しさを増していった。ステータスが下がっていたジャンヌと、聖杯を所持している竜の魔女。スペックの差は絶望的。そのはずだというのに、
「何故ついてこれる!?私の方が、はるかに強いというのに!それに、ステータスまで以前よりも上がっている?何があったというの」
「シロウのおかげですよ。彼とともに戦えたことは、とても幸運でした」
この戦いの前、士郎はジャンヌに宝石を渡していた。それは師である遠坂凛が彼に渡していた、魔力を込めたもの。カルデアからのバックアップがあるとはいえ、いつどこで何があってもおかしくはないから、念の為にと渡されたものだ。魔術師としても破格の力を持つ遠坂の魔力。それを使うことによって、ジャンヌは本来のスペックを取り戻していたのだ。
しかしそれだけじゃない。あの時、カーミラによって心に迷いを与えられ、心が折れそうになってしまった時も、彼の言葉に救われた。今もまだ、その言葉が心に残っている。そこから温かい気持ちと、そして力が湧いてくる。今までどの戦友にも感じたことのないこの気持ちは、とても尊いものだと思えた。
「くっ」
「彼や仲間たちに助けられ、ここまで来ました。竜の魔女、貴方を止めます!」
次第に押され始める竜の魔女。彼女の心が揺らいでいるのがわかる。スペックではまだ彼女の方が上だろう。けれども心に迷いや恐れがあるが故に、その力を使いこなすことができていない。
ジャンヌの攻撃を必死になって防いでいる様子が、必死に心の隙を取り繕おうとしているその姿が、何かを必死に否定し続けようとしているように燃える姿が、どうしようもないくらいに、かつての自分に、そしてあの時のあいつに、重なって見えた。
最後のシャドウサーヴァントを切り払い、士郎たちはジャンヌのもとに向かった。
あー、年度末は忙しいし、新年度も絶対大変だし
フォウくん、尻尾で癒しておくれ
モフモフモフモフ