真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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60:魏/慣れること①

102/慣れると出来ることもある

 

 とある、まだ景色に薄暗さの残る朝。

 飽きもせずに城壁の上を走るのは、俺と春蘭、そして凪。

 巡り巡って再び非番の日が来たらしく、それが三日毎の鍛錬に重なり、こうして二人で地面を蹴り弾き続けていた。

 凪と調子を合わせて走るでもなく只管に前を目指し、そうした中で中庭をちらりと見下ろせば、自身の得物をぶつけ合う思春と華雄。

 朝から付き合ってくれて感謝だが、ちゃんと寝ているんだろうか。

 特に思春には、俺が三日毎に鍛錬の日を入れることで、随分と迷惑をかけてしまっている。とどのつまりは警備隊で仕事をしてもらっているのだ。

 華琳も“思春ほどの人材を庶人扱いで遊ばせておくのはもったいないわ”とは言ってくれた。だから、まずは“俺の下に就いている”という俺でも時折忘れてしまう事実をもとに、警備隊に入ってもらった。

 思春自身も“貴様の下───警備隊長の下に就いているのだから、これが普通だ”と言ってはくれたんだけど、その勤務時間は主に俺が鍛錬をする日に集中している。だから俺の代役をやらせてるみたいで罪悪感がさ……ねぇ?

 

「ふんっ! なかなかやるではないか北郷!」

「調子が戻るまで長かったけど、これでも走りでなら鈴々───張飛に勝ったことがあるんだ! いつまでも置き去りにされたままでなんかいないっ!」

 

 負けてなるものか、離されてなるものかと、春蘭のすぐ後ろを駆け続ける。

 隙在らばたった一度でもいい、たった一瞬でも構わないから追い抜いてくれようと、前へ前へと地を蹴り続ける。

 だというのにあと少しの差がどうしても縮まらない。

 春蘭も春蘭で、俺に抜かれてなるものかと躍起になっているのだろうか。

 

「た、隊長っ! そう無理をされては……!」

「───っ!」

 

 その少し後ろを同じく走る凪が声をかけてくるが、声を返す余裕などは一切ない。

 走ること、前へと進む以外のことに強く意識を傾けてしまえば、それこそほんの少しの気の緩みが原因で差をつけられてしまう。

 だからちらりと凪を見て、せめて目で語った。

 

 「戦である! これは既に走りという名の道を、相手よりも一歩先に進まんとする戦いである!」という言葉を届けんばかりの眼光を向けることで。

 

 ……そんなんで通じれば苦労はしないけどね。

 けれど、無理はしていない。鈴々に勝ったことがあるのも事実だ。今すぐ追い越すなんてことはできないものの、まだまだ体力に余裕はある。

 もっとも───鈴々に勝てたのなんて、たった一度だけだが。

 

「───春蘭さまっ、隊長っ! 次の角で約束の“ごおる”です!」

『!!』

 

 なんてことを考えていようが、凪の声がかかれば一気にラストスパート。

 春蘭もさらに速度をあげんばかりの勢いだ。

 俺も、余力を残そうとはせず、ただ今この時の勝利を掴むために全力を振り絞る!!

 

『っ───……~っ!! おぉおおおおおおおっ!!』

 

 いっそ角にぶち当たる気で───否! ぶちあたるだけではなく破壊し、さらに突き進む勢いで走る!!

 体勢は前傾! 倒れるだろってくらいに体を傾け、足に込めた氣で地面を弾き、前へ、前へ、前へ、前へ───!!

 その、前に───只管に前に出んとする意識と姿勢が僅かだろうが善に転がったのだろうか。俺はとうとう春蘭の横に並ぶことが叶い、その事実に驚き───もせず不敵に笑う春蘭は、角が近付いているにも関わらず力を込め、視線は俺にではなくどうしてか城壁の角の先へと向けられ───って、まさか。

 

『───フッ!』

 

 角に辿り着く。と同時にやはり地面を蹴り、直角に飛ぶようにさらに先へと走る!

