まぁ、うちのカルデアには前からいてくれてるんですけどね(笑)
じゃあじゃあ取りあえずは物語、続きま~す。
「暗殺者、ねぇ」
「ああ。それも確実にエウリュアレを殺しに来ていた。いつまた狙ってくるかもわからないから、気を抜けなさそうだ」
船上、ドレイクの部屋。
あれから無事にドレイクと合流し、新たに加わったアステリオスとエウリュアレを紹介した士郎たちは、すぐに船を出して島を離れた。ドレイクも急ぐ様子の士郎に疑問を感じながらも、事情があるとみて了承してくれた。
因みにアステリオスはマシュの仲介もあってか、リリィ達とも仲良くできているようだ。驚いた、というよりも感心したのはジャンヌ・オルタがアステリオスのことを気にかけていることだった。彼女の基になった
そんなアステリオスの様子を微笑みながら眺めるエウリュアレはエウリュアレで、海賊たちからは遠巻きに、しかし憧憬の眼差しを向けられている。気づいているのは明らかで、しかもちょっと楽しんでいるのか、時折クスリと彼らに向けて微笑みかけて定期的に飴を与えるものだから、まぁ、その人気はうなぎのぼりである。
「しっかしこんなに別嬪が船に増えるなんてな」
「いつもの航海と違って華やかだぜ」
「こんな美人ばかりが周りに集まってる……」
「「「「「流石アニキ」」」」」
本人のあずかり知らないところで勝手に士郎の評価がさらに高くなっていた
本当にそんなことなどつゆ知らず、士郎とドレイクの話は進められていく。
「女神さまとそれを守る者、ねぇ。なんだか御伽噺にでも出てきそうだね」
「まぁ、その感性もあながち間違いではないな。実際、神話に語られる存在だし」
「そりゃそうか。ところで、その暗殺者には心当たりはないのかい?」
「悪い。あいつの顔はよく見えなかったし、声もくぐもった感じではっきりとは。ただ、この時代にあるはずのない武器を使っていたのは確かだ。つまり奴はここから見て未来から召喚された……サーヴァントとして」
「またそれかい。やっかいなことばっかりだね。とにもかくにも、あの女神様ってのが狙われている理由が知りたいね。守ってやるのは別に構わないけど、永遠に守っていられるわけじゃないから、せめて目的とか最終的な到達点が知りたいもんだよ」
「そう、だな」
黒髭の一味、そしてあの謎のアサシンはエウリュアレを狙っていた。しかし、エウリュアレの話から察するに、黒髭の一味の目的はエウリュアレの確保であること。殺すつもりはなさそうだ。対する謎のアサシンは迷うことなく、明確にエウリュアレを殺しにかかった。
このことからあのアサシンは黒髭の一味ではなく、全く別で単独行動していると考えられる。だが、
「何でエウリュアレが狙われているのか、ってことだよなぁ」
「女神さまだから、ってだけなのかねぇ」
「……まぁわからないことを考えても仕方がないか。とりあえずマタ・ハリの言った方向にある島に向かうしかないよな」
「あの島ならあたしも知ってるよ。確か無人の島だったはずだけど、この調子だ、誰かがいてもおかしくはないんだろうね」
話がさかのぼること少し、アステリオスとエウリュアレとを加えた後の目的地について話していたところ、これまたマタ・ハリから意見が上がったのだった。
彼女曰く、
「あなたたちを待っている人たちがいるの。私はマスターたちを案内するために来たのよ」
とのこと。そういえばエウリュアレを探すための出発よりも先にそんな話もしていたなと思いだす士郎。
「それって誰なんだ?」
「ごめんなさい。直接会えるまでは伏せておくように言われているの。その情報が漏れてしまわないようにすることが重要なの。きっと切り札になってくれるはずだから」
「そっか。なら、仕方がない、のか?」
「でも一つだけ、わかることもあるわ」
そう言って話に加わったのはエウリュアレだった。
「わかること?」
「ええ。貴方を送ったという相手、私のことを、神霊であることをわかった上で案内したのでしょう?」
「ええ、そうね。あの様子だと、きっとそうだと思うわ」
「じゃあ決まりね」
「え~と、何がどう決まったんだ?」
何やら一人で納得した様子のエウリュアレに対し、士郎たちは完全に置いてけぼりである。頭に疑問符を浮かべながら士郎がエウリュアレに問いかけると、小さく息を吐き出してから、エウリュアレが士郎の方を向く。
