真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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71:三国連合/氣の扱い方【基礎強化編】②

 昼。

 全力で走るよりも体力を使った俺は、季衣や鈴々とともにこれでもかとメシを食らう。

 それが終われば再び中庭に戻り、早歩きの練習。

 歩くことには慣れた。ならば早歩き。次に走って、次が全力疾走。

 行程としてはそんなところだが、そこまで行くのが辛い。

 まさかきちんと歩くようになるまでに、昼までかかるとは思いもしなかった。どーせすぐ慣れるだろうなんて考えていたんだが……普通のこと、出来て当然のことがこれほど難しいことだったとは。

 すごいね、人体。

 

「はぉおおおお……!」

 

 奇妙な呼吸をわざとしてみて、氣や氣脈に影響がないかを調べてみる。

 うん、当然のことながらな~んにもなかった。

 しかしこういう試みは無意味かもしれないものの楽しいもので、早歩きをしながらも試し続けている。

 

「すぅうう…………はぁああああ……! すぅうう…………はぁああ…………!」

 

 呼吸はあくまで深呼吸。

 肺には新鮮な空気のみを残すように、やはり吐ききってから吸う。

 吐くのと一緒に締める腹筋が肺を持ち上げるような感覚とともに、肺の中の空気が出切るのを手伝う。

 

「うん、暑い」

 

 氣脈活性の影響と、呼吸の影響で体が暑い。

 といっても昨夜のあの熱さに比べれば、夏の日差しよりもてんで涼しいくらいだ。

 昨夜のが“熱い”で、今のは“暑い”だからな……。

 

「スッスッ、ハッハッ……スゥウウ……ハァアアア……!!」

 

 呼吸に変化をつけてみると、滲み出た汗がなんとなく体を冷やすような感覚に襲われる。そんな感覚をもっと燃やすために、早いとは思ったけど軽く駆け出してみた。

 ……バランスが取れずにコケた。兵の前で。

 

「み、御遣いさま、平気で……?」

「ん、ごめん。大丈夫」

 

 起きるのを手伝ってくれた兵に礼を言って歩き出す。

 事情はもう話してあるから、笑われたりはしなかったものの……はい、正直恥ずかしいです。

 

「無理はいけないよな、無理は」

 

 とにかく氣を扱うことに慣れないと。

 一歩ずつ一歩ずつ~……!

 

……。

 

 昼食時が完全に過ぎ、中庭が賑やかになる頃には多少は走れるようになっていた。

 だが無理はせず、だめだと思えば少しずつ速度を下げてから歩き、立ち止まったその場所で屈伸運動。

 氣とともに満足に動けるようになることだけを前提に体を動かして、少し休んでまた動く。その繰り返しだ。

 

「氣の鍛錬の効率がわからない……」

 

 筋肉は三日休んで動かしての繰り返しだったけど、氣のことは本当に謎である。

 一緒の原理でいいのかなーなんて思っても、俺普通に氣の鍛錬だけは毎日って言っていいほどやってたもんなぁ。

 

「………」

 

 城壁の上で空を仰ぐ。

 まだ陽が落ちるには少々ある空を。

 そうしてから中庭を見下ろし、こくりと頷く。

 誰も見ていない。兵は心配そうに見てるけど、それには大丈夫だから~という意味も込めて軽く手を振って返す。

 

「今なら……今なら出来る気がする」

 

 氣を持て余すのは仕方が無いとはいえ、体の中が違和感でいっぱいな現在。

 その原因を一度でいいから外に出したい衝動に駆られている。

 放出したいのだ。溜まりに溜まった氣を。

 

(……溜まるって言葉であっちの方を思い出してしまう自分がちょっと嫌だ)

 

 首を振ってから構える。

 どんな構えをといえば、以前は呉でシャオに邪魔をされてしまったあの構え。

 

「かぁああ……!」

 

 両手の手首をくっつけるようにして、手の平は少しだけ開くように。

 それを、重心を落とした腰近くに構え、深呼吸をするように言葉を放つ。

 

「めぇええ……!」

 

 氣の収束を掌にて。

 やはり以前の氣よりも扱いづらいが、朝一番のあの辛さに比べればどうってことない。

 

「はぁああ……!」

 

 金色に輝く氣を体外に。

 すると掌が輝き始め、その輝きが質量となって両掌の中心に集い───

 

「めぇええ……!」

 

 ───今。

 かつて果たせなかった少年の浪漫を、この大空に向けて!

