真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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50:魏/静かな日①

91/静かな日

 

 ……………………復ッッ! 活ッッ!!

 

「警備隊復活ッ!! 警備隊に復活ッッ!! 復活っていうか復帰ッッ!!」

 

 よく晴れた朝。

 隊舎前で叫ぶ俺。

 両手を天をへと突き上げ、「ほわぁあーっ! ほわっ! ほわーっ!!」と叫んでみる。

 気持ちのいい朝だ……再度この地に降りた際、フランチェスカの制服を着込んだ時にも思ったことだけど……これでこそ帰ってきたって感じがする。

 

「さ、さあ今日は何をしよう!? 見回り!? 挨拶回り!? サボ……ゲフッ! ゴフッ! とにかくなにかしたい! 成し遂げたい! こんな切ない想い……!」

 

 鍛錬を禁じられた俺の体が仕事を求めている!!

 あぁいやいやいやでもまずはみんなに挨拶だよな! 俺を知らない新人も居るみたいだし!

 ……ていうかこの場合、なんだか俺のほうが新人みたいな感が否めない。

 ドキドキしながら隊舎の前をうろうろ。どんな挨拶をしようかとか考え込み、三羽烏が訪れるまでを挙動不審で過ごした。

 魏に戻ってから、隊舎に来るのなんて初めてでもなくせに。むしろここ三日の間には何度も足を運んだっていうのに。

 

「隊長、なにやっとるん?」

「おうっ!? あ、ああ、真桜か。っと、沙和に凪も。……いや、今日からようやく復帰だろ? けど俺、新しく入ったやつのこととか全然知らないし、どんな挨拶しようかなって、さっきから妙に緊張しててさ。や、そりゃ竹簡とかの報告に目も通したから、名前くらいは知ってるつもりでもさ、ほら、性格まではわからないわけだろ?」

「あぁそんなら心配いらんで隊長」

「軽い紹介くらいなら、もう沙和と真桜ちゃんとでしてあるのー♪」

「そ、そうなのか? そっか、そりゃ助かる」

 

 少し緊張が取れた気分だ。

 

「ところで沙和、真桜? 紹介ってどんな感じにしたんだ?」

「真桜ちゃんが隠し撮りしておいた隊長の写真を見せて、“この人が魏の全てを寵愛する天の御遣い、北郷一刀なの”って」

「うあ……なんだか恥ずかしいな、それ」

「んー? “魏に別の意味で伝説残した種馬~”ゆーて紹介したほうが良かったん?」

「勘弁してください」

 

 ニヤリと笑む真桜に、目を糸にし、眉を顰めて首を横に振った。

 と、それはそれとして……沙和、真桜の後ろで少し震えながら遠い目で何処かを眺めている凪に対して、俺はどう反応すればいいんだろう。

 

「んあ? あぁ凪なぁ。隊長が今日から復帰って聞いてから、もうずっとこんな感じやで……」

「話し掛けてもず~っと遠くを見てるの」

「そうなのか」

 

 ひょいと横にずれた二人の間を通り、凪の目の前へ。

 呼びかけてみても、目の前で手を振ってみても、心ここにアラズといった様子で、ず~っと遠くを見ている。なのに移動を開始してみればついてきて……おおう、物凄い能力だ。無意識でも仕事が出来るぞ。

 

「……凪って……」

「隊長が居なくなってからしばらくは、こんな感じだったの」

「あ~……せやったなぁ~。話し掛けてもなんも返事せんで、そのくせ仕事はきっちりやりおる。時々ハッとして辺り見渡して、目当てのモンが見つからんとま~た遠くを見てなぁ」

「目当てのものって?」

「ンなもん決まっとるやろ~……隊長や、た・い・ちょー」

「へ? 俺?」

 

 ズビシと指差された。

 それも真桜だけにではなく、沙和にも。

 しかも指差したままゾスゾスと、その指で俺の胸をつついてくる。

 