「サーヴァントはサーヴァントの存在をある程度は知覚できるわよね?」
「ん?まぁ確かそうだったけど」
「でも私のような女神、神霊はそれだけじゃないのよ。この世に自分と同種、同等の存在がいればそれを感じ取ることができるの。神だけが発している気配、みたいなものかしらね。それがわかるのよ」
「そうなのか?でも、今その話をしたってことは」
「ええ。恐らくそこにもいるのね。私と同じ、神霊が」
――――――――――――――
そんなわけで、士郎たち一行は再び神霊を探すための航海に出ていたのであった。エウリュアレのおかげで大よその方向はわかるため、それをもとに進んでいるが……
『士郎君、一つの特異点に二人の神霊が現れるっていうのはかなりの異常事態だ』
「だよな。確か神霊はかなり霊格を落とさないと現界さえできないんだったよな」
『うん。だから本来、一人でも現界していること、それ自体が異常として観測されてもおかしくはない。今は特異点化の影響で現界しやすくなっているということなのかもしれないけれども』
「まぁでも、マタ・ハリの話だと俺たちの味方っぽいし、大丈夫なんじゃないのか?」
『だといいがな。忘れるな、遠坂の弟子。マタ・ハリはスパイとして有名な英霊であることを。必ずしも、お前の味方である保証はないぞ』
忠告するように会話に入ってきたのは、ロード・エルメロイⅡ世。孔明と融合した影響による戦術眼によるものなのか、はたまた彼生来の慎重さ故なのか。いずれにしても、彼自身の考えももっともではあり、また士郎が確実に勝つため、負けずに修復を可能とするためには、念頭に置いておかなければならないことには違いない。
彼女が本当に聖杯が抑止力代わりとして呼び出したサーヴァントなのか、それを現時点では判断することができないのだから。
「そうかもな。でも――」
でも、そう士郎は続ける。確かに敵か味方かなんてはっきりわかっているわけではないのかもしれない。それでも、彼自身が信頼している――信頼できることが一つだけある。
「――俺はマタ・ハリを信じるよ」
『どうしてそう言い切れる?』
「だって、料理が美味かったから」
『『は?』』
通信先の向こう側でロマニとエルメロイが固まったのを感じながら、士郎は笑顔で続ける。
「料理っていうのはさ、作ってるときも出来上がったものにも、作り手の人柄や気持ちが反映される。ただ万人受けにおいしく作ろうと思っていたら、確かにそれなりのものができる。でも、料理が本当においしくなるのは、食べてくれる人のことを思って作る時だ。マタ・ハリの料理には、それがちゃんとあった。だから、そんな風に料理を作ってくれる彼女のことを、俺は信じる」
そうやって士郎がカルデアと通信しているところから、ほんの少し離れた場所。
決して盗み聞きするつもりはなかったものの、結果としてその会話はしっかりと聞こえてきていたのだった。
「マスター……シロウくん」
名前を小さく呟くと、胸の奥がキュッとしまるような、不思議な感覚。
戦闘面で褒められたわけではなかった。容姿を誉められたわけではなかった。自分の有用性を誉められたわけでもなかった。
『料理が美味かったから』
かつて男を虜にするために料理をふるまったこともあった。でも、本当は心を込めて料理を作りたかった。それを食べた誰かに、美味しいと言ってほしかった。そんなささやかで小さな幸せを、ずっと願わずにはいられなかった。
自分のご機嫌を取るためではなく、自分のいないところで――それも自分を信じている根拠として言ってくれた彼のその言葉は、ああ、どうしてこんなにも温かい気持ちにさせてくれるのだろう――
そう思った直後、
ドォン!
大きな音と共に、船体が揺れた。
アサシンはアサシンでもあっちのアサシンでした、ということで(笑)
いやぁ……まだ続くんだよなぁ。
本と思うけど、これでまだ第3特異点の半分も行ってないってことよね?
先が長すぎて気が滅入ってきた……
安易にSSを書き始めてはいけないとよくわかります……
というか話数繋げたらSSどころじゃないきもしますしね。
まぁ、ぼちぼち続けていきます、はい。