 

「一刀様っ、鍛錬お疲れさまですっ」

「波ぁあああッキャアアアーッ!?」

 

 ……手を突き出した途端に背後から声を掛けられ絶叫する俺が居た。

 もちろん集中力が散った氣は体内に戻ってしまい、慌てて振り向いた先には……きょとんと首を傾げる明命サンが。

 

「? あの、一刀様? …………はうわっ!? もしかして私、何かの邪魔をしてしまいましたかっ!?」

「い、いやっ……邪魔、っ……ていうか……その……!」

 

 心臓がバックンバックン鳴っている。

 ど、どうしてだろうね。少年の頃の熱い魂を空へと打ち上げたいだけなのに、それを人に見られるのがとても恥ずかしい。それがどういう行為なのかなんて、天の少年の夢でございますとでも言えばあながち嘘なんかじゃなかった筈なのに。

 

「え、えと、そのっ……今のはっ…………あ、あー! 明命どうしたんだっ!? 準備があるって言ってたのにっ!」

「あ、はいっ! その準備もお昼までで終わりましたので、一刀様のご様子をっ!」

「そ……そっか。ありがとな?」

 

 心臓が跳ねてる所為で、どうにも上手く言葉が返せない。

 そんな俺の言葉に明命は素直に「いえいえですっ」と嬉しそうに返してくれる。

 ……なんだか軽く罪悪感。

 

「それで……どうですか? 少しは慣れましたでしょうか」

 

 胸に浮く罪悪感をドスドスと殴ることで打ち消す。そんなもので消えてくれれば苦労はしないものの、とりあえずは話を振られたことで隠れはしてくれた。

 

「多分順調。今は軽く走ることくらいは出来るようになったよ」

 

 といっても、スキップなのか走ってるのかわからない程度のものだ。

 呼吸のためのリズムなんて取る余裕もない。なので早歩きと走りもどきを繰り返しているところだ。

 

「あぅあぅ……随分と扱いに困っているようですね……」

「文字通り、困ったことに」

 

 もう少し自分の都合のいいように扱えればなと思ってしまう。

 しかしながら手足のように思い通りにはいかず、無理に扱おうとすればコケてしまう。

 なので一度吐き出そうとしたところへ明命が来た。

 

「ならばいっそ、一度思い切り外へ出して見てはどうでしょうか」

「あ……やっぱり明命もそう思う?」

「はい? やっぱりとは…………はうわっ!? まままさか先ほどのあれはっ!」

「あぁああ待った待った! 確かにそうだけどもう過ぎたことだからっ! それにあれはただの俺の都合の所為だし、そもそも見られて減るものでもっ…………あり、そうな気がするけどっ! だだ大丈夫! 今からやるからすぐやるからっ!」

 

 驚き、落ち込み始めた明命に待ったをかけると怒涛の勢いで言葉を並べる。

 ……並べてから、どさくさ紛れに“やる”と言ってしまった自分を呪った。

 俺の馬鹿……。

 

「うぅ……じゃあ、やるから……見ててくれな……」

「はいっ」

「おかしなところがあったら、遠慮なく言ってくれ。そうしてくれたほうが嬉しい」

「う、嬉しいですか。わかりましたっ、必ずやっ!」

「え……あの、そんなに気張らなくても」

 

 む、無理に悪いところ見つける必要はないぞー? などと心の中で言ったところで届くはずもなく、溜め息ひとつ、例の構えをとりつつ重心を下へ。

 

「……!《わくわくっ……》」

 

 そんな俺の真剣な顔を見るのが嬉しいのか、はたまた天での技術っぽいものを見られるのが嬉しいのか。明命は目を輝かせ、胸の前で手を合わせたままで俺をじぃっと見つめてきていた。

 うう……見られたくないものだけあって、凝視されるとやり辛い。

 だが我慢だ北郷一刀! こんな状況でも氣を収束出来る自分であれ!

