正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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レオニダスの扱い、今回雑になってしまってすみません
この時のバトルとか、あんまし覚えてないんですよね〜
……前過ぎて

今回はネロがサーヴァントのことについて、ブーディカのことについて考えるところもありますが、本来とは微妙に違ってても許してください


ローマに帰還せよ

「それで、ステンノ。どうする?一緒に来るなら、俺たちでしっかりと守るけど」

「そうね……なら、お願いしようかしらね。英雄ならざるサーヴァントも来てしまうのだし。それに、あなたといれば、退屈しなさそうだもの。しっかりと守って見せなさい」

 

なんてやりとりを経て、ステンノも彼らに同行することとなった。彼女が加わることは、単純にサーヴァントの数が増えるだけのことではなかった。

 

なんと彼女は、本物の女神の祝福(褒美)として、連合ローマの首都本部の正確な位置を教えてくれたのだった。

 

「うむ。これで我らの方から攻めることができるな。一度首都ローマに戻って、戦の準備をしなくてはならぬ。シロウの回復も待たねばならぬ故」

「わかった。そうしよう」

 

途中何度か兵に襲われるものの、サーヴァントたちの活躍により、特に危険な状況とは言えないまま、彼らはローマを目指した。が、

 

「先輩、先ほどの兵士のことですが……」

「ああ。人間、とい言い切れない。サーヴァントだけどサーヴァントじゃない。なんというか、そんな感じだ」

『何らかのスキルか、あるいは宝具か。いずれにせよ、それを行なったサーヴァントはそう遠くは、って、また敵の反応だ!うち一体はサーヴァント。そいつの仕業かもしれないよ』

「ネロ!」

「うむ、迎え撃とうぞ。余とエリザベートに続け!」

 

数百人の兵士が現れる。その中に一人、明らかに他とは異なる存在の者がいる。長い槍に手には盾、兜は顔を覆い、頭には赤いトサカのような飾り。そのほかの防具らしき防具はほとんどない、だというのに、その男を倒すのは一筋縄ではいかない。そう何かが告げている。

 

「進軍する敵の全てを打ち砕く。攻撃よりも勇ましく、防御より堅く。それが我らスパルタの拠点防衛術、とくと味わっていただこう」

「スパルタ……拠点防衛の英霊。ということは、あんたは、」

「サーヴァント、ランサー。真名をレオニダス」

「ぬ?あのレオニダス王だというのか?皇帝以外にも蘇っている者がおるとは……ぬ?では、ブーディカは、」

「ちょっと!考え事をしている場合ですか?守りを固めなさい。こいつさえ倒せば、他も消えるはずよ」

「ぬ、確かにそうであるな」

 

ジャンヌの言葉に内心、士郎たちはほっとしていた。ブーディカからも言われたことだが、ネロはブーディカを生前の相手だと勘違いしていた。それを訂正しなかったのは、ネロの考え込んでしまうことや、精神面での負担を考えた上での行動だった。

 

今、こうしてレオニダスという、皇帝以外の過去の存在が登場したことによって、ブーディカもそうなのかと思い始めている。だが、それは戦闘において、危険ともなり得る。無理矢理にでも意識を切り替えてくれたのは、良いことかもしれない。

 

「マスター、指示を!」

「マシュは兵たちの援護、みんなとステンノを守ってくれ。ネロ、エリザベートとキャットを連れて行ってくれ」

「うむ。余も我が兵たちを守りに行くぞ。こちらは任せる」

「ああ。リリィ、ジャンヌ。頼む!」

「はい!」

「ええ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

幾度となく激突する槍と旗、剣と盾。二対一で攻め立てているのにもかかわらず、目の前の男は倒れない。圧倒的とも言えるその防御力に、ジャンヌは大きく舌打ちをする。

 

「なんなのこいつ、硬すぎる」

「攻守の切り替えにも、全く隙が見当たりません」

「流石はテルモピュライの英雄だな。二対一じゃ、ハンデにもならないのか……」

 

「でぁぁぁあっ!」

「くうっ!」

 

強靭な肉体から繰り出された槍による突きは、防いだはずのリリィを大きく後退させる。先程会話していた時に感じた落ち着いた印象は既に消えている。雄々しく、猛々しく叫ぶレオニダスは攻撃の一撃一撃が重い。

 

伝説では、300人の兵を率い、何万もの軍勢に挑んだとされるテルモピュライの戦い。恐るべきスパルタの英雄たち。中でもレオニダスはその将。やはり一筋縄ではいかなさそうだ。

 

