艦隊これくしょん ―望郷― 戦艦娘『穂高』の戦い   作:月奏

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第六話 タウイタウイ鎮守府の変な面々 後編

 ――――約一〇分後。

 

「すいませんでした」

 

 と、待機室の真ん中に騒ぎを起こした少女が見事な土下座の姿勢を作り、全身を震わせながら謝罪していた。

 その姿に穂高は何とも言えない感情を抱く。少し前まで暴れる彼女を取り押さえるのに散々手こずらされてしまいあと少しで刀を抜きかねなかった。そうならなったのは、大鳳と五百島をはじめにこの部屋にいた面々総出で押さえたからであった。

 この証拠に、立派な机に槍の先端が包んでいたカバーを突き破って刺さっていた。五百島の格闘技で弾き飛ばした拍子に宙に舞い結果こうなったのだ。照明からの明かりに反射し何かを切り裂きそうな雰囲気を醸し出しそうなそれを見て、よくもまあけが人が出なかったなと安堵した。

 騒動を収めた功労者の一人である五百島は、もし机を修理することになったときの費用は貴方の給料で天引くからと大鳳に言われてしまい、部屋の端でしょぼくれていた。

 もう一人の功労者である大鳳は鬼の形相を浮かべて雷を落としている。読書の邪魔をしたことは確かにこちら側の非であったが、武器を振り回して追いかけるのは明らかにやりすぎであった。もしけが人を出していたら、叱責だけでは済まなかっただろう。

 

「まったく胆を冷やしたわ……こんな騒ぎは二度としないでちょうだい。本当に、本当に」

 

 口から出る声は底から響くような低さでとても怖いものであった。今の大鳳の怒りが一目で分かる迫力が全身から出ていた。その迫力に恐れおののいたのか穂高は無意識に後ろに一、二歩下がってしまう。恐るべきと思うしかなかった。

 

「大鳳さん、相当怒っていますね」

 

 いつの間に穂高の後ろにいた五百島が呟く。ちょっとだけびっくりした。顔を向けると五百島がニッコリと笑顔を浮かべていた。大鳳に言われたことに気にしていないように見えた。さっきまでいじけていたのに本当に感情の移り変わりが早いなと思った。

 

(居眠りしたり、泣き目になったり、物騒な顔になったり、慌ててたり、落ち込んでいたり、笑っていたり、感情豊かと言えばいいのかもしれないが不思議な感じがする奴……)

 

 そんなことを心中で呟いてしまう。

 まあ、それが彼女の良いところかもしれない――そんなことをふと考えてしまう。

 こんな彼女だから戦隊の旗艦を任されているのかもしれないなと自分から見ても実に変なものだと感じる納得を得てしまう。

 五百島の人物評は今別にいい。彼女の呟きにあった“掃討”という単語が気になったのだ。

 穂高は五百島に問う。少し前までは引け目を感じていたが今では払拭されてしまい、少し気軽に話しかけることができた。

 

「どれだけの怒り具合なのだ?」

「本気の一歩手前ですかね。この人、あることをしなければマジ切れをしませんから、だからこの鎮守府では一番怒らせたらいけない人だとみんなから言われています」

 

 前々から思っていたのだが大鳳は怒らせない方がいいらしい。提督と話していたときに航空機など大したことはない主旨の発言をしたら怖い目をして睨み付けられたことを思い出し、なるべく気をつけた方がいいようだ。

 うん!? と穂高は疑問を抱く。

 ある単語が意味不明だったからだ。

 

「マジ切れ?」

「本気で怒っているって意味ですよ。今の言葉ですよ」

 

 今の言葉――いわゆる現在語っていうものらしい。隔世の感というものを感じてしまう。

 

「そうなんですか……言葉も色々と変わっていますね」

「その通りです。最初の頃は色々と面喰いましたよ。例えばこれ」

 

 五百島が差し出した片手は黒い物体をに握っていた。長方形の表面、厚みは薄いものであった。

 表面が光った。

 何かがそこで表示されていた。

 びっくりしたと言わんばかりの穂高はそれをまじまじと見つめながら問いかけた。

 

「……何ですか? かまぼこの板みたいな黒い物体は?」

「スマホ、正式名称スマートフォン、情報携帯端末の一種ですよ。簡単にいれば通信機です」

「えっ、これが!? とても小さいですね。本当なんですか?」

 