「凪ちゃん、隊長が居なくなってからずっと大変だったんだからねー? ごはんもあんまり食べないし、鍛錬にも身が入らないし」

「あー……そーいや久しぶりに氣弾で破壊行為しとったなぁ。茶店の看板、吹っ飛んでもーたし」

「うわっ……それはまた随分と懐かしいな……。で、相手は無事だったのか?」

「お、相手が居るってよー気づいたな、隊長」

「無意識だろうが、凪は街中で平気で氣弾飛ばすやつじゃないだろ。食い逃げかなんかか?」

「うん。野党上がりのウジ虫野郎だったの。普通なら包囲して捕まえるだけ、だったんだけど……」

「“隊長が託してくださった平穏を乱すなー!”とかゆーて、凪がどかーんと」

「………」

 

 喜んでいいのか悪いのか。

 くすぐったいんだが……ごめんなさい、茶店さん。

 いい迷惑だったろうけど、正直そんなふうに思っていてくれたのが……俺は嬉しいと感じてしまっている。

 お詫びの意を込めて、その茶店で一番高いのでも頼もうか。

 ……奢りは無しの方向で。

 

「んで隊長~? 今日はどーするん~?」

「どうするこうする以前に、その眠たそうな顔をなんとかしなさい」

「あたっ。……おお、なんや懐かしい感触」

「あーっ、ずるいのー! たいちょーたいちょー、沙和もぶって~♪」

「そういうこと大声で言うのやめなさい!」

 

 さて……軽く注意するつもりが、どうして注意を求められてるんだろうか。

 逆じゃないか? 普通。

 そう思いながらも、俺自身も懐かしく思いながら、目を輝かせている彼女の額に軽い手刀を落とした。

 沙和はそれを受け、やっぱり懐かしんでいるようで……そういえば、欲しがっていた服を買ってやった時にもこんなことをしたなって……思い出し笑いをした。

 

……。

 

 青い空の下、区画を一つ一つ回る足が、勝手に弾むのが可笑しかった。

 

「おお御遣いさま、お久しぶりでっ」

「御遣いさまはやめてくれってば……でも、うん、久しぶり」

 

 歩くたびに声をかけられ、久しぶりと言ってくれる人達が居ることが、嬉しかった。

 

「北郷隊長っ! 三区画目で喧嘩をする者がっ!」

「大人数で行くと刺激するだけだから、慣れてるヤツか力自慢のヤツを向かわせてくれ!」

 

 やたらと上機嫌な、懐かしい警備隊の男と一緒に、笑いながら駆けるのが楽しかった。

 

「隊長~! 迷子なの~!」

「おー! 預かっておくから沙和は真桜と一緒に親を探してあげてくれー!」

 

 泣き顔の少女を肩車し、探しているうちに泣き声が笑い声に変わることが、くすぐったかった。

 

「───、…………はっ!? 隊ちょ───……、いや、そうか……隊長はもう……」

「んあ? 俺がどうした?」

「え? ………………た、隊長?」

「? 隊長だけど……凪? ど、どうかしたか?」

「~……隊長ぉおおおおっ!!」

「どわぁああっ!? なっ、どっ……どどなっ……どうしたっ!? なにがあった!?」

 

 ハッとした時に凪が探していたものっていうのが、本当に俺だとわかった時、なんとも恥ずかしかった。

 

「……なぁ隊長? なんや突然凪がものっそいやる気出しとるねんけど……隊長なにしたん」

「いや、なんか突然抱きつかれて、いろいろ話し込んだら急に走り出してさ」

「……もしかして、抱きつく前にきょろきょろしとった?」

「ん、しとったしとった。隊長はもう……とかいきなり言われて、声かけたら抱きつかれて。つーか真桜さん? 親探しは?」

「……なるほど、そんなら凪の無意識も今日で終わりか。あれはあれでおもろかったんやけどなぁ」

「おーい……はぁ。もうちょい歩くか」

「ねーねーみつかいさまー? あっちにいこー?」

「はいはい、了解しましたお嬢さま」

「えへへー♪」

 

 親とはぐれたっていうのに楽しげな少女に、街を案内してやれる自分に安心を得た。

 

