正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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久しぶり過ぎて凡ミスを(-_-;)

改めて、ちょっとだけ進むんじゃよ


海賊が海賊であるゆえに

「メアリー!」

「くっ、うわっ」

 

パートナーの声に反応するように少女が剣を構えたものの、

 

「やぁぁあ!」

 

魔力を推進力代わりに噴射することにより降りぬかれた、騎士の一撃の勢いを完全に殺すことはできず、小柄な体が後退させられる。

 

「だったら私が!」

「させません!」

 

一撃を振りぬいた直後の拘束時間を狙って放たれた弾丸を遮るように、盾が射線上に割り込み弾丸をはじく。

 

攻撃を防いだ隙に反撃を、と思って小柄な少女の方を見ると、弾丸を撃ってからすぐに行動にうつっていたらしく、大柄な女性の方が少女の前に――かばうように立ちふさがっている。

 

様子をうかがうように対峙する両者。

 

海賊のコンビは小さいほう――メアリーの方が消耗しているものの、もう一人のアンはここまでほとんど中でのサポートしか行っていないため余裕がある。

 

対するマシュとリリィは消耗こそメアリーほどではないものの、どちらも入れ代わり立ち代わりで攻めと守りを切り替えるようにしながら戦っているため疲労が見える。特にデミ・サーヴァントであるマシュはそれだけでもなく、巨大な盾を使用しているためなおさらだ。

 

「ありがとうございます、マシュさん」

「はっ、はっ……いえ。でも、なかなか決め手が見つかりません」

「どちらか片方だけなら何とかなったかもしれませんが、敵ながら見事な連携です」

「アン・ボニーとメアリー・リード。あのお二人は女性海賊のコンビとして有名ですから、パートナーとしての完成度はさすがに高いですね」

 

「メアリー、大丈夫?」

「うん、なんとかね。デミサーヴァントと半人前の王様。脅威にはならないかと思っていたけど」

「どうやら油断できない相手のようですわね。どうしかけます?」

「……いい加減、勝負を決めにかかったほうがいいかもね。宝具いける?」

「ええ。いつでも」

「じゃあ、決めにかかろう」

 

視線を交わし、アンとメアリーが二人同時に駆け出す。

 

「マシュさん!」

「はい!」

 

 

鬼気迫る相手の様子に気を引き締めるマシュとリリィ。マシュが前に立ち盾を構え、リリィはその少し後ろで剣を構える。

 

接近してきたアンとメアリーが、突然左右に分かれるように飛ぶ。

 

無意識のうちにマシュの視線は遠距離を持つアンに、リリィの視線は剣を持つメアリーを追っていた。二人の役割分担ではそうしていたのだからそれも仕方のないことだろう。しかしそれは同時に、もう一人の存在を自分の意識から外してしまうこととなっていた。

 

「っあ、これは!リリィさん!」

 

思わずマシュが声を上げる。

 

距離にしてほんの一歩分。しかしその一歩分が大きかった。

 

――届かない。

 

アンの銃口が狙っているのは、自分ではなかった。

 

ニヤリと笑みを浮かべながらアンが引き金を引くところを、マシュは見た。

 

盾を持った手を精一杯伸ばす。

 

それでも、弾丸が通り過ぎるのを防ぐことはできなかった。

 

「この勝負、いただきました」

「リリィさん!」

 

メアリーの剣を受け止めていたリリィはその弾丸に気づくことができず、彼女の後頭部をめがけて飛んで行った弾丸は――

 

突如飛来してきた別の弾丸にはじかれた。

 

「は?」

「今のは――島の時と同じ?」

 

驚きの声を漏らしたアン。大きな隙が生じているがその隙をつけるほどの余裕がマシュにはなかった。どこからともなく飛んできた弾丸。それは先ほどエウリュアレを狙ったものに近いものではないかと思ったからだ。急いで当たりの様子を見るが、その弾丸を放ったらしい者は見当たらない。

 

(かなり遠くからの狙撃でしょうか……或いは私たちに気づかせる間もなくこの場から離脱した?でも、どうして今回はリリィさんを助けてくれたのでしょう?)

 

「マシュさん!」

「っ、つぁっ!?」

 

互いに気を取られてしまった場合、どちらが先にそこから盛り返すことができるのか――それによって勝負は大きく傾く。その点、戦闘経験の差がはっきりと生じてしまい、マシュは咄嗟に盾で直撃を防いだものの、アンが力いっぱい降りぬいた砲身での攻撃を受け、大きく弾き飛ばされてしまった。

 

「っ、まだ「もらったよ!」」

 

慌てて体勢を立て直そうとするマシュめがけて、リリィを振り切ったメアリーがカットラスを振り下ろす。

 

戦場とは常に状況が変動するもの。戦う相手は一人と限らず、状況に応じて戦う相手を切り替えることもまた当たり前のこと。一対一の正々堂々とした試合とは違う、それゆえに場数を踏み、戦局を見極め、最善の手を打つ必要がある。今のマシュにはそれが足りず――アンとメアリーはしっかりとできていた。

 

