なんとか書き上がりましたが予定より試合までの前置きが長くなってしまいましたので今回は前後編にさせていただきます。場合によっては前話の予告と今話のタイトル変更するかもしれません。
それと今回は多数のクロスオーバーキャラクターが他校メンバーとして登場します。
ついに大洗女子学園戦車道全国大会2回戦の日がやって来た。
「よいしょっ!!」
「せいやっ!!」
「ほいっと!!」
大洗陣営では現在応援団の橋下団長以下団員達の協力のもと砲弾などの備品がトラックからガレージの各車両へと運ばれていく。さすがに日頃鍛えているレスラー達とあって力仕事はお手のものであった。一方では最終整備をしている立花藤兵衛が新入組を相手に軽い整備のアドバイスや教官の羽村葵が副隊長エルヴィンを含む歴女一同と何やら話をしている。
「橋下さん、いつもありがとうございます。」
Ⅳ号のもとに備品を運んできた橋下団長にねぎらいの言葉をかけると団長は首にかけたタオルで顔を拭きながら答えた。
「いやいや、西住隊長。体力面をサポートして選手達にはベストコンディションで挑んでもらう。これも応援団の仕事だ。」
初めはごつい風体におっかなびっくりだったメンバーも今ではすっかり団長達に馴染んでいた。とくにアヒルさんチームは一緒にトレーニングしたり身体の小さい麻子や佳里奈、紗希はよく肩に乗せて運ばれてたりしたりもする。応援団の存在はメンバーにとっても良いリラックスに貢献していた。
そしてさらに彼女達への協力を惜しまない人物達がいた。
パッパ~!!
「お待ちどう!!」
一同がクラクションと声に眼を向けた先には3台の車がいた。まずは整備士をしている立花藤兵衛のジープ、運転席にいるのはツナギにサングラスとなかなか決まっている風見志郎だ。今日は店を休みにして手伝いに来てくれたのである。そして次に続くのは大洗警察学園艦分署からやって来た黒の覆面スーパーパトカーマシンXと赤の高機動パトカーマシンRS-1である。
「リュウさん!!」
「リュウ兄ちゃん!!」
降りてきたのは学生達から一部ではアイドルの如く扱われている桐生刑事だ。今日は青のジーパンに半袖の白シャツと簡素な格好だが細い線のボディが浮かび上がりなんともそれだけで魅力的で呼び掛けた沙織などははやくも足元がぐらつきそうになり、姪っ子にあたる篠麻厘は嬉しそうに笑っていた。
「よう!御一同に頼まれたものだ!」
そう言うなり後部座席からクーラーボックスを下ろす。中には冷えたお茶やジュースがぎっしりと詰まっていた。
「こっちもあるぞ!」
そう言ってRSから降りてきたのはリュウの同僚、大洗学園艦警察の平尾一兵巡査。こちらは大きめの眼鏡に黒のスラックスに水色のシャツに薄手のチョッキでなぜか蝶ネクタイを絞めている。彼いわく黒渕眼鏡と蝶ネクタイはトレードマークらしい。
こちらも飲み物などを運んできており一斉にメンバーが群がってきた。
「リュウさん、ありがとうございます!」
「ありがとうございます。」
リュウ達のもとにやってきたみほと葵が礼を言う。今回の役割分担は買い物人員を割り振ろうとしたときにたまたま藤兵衛に用事があって出向いていた風見志郎が聴いたことから話が広がったものであった。
「これくらい軽いもんさ。」
「そうそう、学園艦警察なら車輌装備も使い放題だし。」
リュウと一兵の2人は実はアミーゴの常連でもあったため小耳に挟んだのである。そこで手伝いを買って出てくれたのだ。
「何よりもかわいい女の子達とおおっぴらに絡めるなんて、これぞ役得ってやつかなぁ?」
頭かきながら笑顔の一兵。そんな姿にみほは乾いた笑みを浮かべたのだった。
すると、一台のダークグリーンの幌つきジープが一行のもとへと接近してくるのが見えた。誰だろうかと一同が動きを止めて注目するなか、ジープが助手席を向けて停まりドアが開いた。