「もー! 隊長ー!? 人に親探し任せておいて、うろちょろするなんてひどいのー!」

「うっ……すまん、この子があんまりにも楽しそうだったから」

 

 それでも、子が親に向かって笑顔で駆ける姿ほど、安心出来るものはそう無いのだ。

 笑顔で手を振る子供に笑顔で手を振り返して、親がお辞儀をして歩き出すのを見送った。

 そして、また歩くのだ。

 賑やかな人の声が溢れるこの城下を、いつかの視線で見つめながら。

 

……。

 

 帰る場所があるっていうのはいいもんだ。

 そう思えるようになったのはいつだっただろう。

 大人になったと多少でも自覚してからか、それとももっと子供の頃だったのか。

 夕焼けを見ると、泥だらけの自分を思い浮かべるのはどうしてだろう。

 まだヒーローに憧れていた頃、剣道を多少でもかじれば、道端に落ちている木の棒だって正義の剣に見えたものだ。

 俺はそいつを振り回しては、今では考えられないくらいにとても小さなことで無邪気に笑っていた。

 家に帰れば親に怒られる。

 それが子供ってもんだろうってじいちゃんに教えられた時は、逆に泥だらけになることが誇らしくも思えた。

 そんな俺に悪と正義を説いたのが、そのじいちゃんだとしても。

 

「うあー……久々に張り切ったから肩こったわぁ~……」

「真桜ちゃんオヤジくさいの……」

「真桜、隊長の前だぞ、しゃきっとしろ」

「……なぁ隊長? ウチもう一度無意識で働く凪に会いたいわ……」

「はいはい、我が侭言わない。一応区画担当ごとに報告よろしくな。あとで纏めるから」

「うへーい……」

「はーい、なのー」

「はっ!」

 

 今日も一日が終わる。

 空の朱は別れの合図っていうのは子供の頃のことだが、こうして見上げる空はもう暗い。

 三者三様の返事を耳にして、警備隊の連中にも笑顔でまた明日を伝え、歩く。

 薄暗く、もう大分静かな街には、つい数時間前まで存在していた暖かさはなく……見渡してみても見つけることの出来ない虫の鳴き声だけが、人の声に代わって街を小さく賑わわせていた。

 

「あ、隊長~? これから今日のこと纏めるん?」

「ああ、自室でのんびりと」

「ならあとでお邪魔してもええ? アレのことでちぃっと話が……」

「……アレか。わかった」

 

 城へと戻る最中に、真桜と小さく笑い合う。

 あくまで小さく笑っただけであって、声自体は普通だったのだから、当然凪も沙和も反応する。

 最初から「なんの話なのー!?」と食い下がる気満々で割って入ってきた沙和に、発明のことだと話をしてやると……どこかぷくーと頬を膨らませて、結局は一緒にお邪魔するという結論に至ったらしい。

 ならばと俺は、ちらちらと少し離れた位置からこちらを見る凪へ手招きして、近づいてきた凪の頭を思う存分に撫でた。

 なにせきっかけは凪なんだから、この発明に関しては凪にも見届けてもらいたい。

 

「たたた隊長っ……!? なにをっ……!」

「いやそれがな、思い悩むより行動しなさいと我らが主に叱られまして。確かに躊躇するのも今さらだし、そうしたいって思ったなら、思った心ってやつも大事にしてやらないといけないかなぁと」

「や、隊長? 言ってる意味がなんやよぅわからへんで」

「少しだけ、自分の心に正直になってみようって思ったんだ。それだけ」

 

 さ、と促して城へ。

 準備もあるだろうからと途中で三人と別れ、俺は俺で必要な竹簡を抱えたまま自室に戻ると……お姫様が相変わらず、寝台の上で膨れてらっしゃった。

 

「一刀っ! お主、妾に断りもせずどこに行っておったのじゃー!」

 

