書きたいもののまだ書けないため体験版ですので初投稿です。

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体験版なので初投稿です。


魔理沙ちゃんが獣狩りにドン引きする話

――――人だ。

 

 魔理沙が森の中を探っていた中で、ぼんやりと感覚を覚えた。目を凝らしてみれば、それはまさしく人であり、骸ではなかった。

 遠巻きに様子を見るが、それだけで違和感は続々と湧いてくる。様相が違う。郷の中、普通の人間がまとう衣装ではない。外の人間だ。だが魔法の森に人が迷い込んでくることは珍しい。……曰く、境目はここではないからだ、ゼロではないが、生きている状態で見つかることが珍しい。

 そして、外の人間とは思えない。郷に誘われるのは世を捨てた者であり、その表情はどいつもこいつも生気を感じられないものだ。目の前の迷い人は眠った姿でも生を望もうとしているようにみえる。よくはわからないが。

 そして……生きている。発見が早かっただけかもしれないが。

 

「おい、寝たら殺すぞー」

 

 目の前で人が死なれては、それは夢見が悪い。同族として、放置はできなかった。ゆっくりと肩を揺さぶりながら声をかける。

 ひげだらけで、整えられていない髪。壮年の男は、触れることで衣装の下からは想像できないほどしなやかな筋肉に包まれていることが分かった。それも、とても外の人間とは思えないことを関連付ける。ここほどに身体を使うことがないからか、どいつもこいつも女のように体の細いものが多い。

 そんな身体を覆う衣装も少し変わっている。群青色を基調としたそれは制服のようにかっちりと、それでいて数多の破損と修復を繰り返してある。まるで、暴力沙汰に晒され続けていたように。付随する、血の香り。

 前に早苗から聞いた外の世界の法の番人を思い出す衣装の男はただ者ではないだろう。珍しいことを聞けるかもしれない。興味の湧いた魔理沙はより強く彼をゆすぶる。

 

「ん、うぅ……」

「おーい、おいおいおいおーい」

 

 小さくうめき声をあげ、意識の覚醒を始めた。これ幸いにとかける声を強くする。顔の歪みが増すと、男はゆっくりと目を開ける。

 

「……ここ、は」

「起きたな、何本に見える?」

「……森、だと? 夢でも……いや、俺は夢を……」

 

 手を握っては開き握っては開きを繰り返す魔理沙を尻目に、男は辺りを見回しながらつぶやきを続ける。

 

「……無視は困るな、おっさん」

 

 むくれ顔になりながらも名も知らぬ男に引き続き声をかける。

 

「あぁ……お嬢さん、君が介抱してくれたのか?」

「照れるぜ。しかし、意外に動じないもんだな。大抵ここを見るとどこだそこだと騒ぐもんだったが」

「いまさら何が起ころうと騒ぐものか。しいて言うなら、お嬢さんのような子供が森まで到達していることか」

「照れるぜ」

 

 軽妙に切り返してくれた男に好感の意を持ちはにかむ魔理沙。その表情に対して少しも男は顔色を変えることなく、辺りを見回し、

 

「……俺の得物を見なかったか。……雑嚢もないな、これだけ、か」

 

 腰に付いたポーチを軽く擦り、魔理沙のほうへ訪ねる。革袋の中からは、硬質の物が小さく擦られ響く音が漏れる。

 

「ここにあったのはおっさんだけだぜ。どんなものだ?」

「ノコギリだ」

「のこぎり? おっさん、木こりか何かだっのか?」

「長い持ち手のついた、刃の回転する丸ノコだ。火薬庫の物だから目立つはずだが、お嬢さんは見たことないかね。……ああ、あと銃もないか」

「あーん? ノコギリに火薬に銃?? 木こりにしては物騒だな。というか、そんななりだけど猟師か何かか?」

 

 不思議そうな顔を浮かべて話す魔理沙に対し、苦笑を男は返す。

 