 

「なにぃっ!? 北郷貴様ぁっ! 真似をするなっ!」

「やっぱりかぁっ! どうせどっちが先に辿り着こうが、相手より長く走ったほうが勝ちだとか言う気だったんだろっ! 到着は同時……だったら次はどっちが一歩先を踏みしめられるか……!」

「むぅうう! 北郷のくせに生意気なっ!」

「追いすがっただけで生意気よばわり!? どっ……どこのスネちゃまだぁ!!」

 

 この場合はジャイアンか!? ええいそんなことはどうでもいい!

 売られた勝負は買いましょう! 一度でも今日は負けんと決めたのなら───一刀よ! 己の全てを吐き出してこそだろう!

 

『うぅおおおおおおおっ!!』

 

 そして走る。

 体力、氣、呼吸。体の様々が続く限り、負けはせぬと断ずるように。

 

「しゅっ……春蘭さまぁっ! 隊長ぉおっ!? いつまで走るつもりですかぁああっ!!」

 

 後ろから聞こえる凪の声も大分呆れが混ざっている。

 きっとここで自分だけ止まったら悪いと感じたのだろう、律儀に走ってくれる彼女に感謝と謝罪を心の中で届けるとともに、さらにさらにと前を目指し続けた。

 

……。

 

 走りの鍛錬が終われば次は実技。

 一対一で戦うことを実技と呼べるのかは甚だ疑問ではあるが、それでもやっぱり相手が居ると研ぎ澄ます意識のレベルも変わってくる。

 ……特に相手が春蘭だとね。

 

「はっはっはっはっは! どうした北郷! かかってこないのかぁっ!」

「おっ! だっ! とわっ! たっ、とっ!」

 

 振るわれる模擬刀の一撃一撃をなんとか避けていく。

 一度受け止めてみたけど、手が痺れました。受け止めるにも、威力を逸らす氣を付加させなきゃいけないなんて、対峙する相手としてはとても疲れる相手だ。

 鈴々もそうだったから、むしろこのパターンはありがたくもあり、実は焦りの量も口で慌てて見せているほどのものでもない。

 春蘭はこちらが何もしなくても追い詰め、撃を振るう───それはイメージトレーニングで散々した通りのもの。追い掛け回されるイメージと戦い続けたのだから、追われることにそれほどまでの緊張は抱かなかった。

 

「───」

 

 冷静に、その動きを目に、頭に叩き込んでいく。

 思い出してみても呆れるほかないのだが、回転力は長柄の得物だというのに鈴々のほうが速かったりした。

 けれどその分、春蘭からは“確実に追い詰めて相手を潰す迫力”ってものを常に感じる。

 ……普段から追い掛け回されて耐性を作っていなければ、睨まれただけで動けなかったかもしれない。なるほど、こんな武人を前に得物を突き出した兵は実に勇者だ。だから俺が“でも僕怖かったんだ!”って泣いても不思議じゃない。……不思議じゃないヨ?

 

「むう……興覇? 北郷は何故反撃をせんのだ?」

「……。何故それを私に訊く」

「私の時にも攻撃はせず、避けてばかりの日が随分とあったから、少し気になったのだが……お前は北郷の鍛錬をずっと見てきたのだろう?」

「………」

 

 少し離れた場所で、俺と春蘭の模擬戦闘を見る思春、華雄の声が耳に届く。

 意識を集中しているからだろうか、他の音といえば剣と木刀がぶつかり合う音ばかりが聞こえるのに、人の声がやけに大きく聞こえた。

 しかし、華雄の質問に思春は答えず、少しの間を置いてから凪が口を開いた。

 

「あれはおそらく……反撃をしないのではなく、見ているのだと思います」

「見る?」

「───……ああ。あの男は相手の動きや気迫、仕合うことで感じる殺気や緊張といったものを覚え、その感覚と戦うことを基本においた鍛錬をしている。凪の言う通り、あれは見ているんだろう」

 

