あー、一生こういう活動に打ち込めたらいいのに
「キャスター?」
「あぁ。まぁ話し合いは後だ。今は目の前のこいつをどうにかすることからだな」
「キャスター。なぜ彼らに味方するのですか?」
「そりゃ愚問だぜ、ランサーよぉ。敵の敵は味方ってやつだ。お前らと戦うにはこいつらがいてくれた方が良さそうだしな」
「そうですか。ならばあなたから先に殺してあげましょう。キャスターであるあなたが前線に出たこと、後悔させてあげます」
その言葉を皮切りにランサーと呼ばれた女性はキャスターに襲いかかった。杖を使って攻撃を防ぎ、躱しとしているが、キャスターの方が分が悪いのは目に見える。
「どうしました?詠唱する余裕すらありませんか?」
「ちっ、やっぱやりにくいな」
「わたしも加勢に、」
「待てマシュ、今むやみにあの中に行くのも危険だ」
「ですが、」
「いいから待て」
マシュを引き止め、士郎は記憶を探り出した。ほんの数年前に彼はキャスターに会っているのだ。命を狙われたこともあるし、協力したこともある。その時に彼の獲物を間近で見た。そして魔術を磨くために、あらゆる英霊の歴史や伝承を調べ、あらゆる武器を見た。であるならば。
「
その武器は槍。血のように赤く、それを持ってして心臓を穿つ。真名の開放でその槍は因果の逆転により必ず相手を仕留める必殺の槍となる。最大の攻撃は投擲、その一撃は大軍をも制する。その強度、材質、歴史、経験。全てをイメージし、今ここに再現する。
「ちょっとあなた、なによそれ?」
「先輩?」
マシュと所長の驚きの声を聞き流し、士郎は手に握ったその槍を叫びと共に2人のサーヴァントに投げた。
「使え、キャスター!」
その声に反応したキャスターはランサーの攻撃を躱しながらその槍を掴み、薙ぎ払うようにしランサーを後退させた。
「!こいつは、」
手の中の獲物を確認し驚愕するキャスター。士郎へ目を向けると彼が頷くのが見えた。へっ、と口に笑みを浮かべ、持っていた杖を霊体化させる。そしてそれまでの服装から一転し、青一色の姿に変わった。
「坊主、なんだか知らんが礼を言うぜ。やっぱり俺としては、こっちの方がしっくりくらぁ」
槍を構えるキャスター。ステータスまで変わったわけではないが、それでもその武器の方が彼らしいと士郎は思った。
「キャスターが槍で私と張り合おうと言うのですか?舐められたものですね、私も」
「そうか?むしろこっちの方が俺としちゃあ最大限の敬意を込めてるつもりなんだがな。そんじゃまぁ、始めるとするかい!」
戦闘に入った瞬間、先ほどまでのランサーの笑みが消えた。槍を持ったキャスターは彼女を凌駕する槍さばきを見せつけていた。それもそのはず。彼は槍兵の中でも選りすぐりの1人。その技量は彼女のそれをはるかに上回る。
距離を取り仕切りなおそうとするランサー。それを見たキャスターは地面に手を当てた。その瞬間彼女の周りに炎が溢れた。
「これは!?」
「そいつはさっき、てめぇの攻撃をかわしてた時に仕込んでおいたのさ。あいにく、ルーン魔術に詠唱はいらねぇからな。こいつで詰めだ!」
いつの間にか杖を持っていたキャスターがその杖を振るうと、炎がランサーの体を包み込んだ。炎と煙が晴れると、ランサーが膝から崩れ落ち、粒子となって消えて行った。
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戦闘終了後、服装を元に戻したキャスターは士郎たちの前に戻ってきた。
「おう坊主、サンキューな。で、この槍なんだが」
「あぁ、その説明は後でする。取り敢えず持っててくれ」
「そんじゃ、遠慮なく。で、お前この槍を渡したってことは、俺のことを知ってるってことだろ?」
「あぁ。アルスターの大英雄、クランの猛犬、クー・フーリンだよな?」
「おう。まぁ今回はルーン魔術の使い手のキャスターとして現界したわけだが。で、何で俺のことがわかったんだ?しかも、あのランサーのことも知ってたみたいだが」
「あぁ、会ったことがある。別の聖杯戦争で」
「ほぉ、そりゃ話が早いな。ならこの聖杯戦争の異常さはわかってるよな」
「あぁ」
「ちょっと、そこだけで話を進めないでくれるかしら?」
「先輩、その、私たちにも説明を」
士郎とキャスターが2人で話を進めていると、ジト目のオルガマリー所長と少しためらっているような感じのマシュが口を挟んだ。ついつい置いてけぼりにしてしまったことに罪悪感を感じながら士郎はこの状況についてキャスターに尋ねた。
「ってな感じで、気づいたら人間はみんな消えちまって、サーヴァントだけが残った。今残ってるのはセイバー、アーチャー、アサシンとバーサーカー。ライダーは前に仕留めたし、ランサーはお前たちも見た通り脱落だ。ただまぁ、全員がセイバーの配下みてぇなもんだ。何かに侵食されてるのか、若干ではあるが質が落ちてやがる」
「あなたはそれ以来、1人で戦っていたの?」
「まぁな。俺としても強者との戦いは望むところだし、このまま放置ってわけにはいかねぇしな」
好戦的な笑みを浮かべながら何でもないようにキャスターは笑った。そういうところがあの戦いで出会った槍兵を思い出させ、少しばかり懐かしい気持ちに士郎はなった。
「キャスター、頼みがある。俺たちはこの状況を解決するために来た。俺たちに力を貸してくれないか」
「いいぜ」
「随分あっさり承諾したわね」
「お前たちはこの状況をどうにかしたい、俺は一刻も早くこの戦いを終わらせたい。似たような目的があるんだ。協力しない道理はないだろう」
「よろしくお願いしますね、キャスターさん」
「おう。嬢ちゃんもサーヴァントなんだろ?まぁいっちょよろしく頼むわ」
差し出された士郎の手をキャスターが握る。
「しばらくの間だが、お前をマスターと認めてやるよ、坊主。名前は?」
「衛宮士郎だ。よろしく頼む、キャスター」
ちなみにキャスターの服装についてですが、
霊体の彼は服装とかも自在なのでは?
と思ったのであの服装よりは全身タイツの方が戦いやすいかと思って変わるようにしました。