以後、よろしくお願いします。
序章
二十二世紀も半ばに差し掛かった頃、世界には魔術というものがあった。
ほんの百年前くらいには、それは、人々の間で騒がれている程度のものだった。
しかし、二十一世紀の後期にヒトゲノムが解析されたことにより、人々は、人間に新たな能力をもたらさんとした。
その結果、人間には”魔力”と呼ばれるものが身についた。
魔力を持った人間は、それを用いて”魔術”と呼ばれる超常現象を引き起こし、世界に魔術の存在を知らしめた。
それが、もう少しで二十二世紀になろうかという時だった。
二十二世紀になると、国が魔術を使える者を自国の戦力にしようとする動きがあった。
日本で言えば、陸上自衛隊に新しく
他の国でも、戦力に魔術を使える者を加えていく動きが起こり、次第に魔術を使える者達は”魔導士”として周知されていった。
二十二世紀半ばの今、魔導士は陸上自衛隊十五万人のうち、千人ほどしかおらず、稀有な戦力として認識されている。
そんな魔導科の中に、ある一人の男がいた。
その男は、他の魔導士のように黒色のローブを羽織り、その裾をはためかせながら、基地庁舎を歩いていた。
ボサボサの黒い短髪や、それほど高いわけでもない身長からは、どこか少年のような雰囲気が漂っている。
その男は、”大隊本部”とかかれた部屋の前で立ち止まり、一度軽く深呼吸をすると、その部屋の扉をノックした。
「失礼します。」
大隊本部室の扉をノックして、その扉をくぐる。
その先には、白髪混じりの頭に、陸上自衛隊の制服である深緑色の服に身を包んでいる男がいた。
その制服の肩には二本線と星二つの徽章が付いていることから、階級がかなり上であることが伺えた。
「おお、君が今日からこっちに異動になった青木君か。」
そう言って目の前の人物が腰をあげると、その目線は俺より上になる。
身長は一八〇センチ後半くらいだろうか、日本人にしては、背の高い部類に入ると思う。
「はい。本日付けでこちらに配属になった、青木一等陸曹です。」
返事をして、敬礼をする。
目の前の人物も、それに倣って返礼する。
「第三大隊長、二等陸佐の上原だ。これからよろしく頼む。」
年は三十路を過ぎたくらいだが、白髪混じりと彼から発せられる貫禄が、もう少し歳上のような錯覚を与える。
「はい。よろしくお願いします。」
返答して、姿勢を正す。
「ああ。それでは、早速だが、今日から君が配属されることになる第二魔導分隊の面々と合流してくれ。」
「了解しました。」
上原二佐から地図を受け取り、大隊本部室を後にする。
「キミが、今日からうちの部隊に来る魔導士クン?」
大隊本部室を出たところで、横から女性の声がした。
声のする方を向いてみると、俺に向き合って微笑んでいる女性がいる。
その女性は、黒地に深い青で縁取られたベストに、同じデザインの短めのプリーツスカートを履いており、短いスカートに対して、露出した足を隠すように、黒色の膝上まである丈長の靴下を履いていた。
そして、その上から、同じく黒地に深い青の縁取りがしてあるローブを羽織り、腰まで届くくらい長い銀糸のような髪を彼女が羽織っているローブの上に垂らしていた。
肌は白いローブに負けないくらい白く透き通っていて、身長は俺と同じか、少し上くらいだ。
「本日付けで、第二魔導分隊に配属になった青木です。」
目の前の女性の正体はわからないが、恐らく自分が新しく配属される分隊の人だろうと予想し、自己紹介をする。
「あー…私、そういう堅苦しいの苦手なんだよねー…」
女性は、頰を掻きながら、居心地悪そうに目をさまよわせている。
「まー、いーや。私は、
そう言って、目の前の女性ー稲田さんーは、右手を差し出してきた。
「ああ、よろしくおねがします…稲田さん。」
右手を握り返すと、稲田さんは渋い表情になって俺を見る。
「あー、もー、まだ堅いなぁ…敬語はなし、苗字じゃなくて下の名前で呼んでね。うちの分隊員はみんなそうしてるから。」
…なんか変わった人だなぁ…恐らく俺の上官にあたる人なんだろうけど、彼女の態度や、身長が近いせいか、同年代の友達ができたように感じる。
「ああ…わかりま…わかった。いな…紺…さん。」
「んー…さん付けならギリギリ良しとしよう。付いてきて、うちの分隊に案内するからさ。」
そう言うと紺さんは踵を返し、廊下を歩いていった。
俺は、その後を追って、歩いていった。
個人的には、魔術も機械もどっちも好きなんです。
実は前作が失踪した原因は魔術が出せない流れになったからだったり…