 

(集中……集中……)

 

 深呼吸をして、人前で何かを為す時に現れる妙な高揚感を落ち着かせるよう努める。

 思いばかりが先走っては元も子もない。

 なので慎重に、呼吸も鼓動も鎮めて……。

 

「かぁああ……めぇえ……はぁあ……めぇええ……!」

 

 氣脈に充実している氣を掌に集める。

 氣の全てではなく、凪に忠告されたように放ちたい量だけを千切るかたちで。

 そうして集まり、体外───掌へと切り離された氣は輝きを放ち、空へと放たれる時を今か今かと待っている。

 明命はそんな輝きに目を向け、やがて掛け声や気合いとともに放たれる光弾を───

 

「波ぁぁぁぁーっ!!」

「はうわぁーっ!?」

 

 ───驚きの表情のままに、見送った。

 さすがにアニメのような音はならなかったし、光線のように放たれ続けるわけでもない。あえて言うなら操氣弾のようなソレが空へと飛んでいき、やがて見えなくなるまで……叫んだあとの俺達は、静かに見送った。

 

「…………」

 

 しかしなんだろう、この湧き上がる高揚は。

 抑えていた何かが弾かれるように自分の中で生まれては、俺に喜びという感情を与え続けている。

 そう……そうだよ。カタチはヤム○ャだったけど、出来た……出来たんだ。

 アバンストラッシュに続いて、ついに俺は───!

 

「あっははは! やった! やったぜ明命ーっ!!」

「はうわぁああっ!!?」

 

 喜びのあまりに口調が変わるのもお構い無しに、駆け寄って抱き締めた明命を自分の体を軸に振り回した。

 出来た! とうとう出来た! かめはめ波! 及川っ、俺やったよ! フィクションでしかないと諦めていた夢を叶えることが出来たんだ!

 やばい! すごい嬉しい! めっちゃ嬉しい! なんかもう意味もなく“超”とかつけたくなるくらいに嬉しい! 繋げて言えば超嬉しい!

 そんな嬉しさを彼女にも伝えたくて、彼女が教えてくれたことに報いるように自分の氣で明命を包み、感謝の思いを伝えまくる。言葉ですら全て届けられないこの思い、今こそ届けとばかりに。

 人の感情ってのは氣ってものに影響するのか、ひどくあっさりと扱えた氣が明命を包み込み、それと一緒に自分自身の腕でも彼女をぎゅうっと抱き締めた。

 するとなにやら、くてりと明命から感じる力が消失し…………ハテと見てみれば、目を回してぐったりとしておられる明命さん。───ってまたですか!? 昨日もこんな感じで亞莎が目を回して! ……で、いつものパターンだと、ここに誰かが来てまた俺が誤解されるわけで。

 大丈夫、伊達にいろいろ経験してません。本当に。

 

「こういう時は───素直に逃げる!!」

 

 ちらりと見れば、予想通りに中庭から石段を登ってこちらへ向かう将数名。

 恐らくは空を飛んだ光のことを確かめに向かっているんだろう。

 そんな彼女らに見つかる前に背を向け、明命を抱き締めたままに逃走。体内に渦巻いていた氣が解放された分、少しは自分の思い通りになるようになってくれた氣を行使して、地面を蹴っていた。

 

「止まれ」

「キャーッ!?」

 

 しかし僅か数歩で逃走劇は中断され、なんとか止まってみれば……曲刀を構えてらっしゃる思春さん。

 

「あ、あぶっ……! 止まれなかったら首飛んでたぞ!?」

「貴様の動きなど既に見切り済みだ。誤るものか」

「………」

 

 伊達に長い付き合いじゃないね、と言おうとしたけどやめた。

 むしろ見切られてる自分が悲しい。

 