 信じられなかった。当時の電話などのごつくて重くて、とてもじゃないが気楽に持ち運びすることができる代物ではなかった。

 苦笑した五百島がまあ気持ちは分かりますかねと呟いた。  

 

「私も最初信じられませんでしたけど……本当のことなんですよ。一昔前は地球の裏でも電話することやメールを送ることができたらしいですよ」

「正直信じらませんね……メールって何ですか?」

 

 その問いに対し、五百島はまるで嘗ての通った自分の姿を思い出しているかのようにうんうんと頷いて答える。今の私のように誰かに質問攻めをしたのだろうか? と穂高はふと思う。

 

「そうだよね、初めて聞く単語だよね。これによって高速に届く手紙だと思えばいいわ」

「……」

 

 訳も分からなくなり、穂高は硬直した表情を五百島に向ける。顔色は煮えたぎっている真っ赤となっていた。

 

「大丈夫、今にも沸騰しそうな顔をしているけど?」

「問題はありません。少し混乱して……」

「そうね。当たり前のことですよね。少しずつ慣れていけばいいんです。私も今じゃこれを操作できるようになりましたから」

 

 そう言いながら呼吸するかのように気軽にスマホを操作している五百島を見て、穂高はすごいと彼女を尊敬してしまう。覚えれば簡単なのかもしれないが、操作の仕方を完全に覚えられる自信がなかった穂高にとって今に適応した彼女は見習うべき先輩となっていた。

 

「すごいですね……」

 

 と穂高の口から漏れ出た言葉には明らかに敬意が込められていた。

 これを言い終えると、大鳳の説教が終わった。 

 

「今回はそれぐらいにしておくけど、今度同じ騒ぎを起こしたら貴方の相棒を没収するから」

 

 最後にきつい釘を刺した。言われた本人はこれは勘弁して下さい。もう二度としませんからと頭を何度も下げる。

 気の毒さを誘うその姿に、ひどい目に遭わせられたが流石に哀れだ――ついつい同情してしまう。

 私も甘いなと思いながら助け舟を出そうと、未だ睨んでいる大鳳に話しかけた。

 

「終わりましたか」

「ええ……何か質問?」

 

 大鳳の問いかけに、穂高は迷いなく答えた。

 

「はい、この艦いやこの人は誰でしょうか?」

「彼女は……私が説明するより本人に言わせた方がいいかも、自己紹介しなさい」

 

 名誉挽回の機会をあげると言わんばかりの口調で大鳳が言うと、言われた彼女は生気を取り戻し土下座の姿勢を解いて立ち上がり、直立不動の姿勢を取って紹介を始めた。

 

「丁型駆逐艦……松型駆逐艦一番艦『松』です。第四三駆逐隊の嚮導艦を担っています」

 

 いい終えると、生真面目の表情から変わって人懐っこい笑みを松というおかっぱ頭の少女は浮かべた。彼女は、戦時中に利用されいてた国民服に似たカーキ色のトップスとズボンなどの服を着ている。一見すると地味であったが、それが笑みをより一層引き立たせた。松の形をした髪留めが髪に付けられていた。

 続けて、松の傍におり彼女と同じ服装をした艦娘たちが自主的に自己紹介を行い始めた。

 

「二番艦『竹』よ。第四三駆逐隊の副嚮導を任されているわ」

 

 自らを竹と呼んだ三つ編みの少女は常に睨んでいるような鋭い目を穂高に向けながら言い。

 

「三番艦『梅』だよー。対潜部隊である第四三駆逐隊の一員として日々頑張っているよー」

 

 その次に、自分はこういう名前だよと言わんばかりに梅と発言したアホ毛が目立つショートカットの少女は無邪気な笑みを浮かべて言う

 

「四番艦『桃』……梅の補足だけど、この駆逐隊は潜水型の深海棲艦の掃討だけではなくて船団の護衛や輸送任務もやっているよ。対潜、対空、輸送は松型の得意技さ」

 

 最後に、簡潔に自分の名前は桃と呼んだ無表情の少女は冷静沈着に淡々と述べる。

 松、竹、梅、桃……それらは樹木の名前だ。なので穂高はある言葉がポツリと口から出た。 

 

「雑木林」

 

 すると空気が一変する。松型駆逐艦たちは急に沈黙してしまう。

 