 凪に続いて口を開いたのは思春。なんかもう、見透かされてて少しだけ恥ずかしい。

 心境はといえば、学校でなんとなく上手くいった物事を、“みんなに見せてごらんなさい”と教師に言われた時のような……喩えが長いか。

 

「そんなものが鍛錬に役立つのか?」

「意識して違う動作を混ぜるように仕合わねば、面白いほどに先を取られることになる。それは、逆を説けば鍛錬に付き合った期間が長いほど、知られるということだ」

 

 それでも勝たせてはくれないくせに、よく仰る。

 とはいえ、鈴々にも言えるけど、春蘭も本能で戦ってるみたいで攻撃一つ一つにクセがない。なもんだから、これがこう来たら次は……なんて予測がてんでつかない。

 ただし、本能で戦う相手だからこそ軽い誘導は出来る。

 わざと軽く体勢を崩したり、隙を見せたり……そんなことをしたって野生の勘は誘いに乗りはしない。ならどうするかっていったら、その行動。自分の隙に説得力を付加させる。

 本能で動いているのなら、相手の氣の乱れ、慌て様、様々なものに意識が向いているはずだ。ならば身だけで慌てる様を見せるのではなく、氣でも意識でも本気で慌ててみせる。

 そこまでやって誘えたとして、問題になるのが……それこそそこまで本気でやってみせて、思うような反撃が出来るかどうか。

 これは相手の攻撃を誘うものであるって意識がある限りは、ほんの僅かの差だろうが体は早く動いてくれる。それを上手く誘導させることを、さっきから試しているわけだが……

 

(こっち……次はこっち、こっち───ヒィッ!? 掠った! 今掠った!)

 

 そう上手くいかないのが世の中です。

 忘れてた! というか考えもしなかった! 本能っていうかもう好き勝手に振るってるだけで、相手の隙とか全然考えてないよこの人! 春蘭で、相手が俺だもんなぁ! そりゃそうだよ! 適当に振るっていればいつかは終わるって感じで、相手の隙を伺うとかそもそもそういった達人同士の探り合いをする気が全然ないよ!

 だったらどうする!? どう───って、鈴々と戦うつもりで突っ込むしかないだろ!

 小細工が通用しない相手ならそう! 最初から何も考えずに全力! ただし相手の動きとかはちゃんと頭に叩き込んで、いつでもイメージトレーニングが出来るように───!

 

「あ……見るのをやめましたね」

「見たところで参考にならんと踏んだのだろう。確かにどれだけ相手の動きを記憶しようと、本能で戦う相手に対してはあまり有効的とは言えんな」

「……“参考にならない”は、少し言いすぎでは?」

「相手を、ただ力で叩き潰せばいいと突撃してくる者の動きを覚え尽くす必要があるか? 相手を格下だと確信するあまり、攻撃の全てが避けられていることに気づいてもいない相手の動きを」

「───あ……」

 

 確かにそうだけど、簡単に避けられるほど楽じゃないぞこれ!

 追い掛け回すことが習慣化してたからだろうけど、大振りのソレでもどうしようもなく緊張はするし、大振りでも速いんだってば振る速度が!

 でも───よしっ! 男ならやってやれだ!

 

(集中……!)

 

 木刀に氣を込める。

 強く、強く。

 そして、大振りに放たれる春蘭の一撃にソレを添えるように振るい、自分に当たるはずだった軌道を強引に逸らす。

 

「なっ!? はうっ!」

 

 そんな事実に春蘭が驚いたまさに次の瞬間には、既に行動を移していた俺の中指が、春蘭の額をビシィと弾いていた。

 

「な、あ……う……?」

 

 春蘭はといえば、散々と逃げてばかりだった俺の急な反撃に、額を押さえながらポカンとして停止。

 俺はといえば……そんな春蘭を見て、方法はどうあれ一撃を当てたことを素直に喜んだ。

 ……喜んだけど、逸らした先の剣が地面を抉っていることに、さすがに背筋に冷たいものを感じた。氣で強化してなかったら、今頃逸らそうとする力ごと叩き潰されて、あの地面のように大変なことに……。

