ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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あー、捗る、捗るぞう。鉄血×ドリフターズの方は全く話が浮かばないのにこっちはすごい思い付く。
やっぱり人間やりたい時にやりたいことやるのが一番ですね。(あっちがやりたくないわけではない)

それはそれとして00は10周年おめでとう。


36話:親離れと威光

ウズミは内心号泣していた。もちろん現実の顔は凄まじいまでのポーカーフェイスなのだが、心の中では娘の成長に感激しているのだ。だからこそ、少なくとも態度は鬼にして強く口論を交わす。

 

「では!お前が戦場へ行くことの必要性は!」

「確実にこちらに引き込むには粘り強い交渉と誠意が必要だと仰ったのは父上ではありませんか!」

 

カガリにそのつもりは全く無いのだが、論客としての成長が、紡がれる言葉の一つ一つが、ウズミの心に凄まじいまでの打撃を与えている。親とは、子に教えたことは本当に正しいだろうか?そう疑問に思いつつも自分の正しさを教えるために時には叱り、時には褒め、子供と共に成長していくものだ。

そして今、自身の教えが子供に理解され、その素晴らしい成長ぶりを示している。これが親にとっての喜びでなくてなんなのか?

心中は親として思い残すこと無しと灰に成りかけているが、そこはどうにか辛抱して話を続ける。

 

「なるほど、確かに私はそう教えた。国へのメリットの還元、戦場という一つの場所を目で見て治世に活かしたいという主張は正しい。だが、私もこの国の元首であると共に一人の親でもあるのだよ」

 

そう来るとは思っていなかった。いつも口を酸っぱくして国のために、と言っていた父が、私も一人の親だという。確かに、愛されていたと思う。でもなんという皮肉だろう。親不孝をしなければならないときに、親から言葉で大切だと言われるとは。

しかし、此所で引くわけにはいかない。キラをカガリの近衛としたりモルゲンレーテと提携、連合からの引き抜きには父の力が必要なのだ。

 

「父上がそう仰るのなら、私からも言うことが有ります。私は、あいつと一緒にいたい。私は・・・一人の人間としてあいつと一緒に・・・いや、そうか、私はあいつのことを」

 

ウズミは、大きくため息をついた。政治家としてのウズミ・ナラ・アスハは、大きな国益となる話を逃すことは出来ない。父親としてのウズミは、娘の幸せを叶えたい。

今回は敗けだ。娘の成長を素直に喜ばねばなるまい。

そう思って、椅子から立ち上がりカガリを抱き締める。

 

「お前は、大きくなってくれた。私にはそれが嬉しい。今はまだ未熟ではあるが・・・いずれ、この国を任せることも出来よう」

「では!」

「ああ、その少年の引き抜きを全力で行うと約束しよう。お前の近衛にする件、モルゲンレーテへの協力も同様だ」

 

喜びを噛み締めながらも、精一杯堪えて頭を下げるカガリを微笑ましく見ながら、ウズミは頭の中をかちりと切り替える。

 

「カガリ、その少年を此所へ連れてきなさい」

「父上、顔がとても怖いのですが」

 

娘の良人となるかもしれない人間を見極めるだけだというのに何を怖がっているのだろうか?そんなに怖い顔をした覚えはないのだが。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「やつらが本当にオーブにいると思うのか?」

「アラスカ周りを張ってる潜水艇部隊からは、それらしき船は見つかっていないそうだ。なら、オーブに滞在していると考えるのが自然だろう?」

 

イザークの疑問に、アスランは持論を述べる。もっともそれは事実に基づいた推論であり、イザークも確かにそうだなと頷いた。

 

「でもよ、あんな船衛星写真にも写ってなかったぜ?」

 

こちらはディアッカの疑問なのだが、確かに衛星写真の撮影を依頼し、解析を依頼したもののオーブにそれらしい船は見つからなかった。

 

「相手はあのオーブだぞ?秘密の軍港くらいあるさ」

「それに、新型を開発していたのがヘリオポリスだったというのも無視できません」

 

アスランとニコルの尤もな反論に、ディアッカはだよなー、とため息をついた。

実は、この議論はオーブ近海から撤退した直後から何度かあったのだ。ただ、アスランとニコルはその事実を信じて待つ人間であり、イザークとディアッカはその推論を体を動かして検証しようとするタイプの人間なのだ。

そういう意味ではバランスのとれたチームなのだが、狭い潜水艦から出られない事がイザークとディアッカの精神に負荷をかけているようである。これではいざという時に力を発揮できないかもしれない。メンバーの体調管理もリーダーの仕事だ。見張りも、しばらくは艦のオペレーターに任せておけばいい。

 

「イザーク、ディアッカ、お前たちはなにも出来ないのは苦痛だろ?だから、俺たちでオーブに潜入してみないか?」

 

