果たして私のことを覚えている方はいらっしゃるのだろうか...
既に前回から半年以上、長らくお待たせしてしまい何だかちょっぴり申し訳ない気分です。
それはひとまず置いといて、第五話“始まった同居”をお楽しみください!!
第5話 始まった同居
ピリリリ、ピリリリリリ。
日毎に学校へ行く時間が区々なため曜日設定を施した目覚ましの音がスマホから鳴り響く。
それとほぼ同時に意識が覚醒し、二度寝対策に机の上に置いたスマホを搔っ攫う。
未だに眠さが残る中、何とか起きて何時ものように廊下に出ようとする。
しかし、寝た事で暫く意識していなかった感覚が蘇ってくる。
「そういや今日から別の家だったんだな……」
静まり返った部屋に一人呟いた声が吸い込まれる。
とりあえず大して多くもない服から今日の分を抜き出して片手にリビングへと向かう。
当然の事ながらリビングはカーテンがきっちり閉じられ、真っ暗なまま。更には物音一つしない。きっと夜遅くまで起きていたせいで今も寝ているのだろう。
「本当に引き籠もりなんだなぁ〜」
正直言ってこんな当たり前な感想くらいしか出て来ない。
カーテンを開けて、朝のテレビを付けてトースターでパンを焼きながら眺める。学校までの距離が近くなり、起きる時間が変わったせいもあってか、普段と見ているニュースの構成が違って新しい生活になったんだというのを強く意識させられる。
それにしても他人の家で以外にも寛げている自分に驚きを覚える。案外、人が居ないに等しいのも理由になのかもしれない、と勝手に結論づけて早目に朝食を終え支度を進める。
朝昼晩三食もカップ麺を食べていたら健康に言い訳が無いのでパンの上にピザソース、チーズ、ハムをのせてラップを掛ける。後はスティックのコーンスープをコップと一緒に並べておく。この程度では栄養不足だろうが少なくともカップうどんやカップラーメンといった即席食料よりはましだろう。
やはり移動時間が短いと余裕ができて慌てなくてすむから良い。何より長めに睡眠時間を取れるのは大きい。まぁリビングの壁を挟んだ自室に引き蘢ってる同居人には関係無さそうではあるが……
そうこうしている間に出発の時間になる。
学校へ行く時間が何時もより遅い上に必要時間も圧倒的に短くなったためか、はたまた歩く道のせいなのか、随分と歩いている間の空気とかに違和感を覚える。
あれよあれよと言う間に引っ越して済む家が変わって、いきなり同居状態になったのだから変わるのも当然と言えば当然だろう。
学校に着けば先週と同様にちらほらと人が見えゆったりと人が行き交う廊下、ガヤガヤとした喧噪が漏れ出ている教室。
その一つに足を踏み入れ、教室端の所定の席へと向かう。
後は本を読みながらのんびりと過ごして担任が来るのを待つ。
そうすればあっという間に授業が始まる時間になる。
普段よりも寝れたのが良かったのか、授業での眠気も特になく一コマ目を終える。
「やっぱ遅い始まりだとすぐ昼飯で楽だなぁ」
「しかも午後も一コマしか取ってないからな。講義少ないの最高」
もはや自堕落にも程がある俺らの会話。だがしかし大抵の学生は似たような事を考えたことがあるだろう。まぁそれを口に出すかは別として。
「授業早めに終わったおかげで購買も学食も空いてんな〜」
「全く持って有り難い限りだな。感謝感謝だ」
学食の扉を開れば人もまばら。普段より幾分早く終わったおかげで券売機の列に並ぶ事なく昼飯を手に入れる。
多少安いのが取り柄だけの大して美味しくもない学食を食べていると昼の定期放送が始まる。
「おいおい、またお呼ばれしてんぞ。今度は何やらかしたんだよ」
「さぁな。あと俺が事案を起こしたみたいに言ってんじゃねぇよ」どうせ同居人になった引き籠もりについてだろう。報告を求めてくるのが随分と早い気はするが、それだけ学校側も困っているのだろう。
そんな風に呼び出しの事を考えながら放送で指示された通り、この前も訪れた研究室へ向かう。
「失礼します。平川です。放送の件で来ました」
ノックをしてドアを開きながら用件と名前を告げる。
すると棚の後ろからまたしてもカップを片手に、厄介事へと巻き込んだ張本人が現れる。