「元気そうねぇ。」
ジープから降りてきた人物がそう言って腕を組む。
「アリサさん!」
みほが名を呼び近づいていく。やって来たのはサンダースの現隊長アリサであった。
「学園艦がたまたま近くまで来たからね。激励に来てあげたわよ。」
「ありがとうございます!」
2人が握手する姿に大洗のメンバーも取り囲むように集まる。
「アリサ殿、御無沙汰しております!」
「アリサさん、付き合うことになった新しい彼氏はどうですか?」
続いて声をかけたのは優花里と梓。アリサは少しのけぞり気味に驚いた。
「なんで知ってんのよ!?」
「ナオミさんからL○NEが…」
「オーノー!なんであの人たちはすぐに私のことをばらすのよ~!」
いつも通りな扱いに頭を抱えて叫んだと思えば、続いて地団駄を踏み怒るアリサ。みほたち昨年からいるメンバーにどこかで笑っているケイとナオミの姿が目に浮かんできた。
「まぁまぁアリサさん、きっと悪気は無いですから。」
みほがフォローしたところで少し落ち着いたのかアリサはため息をひとつついた。
「はぁ…まぁいいわこの際…言ったところでバレたことの撤回は出来ないもの…」
「それでそれで…彼氏さんてどんな感じ?どこまで進んで…」
「ノーコメント!」
沙織の食い付きを二つ返事でカットしてみほに向き直る。
「ところで西住さん、会わせたい子がいるの。」
「え?私にですか?」
「そう、うちの新入生よ。」
そう言うとやって来たジープに戻って運転席のトビラを開く。
「ほら、引っ込んでないで降りてきなさい。」
「アリサ隊長、そんないきなり…」
何やら問答をしつつアリサは中の人物の腕をつかんだ。
「ほら尻込みしてないで!!期待の新人エースが聞いて呆れるわ。」
なんだなんだと思っていた一同の前にアリサは引き摺り下ろした人物を連れてくる。
「あっ…」
「君は…」
みほが思わず声を漏らし葵も続く。アリサに連れてこられたのはサンダースの新入生らしい。背はみほと変わらないくらいで明るめのショートカットでてっぺんに華のような髪がちょんと可愛らしく立ち、前髪を緑のヘアピンで留めた少女。大洗のメンバーでは誰の記憶にも無い人物だった。
「ひかりさん…雁淵ひかりさん?」
みほが問うと相手は観念したように頷いて返した。
「はい…お久しぶりです西住さん、羽村さん。」
「うわぁ!!久しぶりだね!サンダースに入学したんだ!」
みほの質問を肯定したひかりと呼ばれた少女が答える。みほがその答えに笑顔全開にして手をとった。葵も「やっぱり…」と口から漏らして懐かしそうな表情を見せる。
「はい、地元佐世保の学校ですから。」
そう返して少し俯くひかり。
「…本当はお姉ちゃんのいたプラウダ高校に行きたかったんですけどね。」
その姿にアリサが背中を叩いた。
「何落ち込んでんのよ!サンダースにしたって高校戦車道四強校の一角よ!」
「そうだよひかりさん。まだまだ一緒になるチャンスはあるから。」
ひかりのフォローをするアリサとみほ、そこで優花里が口を開いた。
「西住どの、雁淵ってもしかして…」
「あ、うん。紹介するね!こちらは雁淵ひかりさん。お姉さんがプラウダの3代前の隊長で私のお姉ちゃんのライバルだったの。」
「雁淵孝美さんか…懐かしいな。」
みほが説明し葵は過去に思いを馳せた。佐世保からやってきた真面目な姉とたまに訪ねてきた妹、葵もよく面倒見をしていたものだった。
「やはりそうでしたか!!」
「ゆかりん、知ってるの?」
「はいっ!!雁淵孝美さんですね!プラウダの元隊長で第61回戦車道高校生全国大会では西住どののお姉さん、まほさんと一対一の決闘を演じたんですよ!」
嬉々として握りこぶしを作って答える優花里。余程興奮した記憶だったのか目の輝きがいつもの数倍増しであった。
「お姉さんの孝美さんももともと西住流の門下生で俺もよく知ってる。とても真面目で、強い少女だった。」
