桜火と京介についての描写ができてないなーと思ったり。
「はぁー…負けた…」
演習場に倒れ伏しながら、空を見上げて
勝てそうな勝負だっただけに、悔しさが大きい。
「確かに俺は勝ったが、お前が最後に見せたのには肝が冷えたぞ。」
未だ地面から生えたままの土の腕を見やりながら、京介が驚嘆交じりに話す。
「あれはどうやっているんだ?」
だがそれよりも目の前の疑問が勝ったようで、俺に尋ねる。
「ああ、錬金術ってあるだろう?
錬金術。京介の力の正体が風ならば、俺の力の正体は錬金術だ。
錬金術とは、数ある魔術の体系の中で、その一角をなしているものだ。
その本質とは、物質を変質させることで、そういう意味では、最後に見せた土の腕が最も錬金術らしいだろう。
しかし、すべての魔術に共通してある真理とは、己の妄想を魔力を介して世界に投影し、その結果超常現象が起こるという点だ。
そのため、魔導師何万人といれど、同じ魔術を使うものは誰一人としていない。
見た目上は似ていても、その本質は全く違うことが多いのだ。
「錬金術でここまで戦えるものなのね…」
紺が驚くのも無理は不思議ではない。
なぜなら、一般的に錬金術と呼ばれるものはどちらかといえば後衛で、道具の作成にあたっていることが多いからだ。
それ故に、俺は錬金術を戦闘のために形を変えた。
例えば、多くの錬金術は、物質を一度元素まで分解し、それを再構成することで新たな物質を作る。
しかし俺は、元素まで出なく、ある程度の大きさと形を残したまま分解し、持ち運ぶことで、物質を再構成する時間を短縮し、複数の武器の使い分けを可能にした。
それが俺の、俺だけの錬金術の正体だ。
「それじゃあ、龍司の実力も見れたことだし、部屋に戻りましょうか。」
紺の音頭で、俺たちは自分たちの部屋へと戻っていく。
しかし、疲れからか、それとも敗北によるショックからか、俺の足取りは重かった。
部屋に戻ると、やっとゆっくり腰を落ち着けられる時間が来る。
すでに陽は落ちかけ、空は赤く染まっていたが、ようやく休める時間ができたのだ。
この庁舎に移動してきて以来、新たな分隊員に会ったり、全力での魔術の行使をしたりと、時間がなかったため、この第二魔導分隊にあてがわれた部屋で過ごすのは、今が初めてだったりする。
部屋にはベッドが四床あって、部屋の角には、映像を空間に投影するための機械が据え置かれている。
そして、この部屋はベッドを四床置いたとしても個人の机やロッカーを置いても空間が余るほどの広さがある。
また、この部屋四人部屋のため、部屋をカーテンで四つに区切ることができるようになっており、普段は部屋の中央でカーテンを引いて、扉側は男性、窓側は女性が使っているらしい。
試しにカーテンを引いてみると、元々の部屋の広さのおかげか、それ程狭くは感じなかった。
その後も、部屋で談笑したり、夕食を食べに行ったりとして、一日を過ごし、やがて夜の消灯時刻になる。
消灯前の点呼を済ませれば、翌日の任務に備えて眠るだけだ。
ベッドの上で横になっていると、一日の疲れを癒す心地良い微睡みに体を包まれる。
そして、意識が闇の中へと吸い込まれ、体の感覚がなくなる。
それは人が寝るということで、その瞬間は何も感じることはない。
…迫り来る闇さえをも、感じることはない。
また今回もダメだったよ。
ごめんね、京介。桜火。
きっと次回は君たちについて書くから。