 片手をズヴァーと突き上げ、怒るお嬢様一丁。

 そんなお嬢様に、買っておいた饅頭を懐から出して進呈。

 すると、ぷんすかな顔は一瞬で笑顔になった。

 もう冷めてしまっているそれを、しかし美味しそうに食べる袁術。

 そのくせ、温かいのがいいのじゃとしっかり文句は言う。

 ほんと、ぺろりとたいらげたあとのくせしてよく言う。

 

「では一刀、早速城を案内するがよいぞ?」

「だめですよーお嬢様。わたくし北郷はこれより、仕事の報告書を書かなくてはならないのです」

「なぜじゃっ? わ、妾の案内より大事なことなのかそれはっ」

「そりゃ、これで食っていくなら必要だろ。自惚れの域に達してもまだ足りないくらい、自分が街を守っているって意識しなきゃあいけないことなんだ、これ。だから、半端は出来ない」

「むぅ……そうか……。一刀が言うのなら、そうなのであろうの……」

「ごめんな、非番の時はいろいろと付き合うから」

 

 俺の言葉に「うむっ」と元気に返す袁術は、机の椅子に座った俺の横までを歩くと、俺の膝の上によじ登る。

 すっかりここが気に入ったのか、仕事に対して指摘を飛ばすでもなく、俺が片付ける書簡を眺めていた。

 

「ん……と。三区画の通りで喧嘩……それと迷子と……道案内、手伝い……」

 

 竹簡に、墨に塗れた筆が走る。

 昔からこの時代で漢文を書いていた人にはまだまだ遠く及ばないが、それなりに読みやすくはなっている……と思う。無理して上手く書こうとすると遅くなってしまうから、そこのところはそれなりの読みやすさで勘弁してほしい。

 素早く書いても上手く文字を書ける人は凄いな。

 こう、素早さ重視で書くと、ヘンテコな文字に……いや、それ以上に筆が上手く回ってくれず、もじゃもじゃ文字になってしまう。

 三区画の三(参)をさらら~とシャーペン感覚で書こうとすると、もう何が書いてあるのかわからない。黒い丸があるだけだ。

 

「筆、もっと細くするかな」

 

 言いながら、わざわざ取りに行くのもなんだしと、しっかりじっくり書いていく。

 袁術はそんな俺の手の動きを退屈そうに、しかし離れることなくじーっと見ていた。

 

「……っと、ここから先は他の通りの報告があったほうが、手に取る人にとっては読みやすいよな」

 

 うーむ、三人はまだだろうか。

 

「……む? 終わったのかの?」

「んや、まだまだ。あとは他の三人の報告が必要だから、三人が来てからだ」

「また誰か来るのかやっ!?」

「そう嫌がらないの。いい加減慣れなさい」

 

 そう言うと、袁術は俺の膝から降りると寝台の上まで走り……登るや、布団を被って亀と化した。

 そんな彼女を見た俺は、“妾を守るのが一刀の役目であろ”や“ならば早う来やれー!”等の言葉を言われる前に移動し───ようとしたところに、ノックの音。

 返事を返すと、凪の声。

 

「鍵はかかってないぞー」

 

 返事なんて前から変わっちゃいない。

 むしろ、同じにしたくてわざとそう言うと、少し呆れた顔の三人が中へと入ってくる。

 

「隊長はあれやな……変わった思ても隊長やな……」

「しみじみ言われると、わざと言った甲斐が無いんだが。っと、それはいいや。まず報告から頼んでいいか?」

「はっ!」

「了解なのー!」

 

 少しだけ浮かせた腰を椅子に落ち着かせると、机の前に立つ三人の言葉を受け取りながら筆を走らせる。

 ……こういう時、この携帯電話に録音機能でもあればなぁと思うのは贅沢か。

 通話中の声しか録音できないもんな、これ。

 そう思いながらも要点をしっかり、しかし補足をつけることを忘れず……あんまりにも説明的にならないように気をつけて……と。うん、上手くいかん。

 仕方ないのでまずメモにシャーペンを走らせ、書かなきゃいけないことだけをしっかり書いておく。……ん、これでよし。

 