「えっ?西住流なのにプラウダに進学されたんですか?」
「はい!お姉ちゃんはまほさんと公式戦で闘うのが夢だったんです。だから黒森峰に進学したらそれが叶えられないって。」
「私のお母さんともよく話し合って決めたの。一応破門扱いだけど、『より強い相手に挑むのも西住流のひとつ』だって。」
葵の過去への言葉に今度は華が疑問を口にした。続けざまにひかりが口を開いて姉の想いを語る。その瞳は先ほどの優花里以上に輝きみほは自らの姉のライバル誕生の瞬間を思い出していた。
「何だかみぽりんと似てるね。姉妹エースだなんて。」
「え、エースなんて…私はお姉ちゃんに比べたら才能も、実力も…」
沙織の正直な意見に沈んで返すひかり。地元の町では戦車道トップクラスの選手としてもてはやされ、多くの人の期待を背負う姉と比べて自分はどうだろうか。サンダースに入学こそしたもののまだまだヒヨッコでとてもエースなんて言えない。
「そんなことないよ。」
しかしひかりの前に立つみほは静かに問いかける。
「ひかりさん、おぼえてるかな?2人でお姉ちゃん達の組み手を見てたときのこと…」
秋の夕陽が照りつける中、遠くに見える砲煙、幼い2人が双眼鏡に見たのは白旗の上がった2輌の重戦車ティーガーⅠ。結果は相討ちであった。
『お姉ちゃん達すごいなぁ…』
『うんうん!!でも孝美お姉ちゃんの方が強いよ!』
みほの称賛に返しつつ自らの姉を持ち上げるひかり。すぐにみほは反発した。
『え~違うよ。私のお姉ちゃんの方が強い!!』
『いーや!!孝美お姉ちゃんが一番なの!!』
2人とも全く譲らず平行線だった。そんなやり取りを少し若い葵と菊代、そして彼らよりも一段高い所から演習を見据えていた西住しほ達が微笑ましげに見ていたのだった。
「あのときの譲らない顔、お姉さんそっくりだったよ。」
「う、うぅ…」
昔の記憶を呼び起こすみほの言葉に少し恥ずかしくなったひかりは顔を赤らめて少しうつむいた。
「ひかりさんはすごく負けず嫌いで頑張り屋だった。頑張ってその後私とⅡ号戦車で競争したときも勝てたじゃない。」
ひかりの反応を気にしつつみほは続けた。自分が大洗で手に入れたことかけがえのないものがきっとひかりの中にもあるはずだと。
「私もそうだったように、ひかりさんにはひかりさんの。孝美さんには孝美さんの戦車道がきっとあるよ。」
「私の…戦車道…。」
「西住隊長…良いこと言うねぇ!!」
ひかりへの言葉は彼女だけでなく、静かに聞いていた橋下団長にまで何かの影響を与えたようだ。
「よーしてめぇら!!今度サンダースの試合に応援出張するぞ!」
「「「おぉーーー!」」」
大洗応援団の士気は最高潮に高まっていく。
その時だった。
「あら、サンダースのアリサさんもいらっしゃいましたか。」
そんな声が突如一同へと投げ掛けられた。見てみるとサンダースと相対していた大洗の右側から3人の人物が歩いてきた。赤いパンツァージャケットを身に纏った本日の対戦相手、聖グロリアーナ女学院の戦車隊長オレンジペコと副隊長ルクリリ、ローズヒップの3人である。
その少し向こうにイギリス製ジープが停まっており、どうやら誰もがみほとひかりの話に集中しており気がつかなかった様だ。
すぐにアリサはペコに向き直り両手を制服上着のポケットに入れながら返す。
「ええ、ご無沙汰してるわ。抽選会では会えなかったから、カルドロン(リボンの武者)以来かしらね。」
「最近盾無とも疎遠なんですがしずかさんと鈴さんはお元気ですか?」
「ついこないだも一緒に戦線組んだわ。あの子達といるととても良い経験になるから…。」
昨年より親交を深めている盾無高校のメンバーについて喋るとしばしの沈黙が起こった。アリサとペコはお互いから決して目をそらすことなくしばらく見つめあう。その間には目には見えない何かが交錯しているようであった。そして数分が経過した頃にペコが口を開いた。
