魔導士達の英雄譚   作:鈴木龍

4 / 11
第四話です。
桜火と京介についての描写ができてないなーと思ったり。


日常

「はぁー…負けた…」

演習場に倒れ伏しながら、空を見上げて独り言つ(ひとりごつ)

勝てそうな勝負だっただけに、悔しさが大きい。

「確かに俺は勝ったが、お前が最後に見せたのには肝が冷えたぞ。」

未だ地面から生えたままの土の腕を見やりながら、京介が驚嘆交じりに話す。

「あれはどうやっているんだ?」

だがそれよりも目の前の疑問が勝ったようで、俺に尋ねる。

「ああ、錬金術ってあるだろう?付呪(エンチャント)も、俺の銃も、さっきの腕も、錬金術の応用なんだ。」

錬金術。京介の力の正体が風ならば、俺の力の正体は錬金術だ。

錬金術とは、数ある魔術の体系の中で、その一角をなしているものだ。

その本質とは、物質を変質させることで、そういう意味では、最後に見せた土の腕が最も錬金術らしいだろう。

しかし、すべての魔術に共通してある真理とは、己の妄想を魔力を介して世界に投影し、その結果超常現象が起こるという点だ。

そのため、魔導師何万人といれど、同じ魔術を使うものは誰一人としていない。

見た目上は似ていても、その本質は全く違うことが多いのだ。

「錬金術でここまで戦えるものなのね…」

紺が驚くのも無理は不思議ではない。

なぜなら、一般的に錬金術と呼ばれるものはどちらかといえば後衛で、道具の作成にあたっていることが多いからだ。

それ故に、俺は錬金術を戦闘のために形を変えた。

例えば、多くの錬金術は、物質を一度元素まで分解し、それを再構成することで新たな物質を作る。

しかし俺は、元素まで出なく、ある程度の大きさと形を残したまま分解し、持ち運ぶことで、物質を再構成する時間を短縮し、複数の武器の使い分けを可能にした。

それが俺の、俺だけの錬金術の正体だ。

「それじゃあ、龍司の実力も見れたことだし、部屋に戻りましょうか。」

紺の音頭で、俺たちは自分たちの部屋へと戻っていく。

しかし、疲れからか、それとも敗北によるショックからか、俺の足取りは重かった。

 

部屋に戻ると、やっとゆっくり腰を落ち着けられる時間が来る。

すでに陽は落ちかけ、空は赤く染まっていたが、ようやく休める時間ができたのだ。

この庁舎に移動してきて以来、新たな分隊員に会ったり、全力での魔術の行使をしたりと、時間がなかったため、この第二魔導分隊にあてがわれた部屋で過ごすのは、今が初めてだったりする。

部屋にはベッドが四床あって、部屋の角には、映像を空間に投影するための機械が据え置かれている。

そして、この部屋はベッドを四床置いたとしても個人の机やロッカーを置いても空間が余るほどの広さがある。

また、この部屋四人部屋のため、部屋をカーテンで四つに区切ることができるようになっており、普段は部屋の中央でカーテンを引いて、扉側は男性、窓側は女性が使っているらしい。

試しにカーテンを引いてみると、元々の部屋の広さのおかげか、それ程狭くは感じなかった。

その後も、部屋で談笑したり、夕食を食べに行ったりとして、一日を過ごし、やがて夜の消灯時刻になる。

消灯前の点呼を済ませれば、翌日の任務に備えて眠るだけだ。

ベッドの上で横になっていると、一日の疲れを癒す心地良い微睡みに体を包まれる。

そして、意識が闇の中へと吸い込まれ、体の感覚がなくなる。

それは人が寝るということで、その瞬間は何も感じることはない。

…迫り来る闇さえをも、感じることはない。




また今回もダメだったよ。
ごめんね、京介。桜火。
きっと次回は君たちについて書くから。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。