「よし、っと。それじゃあ早速綿菓子機のことだけど」

「お~ぉ待っとったで~!」

 

 メモを胸ポケットに突っ込むと、いざとかけた声に盛大に反応する真桜さん。

 新たなものの開発に心を躍らせているのか、鼻息も荒く先を促してくる。

 落ち着いた様子の凪も、伏せている目を開くと……その目がキラキラと輝いていた。

 沙和も甘いものと聞いては黙っていられないらしく、この三人が同じことを目の前に興奮する、なんてものを珍しく発見出来た気分だった。

 それからは当然これをつかってああやって~という、この時代に合った素材での説明を……真桜の素材説明も混ぜながら煮詰めていく。

 必要になればメモを取り出し、絵を描くのだが……出来は相変わらずだ、下手と思わば笑ってくれ。

 

「で、ここに穴を開けてな?」

「なるほどなぁ……器に穴開けて、それを回転させながら熱すれば……溶けた砂糖が糸状に飛ぶってわけやな……」

「それを棒で絡め取って重ねていけば、綿菓子の完成だ。もちろん溶けた砂糖の糸が飛び過ぎないように、円形の壁とかがあったほうがいいな」

「ふむふむ……あー、熱を当てなきゃならんってのがなかなか難しそーやなぁ」

 

 そういや、ガスバーナーとかこの時代には……かといって、焚き火の上でやるわけにもいかないしな。

 

「なぁ凪ー? 凪の氣ぃで器を熱ぅすることとかって……」

「……わたしの氣はそんなことをするためのものじゃないぞ」

 

 ……ふむ。

 あらかじめ焼いておいた石かなんかを器の下に置いて、その熱で……ううむ。

 傍で石をたくさん焼いておく必要があるよな。

 なんだろうなぁ、真桜ならガスバーナーくらい持ってそうなイメージがある。

 でも炉がどうのこうの言ってたから、そんなものあるわけないし。

 

「そういえば真桜、お前の螺旋槍って氣で回転するんだよな?」

「んー、それがどないしたん?」

「台は鉄板細工みたいにして、器は氣で回転するように出来れば、焚き火でも出来るんじゃないかって。問題だったのは、回転させるための絡繰が火で焼け付かないかってことなわけだし」

「お……なるほどなぁ。けど隊長~? 氣で回転させるにしても触れなあかんやろ」

「む……いい線いってると思ったんだけどな」

「それに、食べるたびに氣ぃ使うとったらぶっ倒れんで……」

「そりゃそうだ」

 

 これは中々難しい。

 からくりを焼け付かせてしまえば器は動かないし、熱に強いからくりを作ろうにも、そこまでいくと素材費が結構な額にいきそうだ。

 ガスバーナー製作から行ってみるとか? ああいや、火は蝋燭を何本か拝借して、それで熱すればいいか。

 あと、受け止め台は……たらいかなんかでも借りるか? 使ってないやつがいいな。

 棒は適当に見つければいいし、回転させる器は……回転、回転かぁ……。

 よっぽど早く回転させなきゃいけなかった気がするんだよな。

 たぶん軽いからくり程度じゃあ糸状で砂糖を吐き出すなんて無茶だ。

 下手な速度だと、どろりとした粘液が器からこぼれることに…………考えるのやめよう。

 

「やっぱり回転させるなら、相当な速さが出せる方法があればいいな」

「そうなん?」

「そうなん。熱するのは蝋燭を借りよう。受け止め皿はたらいかなんかを借りるとして」

「たらいって、なんかあんまりいい感じじゃないのー……」

「まあ、食べる印象とはちょっと遠いかもな」

 

 かりかりとシャーペンを走らせ、次々と図を作っていく。

 三人で案を出し合い、あーでもないこーでもないと繋げ……夜も遅いっていうのに真桜が走り、…………戻ってこなくなった。

 俺と凪と沙和はというと、報告を纏めながら待っていたんだけど……いつまで経っても戻ってこない真桜を思い、凪がついにあくびを漏らしたところで解散というかたちになった。


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