「面白いことを言うなお嬢さん。森の中に入るものなど……狩人以外に何がいるというんだ? その見た目、魔法使いとでも言い張るつもりか? ……冗談はよせよ、子供の戯れには遠い話だろう?」

 

 苦笑は次第に語尾を強め、相手を制する言葉かけとなる。少なからずある矜持を汚された、その思いを伝えるように。

 だが、それは魔理沙も負けてはいなかった。互いに大きさはわからない。それでも、大きさだのそういう問題ではなかった。

 

「言ってくれるぜおっさん。悪いがこちとら人生賭けて魔法使いをやっているんだ。それこそ子供だから、だなんて言われないレベルには真剣にな」

 

 それは意が通ったのだろう。冗談では済まないほどの経験を滲ませた言葉はいささか罵りを含めた顔を引き締めるに至った。

 

「……動じないと言われたばかりだったのに侮辱してしまったようだな、すまない。……俺の名はヴァルトール、狩人……だ」

「わかればいいぜ。魔理沙だ、霧雨、おっと」

 

 互いの名乗りを止める、参入者。ヴァルトールの顔はもとより、笑顔を浮かべた魔理沙の顔も再び覚悟の色に染まる。

 

「おっさん、残念だが和やかにお話してる場合じゃないみたいだ。……最近ああいう手合いが増えてきて、森も穏やかじゃあないんだ」

「森が落ち着いていた時を俺は知らないが……どうやら、俺の知っている森とは違うようだな」

「そういうのを詳しく話したいんだが……片手間にできる奴じゃあない。あっちを、ひたすらまっすぐ走って行ってくれないか? 絶対に曲がらず、木が目の前に在っても逸れずにとにかく真っすぐ。できるか?」

 

 新たな参入者は四足歩行の毛むくじゃら。大柄な人間をさらに二回りは大きくして、それでいて活動に十分な膂力。腹の底から漏れ出す臭いの強い吐息は、狩るために特化した牙を見せつけ、一歩一歩踏み占める前足はその考えを確固たるものにする爪。

 獣だ。類似しているのは狼だが、大きく外に折れ曲がった関節はそれとは違う歪さを感じ取れ、通常と違う異物感は否応なく心を震わせる。

 

「最近はああいう手合いが増えてきた。弾幕も張れずただ狩る奴等が……そういうのを弾幕ごっこで治めるのも私の役目だ。勝手な考えだけど」

「だから、武器もない俺は逃がそう、と。……お嬢さん、舐めないでほしい」

 

 真っすぐと自分の後ろ、獣の対角線を指し立ちはだかる魔理沙に、臆せず、先程まで気絶し横たわっていた者とは思えぬほどしっかりと大地を踏みしめ、ヴァルトールは対峙する。

 

「!? おっさん、下がれよ!」

「お嬢さん、魔法使いが俺のおとぎ話とどう違うかは知らんが……獣一匹、ただの糞袋に後れは取らん」

 

 無手のまま、策もないまま。少なくとも魔理沙にはそう見える。だけどヴァルトールはそれを当り前のように獣へと近づいていく。ただの自殺志願にしか見えないように。

 少しの値踏み後、悠然と立ち向かう男に視線を合わせたその獣は目の前にぶら下がる果実を、無抵抗のそれに食いつく。

 四肢が強張り、大きく口が開かれ、頭どころか胴をも一口で食いちぎり分断できる残酷な牙がヴァルトールに接近する。

 

「ふん」

 

 それを、いともたやすく避ける。相手の側面へ、下げるわけではなく回り込むように。僅かに触れ得たはずの牙は、しかしその実群青の官服をかすめてもいない。

 転じて彼も右手を振りかぶると無防備になった獣の横腹に叩き込もうとする。が、素早く飛びのかれ、再び距離を置いた状態となる。

 

「踏み込みが浅いか」

「おっさん、無茶するなぁ!」

 

