真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第七十五話

 

 

 

 

俺は劉備の本陣を目指しながら先程の桂花の投擲を考えていた。

 

 

「桂花も良い肩になったな。あの距離を当てるとは」

「いや……言う事はそれだけですか?」

 

 

俺の呟きに苦笑いの一刀。いや、プロリーガーでも困難な事を成し遂げた事を素直に誉めたいのよ俺は。

そして一刀と雑談してる内に劉備の本陣に到着。

 

 

「曹操さん!」

 

 

陣に入ってすぐのところで桃色の髪で関羽と似たような服を着た娘が待っていた。あの娘が劉備か……

 

 

「…………久しいわね。劉備。連合軍の時以来かしら?」

「はい。あの時はお世話になりました」

「それで今度は私の領地を抜けたいなどと……また、随分と無茶を言ってきたものね」

「すみません。でも、皆が無事にこの場を生き延びるためには、これしか思いつかなかったので……」

「まあ、それを堂々と行う貴女の胆力は大したものだわ……いいでしょう。私の領を通ることを許可しましょう」

「本当ですか!」

 

 

おいおい、マジかよ。この手の会話で口を挟むとろくな事に成らないから黙ってたんだけど、まさか無条件で……いや、大将に限ってそれは無いな。今までの経験からすると……むしろここからが話の本番と言える。

 

 

「華琳様!?」

「華琳様。劉備にはまだ何も話を聞いておりませんが……」

「聞かずとも良い。……こうして劉備を前にすれば、何を考えているのかが分かるのだから」

 

 

稟や春蘭は大将の言葉に驚いてる。いや、まあ……話が此処で終わればのリアクションだよ、それは。

 

 

「曹操さん……」

 

 

対して劉備は顔全体に感謝と感激を滲ませている。近くで話を聞いていた関羽や張飛も喜んでいるけど……

 

 

「ただし街道はこちらで指定させてもらう。……米の一粒でも強奪したなら、生きて私の領を出られないと知りなさい」

「はい!ありがとうございます!」

 

 

本当に嬉しそうに感謝を述べる劉備。一刀もトラブルが無いとホッとしてるみたいだけど……

 

 

「それから通行料は……そうね。関羽でいいわ」

「…………え?」

「…………え?」

 

 

桃香と一刀がきょとんとしている。いや……劉備は兎も角、一刀はそろそろ大将の行動パターンを読めや。

つーか、似てるなお前等。リアクションまったく同じじゃねーか。

 

 

「何を不思議そうな顔をしているの?行商でも関所では通行料くらい払うわよ?当たり前でしょう……貴女の全軍が無事に生き延びられるのよ?もちろん、追撃に来るだろう袁紹と袁術もこちらで何とかしてあげましょう。その対価をたった一人の将で賄えるのだから……安いものだと思わない?」

 

 

むしろ関羽が手に入るなら此方としても破格な交渉って事か……確かに関羽の強さは反董卓連合の時に見たからお買い得な事なんだろう

 

 

「……桃香様」

「曹操さん、ありがとうございます……でも、ごめんなさい。愛紗ちゃんは大事な私の妹です。鈴々ちゃんも朱里ちゃんも……他のみんなも、誰一人欠けさせないための、今回の作戦なんです。だから、愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ、意味がないんです。こんな所まで来てもらったのに……本当にごめんなさい」

 

 

関羽が劉備に視線を送ったと同時に劉備は頭を下げて関羽を渡す事を拒んだ。でも、どうする気だ?他に案がないから魏の領土を通行するなんて考えをしたんだろうに。

 

 

「そう……さすが徳をもって政を成すという劉備だわ……残念ね」

「桃香様……私なら」

 

 

大将は残念そうにしてるな。そんなに関羽が欲しかったのか?……いや、この感じは……

 

 

「言ったでしょ?愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ、意味がないって。朱里ちゃん、他の経路をもう一度調べてみて。袁紹さんか袁術さんの国境あたりで、抜けられそうな道はない?」

「はい、もう一度候補を洗い直してみます!」

 

 

劉備は気持ちを切り替えたかの様に帽子を被った小さな子に指示を出している。あの子が軍師なのか?あ、大将の回りの空気が歪んで見える。気のせいじゃ……なさそうだ。

 

 

「なあ、華琳……」

「……劉備」

「……はい?」

 

 

一刀が大将に何かを言おうとしたが、それを遮って大将が劉備に話しかける。あ、これヤバイわ。そう思った俺は思わず耳を塞いだ。

 

 

「甘えるのもいい加減になさい!」

「……っ!」

 

 

スカウターが壊れんばかりの怒号が大将から発せられた。劉備陣営は勿論、此方の陣営もマジビビりする程だ。

 

 

「たった一人の将のために、全軍を犠牲にするですって?寝惚けた物言いも大概にすることね!」

「で……でも、愛紗ちゃんはそれだけ大切な人なんです!」

 

 

怖ぇー……今までで一番怖いよ大将。あ、ウチのチビッ子達が恐がって俺の服の裾、掴んでる。

 

 

「なら、その為に他の将……張飛や諸葛亮、そして生き残った兵が死んでも良いと言うの!?」

「だから今、朱里ちゃんに何とかなりそうな経路の策定を……!」

 

 

大将の言葉にも最早、ギリギリの劉備。他所の国の王様を否定したくわねーけど。大将の言うように甘いのだろう。

 

 

「それが無いから、私の領を抜けるという暴挙を思いついたのでしょう?……違うかしら?」

「………そ、それは……」

 

反論できない劉備は大将に言われるがままだ。いや、反論の余地がないのは、その場の誰もがわかっちゃいるんだが。

 

 

「諸葛亮」

「はひっ!」

 

 

大将に水を向けられた諸葛亮と呼ばれた軍師の子はビビってる……まあ、さっきまでの大将を見てれば……え、諸葛亮?この子が?

