正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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今回は士郎の危うさに触れようパートですね

まぁ、ぐだーずでは見られないであろう問題なので、どう表現しようかと悩みました……

自分の勝手な解釈とかもあるので、なんか違うと思っても生暖かい目で見守って下さい


それはどこか危うくて……

「皆の者、ご苦労であった。ガリアを取り戻し、我らの正きローマを取り戻すことに一歩近づいた!ローマに帰る前に、しばし休むが良い」

 

ガリアでの戦闘が終わり、ローマ軍は小さな宴会を開いていた。

 

カエサルを倒し、無事にガリア奪還作戦は成功した。敵国の将を一人倒したことで、ローマ軍は喜び、士気も高まっている。中でもサーヴァント組は、その一騎当千のごとき戦いぶりから、兵たちの尊敬の念を集めている。

 

「勇士達よ!これによって、圧制者は一人減った!この地で得た勝利を広めよ!叛逆の狼煙を各地であげよ!今こそ時は、極まれり!」

「「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

 

何故か特にスパルタクスが慕われているのは謎ではあるが……一方、ガールズサーヴァントは四人で集まっている。

 

「マシュもリリィも、ジャンヌもお疲れ様。聞いたよ、特に二人の活躍。黒と白の戦姫とか、無双の騎士コンビとか、ね」

「ふんっ、それがどうしたというのですか?自分たちの国を取り戻すための戦いなのでしょう?ならば、死ぬ気で私たちについて来るべきです。兵達にそう伝えなさい」

「ジャンヌさん、そんな言い方しなくても……私はシロウと共に戦うと決めたので。ローマを取り戻すためにも、精一杯努めさせていただきます」

「うんうん、頼もしいね」

 

三人が会話している間に、マシュは軽く会場を見渡す。しかしお目当の人物の姿がない。

 

「先輩、どこに行ってしまったのでしょう?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

会場の外、少し開けた場所で、士郎は両手に干将・莫耶を握り、素振りをしていた。いや、正確にはしようとしていた。

 

「っ!」

 

顔をしかめる士郎。右手の剣があらぬ方向へと飛んでしまう。何かに当たる前に、慌てて消す士郎。既に何度か同じことを繰り返していたようで、近くの木の枝が切られた跡が幾つもある。

 

「……やっぱり、駄目か」

 

カエサルとの一戦の後から、右腕の感覚がほとんどなくなっている。心当たりはある。あの戦い、最後にしてみせた投影が原因だろう。ただ武器の技量を模倣するだけならば、ここまでの負荷にはならなかったかもしれない。しかし、あの技を使うために、本来の使い手の筋力までもを強引に憑依経験させたことにより、右腕に相当な負担をかけてしまったのだ。

 

「これじゃ、暫くはまともに戦えないか……」

 

 

「先輩?どうかしたのですか?」

「えっ、マシュ?あ、あぁいや、別に……」

 

気がつくと、マシュがすぐ側に来ていた。ぼんやりと自身の右腕を眺めていた士郎を見て、首をかしげるマシュ。内緒にしようかと一瞬考えた士郎だったが、すぐに考え直す。

 

今の万全じゃない自分を隠すことはリスクが大きすぎる。この状態の自分を把握した上で今後の作戦を立てなければならないのだ。でなければ、マシュやリリィ、ジャンヌ、ネロたちローマの兵を危険に晒すことになるかもしれない。それは駄目だ。自分が無茶するのは構わない。けど、それだけでは駄目だ。

 

「……マシュ、話しておかないといけないことがある」

「はい、何でしょう?」

「あー、けどよく考えたらネロにも相談した方がいいな。みんなが何処にいるかわかるか?」

「はい。先程私が先輩を探しに出る前に、ネロさんが私たち四人に合流したので。今も一緒にいるかと」

「そっか。なら、今のうちに話した方がいいな。みんなのところに案内してくれ」

 

 

 

 

 

「そうか……右腕が」

「あぁ。だから悪い、暫く俺は今まで通りの戦力にはなれない」

 