「えっ」

 

 困惑した穂高は呆けた声を出す。 

 

「あちゃあ。やってしまいましたね、穂高さん」

 

 五百島の何とも言えない声に、何をやっちまったの? 内心で問いかけた。

 

「迂闊だったわ。先に説明しておけば良かったわね……」

 

 ため息をつく大鳳に、どういうことと疑問を抱き声にする。

 

「えっ、どういう意味なのですか?」

 

 穂高のこの声は松型駆逐艦たちの叫びによってかき消される。

 

「雑木林って言うな――――!!」

 

 ハモっていた力強い拒絶の声と言葉。雑木林に対し強い憎しみを抱いているのを感じられた。

 その迫力に、穂高は後ずさりしてしまう。

 松型駆逐艦の四人はそれぞれに主張し始める。

 

「性能低くても軽く見ないで下さい。確かに私たち松型駆逐艦はソロモンで消耗した駆逐艦を補充するために生まれましたが、私は連合艦隊が壊滅した後の輸送作戦でアメ公の駆逐艦一隻を沈めて敵を撃退し帝国海軍にささやかな勝利を捧げました」

 

 と言いながら、自分自身に松型駆逐艦であることに誇りを抱いていることが分かる真摯な表情である竹。

 

「わたしだって、殿として追撃してきた巡洋艦四隻駆逐艦一二隻の攻撃に一歩も引かずに戦って、最終的には沈んだけど……第四号海防艦と旗風を逃がすことができた。戦時量産型駆逐艦でもやるときはやるんだ!!」

 

 両手を挙げて、心底立腹しているのが分かる表情を浮かべて叫ぶ松。

 

「えーと、に自慢できるところがあったかな? えーい、ヤンキーの潜水艦や艦載機や爆撃機に狙われ追いかけられた最も苦しい末期を戦い抜いたんだ……舐めるな」

 

 飄々とした声を出しながらも最後に強い意志を発した梅。

 

 

「……」

 

 無言でありながらも、穂高を睨み付ける視線がとても怖い桃。

 

「えっ、えっ」

 

 四人いや四隻の怒気と意思に、穂高は翻弄されずばかりであった。無意識に後ずさりを繰り返していくうちに転んでしまい尻餅をついた。

 最終的に敗北したものの途中まで互角の戦いを栄えある八八艦隊の一員である伊吹型の三番艦で、敵の戦艦と航空機の攻撃に一歩も引かず常に最前線で立ち続けたが(わたし)が駆逐艦しかも戦時量産型に圧倒されて尻餅をつくとは、とても情けなくて泣きたくなった。

 人の姿になってから弱くなったような気がしてしまう。それもあるかもしれない。しかし大半は彼女たちの気迫に圧倒されてのことであった。彼女たちの目には、自分たちも大日本帝国海軍……大日本帝国を支え続けたと強く主張しているように思えた。

 彼女たちが経験した“戦争”がどういったものかは分からない。自分がいた世界の“戦争”では松型駆逐艦という戦時量産型駆逐艦は存在していないためだ。確かにソロモンなどの南太平洋で多数の駆逐艦が消耗したが、その消耗の穴埋めには、量産を重視した駆逐艦ではなく航空機用のエンジンを搭載した高速魚雷艇が開発され空母一隻を雷撃艇母艦として潰したことでこの兵器を艦隊決戦に投入させたのであった。

 このため、穂高は彼女の基準での史実に存在しない駆逐艦たちの主張に困惑していた。だけれども、発言と気迫からただの駆逐艦であった頃に壮絶な経験をしていたのは確かなことであった。 

 

「穂高貴方……彼女たち松型駆逐艦の禁句に触れちゃったわね。さっさと謝りなさい。そして、貴方たちも落ち着きなさい、ほら」

 

 大鳳が助け舟を出す。

 それにつられて穂高は頭を深々と下げた。

 

「……すいません」

 

 そして誤った。

 内心では何で怒ったのだろう? 疑問が渦巻いていた。

 穂高の疑問を悟ったのか、やれやれと呟いて大鳳が答えた。 

 

「……何で怒っただろうって顔をしているわよ。松型駆逐艦に雑木林は禁句なの、それを言われると劣等感が急に湧き上がって感情を抑えることができないらしいわ。どの艦にもそういう禁句があるから気をつけてね」

 

