映画、ライダーさんめっちゃかっこよくて泣いた笑
しかしやはり劇場だと迫力が違うなぁ
なんてノリで投稿です
(ここで終わりね……まぁ、悪くはない経験、だったわね)
押し寄せてくる怒涛の奔流の前に立ちながら、エリザベートは諦観にも似た気持ちで、槍で防御の姿勢をとる。
強く目を閉じ、衝撃に備えていたエリザベート。
しかし、その衝撃波やって来ない。
耳に届くのは押し寄せる奔流の響き。宝具が停止したわけでも、消えたわけでもない。ならば何故?彼女が目を開く。
目に入るのは二つの背中。かたや黒いバトルスーツのような服の少女。かたや白の上着に、黒いズボン。肩を並べ、二つの盾が巨大な奔流を受け止めている。
「仔イヌ……それに仔ジカ……」
「間に合って良かったです」
「っ、荊軻!」
「うむ、任されるとしよう」
音もなく隣に現れた荊軻に、エリザベートが驚く。荊軻はエリザベートに肩を貸し、いつの間にか少し離れた場所に移動させられていたネロの元まで連れられる。側にエリザベートが来るや、ネロが彼女の両肩を掴む。
「エリザベート!なんともないか!?」
「え、ええ」
「そうか……愚か者!余を庇うなどと、何をやっておるのだ」
ガバっと抱きついて来るネロに、エリザベートが目をパチクリさせる。現状、士郎とマシュが防いでいるとはいえ、敵の宝具が迫っている中で何をやっているんだとツッコミが入れるところだが、ネロの話に何か重要性があると感じ取ったのか、荊軻は今は見守ることにした。
「ちょっ、何何!?どうしたのよ?」
「そなたが居なくなったら、余が困る!」
「うぇっ!?」
慌ててネロの拘束から逃れようとしたエリザベートだったが、ネロの瞳が濡れているのを見て動きが止まる。
「余と共に戦ってくれるのであろう?余とユニットを組んで、共に歌うと決めたのであろう?その約束を反故にしようとするなど、余が許すわけなかろう、馬鹿者が!」
「ネロ……」
「余はお主のマスターだったな。ならば命令するぞ!余と共に、最後まで戦え!余の許しなく勝手に消えるなど、許さぬ!そして、余と共に歌う約束は、きっちり果たせ!余のサーヴァントであるならば、この命令、しかと守ってもらうぞ!」
令呪が彼女たちを繋いでいたわけじゃない。命令の数を意図して数えたわけじゃない。でも、ネロの命令はきっかり三つ。サーヴァントとマスターの間にある絶対命令権、その数と全く同じだった。
必死なその叫びにも似た命令は、命令としてはどこか幼稚で、なんともくだらなくも聞こえて、強制力なんてとてもないようなものだったけれども、その真っ直ぐな叫びは、しっかりと
「わかったわ……そうだったわよね。一緒に歌うって、約束したんだもの!」
「うむ!」
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「ぐっ!っ、なんとか、持ち直したみたいだな」
「はい、っ!でも、先輩、もう持ちません!」
攻撃の手を緩めることなく押し寄せ続けるロムルスの宝具。それは確実に士郎とマシュの防御を削っている。
「ネロ、これを!」
空いている方の手で、士郎がネロに向けて何かを投げる。ネロが受け取ると、それから強い力を感じる。手のひらに収まる大きさの、宝石が一つ。
「シロウ、これは?」
「っ、俺の師匠から貰ったものだ。その魔力、お前なら使えるんだろ?」
今はまだ、本人の知らぬこと。しかしその先にて、ネロが手にするスキル、皇帝特権。本来持ち得ないものを短時間だけとはいえ獲得することができる、特殊中の特殊。それもランクはEXと規格外。生前の逸話を元にしているそれであれば、今の彼女にも当てはまる。
「過去だとか、未来だとか、そんなのは関係ない。あいつに見せてやれ!お前の、今の、正しいローマを!」
短い言葉の中に、ネロは確かに感じた。士郎の言うことは、まるでアーチャーのと同じだと。一度ならず二度までも、誰かに肯定してもらうことに助けられるとは。
「うむ!任せるがよい!」
ギュッと宝石を握りしめ、ネロが剣を地面に突き刺す。
必要なのは相応の魔力。あとは彼女が築き上げるのみ。
思い描くのはとある建物の設計。
