正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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海の脅威は止まらない

Side ???

 

「これ以上の接近は気づかれますね。まだ暫くはこちらで待機となりそうです」

「あいつ、まだ目的を果たせてないのか?大英雄という話だったからもう終わっているものだと思っていたが」

「確かにあの方は大英雄に違いありませんが、狙う相手も大海賊。特に海上、船上においては隙を見つけることも難しいのかもしれませんね」

「ふん。まぁ確かに、航海を率いるものは冷静で隙のないことが多いからな。一概に奴の怠慢とは言えないか……だが、どんなに冷静な者でもこと戦闘中においては隙が生じやすい。上手くねらってくれればいいが」

 

 

激戦を繰り広げる二艘の船を離れた場所から魔術を用いて少女は様子をうかがっている。少女の言葉に返すのは、煌びやかな金の髪を持つ男。小さく舌打ちをした直後、そばに控えている大男の方を見て、頬を緩めた。

 

「まぁ、いざとなればこいつもいるか。たとえどんな相手であろうと、俺の船最強の英雄に敵う者などいるまい」

 

不敵に笑う男には絶対の自信があった。如何なる英霊が相手であろうとも、万が一にもこの大男の――ひいては自分の負けはないと。

 

事実その大男は規格外――英霊という枠からしても規格外のつわものなのだから。

 

巨大な斧とも剣とも見える武器を軽々振り回す剛腕。

 

巨体に似合わない俊敏性と機動力。

 

狂気に身を落としてもなお忘れぬ卓越した戦闘技術。

 

生半可な攻撃ではその肉体を傷つけることに能わず、また同じ手は二度と――比喩等ではなく本当に二度と効力を持たない。

 

よしんば攻撃が通り、致命傷を与えることができていたとしても、果たしてそれを十二度、それも毎回異なる攻撃でなしえられる存在がどれほどいるのだろうか。

 

英雄の中の英雄、豪傑の中の豪傑。

 

大神の子であり、神話に語り継がれる自分が知りえる最強の男。

 

「頼むぞ。ヘラクレス」

 

そう言い自信満々に男は笑うのだった。

 

――――――――――

 

「やれやれ、あっちもこっちも大盛り上がりだねぃ!」

「くっ」

 

ケラケラと軽口をたたきながら薙ぎ払うように振るわれた槍。咄嗟に旗で受け止めることには成功したものの、攻勢に出ていて重心がずれてしまっていたジャンヌは踏ん張りがきかず、大きくはじかれる。なんとか無事に着地するものの、思わずふらついてしまう。

 

「っ、ちっ。なんなのよ、もう。守りうますぎるでしょ、こいつ」

「最初に言ったでしょうが。おじさんは守りが得意なんだって!」

「ぐぅっ」

 

自身に向けて飛ばされてきた魔力弾をあっさりと槍ではじきながらジャンヌに迫ったヘクトール。まだ体勢を立て直していなかったこともあり、繰り出された強烈な突きを旗でそらしたはいいものの、その衝撃だけで大きく後ずさる。

 

「それじゃあおじさんも、そろそろ仕事をしようか、ねっ!」

「っ!?」

 

足元にあった樽を蹴り上げ、そのまま槍の平面で殴るようにし、ヘクトールはジャンヌとマタ・ハリに向けて飛ばす。それぞれが旗と魔力弾で樽をはじく。木の破片が一瞬両者の視界を遮る中、二人は咄嗟に警戒する。大英雄たるヘクトールであれば、その一瞬の隙をつく形で奇襲をすることも造作のないことであるのだから。

 

が、追撃が来ることはなかった。

 

「あら?」

「は?いない?」

 

いつの間にか、対峙していたはずのヘクトールの姿が、どこにも見当たらなかった。

 

「なんなのあいつ!逃げるとか、信じられない!」

「落ち着いて、ジャンヌ。とりあえず、マスターのほうに向かいましょう。もし先ほどの方がマスターを奇襲するなんてことがあったら大変だもの」

「……ええ、そうね。そうしましょう」

 

ギリィ、と思わず歯ぎしりをしてしまう。さっきの戦い、こんな幕引きだとすれば相手の勝ち逃げもいいところである。有効打こそこちらももらっていないとはいえ、2対1だったのだ。それでも攻めきれなかったどころか、防御に回った途端にほぼ何もさせてもらえなかった。そのことがひどく腹立たしい。

 

「次は絶対に、私が仕留めます」

「気合いっぱいなのはいいのだけれど、あまり無茶はしないでね。マスターも、きっと心配するわ」

「余計なお世話です。甘く見ないでください。でも、その忠告については頭の片隅に置いておいてあげましょう」

「うふふ。そう?それならよかった。さぁ、行きましょう」

「ええ」

 

槍をしっかりと握り直し、ジャンヌはマタ・ハリとともに走り出した。次回戦う時のリベンジに燃えながら。

 

―――――――――

 

鉄と鉄が幾度となく響きあい、その戦闘の激しさを物語る。

 

果たしていく度目かの打ち合いか、もう誰にも分らないであろうけれども――

 

――でも確実に、終わりはくる。

 

「っ、くっ」

 

咄嗟に繰り出された連携攻撃により、士郎の手から双剣が弾き飛ばされる。

 

「もらったよ」

「終わりですね!」

 

不敵に笑う女海賊コンビが接近する。体勢的に通常の回避は間に合わない。その一瞬の判断後、士郎はとっさに足元に小ぶりの短剣を複数個投影し、

 

