オタクな専門学生のとんでもな青春   作:柚野鈴

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どうも超絶お久しぶりです。ゆずりん改め柚野鈴です。

果たして覚えている方はいらっしゃるかどうかは分かりませんが、この作品はまだ生きています。

覚えてない方は1話毎はさして長くないので読み返しましょう!
そして覚えてるぞ!と言う方は大変お待たせしました。

てなわけで第6話、近くて遠い距離をどうぞ!


第6話 近くて遠い距離

「まじむりぃ。レポートまじむりぃ、もうやだお家帰る~」

「分かる。考察8個は舐め腐っとる」

「は?8個もあんの?マジ?レポート通ったらよこせ下さい」

「丸ぱくすんなよ……」

「当たり前なんだよなぁ~……」

「おっけ、取り敢えず手順まで書いたから俺は帰るぞ」

「う~っす……お疲れ~」

「うい……」

 

 50人は軽く入れるPCルームを後にしてそそくさと帰途に着く。誰かと帰れば普段と違う道のせいで面倒なことになると思うのは思い過ごしじゃないだろう。

 高3相当と言えば、まだまだガキが多少マシになった程度のやつだってゴロゴロ居る。そんなのに騒がれたら面倒どころか超絶うざったいこと請け合いだ。

 まぁ、そういうやつは芯がないと相場が決まっている。残念ながら思いっきりブーメランなせいでこっちもうんざりするが。

 ちょうどホームの反対側でバカ騒ぎしてる3人組のように。しかし、そんな彼らも大きな走行音をたてながら滑り込んできた列車に乗れば一瞬で視界の外だった。

 

 

 

 いつも行動パターンが同じあいつはなあなあな態度と、のらりくらりとした行動で3年半ちょっとを過ごせているだけに何とも言い難い。正直白黒はっきりしたり無意味な自己顕示やらをするような歳はとっくに過ぎてるだけに何とも言い難いのだ。

 その点同居人となった彼女はどうなのだろうと考えてしまう。留年もせず、成績も悪くないどころか上位3割近くを維持しているのだから不思議なものだ。授業をロクに聞かなくてもある程度点数が取れているのだからそれすなわち天性の才なのだろう。こんな風にいつになく真面目でお堅い事を考えていたらあっという間に最寄り駅まで着いてしまった。

 

 今朝と一転して夕暮れに染まる道をなぞるようにして歩を進める。コンビニのある大通りを曲がって路地へと入り新居へと近づいていく。

 シンとして柔らかな絨毯のしかれたエントランスにまだ慣れそうにないなとか思ってしまう。静かなまま上へ上へと昇るエレベーターですら引っ掛かりを覚えてしまう。

 やや重厚な扉を開ければ奥から明かりが漏れ入る玄関。どうやら部屋から出てリビングで何やら作業しているようだった。

 

 煌々と灯るスタンドライトに照らされながらキャンバスを前にしている小さな背中。奥を覗いてみれば灰色をした茶碗と籠のような花瓶に活けられた数本の草花。

 作業着を着て黙々と筆を走らせる彼女の後ろ姿は煌々と灯る照明のせいか眩しく見えた。

 

 作業の邪魔をする趣味は無いので極力音をたてないように自室へかばんを放り込み、汗を流そうと風呂を入れる。夏真っ盛りなせいで日が落ちても蒸し暑くて応える。少しばかり部屋の整理をして風呂を済ませ、適当なTシャツと短パンを着て脱衣所を出る。

 

 こちらに気づいているのか分からない彼女は作業の手を止めてはいなかった。

「今から飯作るから」

「ん……お風呂入ってくる」

 

 たった一言で人間的な活動を始めた彼女。腕まくりをした袖口や結わえられた後ろ髪の隙間から覗く、白くて細くて滑らかな肌が目に映る。ほのかに紅潮して若干の湿り気が分かるほど近くをすれ違う。少しほっそりとした眼もとは狐のようで、女子としては平均くらい、それでもやはり自分より小柄な彼女は何処か子犬を思わせた。

 そして何より、健康的な男子には少々目の毒だった。

 カラカラと脱衣所の戸を開けて姿が消える。その後ろ姿は浮世離れした可憐な天使のようでいて、不思議と甘く感じる何かを漂わせていた。

 

 冷蔵庫のチルド室やら野菜室何かを覗いて適当な食材を見繕う。さして料理が上手なわけでは無いが、殆ど一人暮らしに近かったせいで一応作れる程度。そもそも男の一人料理なんて炒め物ばかりでレパートリーなんぞ無いに等しい。

 ガスではなくIH調理器に大変な有難みを感じつつ炒め物をしながら味噌汁を作り上げていく。調味料も驚くほど豊富で、棚を開ければ塩コショウは勿論香辛料の類いまで置いてあり、かなり食に拘っていたのがうかがえる。

 しかし何故カサゴが捌かれて丸々入っていたのか不思議でしょうがない。釣りが趣味だったりするんだろうか。しかもそれを綺麗な三枚おろしにした上で、日付までメモされている事には驚かされる。あの人は一体何者なのか……。

 閑話休題。カサゴはぶつ切りにして味噌汁と煮つけへ。適当な野菜たちは炒め物と煮つけのお供にする。まさに圧力鍋と火力の高いIH調理器様様である。

 

 

 30分程経った頃か。最後の仕上げをチマチマとしながらテーブルを拭いたりなんだりしているとカラカラと音がする。パタパタと小さく音を響かせながら出てきた彼女はワンサイズ大きな紺のTシャツとウエスト調節用の紐と膝頭が見え隠れする麻の短パン。

 正直こっちの事などアウトオブ眼中なレベル。良いのか悪いのか……湯冷めして風邪をひかないことを祈るほかない。

 フラフラとテレビの前までやってきてニュースをつけたようで、料理の音で不鮮明ながらアナウンサーの声が聞こえてくる。準備のペースを上げながら盛り付けをしたり、一応形だけでも片付けを進めておく。

 

 出来上がった料理を二人分ざっと盛り付けて並べていくと、硬かった表情が僅かに緩んだように見えたがそれも一瞬の出来事。一点を見つめたまま小さく手を合わせて箸を取って食べ始めた。

 つられるようにして手を合わせ、食べ始めた。

 

 そこからは終始無言。淡々としたアナウンサーの声が流れ続け、時折食器が音をたてるそこは椅子の座りが悪く、さして大きくないテーブルが妙に広く感じた。

 

 

 




読了ありがとうございました!!

ん~今回も何だか短い気がしないでもないですが…。まぁ、良いでしょう。
この次はいつ出るか相変わらず未定も未定ですが、少し時系列が飛ぶ予定です。何より無言の二人を書き続けても何だか面白みに欠けますからね(苦笑)
これからは数話分も沈黙を続けている彼女が遂に!?

それでは次回作をお楽しみに!!


…とまぁ次回予告はこれくらいにして、本当にこの作品をお読みいただき、ありがとうございます!!
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