「で、あの……な、なに? 予想はつくけど」

「訊ねることは二つだ。先ほどの光を放ったのは貴様か。そして幼平を何処へ連れていく気だ」

「………」

 

 庶人服のまま、以前ならば結わいていた髪をほどいている目の前の彼女。

 風が吹くたびに、さぁ……と揺れる長い髪が実に綺麗です。

 これで曲刀を人の首に押し付けてなければ大変眩しい光景だったのでしょうが。

 

「ま、まずひとつ……光を放ったのは俺。二つ目は……振り回しすぎて目を回しちゃったみたいだから、どこか落ち着けるところに寝かせてこようかと……」

「……貴様」

「ヒィ!?」

 

 ヒタリと喉を襲う冷たさ! 鈴音ですね! 確認するまでもなく!

 

「いや違うよ!? 俺の部屋とかじゃなくて!! ていうかなんでそういう考え方になるの! “貴様”としか言われてないのに解る俺も俺だけど!」

 

 ああもう本当に長い付き合いだよなぁもう!

 お陰で行動の一つ一つでも解ってしまえることが多くて怖いくらいだよ!

 わからなかったほうがよかったこともきっとあるでしょうに!

 

「で、えーと……逃げてよろしいでしょうか」

「だめだ」

 

 世紀末救世主並みの拒否速度だった。

 

……。

 

 結局やってきた季衣や鈴々を筆頭とした皆様に最初から説明するハメになる。

 中庭に降りて、まるで教師のように教鞭ではなく指を振るい、きちんと。

 掻い摘むとあとあと厄介なことになりそうなので、それはもう事細かに説明した。

 胡坐をかいて座る足には明命が猫のように丸くなって寝ている。

 そんな彼女の頭をやさしくさらりと撫でながら説明会───

 

「ふむ。ようするに明命に欲情して抱き締めたと」

「全力で違いますよ!?」

 

 なのだが、聞いた人の一人である祭さんは、からからと笑いながらそんなことを仰る。

 

「だからっ、今は氣が安定してなくて、体の中に渦巻いてたそれを、ずっと前からやりたくても出来なかった方法で放つことが出来たからっ! 喜びのあまりに明命に、そのっ、だだ抱き付いちゃったって話でっ!」

「ほう? 欲情はせんかったか? 微塵もか?」

「してませんったらしてません!!」

「なにもそこまで断言せんでもいいだろうに……。ときに北郷、お主が思う明命の好きな部分とはなんじゃ?」

「………」

 

 この人平気で話題変えてきます。

 おおらかと言えばいいのか、自由奔放と言えばいいのか。もちろん後者だろうな。

 

「なんでいきなりそんな話になるのかは知らないけど……そうだなぁ。素直で真っ直ぐなところがいいかな。こう……話してると安心するっていうか、いい意味で無邪気だよね」

「ほぉおう……?」

「……えと。なに? そのニヤァアアって笑みは」

「ならば興覇ではどうじゃ」

「思春? 思春は……気がつくと傍で見守ってくれてる安心感……かな」

「なんじゃ。そういうものは嫌がりそうなものだと思っておったが」

「呉から蜀、魏って旅をしてて、なんて言ったらいいのか……いつの間にか傍に居ると安心出来る存在になってました……かな? 曲刀向けられれば怖いし、悲鳴もあげる時もあるけど……」

 

 きちんと話を聞いてくれるのだ。

 問答無用で自由を奪うような真似はしないし、いろいろと理不尽な部分もあるにはあるものの、他の人達に比べてみれば無理矢理に押し通すような行動はしない、と思う。

 それらをひと纏めにして言ってしまえば、やっぱり“傍に居る安心感”なのだろう。

 

「だ、そうだが?」

「全てその男の世迷言です」

「ひどっ!?」

「わっはっはっ! どいつもこいつも素直でないが、恋する乙女をしとるのうっ!」

 