「冬の大会で相まみえることを楽しみにしてますね。」
「お互いにねぇ。」
そう言うとアリサはみほ達大洗のメンバーにひかりを伴い会釈してジープへと戻る。ほどなく彼女達は観覧席の設置された場所へと向かって走り去っていくのだった。
「西住さんごきげんよう。」
「オレンジペコさん、今日はよろしくお願いいたします。」
アリサ達の去った後、あらためてペコはみほの前に立ち握手を求める。みほもそれに答えて自らの右手でペコの差し出した右手を掴んだ。
「センチネルに38t、なかなか手強そうな新メンバーを揃えられましたね。」
大洗のガレージに並ぶ戦車達を見てオレンジペコは発言する。1年少し前、大洗との初対戦となった練習試合の時は5対5であった。今回はその倍かつ多種多様な車輌入り乱れた乱戦となることを予感させる。一同に緊張が走った。
「でも、言っておくわ。」
そんな中、ペコの後ろに控えていた副隊長ルクリリが前に出てきて宣言する。
「私たち聖グロリアーナの前には重戦車でも持ってこない限りあなた方に勝ちは掴めない!」
緊張をほぐし自分の士気を鼓舞するための強気な発言にローズヒップが乗っかる。
「そのとーりですわ!私達の連携戦術にかかればあなた方の相手などお茶の子さいさい、そちらの豆鉄砲など屁の突っ張りというものですわ!」
そう言うと突然彼女は何やら珍妙な躍りを始めた。内容はなぜか牛丼の良さを話してる様であるが実に要領を得ないものだ。と、そこに食いついてくる人1名。
「おぅおぅおぅ!!黙って聴いてりゃあ好き放題言いやがって!あたしら大洗を舐めんじゃあねぇ!!」
耐えかねて声をあらげるはレオポンチームの新入生柳原まろん。パンツァージャケットではなくトレードマークの法被を翻しローズヒップの前に飛び出してきた。
「あらあら、ずいぶん粗野な物言いですこと。」
右手を口の前で蓋する様に揃えて返すローズヒップ。その態度が更にまろんを煽った。
「そいつをそっくりお返しするってんでい!!あとなんかむかっ腹のたつ声しやがって!!」
「なっ!?聞き捨てなりませんわ!!あなたこそ他人の声をとやかく言える美声でして?」
正面からの睨み合いに発展。2人の間に先ほどのペコとアリサ以上の火花が散る。
「何をぅ!!やるかぁ!」
「売られた喧嘩は買って差し上げますわ!」
一触即発の事態に両陣営から2名が動いた。
「ローズヒップさん、お下品ですよ。」
「あら、シッツレー致しましたでございますですわ!」
オレンジペコが少し困ったような顔で諌めると振り向いたローズヒップが敬礼して返す。
「まろんちゃん、喧嘩はあかんでぇ。もしも手ぇ出したら強制漫才の刑執行やで。」
「なっ!!それとこれとは話が別でぃ!!」
一方でこちらは篠真厘。まろんを後ろから羽交い締めするように抱えてうむも言わさぬままに後ろにつれていく。
「さすが聖グロ、言ってくれるものだな。」
そう言って大洗陣営から聖グロの三人に向かって一歩出てきた人物がいた。
「しかしだ、こんな格言を知っているか?『一寸の虫にも5分の魂』。」
大洗の副隊長エルヴィンがトレードマークの帽子のツバを指先で摘まみながら返す。そしてここに後輩の武蔵とシャルルが続いた。
「『蟻の穴から堤も崩れる』とも言います。」
「ここは『窮鼠猫を噛む』ですね。」
「「「「「それだっ!!」」」」」
シャルルの答えにエルヴィン以外の歴女5人が指差しで応える。エルヴィンはツバを摘まんでいた指を離してペコに向かって口を開いた。
「ま、お互いに油断せずに戦い抜くとしましょう。」
その姿にペコは素直に思ったことを返した。
「…流石にロンメル将軍の渾名は伊達ではありませんね。」
「お褒めにあずかり恐縮です。聖グロの女王陛下。」