ガキンッ――とカットラスが受け止められる。自身を阻んだ黒い剣を認識したかと思った瞬間、メアリーは自分の意思とは関係のない浮遊感を感じ、投げ飛ばされたのだと察した。

 

「わっ、とと」

 

咄嗟に受け身を取りながら、メアリーが視線を上げる。そのそばにアンが駆け寄る。

 

「メアリー、大丈夫?」

「うん。でも、ちょっとやばそうだね」

「ええ。まさかあのバイキングの王様を破ってくるなんて。本当にただの人間のマスターなのかしら?」

「生憎と、ただの人間だよ。ちょっとばかり魔術が使える、魔術師崩れってだけで、他は普通の人間だ」

 

そう言いながらメアリーを投げ飛ばすためにフリーにしていた方の手に、夫婦剣のもう片割れをすぐさま取り出す士郎。エイリークとの戦闘による疲労やダメージこそあれども、まだまだ戦闘を続けるのに支障はなかった。

 

「ありがとうございます、先輩」

「シロウ、そちらはもう終わったのですか?」

「ああ。少しダメージはあるけど、問題はない。早いところこいつらを倒して、黒髭の方に向かおう」

「はい」「ええ」

 

「ただの人間がサーヴァントの前に立って生きている、これだけでも奇跡なんだけどね。流石に分が悪いかなぁ」

「ええ。ここは一時撤退、と行きたいところですけど――この船の様子だとそうもいかなさそうですわね」

 

銃を士郎たちに向けたままチラリと自分たちの船の方を一瞥するアン。

 

宝具により現出しているティーチの船。

 

本来であればこの時代に存在している船を相手に後れを取ること、どころか勝負になることすらないレベルではある。が、しかして現在。この時代のフランシス・ドレイクの操る船相手に展開されている戦いはほぼ互角のものとなっている。

 

これには主に2つの要因が働いている。

 

1つ目はドレイクの保有しているもの。彼女が冒険の果てに手に入れた、まごうことなきこの時代における正しい聖杯。万能の願望器と呼ばれるだけある聖杯を手に入れたことにより、ドレイク及びその船には魔術的な加護が施されていた。少なくとも、サーヴァント相手でもある程度は攻撃が通るほどに上昇されている能力が手伝って、黒髭の宝具相手でも簡単には負けない。

 

そして2つ目は現時点での黒髭側の船員の状況である。黒髭の宝具、「アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)」には特殊な性質がある。それは搭乗している部下の力量が上昇するほどに船そのものの性能も上昇されるというものである。この特性故に、他のサーヴァントと同盟や主従関係を結び、その船に迎え入れることで黒髭の宝具はより強くなれる。

 

一方、それは搭乗していることにより上乗せされる効果であるがため、船を離れてしまうと効力が下がるという欠点が伴う。手中に収めていたものから供給される魔力さえあれば修復も可能であることを踏まえ、本来であれば自軍の船での戦闘の方が望ましいのだ。が、それは士郎の最初の一撃により破綻してしまった。意図せずに、彼の狙撃は敵側の有利をつぶし、自軍にとって有利な展開に持ち込むことに成功していたのだった。

 

「――クク、クハハッ――クハーッハッハッ!!それでこそフランシス・ドレイク!英霊でもない身でこれほどとは!やはり伝説は真実だったな!ハハハ!ハハハハハハハ!アーッハッハッハッハッ!デュフフフフwwww」

「なんだい、あんたあたしのこと知ってたのかい。そりゃいいね。海賊同士の真っ向からの勝負、嫌いじゃないよ!――ところで、その威厳のない笑い方はなんとかならないのかい?」

「デュフww――痛いところを突っ込んでくれますぞ、この女。しかし黒髭が黒髭であるために、こればかりはやめられない止まらないのですぞー!」

「なんで喋り方までおかしくなってるんだい、こいつは」

 

方や大笑い、方や若干呆れ気味ではあるものの、そこは後世に名を残した大海賊同士。互いの船による砲撃や揺れを意にも介さず、ただ眼前の獲物を見据えるのみ。

 

現状船に戻れば拮抗した状態を崩せる可能性はあるものの、目の前の敵に背を向けて何事もなく戻れるかと問われれば難しい。ましてや自分たちは2人で一つなのだ。どちらかが撤退中にやられれば、もう片方もつられて現界を維持することができなくなってしまうのだ。

 

「やるしかないっぽいね」

「ええ。それに」

「「ここで逃げたら、海賊が廃る!」」

 

ニッ、と同時に好戦的な笑みを浮かべながら、二人組の女海賊が突っ込んでくる。それはさながら彼女たちの最後の戦いの時のように。圧倒的な窮地に陥り、他の男どもが戦意を失うほどの絶望的と思える状況に、果敢に飛び込んでいた時のよう。

 

「やっぱり、サーヴァント――いや、英霊ってのはどいつもこいつも凄いな。二人とも、気を抜くなよ」

「ええ。承知しています」

「来ます、先輩!」

 

まるで号砲のようにアンの銃が火を噴き、その弾丸がマシュの盾に阻まれる。その瞬間、5つの影が交わり、再び戦いの火蓋が切られた。

 

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