こちら側のダメージは殆どない。が、それは相手も同じこと。おそらく単純なサーヴァントのスペックでいえば、ジャンヌ単体の方が相手よりも優れている。だが、敵は圧倒的なまでに鍛え上げられた肉体と技術によって、ジャンヌとリリィの二人と渡り合っているのだ。

 

 

その姿は、どこかアーチャーとも、かつてほんの僅かにだけ見たあの長刀のアサシンとも通じるところがある。

 

「時間はかけてられない、ジャンヌ!」

「ええ」

 

炎を巻き起こし、レオニダスの周囲を囲むジャンヌ。その隣にリリィが並び立つ。突然の炎に驚いたレオニダス目掛け、いくつかの剣が降り注ぐ。万全の時よりは少ないとはいえ、士郎の作り出した剣は、レオニダスの行動を封じることに成功した。

 

ジャンヌがリリィの肩に手を置き、スキルを発動する。リリィの身体が淡い光に包まれる。ジャンヌが炎を解除するとともに、剣を手に、駆け出したリリィは、全力で剣を振り下ろす。

 

「っ!」

 

今までのように受け止めようとして弾かれた。明らかに先程よりも力が上がっていた攻撃に、レオニダスは戸惑い、一瞬の隙を生んでしまう。体勢が完全に崩れるほどではない、ほんの僅かな隙だが、それを士郎の目が見落とすことはなかった。

 

「しっ!」

 

レオニダスの懐近くまで接近した士郎。先ほど降らせた剣の一つを手に取り、左手で思いっきり振り上げる。狙ったのは、レオニダスが持つ盾。金属音が響き、盾が弧を描くようにして弾き飛ばされた。そのまま剣を逆手に持ち替え、レオニダスの足ごと地面に突き刺し、固定する。

 

「ジャンヌ!」

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮…」

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュヘイン)!」

 

旗を開き、剣を抜く。その剣を敵に向けたジャンヌから、煉獄の炎が溢れ、敵に迫る。リリィが士郎を連れて離脱する。炎は瞬く間にレオニダスを包み、追い打ちをかけるように、地面から大量の槍が飛び出し、串刺しにする。

 

ジャンヌの最後。「紅蓮の聖女」とは違い、自己を犠牲とした炎ではなく、その最後が生んだ恨みや憎しみ、それらを炎とし、自らを殺した炎での復讐。まさしく、アヴェンジャーとして、この上ない程にピッタリな宝具。その威力、耐え切れるはずもなかった。

 

「ぬぅ、鍛え方が足りなかったか?いや、守るべきもの無き戦いでは、これが限界なのだろう……」

 

レオニダスの体が消えると、その他の兵たちも消えて行く。やはり、レオニダスによって使役されていた兵なのだろう。この宝具は彼の伝承を基にしたもの。彼とともに、雄々しく戦った勇者たちを呼ぶもの。ただ、その戦いは、あくまで守るためのものだった。

 

「守るべきもの無き戦い、か……つまりこいつは、召喚されて使役されていただけ。皇帝たちとは扱いが違う。これは、」

『そうだね。彼の召喚には間違いなく、魔術師が絡んでいる。おそらく、レフ・ライノールだ』

 

レフ。未だに姿を現さないあの男のことを考えると、自然に士郎の拳が握られる。人理の焼却。そのために彼はカルデアを爆破したのだ。所長や、多くの職員、マスター適性者たち、多くの死傷者が出た。そして、マシュがデミ・サーヴァントとなり、戦わなくてはいけなくなった原因でもある。

 

「あいつだけは、絶対に倒す」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ご苦労であったな、シロウ。リリィとジャンヌも、見事な働きだったぞ」

 

戦いを終え、周囲に敵がもういないことを確認し、彼らはローマに向かう前の最後の休憩を取っている。士郎たちのことを労うネロの表情は優れない。やはり、先ほどのレオニダスのこと、そして味方のブーティカのこと、色々と思うところがあるのだろう。

 

「シロウ、少し話がしたい。余に付き合ってくれぬか」

「……わかった」

 

二人きりで、真剣な話がしたいのだと士郎は察した。マシュたちを労った後、ネロに連れられた士郎は、ネロの使用していたテントへと入った。

 

「それで、話って?」

「シロウ、そなたは嘘はつかない男だと、余は思っておる」

「え?」

「そなたは正直者だ。だが、話さなくても良いと思ったこと、隠すべきと思った事は話さないだけなのだろう」

「ネロ?」

 

「その正直者に、余は聞きたい。余の客将が一人、ブーディカは、既に死んでおるのか?」

 

 