大事な話があると、士郎たちは宴会とは別室に移った。士郎の状態を聞き、ネロは難しい表情をし、唸る。マシュとリリィは心配そうに士郎を見つめ、ジャンヌは何故かイライラしているようだ。一人、ブーティカは笑顔ではあったが、何だか怒っているような悲しんでいるような、感情を読むことができない。

 

「まぁ、仕方がない。ならば、今後の作戦では、士郎はなるべく実戦からは外れてもらうことにする。できれば前線を離れてもらいたいが、」

「いや、全く戦えないわけじゃない。左手は何の問題はないし、こっちで剣を扱うこともできる。それに、俺はマシュたちのマスターだ。みんなが戦ってるのに、自分だけ見ているわけにもいかないしな」

「ですが先輩、無理をしてはいけません。そもそも、マスターの本来のあり方はサーヴァントに戦闘を任せ、後方支援に徹するのが定石です。むしろ今までの先輩のあり方が特別と言いますか、」

「そうです、シロウ。どんなに強くても、万全でない状態で戦うなんて、危険すぎます。」

「だからって、黙って見ていられるわけないだろ」

 

「はいはい、そこまでそこまで。取り敢えず、今後についてはまた後で話すことにしない?折角の勝利を噛み締めないと」

 

若干ヒートアップ仕掛けていた話し合いを、ブーディカがまとめる。優しげな話し方や言葉ではあったが、どこか逆らえず、全員も彼女の意見に賛成し、話し合いは一旦お開きとなる。

 

「シロウ、ちょっといいかな?」

「あ、あぁ」

 

他のみんなと同じように会場に戻ろうとした士郎は、ブーディカに引き止められ、別室に残った。優しい笑顔で士郎を見ているブーディカ。しかし、空気からも真面目な話がしたいのだろうと、士郎も察する。一対一(サシ)で尋問でもされるのだろうか。どんな質問が来ても大丈夫なように、士郎は心の中で身構えた。

 

「ね、シロウ」

「何だ?」

「シロウの両親って、どんな人だった?」

「……は?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「先輩……大丈夫でしょうか」

「さぁ?料理は一応なんとかこなしていたみたいですし、私生活には支障はないんじゃないですか?」

「ジャンヌさん、なんだか不機嫌そうですけど、何かあったんですか?」

「いいえ、特に何も」

 

明らかに苛立っているジャンヌ。原因はおそらく、今別室に残っている彼だろう。

 

「全く……本当にあの言葉を守る気があるのかしら」

 

もう確定的だ。とはいえ、ジャンヌの気持ちがわからないわけではないマシュとリリィ。苛立ちこそはないものの、不安な気持ちになってしまう。

 

「どうして先輩は、あんなに必死そうに前線で戦うことにこだわるのでしょう」

 

今までは、少し特殊なだけに思っていた。実際、マスターとサーヴァントの関係は様々で、前線にマスター、後方支援にサーヴァントという通常とは真逆の組み合わせもある。士郎の場合は、並んで戦うのが、やりやすい関係なのだと、そう認識していた。けれども、負傷し、今まで通りの戦い方ができないのであれば、流石に支援に徹するだろうとばかり思っていた。

 

だが、実際は違った。

 

彼はあの状態でなお、前線で戦うつもりでいるのだ。状態を隠されるよりは何倍もましだが、どう考えても前線に出るのは自殺行為としか思えない。自分たちに守らせて欲しい。そう思っているのに、彼はそれを良しとはしない。まるで、何かに駆り立てられるように、焦りにも見える必死さで、彼は戦おうとする。

 

「シロウは……何かを抱え込んでいるような気がします。私たちにも、話して欲しいのですが……」

「まぁ、話してくれるかしらね?『私』(あの聖女)に似て、変に頑固そうだし。あれの意思を変えるのは、相当骨が折れるでしょうね」

「それでも、私たちは、先輩のサーヴァントです。最終的にどのような判断をしても、全力でお守りするだけです」

 

決意の表情を見せるマシュ。どこか盲目的に士郎に従っているようにも見えるその姿勢に、リリィとジャンヌは危うささえも覚えた。




危ういのは士郎だけではない……ということなのです!

マシュの方は、またいずれ、詳しく触れて見たいと思ってます、はい

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