だと思って読んだら後悔しますよ。
「料理、ですか?」
「ええ。頑張っている先輩のために何か出来ることはないかと思いまして……色々文献を調べたところ手料理がいいのではと」
アルトリア(リリィ状態)は、なるほどと頷いた。
目の前の少女マシュ・キリエライトから「相談にのってほしい」と話しかけられた時は何事かと緊張が走ったが、聞いてみればなんとも愛らしい。
英霊としての記憶を辿ってみれば、朧げながらではあるが、好意を持つ相手に手料理を作るというのは悪くないように思う。
しかし……
「その、お恥ずかしい話、私料理の方はあんまり……誰か他の方に相談された方が良いのでは?」
「そ、そうでしたか……すみません、こういう事を相談できることのはアルトリアさん位しかいなくて」
ちなみにこのカルデア、赤い弓兵も、赤毛の騎乗兵も、蛇になった狂戦士も狐系の良妻もいない。
いるのは言葉が通じるのか分からない狂戦士とか、こういう相談はちょっとし辛いおっさん連中とか。
個人的な事情なので、いつも眠る時間も削って忙しくしているスタッフに時間を割いてもらうのも。
その点アルトリア(リリィ)なら、宝具LV1同盟仲間で気心もしれているし。
こう言っては悪いが、戦闘がない日なら暇もあるだろうと。
「なるほど……分かりました!そういうことでしたら及ばずながら力になりましょう!」
「あ、ありがとうございます!」
暗礁に乗り上げ不安そうな顔をするマシュを見て、義憤にかられ胸を叩いたアルトリア。
料理に自信がないのは嘘ではないが、だからといって義を見て動かずにいられるほどこの騎士姫、諦観が育ってはいない。
あと同年代同性の幽じんに女の子っぽい話で頼られるのが単純に嬉しい。
「それでは何から始めればいいでしょう、先生!」
意気込むマシュ。
さぁ知識を総動員せよアルトリア。
騎士が力になるといった以上、中途半端は許されない。
お前の中にある全ての料理の記憶を思い出せ――!
*****
「先輩、あの……これ!」
マシュが先輩と慕う、カルデア唯一にして人類最後のマスターである男に差し出されたのは……なんというか。
芋だ。すり潰されたじゃが芋だ。調味料なし芋100%であるため、マッシュポテトですらない。
騎士姫殿の名誉のために言い訳すると、彼女の知識の中には他の料理のあったのだ。
だが、彼女が作り方を細かく教えられてかつマシュ・キリエライトが作成可能なもの、と条件を絞ってしまえば残りはこれか肉を焼くかのどちらかの。
肉か芋か。究極の二択の末に選ばれたのがこれなのである。
文句は騎士姫の記憶に芋をこびり付かせた奴に言ってもらいたい。
これを料理と言っていいのかは賛否が分かれるが、少なくとも二人は真剣だ。これが彼女たちの精一杯。
とはいえ彼女たちも、これが立派なものではない事は分かっていて、全身強張っているし内心ドキドキしている。
一秒一秒経つごとに、後悔の心は強くなっていく。
緊張が伝わったか、周囲にいたスタッフも固唾を飲んで見守っている。
だが、心配は無用。
目の前の男はカルデア唯一にして人類最後のマスターだ。
近い将来、無茶振りというレベルではない難題と、異端級のサーヴァントをまるっと受け入れる男だ。
突如差し出されたすり潰された芋の塊も、微笑みと共に口に入れ、感謝の礼も告げてみせて。
それを聞いた二人は安堵とともにとても喜んだ。
まぁ、ここで一言でも彼がツッコんでいれば、と思うことになるのだが、別の話。
アルトリア・リリィがいろんな人やサーバントと触れ合い、最終的に芋を潰して(たまに肉も焼いて)ハッピーエンド。
そんな「リリィが出て、芋を潰す」なんちゃってグルメ小説はどうか、と思い書きました。
好評でネタがなにか浮かんだらまた書きます。芋を潰させます。
ところで料理を芋すり潰しにしたのはCCCの某太陽の騎士からなのですが、
どうもあの時代のブリテンに芋無かったっぽいですね……?
そこらへんはっきりしたら差し替えるかもです。まぁ替えたところで、なのですが。