 

「…………」

「…………」

「……えと、春蘭?」

「……認めん」

「エ?」

 

 目をまん丸くして停止していた春蘭だったが、急にボソリと言うと、キッと俺を睨んで模擬刀を構えた。

 

「今のは無効だっ! 次は本気で貴様を潰す!」

「いやいや春蘭、それはそうじゃなくてな? 仕合は3本勝負と決まってるらしいから、これから春蘭が3回勝てば問題ないんだ」

「んん? そ、そうなのか?」

「そうらしい。蜀の趙子龍が自信満々に仰ってた。だから一回卑劣にも隙を突かれようが、春蘭がここから3回勝てばいいんだ」

「おおなるほどっ! それはわかり易いなっ!」

「あ。でも逆を言えばあと二回当てられれば春蘭の負けってことになるから、ちゃんと来ないとまた隙を突くからな」

「言われるまでもない!」

 

 ニヤリと笑う春蘭。けど殺気は明らかにさっきよりも重い。

 よ、よし、これでひとまずは目的の一つは達成。

 ただ適当に振るわれるだけだった攻撃も、これからは本物になるだろう。

 適当だったからこそ突けた隙がどれだけ変わってくるのかはわからないが───精々頭や体に叩き込もう。この意識が続く限り───!!

 

  続く───つづ、つ───ギャアアアアアアアアアアアア!!!

 

……。

 

 えー……はい、結論。甘い夢見た俺が馬鹿だった。

 あっという間に二本返され、その時に生まれた“やはり余裕だ”という意識を突いて一本を返した……まではよかったんだが、大マジにおなりあそばれた魏武の大剣さまの攻撃で、大空を舞う俺が居ました。

 ちゃんと木刀で受け止めたんだけどなぁ……で、飛んだ先の木に背中をしこたま打ち付けて、立てはしたけど動きが鈍くなったところへあっさりと落とされる一撃。それで、三本仕合という名の模擬戦闘は終了した。

 いや、でも結構粘れた。勝てはしなかったけど、きちんと向かい合って二本取れたのが純粋に嬉しい。

 どっちも相手の油断を突いてのことではあったが、それはそれだ。油断するほうが悪い。

 

「くぅうう……っ……はっ……はっ……! 腕が……ま、まだっ……痺れてる……っ!」

「春蘭さまと本気でぶつかり合うなんて無茶をするからです」

「そりゃ……はぁっ……そうかも、だけど……っ! 鈴々とも結構……やって、たから……はぁっ……いけるかなぁ……って……!」

 

 ピリピリとした感触だけを、何かが這うような感覚と間隔で伝えてくる手の痺れ。

 間隔というからには時折感触が薄れるのだが、やっぱり一定の間隔でゾワゾワと戻ってくる。

 そんな感触を、木の幹に座り、凪に付き添われながら味わっていた。

 ……そう、本気でぶつかりあった。あくまで俺は。

 二本取られて二本取って、互いの三本を狙う際には小細工無しの全力。

 氣を全力行使して、振るわれれば受け止めもして弾きもして逸らしもして、もちろんそれだけではなく攻撃も散々とした。

 手の痺れなど知ったことかと気合いだけでぶつかったようなものだな、うん。

 結局は、“これは逸らせる”と自分の力を少しでも過信したため、空を飛んだ。

 もっと慎重になっていれば、まだ粘れただろうに。

 と、がっくりきているところに楽しげに近付いてくる影ひとつ。

 

「はっはっは、今回も私の勝ちだなっ」

「あ、あー……ああ……負けたよ……はぁっ……やっぱり……勝てないなぁ……はは、はぁあ……!」

 

