真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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94:IF/友達っていいね①

145/生きろ……強く生きろ

 

【燥ぐあなたのこころうち】

 

 都の一角でベーゴマが回り、弾かれる。

 

「あっ……!」

「っへへー、また俺の勝ち~♪」

 

 勝って喜んでいるのは北郷一刀少年であり、負けた少女は……金色の髪をそのままおろし、飾りつけも特にはしていない華琳だった。

 例のツインドリルが無いだけで随分と印象が変わり、さらには髑髏飾りも無ければ服も庶人服に似た作りのもの。

 ふと目を向けたところで、彼女があの曹孟徳だと思う者などほぼ居ないだろう。

 

「……難しいものね。ただ回転させればいいというわけではないと……そういうこと?」

「それだったら華雄お姉が勝っちゃうよ。お姉、ほんと全力で投げるから結構怖いんだ」

 

 「前にやった時なんて、台の布が破けたんだぜー?」と困った顔で言う。

 なるほど、こんなもので布を破くとは相当だ。

 

「けれど、思ったほど楽しくはないものね。遊べと言われて遊ぶとしても、早々切り替えられないわよ」

「それはジョルジュに楽しむ気がないからだろ? 遊びってのはもっとさ、格好つける~とかそういうのを忘れてするもんだってじーちゃんが言ってたぞ? 遊ぶ時は馬鹿になるくらいが丁度いいんだ~って」

「それは……なんというか曹孟徳としての自分が許さないわ」

「ほら。そーゆーこと考えるからダメなんだって。自分が許さないなら自分が許せばいいじゃんか。別に怖い誰かに言われてるから遊べないわけじゃないんだろー? 自分のことなのに自分で許せないって、馬鹿みたいじゃん。自分なんだから許しちゃえばいいんだって」

「………」

 

 なるほど、言い得て妙だ。状況にも寄るだろうが、自分でしか許せないことを許せるわけがないと言い続けるのはどうにもおかしい。

 ならば、いいのだろうか。遊んでしまっても、いいんだろうか。

 

「それにさ、一方がしかめっ面で遊んでると……あ、違うな。ジョルジュ遊んでないや。なんか仕事してるって顔だ。遊びは仕事でやるんじゃなくて、心からするもんだって。本能で遊ぶんだ! えーっと、もっとこうさっ、恥ずかしいと思うことを一度やると結構吹っ切れるぜ!?」

「あなたは私になにをさせたいのよ……」

「楽しんでほしいんだって。じゃなきゃ一緒の俺も楽しくないし」

「……随分とハッキリと本音を言うわね」

「んん? ヘンかな。だって、楽しいほうが楽しいじゃんか。それこそ当然のことだろ? ジョルジュが楽しめば俺だって楽しいんだ~って、そう言ってるんだけど」

「………」

「?」

 

 小さく、「あ、そ、そう……そういう、こと……」とごにょごにょと俯き呟く孟徳様。

 顔は真っ赤なのだが、子供相手に赤面させられるたと知られるのは恥だ。

 ……だが、そんな恥を素直に見せるのも楽しむ一面だと、ようするにそう言いたいのだ、目の前のお子様は。

 そんなふうに俯いていた少女の手が、仕方ないやつだなぁと呟いた少年に掴まれ、引かれる。

 急に引っ張られてつんのめるが、そこはすぐに体勢を立て直して走る。

 相手が既に走っているのだから仕方ない。

 

「ちょ、ちょっと、一刀っ?」

「あーもーうだうだ言うなっ! 俺が“楽しい”を教えてやるから、黙ってついてこいっ」

「え、あ…………───は、はい」

 

 きょとんとしてポカンとして、なにやら急に男らしいことを言われ、反射的に「はい」と言ってしまった。少し走ったあとでソレに気づいて真っ赤になってしまったのだが、口にすれば恥ずかしい思いをした上に認めるということだから、そこはなんとか堪えてみせた。

 

……。

 

 さて。それからどうなったかといえば。

 

「やぁああっほぉおおおおーっ!!」

「や、や……やほー……」

「違うってばジョルジュ! なにやってんだよジョルジュ! ああもうほんとジュルジュはジョルジュだなぁこのジョルジュ!」

「ちょっと待ちなさい! どうしてじょるじゅって呼び方が罵倒文句のようになっているのよ!」

「いいから叫ぶんだって! 叫ぶのは頭がすっきりするんだぜー? なにせ誰かを怒ってする叫びと、ただ楽しむためだけに出す叫びってのは全然違うからなっ! 人は何故叫ぶのかっ、それは腹に溜まったなにかを吐き出すためだー!」