 その言葉に得心した。

 自分にも言われたら我慢することができない禁句と呼べる言葉は確かにある。例えば、敵であるアメリカで言われていた、ローマ条約違反の卑怯な騙し討ちの艦や卑怯な艦――――それを言われたら我慢できずに騙される方が悪いと叫んで暴力を振るってしまう妙な確信があった。

 誰だって言われたら我慢できないこと、言葉が存在するものだ。自分は無意識に触れてはいけないものを触れてしまったのだ。実に迂闊だ。しかし誰かに言われなければ気づかなかった、厄介この上ないと人付き合いという鉄の塊であった頃は無縁であったが今ではとても重要なものとなった物事の難しさを痛感する。

 

(劣等感か……)

 

 その気持ちも分かる気がした。

 マリアナ沖の航空戦が惨敗しマリアナ諸島の陥落が確実なものになって以降、孤立を恐れて夜の闇に紛れて脱出したことをきっかけに自分の艦生はみじめなものになってしまった。敵から逃げまどい、砲撃や空襲に怯えて、負った傷は敵の妨害によってなかなか直せず、共に所属していた仲間は自分を置いて次々と散っていった。思い出すと敵に対して憎しみを抱くのは当たり前として、同時に圧倒的な力を持ち自由に動き回っている敵に対して羨望と劣等感を抱いてしまう。

 二つのことを考えるうちに、目の前にいる彼女たちにひどいことをしてしまったと罪悪感がこみ上げてきた。

 

「えっ!?」

「何をやっているんですか!?」

 

 無意識に体が動いていた。

 松と竹の困惑の声が聞こえてくる。

 穂高は土下座の格好を取り、静かに頭を下げていた。

 

「これは完全に私に非がありました。謝罪します……ごめんなさい」

 

 室内に気まずい空気が漂った。

 やりすぎたと思うが、そうでもしなければ気が済まなかった。

 

「それまで謝れると……どう言えば」

「うわー凄いや」

 

 いきなり、奇襲ともいえる謝罪に困惑の声を出す松型駆逐艦。

 お互いにどうすればいいのか何を答えれればいいのか分からず黙りこくってしまった。

 そこで両者の間に入った五百島が口を開く。

 

「はい、はい、この件はここまで。貴方達、穂高さんもいいですね」

 

 皆頷いた。場の緊張が緩和されていく。

 

「本来なら私がやるべきなのだけれど……まあいいわ」

 

 苦笑いをして大鳳は言う。

 安心し安堵のため息を口から吐き出そうとした瞬間――――。

 

「驚いた。簡単に謝るんで戦艦娘って妙にプライドが高いイメージを勝手に持っていたのだけれど……」

「それは人いや艦それぞれでしょう。誰ですか、貴方は?」

 

 穂高の問い掛けに、突如話しかけたセーラー服とミニスカートを着ているお団子頭の女性は微笑みながら答える。

 

「私は護衛空母……今は対潜空母となっているが、大鷹型一番艦『大鷹(たいよう)』だ。この部隊の目と盾の要になっている。よろしく」

 

 聞き覚えのある名前だ。

 もともと仮装巡洋艦での運用された想定されていたが主に用兵側の反対により空母として改装された空母たちのなかにいた筈だ。

 低速のため艦隊に追従ことができず、飛行甲板が小さかったことが災いしてしまい艦載機をあまり積めず最新鋭の機体も運用できなかったため、ドラック諸島やマリアナ諸島の航空機輸送と船団護衛に従事していたと聞いている。確か、所属先の部隊の参謀から酷評され、大和型三番艦建造用の戦略物資を搭載した船団護衛中に潜水艦の攻撃を受けて沈んだと、連合艦隊総司令長官で過労により急死したことで連合艦隊が混乱している頃に誰かがそんなことを口にしていたことを思い出した。

 またしても一九四四年だ。自分はこの年に何かしらの因縁があるようにしか思えない。

 自分の立場から見れば地味で碌でもないと思える艦生であるが、生まれ変わった彼女はそう思わせない力強い声と笑みを浮かべていた。 

 こっちの世界では少しマトモな艦生を送ったのかな? そんなことを思いながら自己紹介を返す。

 

「戦艦穂高です。よろしくお願いします」

 

 次に握手をした。大鷹の手から力強さが伝わってきた。

 

「穂高かいい名前だ。それに力強い手をしている……」

「そうですか?」

 