恭しくエルヴィンが頭を下げて挨拶したところでオレンジペコはにっこりと笑った。
「では私達はこれで…ルクリリさん、ローズヒップさん、参りましょう。」
『大洗女子学園対聖グロリアーナ女学院、試合開始!!』
「「よろしくお願いします!」」
ついに大洗対聖グロの火蓋が切って落とされた。
「ではまず作戦通りの編成で各自動いてください。」
早速みほから指示が飛ぶ。今回のフィールドはヨーロッパのフランスやスペインの農村を思わせるものとなっている。生け垣が多く背丈の低い家並みの並ぶ街が東側に存在し、そこから北には池を配して向こう側に森林が中央部から南へと広がる。聖グロはまずここからスタートする。一方の大洗は反対側の南西からスタート、こちらは草原地帯で北側には池に繋がる川が流れておりその向こうには荒れ地となっている。一応その最北部には戦車も登れる岩山があった。
「第一部隊は予定通りアヒルさん、ペンギンさん、コブラさんの偵察機動部隊を編成。ウサギさんとカモさんはフラッグであるカメさんの護衛、残る私達あんこう、カバさん、アリクイさん、レオポンさんは二段目として行動します。」
そこまで指示を出してみほは一旦息を吸うと力をこめて作戦名を言いはなった。
「三段構えの部隊編成、串おでん作戦です!!」
今回の聖グロとの戦いに際して大洗は従来型の行進間射撃による浸透突破戦術で来ると予測していた。知波単と同様の伝統に加えOB会による影響力が考えられるからだ。そこで考えた戦法は一点集中による敵陣突破作戦である。まずは自隊を縦方向に並べて偵察を行う。敵の陣容はおそらくクルセイダー機動部隊と本隊の二段構え。そこで偵察隊はクルセイダーを発見次第集結し機動部隊として行動。機動部隊同士の戦いを行い釘付けしつつ火力を結集した第2第3陣で敵本隊に一撃離脱戦法を敢行する作戦となった。
ここで重要なのは前衛を務める偵察機動部隊である。彼女たちはクルセイダー隊を引き付けるのが大前提となるのだ。これを突破して敵本隊までの道を切り開かねばならない。
「必ずやり遂げます!根性で切り開きます!」
今回機動部隊を指揮することになった磯辺典子の頼もしい宣言が出たことで作戦が決定された。また本隊を二段構えにすることと高火力を中段に集中することで一気に大ダメージを与えることも目的としていた。聖グロの主力車輌マチルダⅡが2ポンド砲という比較的非力な火力であることも作戦を後押しした。これが同じく集団戦法を得意とする黒森峰などであれば2ポンド砲の比ではない圧倒的火力の集中砲火を浴びて瞬殺されるだろう。練習試合でⅢ突が撃破されたのは比較的至近距離から側面を撃ち抜かれたためである。例えば史実のアフリカ戦線ではⅢ号戦車を2ポンド砲で撃破するためには500メーター以上接近しなければ正面撃破はかなり難しいと記録されている。
さらに余談であるが2ポンド砲では榴弾を発射できないため『歩兵戦車でありながら歩兵を支援するための榴弾が使えない』という事実にドイツ軍のロンメル将軍は「英軍のマークⅡは「歩兵戦車」と呼ばれているのに、敵歩兵に撃つべき榴弾が使えないのは何故なのだ?」とコメントして興味深いと共に理解に苦しむと語ったという。
「動き出しましたな!」
こちらは観客席、ここではサンダースのアリサと同じく大洗の試合を見物すべく知波単学園の代表として隊長西絹代自らが腕を組んで陣取っていた。
「はい、どちらもまずは偵察合戦にかかるようですね。」
そんな西の言葉に返す人物がいた。その姿は青みがかった西に劣らぬ長髪に赤いスカーフの映える白を基調としたシャツに水色のスカートを組み合わせたセーラー服を着ており、さらにその上からスカーフ以上に鮮やかな赤いショールを羽織っていた。
「万里小路殿、同じイギリス車輌を扱う身としてどうですか?」
