正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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いやぁ、ハロウィンイベント……全部は終わらなかったや笑

いやだって、その他のあれやそれで忙しかったんですもの

あと、すみませんがこの後2週間ほど音信不通になる可能性大です
なのでその前に一話載せますね


破壊の大王

「所詮ははぐれサーヴァント。聖杯の力で呼び出されたセイバーに、勝てるはずもなかったな。結局できたことは時間稼ぎのみ、それも、結局のところ無意味なものだかな」

 

ニヤリと口元を歪め、レフがセイバーの隣に並ぶ。聖杯を手に、

 

「だがそう悲観することでもない。貴様らも同じ運命を辿るのだからな。なにせこのセイバーは、破壊の大王にして純然たる戦闘王。文明を滅ぼすための装置にすぎぬ。根底に破壊を刻み込まれているこれを、貴様らが止めることなどできはしない。ローマがこれに滅ぼされるのは、まさに運命なのだからなぁ」

 

「くっ」

 

士郎たちが身構える。破壊の大王、ローマを滅ぼすもの。そして戦闘王。そのキーワードを得て、士郎の脳内に一つの名が浮かぶ。ただ、もし本当にその英霊だとしたならば、この事態はよろしくない。

 

英霊にはその逸話、その歴史が宝具やスキルとして昇華されることがある。それは時に特定の対象、特定の目的のためにはサーヴァントをより強力にすることにもつながる。そしてこの場合はローマを守る士郎たちには、悪い方向で働いてしまう。何故なら彼女は—————

 

「まさか……そいつ、フン族の王……なのか?」

「大王アッティラ……東西ローマ帝国を滅ぼしたと言われる……あの」

「ほぅ、流石に気づいたか。だが気づいたところで無駄だ。貴様らには止められん。そこで己の無力を呪いながら朽ち果てるがいい!さぁ、最後の時だ!セイ─────」

 

「黙れ」

 

ザシュ─────響いたのは剣が肉を裂く音。ぽたりぽたりと血が垂れる。

 

驚愕の表情を浮かべるのは、刺された本人だけではない。

 

ただ淡々と、無表情に、無感情にその剣を振るったセイバー、アッティラ……否、アルテラ。

 

彼女以外の誰もが、驚愕していた。

 

──────そう、誰もが。

 

「がっ……な、んだと」

 

口から血をあふれさせながら、刺された本人─────レフが口を開く。

 

「き、貴様っ!サーヴァントの分際で、貴様を呼び出した私に逆らうのか!?」

「人は言う。私を破壊の大王と。神の懲罰と。私は文明を破壊する。ただそれだけのこと。そのために邪魔な貴様から破壊する」

「き、貴さ─────」

 

一刀両断

 

まさにその言葉しか思いつかない。

 

一瞬でその体は縦に切り裂かれた。

 

迷いのないその一撃は、レフ・ライノールの体を、綺麗に半分に割いた。

 

地面に落ちる半分ずつの体。足元が血だまりになりながらも、眉一つ動かさないアルテラ。

 

屈みこみ、血にまみれたレフの手から聖杯をそっと取り上げる。

 

あれほどの血だまりの中にありながらも、黄金に輝く聖杯は一切血に濡れていない。

 

「これは……彼女に聖杯が取り込まれていきます!」

『そんなまさか!サーヴァントが聖杯を取り込むなんて……そんなことしたら……』

 

爆発的にアルテラの魔力が上昇する。レフの真の姿とも違う、魔力で形成されていただけの肉体が、霊核にエーテルをもって与えられただけのはずの肉体が、確固たる形を持っていく。

 

「まさか、受肉しているのですか?」

『この反応……まだ完全には馴染んでいないみたいだ。でも、このままだと、』

 

「器は得た。アルテラは今ここに誕生する。これより、この時代、この世界の文明を破壊する」

 

三色の剣の刀身が発光しまわりだす。まるで虹のように輝きを増しながら、その剣の切っ先に魔力が集められていく。回転するその剣が向けられるのは、士郎たちの方向。狙いを定めるように向けられる視線は冷たく、空虚。

 

「やばっ!?」

 

瞬間、眩い閃光とともに、連合ローマ宮殿が消し飛んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『士郎君?無事かい?無事じゃないならそうと返事してくれ!』

「いや、無事じゃないなら返事できないと思うぞ」

 

完全に崩れてしまった連合ローマ宮殿、しかしその中の一部分のみ、破壊を免れた場所があった。そこに集まっている士郎たち。一枚のみになった花弁が消えていく。

 

「ありがとう、マシュ、ブーディカさん」

「いえ、先輩こそ。私たちだけでもったかどうか」

「まぁ、こうしてみんな無事なら、それでいいかもね」

 