「……と、祖父が言っていたのね?」

「いや、これはとーちゃん。それよりもほらほらっ、叫べってジョルジュ」

「だからっ……ジョルジュじゃないって言ってるでしょう!?」

「俺にじゃなくて景色に向けて叫ぶんだって! やあぁああっほーっ!!」

「…………どうしても“やっほー”でなければだめなのかしら……」

「だってジョルジュ頭固いんだもん。当然のことは当然~とか言うなら、ここはやっほーしかないじゃんか」

「こんな子供にまで頭が固いって……はぁ。ええ、いいわよ。やってやろうじゃない。丁度鬱憤が溜まってきたところよ」

「おおっ、やっとやる気が出たかっ、じゃあいくぞっ、やっほぉおおーっ!!」

「一刀のばぁあああああああかぁっ!!」

「なっ! なんだとー!? 馬鹿って言ったやつが馬鹿だっ!」

「あら。私はただ景色に言葉を投げただけよ? 誰もあなたのことだなんて言ってないわ」

「ぐくっ……だったら俺も! ジョルジュのばああーかっ!」

「ええ。じょるじゅとやらは馬鹿なのでしょうね。私はじょるじゅじゃないから知らないけれど」

「ジョルジュのぐるぐるドリルー! ジョルジュの髑髏! やーいジョルジュ! このジョルジュ! ジョルジュのばーかばーか!!」

「……~……何故かしらね。自分のことではないと思おうと努めても腹が立つわ……! っ───一刀の鈍感! 馬鹿! 種馬!!」

「な、なんだとー!? 馬鹿のほうが面白おかしく生きれるんだぞー!? あと俺馬じゃねーもん! ジョルジュなんて髑髏でドリルのくせに! あ、これただ景色に言ってるだけだかんな!」

「ええそうでしょうね! 大体一刀はそもそもふらふらとしすぎなのよ! 鈍感なくせにあっち行ったりこっち行ったり! そうであれと言ったけれど、ふらふらするなと言いたいわね! これも景色に言っているだけだけれど! 一刀のばぁああああか!!!」

「だったらわざわざ一刀って言うなばーか!!」

「人のことを言えた義理!?」

「ジョルジュじゃないんだったらいーじゃんか!」

「………」

「………」

「一刀のばーか!!」

「曹操のばーか!!」

「なっ……! い、言ったわね? この曹孟徳に向けて、馬鹿と……!」

「そっちだって散々言ったろー!? 王とか覇王以前にジョルジュに言ったんだ! 文句あっかー!」

「だからじょるじゅと呼ぶのはやめなさいっ!!」

「…………曹操?」

「自信たっぷりに罵倒しておいて、よくもまあそこで小首を傾げられるわね……!」

「すげぇだろ」

「……はぁ。いいわ、見逃しましょう。子供相手に目くじらを立てていても仕方ないし……それに、確かに声を発するというのは悪くないわ」

「だから、ヘンに頭がいいみたいな喋り方するよりもさ、“叫ぶのサイコー!”とかそういうのでいいんだって。疲れるだろ、そういう喋り方」

「あなたにとってはそうだとしても、私にとってはこれが普通なのよ」

 

 山へ行き、腹の底から叫んでみたり、

 

「あああああああああああああっ!! んんんんんんんんんんんんっ!! うおおおおおおおおーっ!!」

「それで……何故、川に来てまで叫んでいるのかしら?」

「川はすげーんだぞ! なんかマイナスジオンとかそーゆーのが出るんだって! あれ? それって滝だったっけ? あ、ジオンじゃなくてイオンだったっけ? なんか体にいいらしいぜー!? でな、曹操に足りないのはとにかくヤケみたくなることだと思うんだ。だって硬いままなんだもん。璃々はすぐに叫んだぞー?」

「あなた、これを璃々にまでやらせたというの……?」

「おうっ! 笑ってたぞっ!」

「……子供ってすごいわね」

 

 川に下りてまで叫んでみたり、

 

「曹操曹操! こっちこっち! ヘンな虫が居るぞ!」

「で、何故虫取りになっているのかしら……」

「あーもういちいちそーゆーこと言うなってば! 考えてる暇があるなら楽しむ! それが遊びの醍醐味だー! そんなわけでカブトムシっぽい虫みっけたー!」

「ひぃっ!? やっ、ちょっ……! 今すぐ逃がしなさい!」

「え? なんでさ」

「いいからっ! ていうか近づいてくるんじゃないっ!」

「……? ……あっ。……ははははははぁぁ~ん? お前、散々偉そうなこと言っといて虫が苦手なんだろー」

「ぃっ……ち、違う、わよ? なな、なにを言っているのかしら。気持ち悪いものを気持ち悪いと言っているだけで、やっ、ちょ、やめなさひぎゃーっ!? やっ、ひっ、いやーっ!? 取りなさいっ! 取っ……取ってぇえええーっ!!」

「おぉおっ!? おちっ、落ち着け曹操! 覇王がそんなことじゃだめだろ! 覇王格好いい! 覇王凛々しい!」

「虫をつけたあなたにだけは言われたくないわよ!!」

「ご、ごめんなさい」

 

 森に入って虫取りをしたり、

 