 にんまり笑顔で思春に話を振り、豪快に笑う祭さん。

 ちらりと思春を見てみれば、ギロリと返されて反射的に謝ってしまう俺。

 ……自覚できるほど情けない。

 

「あれ? でも、じゃあ思春って誰かに恋してハイ黙ります」

 

 口に出した途端に目にも留まらぬ速さで喉に曲刀を突きつけられた。

 ああうん、こういう時ってとことん俺に発言権がないですね。

 

「にゃ? 恋する乙女ってなんなのだ?」

「へへーんだ、お子様なお前には解らないよーだ」

「むっ……なんかむかつくのだっ! だったらお前はわかるのか春巻きー!」

「春巻きじゃないって言ってるだろー!? 言っとくけど、恋のことについてならお前なんかよりた~っくさん知ってるんだからなーっ!」

「だったら言ってみるのだっ!」

 

 季衣と鈴々の喧嘩も、迂闊に口を挟めば巻き込まれるのが目に見えているので無視。

 非道な男と笑わば笑え。猛将相手の喧嘩の仲裁がどれほど大変かを知るのなら。

 

「はあぁあ……」

 

 両手を挙げて降参したらようやく下げられた曲刀に安堵する。

 きちんと話は聞いてくれる。どう行動すれば許してもらえるかもわかる。

 けれど、何度も何度も刃を向けられては落ち着けないのも事実でして。

 

「あのさ、思春? その曲刀を突きつける癖、直さない?」

「貴様にだけだ。問題ない」

「いやあるよね!? あるでしょ!?」

「かっかっか、なにをびくびくしておる。それだけお主が特別ということじゃろう」

「なっ……祭殿!」

 

 特別……特別って。

 あの。いつでも切り捨てたいほど憎まれてるんでしょうか俺は。

 

「っ……何を見ている。斬るぞ」

「や、斬られるのは困るけど……。さ、祭さぁん……」

「情けないのぉ……そんなもの、感情の裏返しじゃろうが。もっと男らしくガッとかかってみんかい」

「裏返しって───じゃ、じゃあ思春? 鍛錬の練習、付き合ってもらっていいかな」

「いいだろう。同意の上での立ち合いならば間違いが起きても言い訳が利く」

「祭さん!? この人俺のこと殺す気満々なんですが!?」

 

 言ってみても祭さんは暢気に笑うだけ。

 その笑いがどうにも気に入らないのか、思春は少しだけ祭さんを睨んでいた。

 

「おうおう、怖い怖い。しかしあの興覇がこうまで感情を露にするとは……───ふむ。興覇よ。お主……相当に入れ込んでおるな?」

「っ───!」

「へ?」

 

 そっと思春に歩み寄った祭さんが、なにかを呟く。

 途端にバッと距離を取った思春は───どうしてか顔が真っ赤だった。

 

「ししゅ……あれ?」

「鍛錬を始めるぞ……今すぐだ」

 

 胴着の襟首ががっしと掴まれた。

 そのままずるずると俺を引っ張り、拍子に崩れた足の上からこてりと明命が落ちるが、それでも構わずのっしのっしと。

 ぬ、ぬうなんだこのかつてない殺意の波動は……! この北郷を引きずる彼女の背に、まるで鬼のオーラが浮かぶようだ……! つか怖ッ! もう怒気どころか殺気にも似たなにかを感じているのですが!?

 

「あ、あの、思春さん!? たんれっ……鍛錬ですよね!? 鍛錬に殺気は必要無いと思うんですが、その……!」

「黙れ」

「だまっ……!?」

 

 一蹴であった。

 思わず祭さんに助けを求めたが、「女の憤りを受け止めるのも男の務めぞ」とあっさりと笑って返されてしまった。じゃあ女の務めって───と言いそうになって、途中でやめる。だって祭さんがニヤリって笑うんだもの。

 それに、結局のところ鍛錬を手伝ってくれるっていうなら丁度いいって受け取ればいいんだし……うん。そんなわけだから、喧嘩している季衣と鈴々、こてりと転がってしまった明命のことを祭さんに任せ、思春と鍛錬をすることになった。


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