心配の声かけとは別に、魔理沙の声は珍しいものを見たときの歓喜のようなそれが混じっている。恐怖で我を忘れたわけでも自暴自棄になったわけでもない、自身の実力に則した行動選択、そして一度の流れで理解させる身のこなし。

 ただの外の人間どころではない。暴力的な方法での解決を好む退治屋稼業の者たちに匹敵、いやそれ以上の人間。今まで実力が分からない以上肝が落ち着かなかったが、一連の動きを見ただけで理解できる。放っておいていい、任せていい、信頼はともかく、背中を預けるに値する。

 

「私も負けてられないぜっ!」

 

 考えを巡らせている間も、獣の攻撃を紙一重で避け続け、ヴァルトールは機会を窺っている。無手で何を狙うかはわからない。紅い門番のような技を持っているのかもしれない。そう期待しつつふわりと飛び上がる。

 

「飛べるのか」

「おとぎ話の魔法使いは皆そうだろう? そしてこれが、普通の魔法使いの、力っ!」

 

 獣の周りを翻弄するように飛び回ると、狙いを定めた魔理沙の右手から煌めく星の明かりたちが飛び出てくる。無秩序に散らばり森に似つかわしくない光をまき散らす。

 数多の光、獣の怯み、そこに一筋の道を照らし出す。

 さあ、どうする。魔理沙の心は先ほどのような期待に溢れていた。

 だから忘れていた。自分の戦いは魔法であり、手を汚さない。殺し埋葬までするも、血を流さない戦いしかしていなかったから。

 

「感謝する」

 

 ヴァルトールはその一筋に迷うことなく体を滑らせ、無防備な獣へと右手を突き出す。ほんの少し、右手が異形になった気がした。

 

「ひゅっ」

 

 思わず魔理沙は息を飲んだ。出そうと思わなかった声が漏れ出た。ほんの一瞬前に思考していた自分の脳内を省みた。

 一人で暮らしているから、たまにやることもある。小動物の解体程度なら慣れていた。だけれども、そのあまりに愚直に行われた目の前の光景には追いつくのが遅れた。

 素手のまま頑丈な獣皮を突き破る。魔理沙と同じように獣の口から息が漏れ、しゃがれた呻き声が辺りを染める。

 

「死ね」

 

 そのまま獣を放り投げる。ただ放っただけじゃない。突きこまれた穴からは巡っている血液がすべて飛び出てしまったかのような勢いで放出され、獣を、彼を、辺りを染め上げる。

 軌道に沿うように納められていた中がまき散らされる。右手は何があったか想像に難くない、納められていたそのものをいくらかにぶら下げている。

 内臓を、直接かき回し、直接抉りだし、そのまま放り投げた。

 伏した獣は、抗う事なくそのまま動かなくなった。当然の帰結でもあった。

 

「……この程度か。……いや、俺も腕が落ちたな。武器に頼りすぎか」

 

 何事もないように右腕を振るい汚れを払う。それでも、獣血のすべてが落ちるわけではない。

 その光景を、魔理沙はどこかの記憶から、伝聞で聞いた事実から引き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パチュリー、これなんだ?」

「……かつて外の世界、離れた地で行われていた催し。その異変と内容をまとめたもの。暴力的過ぎて私は好きじゃないけど妹様はそういうの好きだからね」

「ふーん。……序文か。何々」

 

 

 

 

――我ら血によって生まれ、人となり、人を超え、また人を失う

 

 

 

 

 あまりの内容と、突飛さ。凄惨さ。どこか空想の物語と思えるほどの内容。時間の流れの淀みを、僅かに感じられた。

 

 

 

 

――知らぬ者よ

 

 

 

 

 

「……狩人……」

 

 

 

 

 

 

――――かねて血を恐れたまえ




内臓ブッシャー
いろいろぶん投げてますが実際に連載するまでは深く考えないでください。
三番目の目的は魔理沙にお嬢さん、おっさんと呼びあいたかった。

反応お待ちしております。

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