爆発の直前、咄嗟に守りの宝具を発動させたマシュ、ブーディカ、そして士郎。3人の力を合わせたおかげで、彼らはみんな無事ではある。が、

 

「恐ろしい威力だったな……っつ!」

「先輩!」

「シロウ!」

 

腕に痛みを感じ、抑える士郎。攻撃そのもの防ぎきれたとはいえ、その破壊力は絶大で、それを受けた衝撃だけで骨が数本ひびが入ったらしい。

 

「シロウ、すぐに治します!」

 

リリィが肩に手を置き魔力を流し込む。ゆっくりではあるが、痛みが引いていき、骨の傷が癒えていく。

 

「ありがとう、リリィ」

「いえ。こうして無事なのも、シロウのお陰ですから」

「ふむ。無事……か。とは言ったものの、状況はあまりよろしくないな」

 

崩壊した宮殿の外を見つめながら呟くエルメロイII世。視線の先を見ると、アルテラがゆっくりと進んでいる。立ち向かうローマ兵を、鞭のように剣を伸ばし、薙ぎ払い、ただ同じ方向に進むのみ。

 

「ねぇ、あの方向って、ネロ(マスター)の宮殿がある方よね?」

「おそらく、彼奴は首都ローマに向かっておる。この世界の文明、即ち余のローマを破壊するために!」

 

ブーディカの様にローマを恨むでもなく、スパルタクスの様に叛逆するでもない。

 

ただ機械的に、破壊という目的のためだけに、彼女は動く。動き続ける。

 

 

「……止めに行こう」

 

その声は決して大きくはなかったが、それでも力強かった。士郎の言葉に、皆が同意する。

 

 

 

 

低空飛行、というほど飛んでいる感じはしないが、まるで地面を滑っているかのようにアルテラは目的地に向かう。途中邪魔してくるローマ兵をなぎ倒しながら進むものの、その一挙手一投足、動揺も乱れも全く見られず、ただ無感動に、機械的に、業務的に処理していくだけ。

 

「む?」

 

ふと殺気を感じ取り、振り向きながら剣を横なぎに振るう。鞭のようにしなった剣が、すぐ背後まで迫っていた大量の矢を打ち落とす。大分距離があいていたはずだが、それでも届いたその弓の射程距離や精度に感心、というのだろうか。見事、という言葉が頭に浮かぶ。

 

「来たか」

 

視線を凝らして矢の来た方向を見る。馬やこの時代の戦車らしきものに乗り、こちらに向かってくる一団。その先頭にいるのは真紅の皇帝。そして鋭い視線の青年。色こそ違えど、あの赤い外套を纏っていたサーヴァントと同じ鷹のような目を持つマスター。

 

「誰であろうと、私は破壊するのみ」

 

 

「どうだ?」

「全部落とされた。けど、注意を引くことには成功したな」

「動きが止まったという事か。まずは良しとするとしよう」

「うむ。ここで決着をつけようぞ。余のローマを取り戻す!」

 

前を見ると、こちらに向かってくるアルテラが見える。

こちらを見ている視線には、何の感情も見て取れない。

 

ただ、破壊する者だから破壊する。

 

「けど、そんなことは絶対にさせない!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

画面を見つめながら、ロマニが息を吐きだす。

 

カルデアから物資の支援や情報の提供、反応のサーチなど、自分たちにできるだけのサポートはしてきている。

 

けれども、実際に共に戦うことはできない。

 

「士郎君、マシュ……」

「心配かい?」

 

いつの間に管制室に来ていたのだろうか、ダ・ヴィンチが顔をのぞき込んでくる。いつも通りのなにもかもを見透かしているかのような笑み、本人のポーカーフェースのままに見上げてくる彼女、いや彼……いや肉体的には女性……と、そんなことはどうでもいい。

 

ともかく、ダ・ヴィンチの笑みに対し、ロマニは小さく口元に笑みを浮かべながら答える。

 

「心配だよ。でも、彼らのことを信じてるから」

「おやおや。どっちかというと心配症でネガティブな方向に物事を考えがちな君にしては、ポジティブじゃないか」

「そう、かもしれないね。でも、彼らならきっと成し遂げられると思う。特に彼、士郎君は」

「そうだね。私も彼にはあると思うよ━━━━━英霊の素質が」

「……何かに気付いたのかい?」

「さぁ?どうだろうね」

 

何やら思わせぶりなダ・ヴィンチは鼻歌を歌いながら管制室から出て行く。その後姿を見送ってから、ロマニは画面へと視線を戻す。

 

「頼んだよ……士郎君」

 




いや~最終決戦がようやく始まるよ

展開遅くてマジすんません

ちょっと諸事情あって日本を2週間離れるので、帰ってきたら頑張ります!

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