西と一緒にいるのは万里小路楓、京都府は舞鶴港を母校とする学園艦秀麗あおば高校の戦車隊長である。西にとってどこか気心知れた様な声で彼女は返す。
「そうですねぇ…」
少し頬に右手をあてて考えるとにっこりとした笑顔で西の予想とは大きく違った言葉を返した。
「やはりバレンタインよりもマチルダの方が可愛いですかね?」
「あ…いえ、そう言うことではなく…」
「日本のチハもこじんまりとして風情がありますねぇ。」
「はぁ…」
なんとも的を外した発言。これこそが秀麗あおば隊長の特徴だ。日本三大財閥と言われる『万里小路財団』『伊集院グループ』『波乱財閥』。そのひとつ万里小路財団が運営している私立学校が秀麗あおば高校である。楓はそこの箱入り娘なのだがなんとものんびりしており世間と少しズレてしまっているのだ。
「いつかは私も聖グロでお茶を頂いてみたいですわ。」
輝くその笑顔に西はもはや何も言うまいと決断し試合を映す大画面へと視線を向けるのであった。
「ローズヒップさん、そちらはいかがですか?」
一方こちらは進撃中の聖グロ戦車隊。オレンジペコの乗るブラックプリンスをフラッグとして中央に配置。その前方にはルクリリが乗るチャーチル、左右を4輌のマチルダⅡが縦並び2輌で進む。
『こちら別動隊、滞りなく岩山を迂回しましたでございます!!』
別動隊のローズヒップからは予定通り北側を通過しているとの報告が入ってきた。戦車としては驚くべきスピードである。
「流石に俊足ですね。では接敵に注意しつつ囮のクルセイダー隊の報告を待ってください。」
『かしこまりましたですわ!』
そう言いつつ手元の地図にペンで現状を書き込む。戦場中央に向かう自分達本隊に既に中央に差し掛かりつつある2輌のクルセイダー隊。そして北側を高速で進むローズヒップ部隊。
「今回はいかに敵をこちらに引き付けるかが大事です。」
こちらが集団戦法の浸透突破戦術で来ると読んでいるであろう大洗の裏をかきつつあった。
「第一の狙いはみほさんです。決して忘れてはいけませんよ。」
そう言うとペコは手元の紅茶のカップに口をつけたのだった。
聖グロにとって大洗は敗北こそ喫していないもののどこよりも警戒している相手だった。昨年の鍋物選抜大会(戦車道大作戦リゼロコラボイベントより)ではついに引き分けとなり次の戦いは更に油断ならないとまことしやかに話されていた。そして四強最後の砦を守るべく出された結論が今回ペコ達の立てた戦略であるが…。
「大洗のドクトリン…みほさんこそがその中心。ならばフラッグよりもまず攻め落とさなければなりません。」
今一度それを確認したペコは空になったカップを通信手に渡したのだった。
今"黒き皇子"は大洗へと向かいその巨体を進めるのだった…。
今回は大洗と聖グロの戦いに至るまでです。
次回こそブラックプリンスと大洗の戦いです。前回登場したのりことしゅりに活躍場面を、そして『リトルアーミーⅡ』で中須賀エミ率いるベルウォール学園戦車隊を窮地に追い込んだブラックプリンスのパワーを表現できればと思います。
新たにサンダースのキャラクターとして登場した雁淵ひかりは『第502統合戦闘航空団ブレイブ・ウィッチーズ』の主人公です。登場を決定させたのは佐世保のキャラクターと考えたときに真っ先に出てきたからです。
そして同じく新登場の万里小路楓は『ハイスクール・フリート』の登場人物です。のんびりしたお嬢様というのが僕自身の考えた秀麗あおば高校のイメージにぴったりだったので起用しました。
今後においてサンダースと秀麗あおばにも出番を考えての登場と相成りました。同時にこれで『ガルパン』『ストパン』『はいふり』の陸海空三大作品のキャラクターが共演できました(笑)
それと最初の場面で登場した平尾一兵もリュウ同様『西部警察』の登場人物で、RS-1も同作の登場マシンです。
それでは皆様よいお正月を…