「爆ぜろ!」

 

ほんの一歩後ろに跳びながら身構え、僅かに内包されている短刀の神秘を破裂させる。小規模ながらもその爆発はアンとメアリーを一瞬怯ませ、また同時に後ろに跳んだ士郎にとっては追い風となり、距離を取ることに成功する。むろん爆風に伴う熱波や破片、衝撃によるダメージが皆無なわけがなく、あくまで肉を切ってでも骨を守るための咄嗟の行動。

 

自分一人で戦っていたのであればその後反撃に移ることは難しいだろう。

――が、

 

「今だ!」

「「はい!」」

 

後退する士郎の両脇を二人の少女が駆け抜ける。アン目がけて突き出される盾の切っ先。そしてほぼ同時にメアリーに振り下ろされる剣。二人の少女騎士が繰り出した一撃は、先の爆発により視界、体勢共に狂わされていた二人組の海賊には防ぐすべがなかった。

 

「あ~あ…やられちゃったか」

「そうみたいですわね。でも、今回は――」

「そうだね。離れ離れでもなく、不自由の中でもない」

「海賊らしく――船上で」

「うん。そして海賊らしい戦場で」

消えゆく身体を確認しながらも、顔を見合わせながら二人の海賊は笑った。

 

みょうちきりんな船長と共に繰り出した今回の航海。結果として自分たちは目的を手に入れることは叶わず、この航海の最終地点を目撃することもできずに途中退場となってしまった。

 

ただそれでも、今度こそ共に終われるのであれば、そこに心残りはあるだろうけれども、悔いはない。

 

「じゃあ、僕たちはもう行くね」

「人類代表のマスターさん。またどこかの航海で会うことあれば、リベンジ、させていただきますから。勿論、貴方の可愛い騎士たちにも」

 

そう言いながら海賊たちは最後の敬意を敵対者たちに向ける。

 

「あ~、あの船長に、最後に挨拶くらいはしておいた方が良かったかなぁ」

「仕方ないでしょう。そんな時間はもうありませんしね」

「だね。それじゃあ」

「ええ。それじゃあ」

「「ヨーホー!」」

 

なんて、どこか気の抜けているような、それでいて海賊としての誇りを失わぬようなそんな言葉と共に、双翼の女海賊たちはその座の元へと送還されるのだった。

 

 

 

 

「先輩」

「お疲れ、マシュ。リリィも、お疲れ」

「はい」

「先輩。アンさんとメアリーさんですけど、その。こう言うと不思議かもしれませんが、なんだか楽しそうにも、嬉しそうにも見えました」

「そうだな。きっと、二人一緒だったから、だろうな」

「二人一緒、ですか?」

「はい、リリィさん。あの二人は後の世でも有名な二人組の女海賊、まさにベストパートナーです。でも、最期の時を一緒に過ごすことは叶わなかったようです。だからこそ、笑っていたのかもしれません。同じ船に乗り、同じ船長の下戦い、同じ戦場で一緒に終わることができたから」

「最後の瞬間を、大切な相手と一緒に過ごすことができたから、ですか」

「そうですね。私――少しだけ、分かるような気もします」

 

どこか寂し気な笑みを浮かべたマシュが回想するのは、炎に燃え盛るレイシフトのあの日――自分が終わりを迎えると思ったあの日のこと。潰されて、もう助からないと思って、それでも何故か――安心して微笑んだ。

 

そして浮かない表情のリリィもまた――彼女にその記憶がなく、あくまで可能性の話であれども、同じように思うところができるのかもしれない。聖剣を携えた王の終わりは、最も忠義の深い隻腕の騎士に看取られながら、最愛の夢の続きを見に行くもの――そうなる未来も可能性もあるのだから。

 

「……あとは黒髭とヘクトールだな。他のみんなも心配だ。行こう」

「「はい」」

 

戦場ゆえに感傷もそこそこにしておくほかはなく、士郎に促される形で彼女たちはまた別の戦いへと向かう。敵の戦力は大きく減らした。後は船長と大英雄を倒すだけ。謎の狙撃手の存在も気がかりではあるものの、戦いに終止符を打つために三人は駆け出した。

 

――より大きな脅威が近づいてきていることには、まだ気づかない。

 

 

 

 

 

 

「厄介なのが近づいてきているな。僕の攻撃じゃ、あの巨体をしとめることはまず不可能。かといって、大将を狙撃しようにもあの尋常じゃない圧。下手に攻撃しても見切られそうだ。こうなると、あのマスターたちと距離を置いてしまったのは痛手か」

 

いつの間にかドレイクの船から拝借していた小舟に乗りながら、男が呟く。スコープ越しに覗く更なる脅威に対する悪態か、それとも自身の予想や見通しの悪さに対する皮肉か。

 

「とにかく、通常の方法であれを攻略するのは不可能だ。場合によっては……」

 

いくつもの戦術を、戦略を考え組み立てる。さながら軍師のようなことをする男はしかしそんな役割ではなく、またそれらの思考は軍や集団を動かすためのものではない。

 

彼はあくまで奇襲を用いる暗殺者であり、世界に遣わされた守護者であり、正義のミカタなのだから。

 




かなり久々に筆をとってみましたが……

なんかこう、上手くいかないですね。

前回から今回までの間に、アヴァロン・ル・フェとツングースカ・サンクチュアリ挟んでるから、正直もうFGO関係のストーリーを考えることが難しいと言いますか……

まぁ、また書き足せる時に、思い出したように書き足します、はい。
多分。
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