 

 

「そんな都合の良い道はあるの?」

「そ……それは……」

 

 

しどろもどろになっている諸葛亮。つまり、それは他に道が無いと言う事に他ならない。この子が孔明か……いや、見えねーなマジで。

 

 

「稟。この規模の軍が、袁紹や袁術の追跡を振り切りつつ、安全に荊州か益州に抜けられる経路に心当たりはある?大陸中を渡り歩いた貴女なら、分かるわよね?」

「はい。幾つか候補はありますが……追跡を完全に振り切れる経路はありませんし、危険な箇所が幾つもあります。我が国の精兵を基準としても、戦闘若しくは強行軍で半数は脱落するのではないかと……」

 

 

大将が稟に訪ねると稟は淡々と質問に答えた。魏と劉備軍では練度に差がありすぎて比べるのも酷か。今、俺の指導の下で鍛えてる特殊部隊なら別か。

そんな事は重々承知している孔明は俯いてしまい、最後の希望も断たれた劉備はショックを受けている。

 

 

「現実を受け止めなさい、劉備。貴女が本当に兵のためを思うなら、関羽を通行料に、私の領を安全に抜けるのが一番なのよ」

「桃香様……」

 

 

選択を迫られ、関羽に見詰められて……劉備は顔を俯いてしまう。答えが出せずにどうしたら良いのかわからないんだろうな。

 

 

「……どうしても関羽を譲る気はないの?」

「…………」

「まるで駄々っ子ね。今度は沈黙?」

 

 

もう大将の問い掛けにも答えられない劉備。長い沈黙が場を支配していた。

 

 

「はぁ……もういいわ。貴女たちと話していても埒があかない。益州でも荊州でもどこへでも行けば良い」

 

 

完全に呆れた大将が劉備に通行許可を出した。溜め息をしてまるで子供の相手なんかしたくないと言った感じの雰囲気だ。

 

 

「ただし」

「……通行料ですか?」

「当たり前でしょう……先に言っておくわ。貴女が南方を統一したとき、私は必ず貴女の国を奪いに行く。通行料の利息込みでね」

 

 

大将の言葉を聞いて流石に話の流れを読んだのか劉備が大将に問いかけ、大将は頷いた。

 

 

「そうされたくないなら、私の隙を狙ってこちらに攻めてきなさい。そこで私を殺せたなら、借金は帳消しにしてあげる」

「……そんなことは」

「ない?なら、私が滅ぼしに行ってあげるから、せいぜい良い国を作って待っていなさい。貴女はとても愛らしいから……私の側仕えにして、関羽と一緒に可愛がってあげる。一刀も純一も嬉しいでしょう?」

「え、ええっ!?」

「いや、愛らしいのは認めるが……」

 

 

わざわざ悪役に徹してるって感じだな大将。それとその手の話題を急に振らないで。一刀は動揺してるし、俺は本音をポロッと言っちまった。

 

 

「稟。劉備たちを向こう側まで案内なさい。街道の選択は任せる。劉備は一兵たりとも失いたくないようだから……なるべく安全で危険のない道にしてあげてね。純一と大河は稟の護衛よ」

「はっ」

「了解」

「は、はいッス」

 

 

大将の言葉にそれぞれ返事をする俺達。このまま劉備達と一緒に行こうとすると警備隊の面々や兵士達が俺の所に来た。何事よ?

 

 

「副長!相手は他国の王や武将です!」「どうか自重を」「新入り、副長を見張ってろよ」

「おい、待てやコラ」

 

 

口々に俺が蜀の皆さんに手を出さないようにと言ってくる兵士達。俺が劉備に手を出すと?

 

 

「お前等……俺をなんだと思ってる?」

「「種馬兄」」

 

 

一糸乱れず言ってくる兵士達。OK.皆殺しの時間だ。

 

 

「纏めて吹っ飛ばしてやる……フィンガーフレア……」

「馬鹿やってないで、さっさっと行きなさい」

 

 

俺が気の塊を指先に集めた所で大将に中断された。くそう、国に戻ったら覚えてろよテメェ等……

 

この後、俺と大河は稟の案内の下、劉備達の先導をする事になった。

やれやれ……ってアレ?

確か三国志で、この場面って関羽が魏に一時的に行く話じゃなかったっけ?まさかまた俺や一刀の知る歴史から外れた話になってるのか……そんな事を思いながら俺は煙管に火を灯した。

 

 




『スカウター』
ドラゴンボールで使用されている装置で離れた位置の、ある程度強い戦闘力反応をレーダーのように表示する機能や、強い戦闘力反応の出現・接近を警告する機能を持っている。
桁外れの戦闘力を持つ者をスキャンすると、スカウターに負荷がかかりすぎて爆発してしまう


『フィンガーフレアボムズ』
ダイの大冒険の敵キャラ、氷炎将軍フレイザードの持ち技。漢字表記は「五指爆炎弾」
5本の指から1つずつメラゾーマ相当の炎を放つ。同じ相手に放つ、分散させて複数の相手に放つ事も可能。








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