あまりにもストレートで、正直な質問だった。しかしそれ故に、真剣さが伝わってくる。ネロの表情を見た士郎は、誤魔化すことはできないかと観念した。

 

もっとも、士郎は基本嘘がつけないから聞かれたら答えていた可能性も高いが……

 

「ああ。彼女、ブーディカさん、それにスパルタクスもサーヴァントだ」

「そうか……やはり、そうなのだな。しかし、ならば何故余に力を貸してくれるのだ?皇帝たちと同じであれば、余の敵として現れるものではないのか?」

「ブーディカさんとスパルタクスは、皇帝たちとは少し違うんだ。皇帝たち、それにさっきのレオニダスは、誰かが使役するために召喚している可能性が高い」

「使役?」

「ああ」

 

人理焼却、その目的のために呼ばれ、聖杯を与えられ、本来の歴史とは異なる結果を作り出し、崩壊させる。オルレアンでは歴史にはないはずの百年戦争をもたらし、ローマではかつての皇帝たちの再来による分裂を招いている。

 

彼らを操り、使役し、自分の目的のために行動させる。そんな相手が、必ずいる。

 

「では、ブーディカたちは違うのか?」

「詳しいことはわかってないんだけど、彼女たちは聖杯自体が世界のバランスを保つために、呼んでいるんじゃないかって考えてる。もちろん、それぞれに自由意志があるから、必ずしも味方になるとは限らないかもしれないけど……ネロ?」

 

何か思いつめているような、暗い表情を見せるネロ。どうかしたのかと士郎が聞くと、ゆっくりと首を横に振る。

 

「余は、やり直せる、そう思っていたのだ」

「ネロ?」

「生きていてくれたのであれば、新しくやり直せると。余の知らぬ所でとはいえ、余の部下がブーディカたちにしたこと、そなたも知っておろう。余はそのことをちゃんと謝罪し、償い、ブーディカと共に……」

 

ネロが言っているのは、ブリタニアに対するローマの行いのことだろう。それ故に彼女は女王となり、叛逆者となり、復讐者となったのだから。神々にまで誓った許さないという気持ち。その怒りの強さは想像もできない。

 

「残酷なことを、余は頼んでしまっていたのだな。よりにもよって、自分のことを殺した国を守るのに力を貸して欲しいなどと」

 

後悔しているのだろうか、ネロは本気で落ち込んでいるようだ。ただあの時、二人で料理をした時、ブーディカは確かに言った。

 

『守るために、か……それは、ネロのことも?』

『……かもね』

 

その時の表情は、確かに複雑そうで、時折考えてしまうことがあるのかもしれない。でも、彼女がネロのことを心配し、守るために戦おうとしていることは、十分以上に伝わってきた。

 

「話してみたら、いいんじゃないか?」

「む?」

「ブーディカさんと。サーヴァントだということを知った上で、改めてお互いの心の内を話してみたらいい」

「だが、余は……」

「大丈夫さ。俺の見た感じだと、ブーディカさんはネロのことを心の底から嫌ってるわけじゃない。しっかりと話し合えば、わだかまりも何もなく、ただの友達として、分かり合えるはずだ」

「本気で、そう思うか?」

 

こんなに不安げなネロは初めて見る。暴君と歴史では語られるが、こうして話していると、暴君というよりも子供っぽい気がしてくる。今だって、まるで仲直りの仕方をわかっていない子供みたいだ。そんなこと、歴史に名を残す英雄に対して、失礼かもしれないけれども。

 

「ああ」

 

ネロを安心させるため、精一杯背中を押そう。そう士郎は決め、笑顔で頷いた。と、何やらネロが驚いた顔をしている。

 

「ん?どうかしたのか?」

「いや、シロウもそんな優しい表情をするのだな、と思ってな」

「は?」

「だが、感謝する。余も覚悟を決めたぞ!死から蘇り、余に力を貸してくれている客将たちに、改めて協力を仰ごう。そして、ブーディカとも……」

「そっか」

 

調子を取り戻したらしいネロ。取り敢えずは一安心だ。

 

しっかりと休憩した士郎達。既にローマもすぐ近く、もう間もなく辿り着ける。留守の間も襲撃があったらしいが、アーチャーの活躍によって退けられていたらしい。

 

暫くぶりに会う奴に、さてこの右腕の状態を見られたら、一体どんな小言を言われることになるのやら。内心げんなりする士郎以外は首都への帰還で大いに盛り上がっている。

 




さらりと加わってますけど、ステンノ同行です、はい

次回のアーチャーと士郎のやりとりが描きたくて堪らなくなってきた笑

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