 腰に両手を当てて嬉しそうに言うのは春蘭だった。

 俺も全力を出して負けたのだから、素直に両手を軽く上げての降参ポーズ。

 負けず嫌いなのも結構だろうが、こうまで真正面から叩き伏せられるとね。

 というか呼吸辛い。なかなか落ち着いてくれない。これでもマシになった方なんだが……ん、んん……深呼吸深呼吸……。

 

「すぅ……はぁあ……すぅううう……はぁあ………………。んっ、よし、と。……で、これからどうするんだ? そろそろ昼……は、もう過ぎてるな。あっちゃあ……完全に食いっぱぐれたな。どうしよ」

 

 どうしようもなにも、口に入れても食べられるかが疑問だ。

 さすがに吐いたりは…………しないよな?

 

「どうしようだと? 当然、食事をするに決まっているだろう。そうだな、今日の貴様は逃げずに頑張ったから、外に食いに行くのなら貴様の食いたい場所でいいぞ」

 

 そしてこの人は、あれだけ動いても食事は余裕らしい。

 ……春蘭と鍛錬してると、ほんといつまで経っても自分はまだまだだなって思うよ……。

 

「え……いいのか? じゃあ、三区画目のあっさり塩ラーメンが……」

「あそこは量が少ないから好かん」

 

 いえあの、量が少ないのを選んだんですが───?

 

「そ、そうか? じゃあ同じく三区画目の杏仁豆腐が美味い───」

「あんなちまちましたもので腹が膨れるかっ」

「え……えぇええ……? じゃあその隣の豚まんが美味い……」

「今日はラーメンの気分だからだめだ」

「………」

「? どうした?」

 

 いや、“どうした”って……相変わらずだなぁこの大剣さまは。

 変わらず、少しずつ深呼吸を繰り返しながら、体の熱が引くのを待った。

 その間にも行くべき場所を頭の中で検索、絞り込んでみる。

 

「ラーメンが食べたいんだな? ちまちましてないで、がっつり食える。となると───」

「大通りの登龍麺店でしょうか」

「だな。あそこは量も多いし、味もいいし───」

「そこは昨日食べたばかりだからだめだ」

『………』

 

 俺と凪、二人して固まった。

 どうしろっていうんですかあなたは。あなたはあれですか、なんでも会長任せにしておいてるくせに、文句や意見ばかりはちゃっかり言いまくる生徒会役員ですか。

 いや、大分違うか。

 

「……凪」

「はい、隊長」

 

 見つめ合い、こくりと頷く俺と凪。

 だめだだめだと言うのなら、良しと言わせてみせるのが我ら北郷警備隊。

 警備隊のくせに、やってるのは道先案内ばっかりなのは気にしない方向で。

 

「おーい思春、華雄ー! 昼餉、一緒に食べに行こう! リクエス───じゃなかった、どこか行きたい場所があったら言ってくれー!」

 

 どうせなら行きたい場所が重なったほうがいいので、軽く仕合をしていた二人に声をかけてから、ようやく痺れが取れた手を地面について立ち上がる。

 

(……うん)

 

 なんだかんだで鍛錬にもついていけてるし、この調子なら華琳が帰ってくるまで続けられるだろう。そうなれば、三日毎の鍛錬が可能になる。

 もちろん仕事は仕事できちんと片付けなきゃいけない。今日までの中でも凪や真桜や沙和の報告に加え、思春からの報告もきちんと受け取って纏めたりしていた。

 自分が確認したものをわざわざ俺に報告するのが嫌なのか、思春は俺を睨んできてたりしたが……それでも、嫌とは言わないんだよな。だからつい頼ってしまう。だめだなぁとは思うものの……うーん。

 などと考え事をしているうちに華雄と二人、こちらに来た思春に軽く質問を投げてみる。

 

「ん……なぁ思春。思春はさ、嫌なことは嫌って言うよな?」

「貴様が相手ならば特にな」

「…………ははっ、だよなぁ」

「……?」

 

 予想通りの迷いの無い即答に思わず破顔した。

 だから、聞こえるか聞こえないかってくらいの声量で呟いた。

 これからもよろしくと。

 


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