故に他の追随は許さず、そこでは自分が支配する。
ローマに築きし栄えある劇場。
黄金深紅の大劇場。
「神祖ロムルス、我が才を見よ! 万雷の喝采を聞け!」
「しかして讃えよ! 黄金の劇場を!」
「門を開け、
バラの花びらが舞い、世界が紅に染まる。
ネロを起点として、迫り来る奔流をも包み込み、新たな舞台が作り上げられる。
「ここは……」
周囲の変化に、ロムルスが初めて驚きの表情を見せる。
三つの剣が交わる、まるで三銃士のそれにも見える紋章。
絢爛豪華で雄麗。眩しく、激しく、美しく。
造られしは彼女の黄金劇場。
舞台が照らすのは只一人。
その場所を作りし唯一の皇帝。
「シロウ、マシュよ!退がるがよい!ここは、余の独擅場ぞ!」
「わかった。マシュ、3カウントだ!」
「了解です」
「1」
「2」
「「3!」」
合図と同時に二人が防御を解除しその場を飛び退く。止めるものの居なくなった奔流が、再びネロたち目掛けて押し寄せる。
「これぞ、余の示すローマである!受けるがよい!」
「
黄金の劇場の力を身に受け、炎溢れる剣をネロが振るう。飛ぶ斬撃の如く、炎が刃の形となって迫り来る樹木の波を迎え撃つ。
渾身の力を込めたネロの一撃は、樹木を切り裂き、燃やし尽くす。その勢いは止まることを知らず、ロムルスへと向かい続ける。
「それがお前のローマか……ふっ」
小さく呟かれた言葉はネロや士郎たちには聞こえなかった。迫り来る炎の斬撃を止めるべく、ロムルスが槍を地面から抜き、防御する。槍で炎を受け止めるロムルス。拮抗ののち、ロムルスが両手で槍を持ち、全力で振り抜く。その本気の大振りは、炎の斬撃を切り裂いた。しかしその大振りこそ、ネロの欲したものだった。
「ぬ!」
切り裂かれた炎の後ろから、燃える剣の切っ先が迫る。全力の大振りで先の攻撃を防いだロムルスだったが、それによって生じる隙をこそ、ネロは狙ったのだ。
彼女の気持ちの高ぶりに呼応するかのように、炎の激しさも明るさも最高潮に達している。
その炎は覚悟の炎。
瞳に宿りし信念の炎。
それを真正面から突きつけられ、ロムルスは——
———笑った。
赤い刃がその体を貫いたのは、そのすぐ後のことだった。
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ポタリ——ポタリ——と。
赤い雫が剣を伝い、地面に落ちる。
心臓に当たる場所は刃が貫き、既に致命傷となっている。
後はもう消えるのみ、男は敗北したのだ。
にも関わらず、その表情を見た
あるのは優しげな笑み、愛しい子を見るような眼差し。
そのまま男が腕を持ち上げ、ネロの頭にその手を置いた。
けれどそれは攻撃のためではなく、賞賛のため。
恨みを持ってではなく愛情を持って。
残された最後の力と時間を使った、男の最後の言葉。
「良い——それで良い、愛子よ。その輝きを、ゆめ忘れるな」
そう言って男は消える。
この世に今一度現れた、仮初めの体と仮初めの命。
ただそれでも、その魂だけはまごう事なき男のもの。
己が作りし、愛すべき
「霊基の消滅を確認。サーヴァント、ランサー。神祖ロムルス、消滅しました」
ネロの展開していた劇場が消え、再び宮殿内に彼らは立っている。改めて確認をしたマシュの報告を受け、荊軻たちがほっと息を吐く。
張りつめていた緊張が、ようやく解かれて——
「消滅したか。やはり神に至ったものとはいえ、所詮は人間、所詮はサーヴァント。あのセイバー同様、無駄なことを」
解けるかと思われた緊張は、響いた声によって再び、否、それ以上に強くなる。特にこの声に聞き覚えのある、士郎とマシュは。
現れるのはシルクハットの男。この時代にはとても合わないキチンとした服装、そして狂気に歪んだ笑顔。
「ようやく見つけた……レフ!」
「ふん。久しぶりだな、衛宮士郎。そして
カルデアの事件を引き起こし、所長、オルガマリーを殺した張本人。
レフ・ライノール・フラウロスが、玉座に座りながら、彼らを眺めていた。
いやぁ、ようやく出てきましたよ、ラスボス……の前の最終幹部笑
長いしめんどいけど、終わりが見えてきたから、頑張ります
まぁ、終わるっていっても、第二特異点だけなんだけどね笑