「さて、とりあえず座りながら話を聞こうじゃないか。君も何故呼ばれたのか良く分かっている様だしな」何とも鷹揚な態度で、少し位焦りがあるのではという思惑と違った態度に若干の違和感を覚える。
「あの後は車で家に連れてかれて、一応本人にも会いましたよ。とりあえず頑として学校に行く気が無いのは本人から確認とれました」
「分かっていたとはいえ、そこまで酷かったか......」
「全く以て取りつく島も無かったですよ。早く帰れとまで言われましたから」
すると一旦動きを止め、コーヒーカップへと手をつけてから数瞬の間が開く。
「他には何か分かったかね?多少なりとも何かあったと思うのだが」
何かを探りながら確かめるように聞いてくる。進歩と言うかなんと言うかはあったがあれは簡単に人に話せる内容では無い。そこでそれっぽくでっち上げるべく口を開く。
「......とりあえずは様子見、と言う事くらいですかね」
多少事実を省いたりしてはいるが、実際様子見である事は確かだし間違った事を言っている訳ではないので納得してもらえるだろう。
正直深く考えて言った訳ではないが、上手い言葉が出て来たものだと自分でも思う。
「何とかなると良いが……まぁ、向こうと何やらあるようだしまた今度聞こうじゃないか」そう言って含みのありそうな悪い笑顔を浮かべていた。
「随分悪そうな顔してますけど、これ以上巻き込まないでくださいね。面倒事は遠慮したいですから」そう言って釘を刺しておく。
「ハッハッハ。まぁ大丈夫だとは思うよ。いずれにせよ、君の腕に掛かっているのだから頑張ってくれたまえ」
驚く程模範的な悪役じみた返答にこちらとしては微妙な表情を浮かべる他無い。そろそろ授業だと言う声に考え事を中断。時計を見れば残り数分で授業開始にまでなっていた。遅刻を回避すべく挨拶もそこそこに部屋を抜け出して教室へと戻る。
この日最後の講義を終えてさっさと帰り支度を整え、教室を後にする。夕方までは鶴崎さんが日本に居るそうで、レポートに再レポートに本呼んでゴロゴロするというプランをたて、マンションの近くに見つけてあった大型の本屋に寄り道してから帰る。
何時になっても慣れそうにない高級そうなエントランスを抜けてエレベーターに乗る。
「ただいまです」
何とも他人の家である意識が抜けないため、何とも違和感が拭えないがきっとそのうち慣れるんだろう。
「お帰りなさいませ。お迎えにもあがらず申し訳ありません」
「いえいえ。そもそも送迎とか必要な距離じゃないですし」
「それならば良いのですが……」
どうにも腑に落ちていないような表情のまま作業に戻っていく。そんな鶴崎さんを横目に部屋へと戻り、バッグを降ろしてパソコンを立ち上げてから手を洗いに洗面所へと向かう。
「もう10分程で出来上がりますのでしばしお待ち下さい」
「タイミングいいですね。もしかして帰る時間分かってましたか」
「そんなまさか。たまたまですよ」
そう言いながらどんどんと慣れた手付きで料理を進めて行く。
某民営化された放送局のニュースを眺めながら出来上がりを待つ。
「お嬢様、夕飯が出来ましたのでお越し下さい」
そんな声が聞こえたので横を見るともう既に食事の準備が整っていた。
この人一体どんなスペックしてるんだろうか。不思議すぎる。
「ん。今日も美味しそう。流石」
そしてご飯と聞いてするすると部屋から抜けるように出て来た引き籠もり少女。
「恐縮です。それでは食べるとしましょうか」
「そう言えば」
「何でしょうか、お嬢様」
「今日......向こうに行くんだよね」
「はい。この後空港に出発いたします」
「そう……」
「お二人ともお気をつけてお過ごし下さい」
こうして普通じゃない生活が始まった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
少し文量が足りないかな?何か物足りないな、と思いましたが一旦ここで区切ります。次回は新章の予定。
ほとんどの方が私のことを忘れているとは思いますが...
もし、私のことを忘れてないぞ!続き待ってたぞ!と言う方がいらっしゃいましたら是非ともご一報ください!!
あと、観想ください!!