イザークもディアッカも堅物の教科書のようなアスランがそのようなことを言い出すとは思っても見なかったのだが、提案自体は美味しい。二つ返事で頷いた。ニコルも、さすがに気が滅入っていないわけではなかったらしく、顔は嬉しそうだった。もっとも、ニコルは連日イルカと遊んでいたのだが。

 

そうと決まれば、全員の行動は早かった。艦のオペレーターを懐柔し、艦長に上陸許可をもらってオーブに潜入している工作員から偽造パスポートを受け取ってあれよあれよという間にオーブへ入ってしまった。

 

とりあえず足付きの痕跡を探るため、イザークとディアッカ、アスランとニコルの二グループに別れる。ディアッカとニコルが、じゃあまた後で!と明るく挨拶を交わし、それぞれの探索を開始した。

 

夕方になって、それぞれの成果報告が街中のダーツバーで開かれた。

まずイザーク、ディアッカ組からだが、こちらは愚痴から始まった。町中でディアッカが兄妹の妹をちらりと見たところ、兄の方が烈火の如く怒り始め、ガキに興味はないとディアッカが言ったところそれでまた怒り始めたらしい。

全く面倒な兄貴だよ、とディアッカが溜め息をついてはいたものの、プラントでの行いが行いなので誰もフォローしない。

イザークによると、兄の方は黒髪に真紅の目をした気の強そうな奴、妹の方は茶髪に茶眼のおっとりした印象の子供だったらしい。

アスランとしては、子供ながら妹を守ろうとするその気概は大いに評価したいところだった。

 

それからまともな報告がなされ、町中では特に異常は見られなかったが、心なしか警備がピリピリしているように感じられる、というのが結論だった。

 

アスラン、ニコルの報告では、海岸近くは余り家は無いが、崖のような地形が多く、秘密港を作るには持ってこいな地形だった。また、海近くのモルゲンレーテの工場は警備が非常に多く、近付くことさえままならなかった。

 

残念ながらモルゲンレーテの入社審査は大変厳しいらしく、それこそ本業の工作員ですら未だに潜入が出来ないらしい。もっとも、アスランとしては気晴らしと足付きのいそうな雰囲気だけでも掴めたので儲けものだ。

欲を言えば確固たる証拠が欲しかったが、これ以上はプラントの敵が増える可能性も有るため難しい。

 

話が一段落して、ディアッカはダーツを投げ、アスランとイザークはノンアルコールのカクテルを、ニコルはピアノを弾いて周りから絶賛されていた。

 

ダーツバーから出て、とりあえずその日はホテルに泊まり、翌日に引き上げる予定となった。

部屋で一人になったアスランは、キラの住む国に来たのだということにふと思い当たった。今まで自身の価値観で戦争というものを考えていたが、中立を主張するこの国はどうだろうか。

イザークなんかは、こちらは戦争をしているというのに、と憤慨するかもしれない。ディアッカやニコルは平和になったらまた来たいと言うかもしれない。だが、アスランの心の中でふと疑問が首をもたげる。

では、平和とはいつ来るのか?例えば、プラントの議員たちはどこで戦争を終わらせても良いと判断するだろうか。例えば現議長、シーゲル・クラインは核に依らない報復を宣言し、Nジャマーを世界に撒き散らした。報道では死者はほとんどいないと聞いたが、ダーツバーで、エイプリルフールで億は死んだだろうにまだやるのか、などと新聞を見ていた男性が呟いていたのを思い出した。

報道を鵜呑みにしていた部分もあったが、今プラントが言論統制を、敷いていることが分かってしまったわけだ。

結束を強めるという目的も有るのだろうが、事実を告げずに戦争を続けている議会は何をもって戦争を終わらせるのか?

戦争に勝った後に、市民はプラントが何をしたのか知るのか?

そもそも戦争は終わるのか?

考えすぎ、で片付けるには重要に過ぎることだ。

では、間違っていたら所属を変えるのか?

それは無理だ。思い出したのは、イージスを奪取したときの光景。ラスティが死に、連合の作業員が死に、作戦の結果ただただ死が広がっていた。あのうち数分の一は、アスランのせいで死んだのだ。

今戦争を辞めるということは、彼らの死は意味が無かったと断じるも同然だ。

やはり、戦争なんかに手を染めたのが間違いだったのかもな。そう自嘲気味に笑って布団を被った。安宿のベットは余り良いものではなかったが、それでもシーツを被るだけで包まれる安心感をくれる。

頭の中を切り替えて、明日以降のプランを考え始めた。結局、戦い続ける以外に道などないのだから。




書けちゃった。
とりあえず、親バカウズミ氏と、悩める男、アスランの苦悩と諦め回でした。
次回はキラと親、親バカの話からアラスカへ。
なお、アラスカから章を変えようと思います。

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