 大鷹の言葉に、穂高は首をかしげた。

 

「そうだ。その手なら腰を差している刀を自由に振り回せそうだな……」

 

 日本刀を羨ましげに見る。

 

「はあ……」

 

 困ったように答えると、警報が鳴り響いた。

 松型駆逐艦、五百島、大鷹の表情が険しいものとなった。この音が任務が来たことを告げるものだということを穂高はすぐに悟った。

 

「スクランブル!! 行くよ」

「おう」

「どいて」

 

 室内に待機していた面々は立ち上がって素早く外に駆け出した。

 

「……」

 

 梅の胸を軽く叩かれ、皆が出ていく姿をただ見つめていた。

 室内に静けさを取り戻した。どれだけ賑やかな連中だったのかハッキリと分かった。

 

「これが第三護衛戦隊の面々よ。どう、印象は?」

「えらく個性的ですね……」

 

 賑やかで振り回されるばかりであった。

 

「そうね」

「ここに所属している艦娘はこれだけなのですか?」

「いえ、これだけじゃないわ。まだ他にもいるわ。それはおいおい紹介していくわ。さあ次のところに行くわよ」

 

 大鳳が走り始める。外に出ようとしていた。慌てて追従した。

 

「次はどこに行くのですか?」

「第三護衛戦隊の出撃するところ、見てみたいでしょ?」

 

 その問いかけに、ほんの少しだけ迷った後に――――。

 

「はい」

 

 と穂高は答えた。好奇心に負けた形であった。

 

 

 第三護衛戦隊の面々が次々と出撃していく。それぞれ艤装を取りつけて足元にあるスクリューを回転されて海を駆けていく。 

 

「さて、行ってさっさと終わらせるアルヨ」

 

 片手を大きく掲げて皆を鼓舞する第三護衛戦隊旗艦『五百島』は、背中に取りつけた起点艤装にある一本の煙突からモクモクと煤煙をたなびかせ、この艤装と接続し左右側面にある武装艤装にある一四センチ連装砲二基と五七ミリ単装砲二基は強い日差しが反射し輝いていた。

 

「みんな、行くよ。嚮導艦の私についてきて」

「了解、松型の力を見せてやるわ」

「は、は、は。みんな凄いやる気だね。まあ私もだけど……」

「みんな、力み過ぎて失敗しないでね」

 

 松型駆逐艦の四隻は五百島を起点として楔形の陣形を築いていた。

 皆、頭には電探や逆探用のアンテナを付け、起点艤装に接続され伸びている二つマジックアームには、右に一二.七センチ高角砲、左には四連装魚雷発射菅が保持されており、起点艤装の左右側面には三連装二五ミリ対空機銃を片側二基ずつ装着している。また松は長槍、竹はククリ刀、梅は薙刀、桃はダガーナイフを片手か両手で個人装備を持っていた。

 艤装、個人装備、自らの名を模した髪留めが輝きを纏っていた。

 

「分かっているさ。旗艦、四三駆逐隊、空は任せて気にせずに思いっきり暴れろよ」

 

 旗艦と駆逐艦たちの後方にいる大鷹は力強く宣言する。右手にスリングショット、左手に巻物を持ち、自信満々な表情を浮かべていた。

 高速に駆ける第三護衛戦隊の面々の姿が、見守っている大鳳と穂高を横切っていく。

 行くもの、見送るもの、互いに敬礼し挨拶を送る。健闘と無事を祈る。

 後ろ姿はみるみるうちに小さくなっていく。 

 

「やれやれ……実戦になるとより一層元気になるのだから……」

 

 苦笑しながら大鳳は穂高を見る。

 

「……」

 

 無言の穂高は第三護衛戦隊の海を駆ける姿を食い入るように見ていた。表情は無表情に近く何を考えているのか窺い知ることはできなかった。

 

(何を思っているのかしら?)

 

 海を自由に駆け回っているものに対する羨望か、自分も再び戦場に立ちたいと願っているのか、大鳳には分からない。

 だが一つ分かることがあった。

 恐れ知らずな彼女に分からせなければならないということであった。

 強く誓い再び海を見ると、第三護衛戦隊の面々の姿は既になく。海から吹き付けた強い風が、大鳳の茶色かかっているショートボブの黒髪に当たり後ろに流していく。

 

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