「曹操曹操~! ヘンな果物見つけた! つーかこれ果物か?」

「渋い食べ物だから、そのまま食べるのには向いていないわよ。というか、採っていい時季でもないわね」

「そっかそっか……面白そうなものがあったら、曹操に食べてもらおうと思ってたのに」

「いい度胸しているわね、本当に。ええ、本当に……あなたが戻った時が楽しみね」

「? なにがだ?」

 

 そのまま森で果実を探してみたり。

 ともかく時間の許す限りを体一つで遊びに費やし、陽が暮れる頃には華琳も随分と疲れていた。

 そうなると自然と歩みも屋敷へと向かい、現在は一刀の自室。

 

「……ふぅ。何もしないで一日中遊ぶなんて、随分と久しぶりだわ」

「退屈な人生、歩んできてんだなぁ……」

「退屈などする暇がなかったわよ。やらなければならないことが、それこそ山ほどあったのだから」

「退屈しないのと楽しいのとじゃあ意味が違うだろ。宿題やってて遊ぶ暇がないから退屈しないのと、腹の底から笑ってて他のことに意識を向ける暇が無いのとじゃ、ほら、違うだろ?」

「……明らかに後者のほうが堕落している感があるわね」

「むー……なんで“宿題よりも楽しむことを優先”ってのを堕落って決め付けるかなぁ。じゃあ勉強は先に片付けるか後に回すかにして、新しい楽しみ方を探しているって考えればいいじゃんか。そりゃ、勉強が楽しいってヤツは居るだろうけどさ。楽しみ方ってぜってーひとつじゃないと思うぜ? 俺は」

 

 戻ってくるなり、今日あったことやこれからのことを話し合う二人。

 一刀は遊びの素晴らしさを、華琳はしなければならないことの重要性を語り、それぞれの譲れない部分を互いにぶつけ合って───

 

「……あのさ。戻って早々に楽しげに話してるとこ悪いんだけどさー。少しは私のことも気にしようとか思わないの?」

 

 そんな中、書類の山を前にした元呉王様が一言、そんなことを仰った。

 

「あら居たの。あんまり動かないものだから、書類の一部かと思っていたわ」

「居たわよー! ていうかなに!? あなたたちいっつもこんな量を処理してたの!? なんなのよこの量! 私が遊びに来ると、いっつもちょこんとした程度しかなかったじゃないのー!」

「当然よ。客が来るというのに無様にもがく姿を見せると思う? というよりも、雪蓮? この程度の量を捌けもしないで、よくもまあ本気を出した私は───などと言えたものね」

「う゛っ……や、だって、……あの量が普通なのかなーって。そしたらどんどんと詰まれていくし、手伝ってもらおうかなーって思ったら思春も華雄もそういうことには向いてなかったし、七乃は別件で仕事があるーっていうし」

「はぁ。つくづく冥琳の有能さが理解できるわね。いいわ、一刀、手伝いなさい。雪蓮もあれだけ大見得を切って見せたのだから、ここでの仕事の仕方くらい学んでもらうわよ。……勘に任せた落款落としなんてされたらたまったものではないもの」

「うぐっ……じゅ、重要な仕事を人に任せるから悪いんじゃない~……」

「自分で言ったことの責任くらいは持ちなさい。無用心にも都の仕事を任せたということは、それだけ信頼していたということなのだから。……というか、これだけの仕事も出来ずによくも王として……」

「う、うぅうううるさいわねーっ! いつもは冥琳が纏めてくれてあったし、落款するだけの簡単な作業だったんだから仕方ないでしょー!?」

「それでも任せ切りになる前にしたことくらいはあるでしょう! あなたは酒の飲み方と民との接し方と戦の仕方しか学んでこなかったとでも言うつもり!?」

「うん」

「………」

「………」

「………」

 

 三人の間に、とても静かで……とても冷たい空気が流れました。

 そんな中で孟徳様は静かに、ゆ~っくりと表情を笑みへと変えてゆき、伯符様は静かにじわりじわりと笑顔に汗を増やしてゆき、御遣い様は静かに合掌し、目を伏せるのでした。

 

「あなたはぁああ……っ───王というものをなんだと思っている!!」

「なんかさすがにごめんなさいっ!!」

 

 のちに落雷。

 発声練習 (のようなもの)をしたこともあり、その怒声は部屋に置かれたものをミシリと鳴らすほどのもので、さすがの麒麟児も竦み上がるほどだった。




仕事が一段落したと見せかけてなんの解決もしていないパターン。
疲れた心をゆるキャンで癒す日々が続きます。
そうだ、カレーヌードル食べよう。
カップスターカレー味もいいね。
基本的にカレー味が好きなんだ。
シーフードは食いすぎて飽きてしまったって人は結構居ると思うの。

……ちなみにこの小説を編集するために投稿ページを開いたのが二日前でした。
もっと時間と余裕が欲しいです。

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